比企谷八幡は平穏な生活に憧れる   作:圏外

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国語学年『3』位?つまり吉良吉影じゃあ無いか(無理矢理)


比企谷八幡は平穏な生活に憧れる

「で、比企谷。君は自分がなぜ呼び出されたか分かるか?」

 

「はぁ……確か『高校生活を振り返って』という題名の作文の不備、だったと思いますが」

 

 この比企谷八幡は今日のホームルームの時に担任から、平塚先生から作文の不備について話がある、と伝えられ、貴重な放課後の時間を割いて職員室に来ている。

 

 そんなミスはなかったはずだ。だから呼び出されたのはどうせ他の用件のついでだと私は思っていた。どうもこの教師は職権乱用や体罰を教師の花形だと考えているきらいがある。

 

「ああ、確かにそうだ。だが君の作文に特に不備などは無いさ。本当はただ君と話がしたかっただけだよ」

 

「……教師の台詞とは思えませんね。平塚先生は生徒指導もやってらっしゃるでしょうに……」

 

「生徒指導は関係無いだろう。君は話がわかるからなぁ……何故最近の高校生はジャンプを読まないのか……理解に苦しむよ」

 

「……」

 

 やはりこうなるのか。全く、何を思ったか平塚教諭は私の事をえらく気に入っているらしい。教師に目をつけられることもなく、だが特に気に入られることも無い様に振舞っていたはずなのにな。

 

 1人の生徒ばかりを気にかけ、あまつさえ呼び出して世間話とは、教師のやることとは到底思えない。気にかけるとしてもこの私のような目の腐っただけの生徒を気にかけるか?普通。

 

 こんなことだから飼ってたヒモに家具を持ち逃げされただの、合コンで少年漫画について熱く語り男にドン引きされただのといった残念エピソードばかりが増えていくんだよ……と心の中で毒づいていると、心なしか目の前から殺気が発せられている様な気がして冷や汗が垂れる。

 

「今、何か失礼なことでも考えてなかったか?例えば私の婚活事情とか」

 

「その様なことは決してございません」

 

「まぁ良い……で、どうだ最近は。学校は楽しいか?」

 

「それなりですね。勉強も友人関係も、そこそこ充実してると思いますが」

 

「そうだな。君は『()()』に優秀だからな」

 

「……なぜ普通を強調するんですか?」

 

「わかっているだろう?君は優秀なんだから」

 

 まさか、バレているんじゃあないだろうな……いや、こんな事を確信を持って言うなんてのは冬のナマズが凍った水面を破る事の様に普通じゃあない。十中八九バレていると見ていいだろう。

 

「あまり大声で言えたことではないが、数学が苦手と公言するなら、もっと不自然に間違えるべきだったな。お前の答案は不自然に自然すぎる」

 

「なんのことだかさっぱりですね」

 

 当然だが、こんなもの認めるはずが無い。

 

「……そうか、まあ良い。お前、友達はいるのか?」

 

「そりゃ友達くらいいますよ」

 

 最初はただ自分が目立たない様にする為のカモフラージュのつもりだったんだがな。

 

 比企谷八幡は中学時代の経験から、ぼっちが周りから白い目で見られる事を知っていた。そして、目立つことは嫌うが、舐められることはもっと嫌いだった。

 

 だからクラス内で特に目立たず、だからと言って笑い者にもならないであろう序列3位くらいのグループに所属しておこう、と彼は思った。

 

 友達の作り方くらい勘でわかっていたが、中学時代ぼっちとして過ごした彼はやはり人に飢えていた。

 

 それこそ何かにつけて『3位』になろうとする彼が、友達を作るためだけに入学式の日に『1番』に登校しようとするくらいには。

 

「……そうか。それは何よりだ。お前は友達を道具か何かだと考えてる様な性格だと思っていたが、友達に恵まれた様で良かったよ」

 

「どうも」

 

 比企谷八幡は、今のグループとそのメンバーを、自分が思っている以上に気に入っていた。平塚先生もそれは理解している。

 

「…………彼女とかは、いるのか」

 

「先生には彼氏がいるん

 

 そこまで言った時には、顔の直ぐ横に右拳があった。いつもの流れである。

 

「次は当てるぞ」

 

「申し訳ありません、失言でした」

 

「なぜ謝られているのに馬鹿にされている気分になるのか。ったく、脈アリの異性がいる故に自信タップリな奴を見るのは気分が悪いよ……嗚呼、彼氏欲しい」

 

 見た目は美人なんだが。先生についていける様な丸太の様な心を持った人に出逢えると良いですね、平塚先生。

 

「さて、先ほどの発言で私の心は大いに傷ついた。よってお前には罰を与える。ついてきたまえ」

 

「は?いやちょっと待ってください。なぜそうなるんですか?」

 

「良いからついてきたまえ。拒否は認めん」

 

「……ついて来なかったら?」

 

「お前の評価点がお前が大好きな『3』で溢れかえるかもな。どうせ満点を取れるところを凡ミスに見える様に間違え、3位を狙う様な輩だ。別に問題はないだろう?」

 

 コイツ……教師でありながら職権を盾に生徒を脅そうと言うのか。

 

「少々陰湿すぎやしませんかね……」

 

「昔、君のような生徒がいたんだ。彼女はとても優秀だった。君には彼女の様になって欲しくないんだよ」

 

「……」

 

 おそらく、善意なんだろう。この平塚先生はそう言う人だ。こんなに美しい『手』を持っているのに、勿体無い。

 

 厄介事は、私の愛する平穏な人生とは相反しているから嫌いだ。

 

 はぁ……

 

 やはり私の高校生活は間違っている……




比企谷グループ
比企谷八幡
・国語が得意で数学が苦手の様な成績を取っている平穏な生活に憧れる男の子。本気を出せば雪ノ下なんぞには負けんがね。
・クラス内影響力3位くらいのグループを作ってそこの端っこに生息しようとしたが、いかんせん気に入ってしまい今に至る。

戸塚彩加
・テニスの王子様で、リアル男の娘。なんやかんやあって八幡に懐く。
・元々八幡をテニス部に引き込もうとしていたが、有耶無耶にされてしまった。
・よく女の子と間違えられる事をチョッピリ気にしている

川崎沙希
・面倒見の良いオカンポジション。あーしさん?そんなのは知らん。
・男らしい性格で、女の子にモテるらしい。第2の平塚静にならない事を願うばかりである。

川尻しのぶ
・ジョジョからの出演。旧姓がわからなかったので川尻にした
・八幡のクールで何気にスペックが高いところを見抜き、以後アプローチを重ねるが、基本袖にされている。でも結構脈アリ。
・自分の名前が古クサイことをかなり気にしている。

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