きんいろモザイク‐ボーイズ・ビー・アンビシャス‐   作:星の翼

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2話:編入生は金髪少女

「おっせーぞお前ら」

 

高校につくと玄関にて宗吾が待っていた。

小路達の姿はない

 

「遅刻はしてないのですから良いじゃないですか。」

「小路達は?」

「からすちゃんのとこ行っちまったよ……」

 

烏ちゃん―担任の烏丸先生の事だ。

おっとりしていてとても優しい先生でもある。

 

「所でよ、さっきそこで金髪のめちゃくちゃきれいな女の子に会ったんだけど何かあった?めっちゃ大宮ちゃん達と仲良さげだったんだが」

「金髪の女の子?…ひょっとして大宮さんの手紙の子かな?」

「手紙?」

 

かくかくしかじか…………(四角いムーブ)

 

 

「へえぇ~~…そういやそんな事あったなぁ忍ちゃんって、通りで仲良しだったわけだ。」

「僕としては、良くあの成績でホームステイの許可が下りたと思っていましたよ。」

「それに関しては……俺も心配だった。」

 

勇さんに限っては、あの期間は不安で良く俺が駆り出されたっけなぁ。

可愛い妹が旅立ったからと言ってその寂しさを弟分の俺で補おうとするのは勘弁してほしかった。

 

「可愛い子だったぜ?背なんかこん位でよぉ。」

 

そう言って手振りで身長なんか教えてくる・・・140位か。

いや、それよりも―

 

「学校の中で会ったのか?」

「? おう。」

「そうか……」

 

ひょっとして転入してくるのか?まぁ、良いか…俺達も靴を履き替え教室へと向かう。

因みに俺と宗吾は忍達と同じクラスの1年B組だが久遠だけが別の1年A組だ。

 

「ふぅ~ようやく空気が美味く感じるぜ」

「どんだけだよ…」

 

教室に到着…そこで漸くと言った様に空気を目いっぱい吸い込む宗吾。

そのまま俺達は先に来ている友人の所に行く。

 

「おはよう、ドラ、観九郎。」

「…………………………………武に宗吾か」

「おはようでござるぞ、武殿、宗吾殿。」

「やハロー」

 

【鳳龍寅(おおとり たつとら)】―通称【ドラ】

目が隠れるほど前髪を伸ばした中学からの俺にとって一番の親友だ。

長身且つ無口で無愛想と思われがちだが、下に何人も弟妹を持っている優しい兄ちゃんでもある。

 

 

そして隣の席の【千手観九郎(ちて かんくろう)】。

久遠がインテリ眼鏡に対して、丸眼鏡を掛けたオタクである。 

人に対して【~殿】と呼んで自身のキャラと言うのを徹底しているが、寧ろ開き直った話し方でその手の世界をそこそこ知っている人間にはとても話しやすい相手でもある。

因みにこの丸眼鏡は伊達眼鏡であり、本人の視力は良い方だ。曰く【キャラ作りでござる】だろうだ。

 

「…………今日の大宮は何時もより笑顔だ。何かあったか?」

「イギリスの友達がこっちに来ているらしい。」

「ほおほお、確かに大宮殿は中学校で一度イギリスに行った事があるそうでござるな?ふむ、金髪の少女、これはまた萌えでござるな。」

「…………手は出すなよ。」

「ハッハッハ、分かっているでござるよ。不肖この千手観九郎、オタクの本道【紳士の嗜み】は忘れんでござるよ。むろん、変態と言う意味では無く!!」

 

胸に手を置き高々と宣言する観九郎、このキャラを恥ずかしげもなく貫けるのはある意味こいつの強さと言えるのだろう。

そんなこんなで野郎同士で話をしていくうちにホームルームの時間が近づいてきたのでそれぞれ席に着く。

 

 

 

 

 

「初めまして、【アリス・カータレット】と申します。イギリスから編入してきました。よろしくお願いします。」

「え―――っ!?」

「「気づくの遅!!」」

 

ホームルームにて担任の烏丸先生に連れられて教室に入ってきた

当然驚きの声を上げたのは忍でそれに対して突っ込みを入れるのは陽子と綾。

俺と宗吾は「あぁやっぱりかぁ~」な感覚の表情。 ドラは面識がないので普通の反応だ。 観九郎は…「ほほう」と生の金髪の少女を目の当たりにして眼鏡をきらりと輝かせる。

 

感極まってアリスに抱き着く忍、先生を無視して自分たちの世界を作るなよ……。

因みにここで綾がエアメールの2通目がローマ字で書かれていたことを知って絶句していた。

そしてホームルームが終わり束の間の休み時間。

忍・小路・陽子に加え新たにアリスという面を加えて一層華やかになった女子陣。

 

 

それを遠巻きでありながら見守る、俺・ドラ・宗吾・観九郎の4人

 

「なぁ?すげぇ可愛い子だろ?」

「…………………日本語も上手いな。」

 

話の中心は勿論件の金髪少女である。

 

「忍と余程会いたかったのかもな…」

「海を越えた友情…うぅん、涙出てくるなぁ~~」

 

確かに、あのホームステイを機に忍の外国好きは一層拍車がかかった気がする。

服のセンスとか面白(ゲフンゲフン……外国的なことになってたし。

 

「あぁ~あ、華やかで素敵ですなぁ。」

「女は3人いると【姦しい】と言いますが、あれはまさしく学園の華でござるな。」

「男が3人集まっても4人集まってもむさいだけだからな」

「………………それは言うな。」

 

「武くーん」

 

4人で苦笑混じりに話をしていると―忍達がアリスを連れてこっちに来る。

アリスちゃんは男陣4人の所に連れてこられたのか忍の服をつかんでいる

 

「彼は【日本武】君です。 とっても優しい人ですよ」

「コ、コニチワ…」

「いや、その紹介はどうかとおもうぞ?」

 

まだ不慣れだろうに男衆4人の所に連れてこられるとは―これはある種の信頼なのだろうが、忍よ、もう少し時間をおいてからでもよかったと思うぞ?

まあ連れて来ちまったのは仕方ないな―

 

「初めまして。 【日本武】だ 気軽に【武】って呼んでくれ」

「武君は私の幼馴染なんです。それから―」

「さっきぶり、俺は【宗像宗吾】って言うんだ、【宗吾】って呼んでくれよ。 ウェルカムジャパンってな♪」

「………【鳳】…【龍寅】。」

「某【観九郎】申すでござる。どうぞよろしくお願い申すでござる。」

「皆私の友達なんです。怖い人ではないので安心してください。」

「【タケル】、【ソーゴ】、【タツトラ】、【カンクロー】。ア、アリス・カータレットです。よ、よろしくお願いします。」

「うん、此方こそよろしく」

 

まぁ、確かに宗吾はちゃらいし、ドラは見た目通り怖いって印象を受けるからな。

でも、素直で良い子だ、困っている時は手を貸してあげよう。

っと言うか―

 

「観九郎、お前アリスちゃん相手にもそれ貫くのかよ」

 

俺が言いたかったことを宗吾が代弁してくれた。

ござるとかですぞとか流石に初対面―しかも外国少女に使うかよ。

「ハッハッハ!これは某にとってはアイデンティティーであり個性!これ無くして【千手観九郎】は完成せぬのでありますぞ!!これが消えたとき即ちそれは千手観九郎が死した時と心得ているでござる!!」

「だからってなぁ……」

 

そんな話をしていると―

 

「千手君、アリスから質問があるみたいです。」

「む?何でござろうか?」

「千手君は、サムライなんですか?っと」

「「「ぶっ?!」」」

 

ほらやっぱりな―思わず噴き出したのは俺と宗吾と陽子の3人。

小路は顔を赤くしているしドラの表情に変わりはない―が硬直している

そして当の観九郎はきょとんとした後、コホンと息を整え―

 

「アリス殿、サムライとは心に宿っているものでござるよ。」

「「えっ?」」

 

おい、俺らにもサムライ宿っているみたいじゃん。

俺達にその【殿】付け【ござる】付けやれってのかよおい!!

 

「え?!それじゃあ、どうして【カンクロー】は【チョンマゲ】じゃないの?」

「ぶふっ!!」

 

ちょんまげと来たか―…観九郎が珍しく冷や汗だらだら掻いてるぞ?

これはこれで貴重な光景だなぁ。

再び一度咳払いをした観九郎は―遠い目をしながら

 

「あ、あぁ~まぁ、個人差はありますがな―」

 

―逃げた。逃げやがったこいつ!!

何か深みのある雰囲気で対して深くもない言葉言って逃げたぞ!!。

 

ほら、アリスちゃんなんか難しそうに考え始めちゃったじゃん。

 

「つまり―観九郎はサムライスピリッツがまだまだ足りないってことだ。」

「え?宗吾殿?」

「これは何時の日か―観九郎には是非ともちょんまげをやってもらう必要があるな」

「武殿!?!?」え?!冗談でござろう!?」

「………諦めろ。」

「龍寅殿までッ?!」

 

ほら、アリスちゃんはリアルサムライ(自称)を目の当たりにできて感激してるみたいだし、彼女の期待を裏切る事は出来んぞ?

観念したようにうなだれる観九郎の肩をドンマイと叩きながら宗吾が空かさず話の内容を全く別の方向に進めようとアリスちゃんに声をかける。

 

「それよりアリスちゃんって日本語すげぇ上手いよね。中学の時からそうだったの?」

「その頃のわたしは、全然日本語しゃべれなかったよ?」

「え?そうなの?」

「アリガトとコンニチハくらいなら」

「じゃあ、忍が英語で話したのか?」

「私もハローくらいなら」

 

「「(((何でそれで意思疎通できた?!)))」」

「………………大宮、中学でその成績だったのか?」

 

恐らくだが俺と宗吾と観九郎はまったく同じことを思ったであろう。 ドラに限っては冷たい一言だった。

 

「あ、そういや一限目英語だったな…本土の人が居ると思うとやっぱ緊張するねぇ~」

「忍はからすちゃん好きだもんな」

「カラス?」

「担任の烏丸先生の事よ。」

「優しくて美人で英語ペラペラで大人でジャージで…あんな人になりたいです!」

「「「ジャージは良いの?」」」

 

俺達の細やかな問いを無視して自分の世界に入る忍、そんな忍をみて対抗心を見せるアリスを他所に予鈴が鳴る。

そして、アリスが本場の英語を披露してクラスメートから拍手を浴びてあたふたする羽目になった事はまた別の話。

 

 

昼休み中―

 

「タケル。」

「ん?如何したアリスちゃん。」

「ヨーコやアヤがシノブのことを【シノ】と呼んだりするのはどうして?」

「ん?ああ…あだ名だよ。 俺の場合は、小さいころから一緒だったからか忍は俺の事を時々だけど【たけちゃん】って呼ぶんだ。 まあ、あだ名は仲良しな人達の呼び名だと思えばいいよ」

「!(これだ!)ありがとう、タケル!」

「? どう、いたしまして」

 

そしてそれから間もなく…

 

「先生!私シノブの事シノって呼びます!」

「何て可愛らしい宣言だッ!!」

 

本人至って真剣にライバル(?)宣言のつもりだが烏丸先生達はほんわかしているぞ?!

 

「これはまさしく―萌えでござるな。」

「ああ―萌えだな。」

「……………お前らは何を言っているんだ?」

 

そしてナイスツッコミだぞ【ドラ】。 あんまり会話に口挟まないけど。

 

この和やかさにその場にいたほとんどの人間がほんわかしたのは言うまでもない。

当の本人は至って真剣だったのだが…そんなこんなで忍の後ろをちょこちょこついていく小動物感全開のアリスを加えた一日が終わる。

 

 

 

ドラはバイトで先に帰り、宗吾は久遠に捕まえる前に帰るといってさっさと帰ってしまった。観九郎は漫画の新刊の発売日と言って足早に下校。  久遠もこっちを見に来たが居ないと知ったら残念と苦笑し帰って行ってしまった。

 

 

っと言う訳で、今は男子俺一人である。

俺と忍は家が隣同士なので帰る道は同じだ。小路と陽子も大体同じなのでそれまで着いてくる。

そして問題は……

 

「アリスは一人でこっちに来たんだよな。家とかは如何するつもりなんだ?」

「えっと、シノの家にホームステイを…」

「アリス!そんな…たった一人住むところもなく……私の家に来て良いんですよ!何もない家ですが!!」

「人の話を聞けっ!」

 

隣の家に金髪少女がホームステイすることになりました。

 

「……それじゃあ、忍、アリスちゃん。また明日ね。…忍、今度はちゃんと出て来いよ?」

「分かってますよー、また明日武君」

「タケル、また明日。」

 

何時もと変わらなかった日常は、金色の少女を一人加えて…細やかに変化をするのである。

 




生徒手帳―その2

名前:八房 久遠
なまえ:やつふさ くおん
身長:169cm
体重:45㎏
好き・趣味:野菜・読書・宗像宗吾(弄る意味で)
嫌い・苦手:生魚・運動
得意科目:ほぼ全教科 苦手科目:体育

座右の銘:面白きことは良き事なり
キャラ印象:【知的】・【丁寧】・【ドS】

紹介
インテリ眼鏡を掛けた同級生。 学年主席で頭が良い。
普段から丁寧な言葉遣いで物腰穏やかな【優等生】だが、仲のいい友人に対しては笑顔で強烈な毒を吐き出す【ドS】―主な被害者である宗像宗吾からは【鬼畜メガネ】と呼ばれる。
唯一、武達とは別のクラスに在籍している。

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