地蔵菩薩さま。このような駄文しか書けないダメ作者とのコラボ、誠にありがとうございます。
地蔵菩薩さまがせっかく三大怪物をお貸ししてくださってのに、この様な低クオリティの駄文で心苦しい限りです。
※ロタンのイメージが崩れるかもしれませんが、それでも良いと言う人だけご覧ください。
三大怪物とのコラボ ロタン編
三大怪物。
それは遥かなる大昔、聖書に記されし神が創造した存在。
黙示録に記された獣、『黙示録の皇獣』666その抑止力として。
三大怪物は聖書の神と共に黙示録の皇獣と戦った。
しかし、滅ぼすことはできなかった。それぞれが常識外の力を誇る三大怪物をもってしても滅ぼすことは叶わなかったのだ。
なんとか黙示録の皇獣は聖書の神によって封印することに成功した。しかしそれは問題の先送りに他ならない。
それでも、確かに平和を勝ち取ったのだ。
その後、三大怪物は姿を眩ませる。各々の正義を背負って―――。
9月7日
「あ゛~。暇だぁ……」
とある少年は心底つまらなさそうにそう呟く。
見た目は高校生くらい。
大人というにはまだ幼さを所々に残している。
日本中を探せば少年とそう変わらない人間はそこら中にいるだろう。
しかし、少年の周りは異常だった。
周りには砂塵が舞い上がり、辺りは瓦礫の山。……そして倒れ伏す超常のなにか。
ヒトの形をした存在を幾つも山積みにし、その頂上に座る少年
「……てめぇっ、何でいきなり攻めてきやがった!」
少年に直接座られている五厘頭の存在。
五厘頭―――帝釈天は怒りに表情を染め、そう怒鳴り声上げる。
その怒りに呼応するようにバチバチと空気が弾ける音がする。
しかし少年はつまらなそうに答える。
「この前、テレビを見たら『ストレスのたまっている貴方! 童心に返ってみるのも良いでしょう』って言うもんだからよぉ。童心に戻って行動してみたわけだ」
帝釈天はその答えを聞いて呆ける。
あまりにも理由がくだらなすぎる。
どこの世界に童心に戻って国一つを潰す存在がいるというのだ、いくら何でも非常識すぎる。
「ふざけ―――」
そこまでだった。
帝釈天はそこまで怒鳴りかけて意識を奪われる。
世界でも十指に入る神仏である帝釈天の意識を落とした少年―――兵藤一誠はつまらなさそうに息を吐く。
『北欧、日本、インド、ギリシャ、十年前と違うが、ほぼ主要な所は回ったな。……となると、最後はあそこか?』
一誠の左腕の甲がひかり、そこから声が響く。
この声の存在はとある例外を除いて、最強とまで謳われた二天龍の一体、『赤き龍(ウェルシュ・ドラゴン)』ドライグ。
「―――ああ」
そこで初めて一誠は笑みを見せる。
それは獲物に飢えた肉食獣のような、獰猛な笑みだった。
神仏ですら引く様な笑みをする一誠に、ドライグは呆れたように話しかける。
『やれやれ……。今さら期待する程か? 十年前の相棒に勝てなかったんだぞ? いま戦ったとして、当時以上に差がひらいているだけだ』
一誠はドライグの話しを聞いても、笑むことを止めなかった。
全てを破壊しそうなほどの狂気を宿した瞳をしながら、一誠は嗤う。
「別にそこまでは期待していねぇさ。言ったろ? 童心に戻って行動しているだけだって。あいつが家族ごっこに明け暮れて、ふぬけてなければ問題ない。……まぁ、もしそうだとしても、あいつの言う『家族』を二~三人ぶっ殺せば本気で俺を殺しに来るだろ。十年前と同じく楽しませてくれよ、おじさん♪」
一誠が最後に子供の様な純粋な声を出すと、全身から膨大なまでの力の奔流が生まれる。
それは一誠や倒れ伏す神仏がいる神殿全体を振動させ、崩落させていく。
一誠は神殿の崩落に巻き込まれる神仏に目もくれず、その場から消えうせる。
9月9日
世界の果て、大渦が天を覆う古城。
特殊な魔術によって天候を操作していて、庭には普段なら子供達が元気に走り回っている。
だが、庭はボロボロに荒らされ、そんな空間に二人の男性が対峙していた。
一人は一誠、もう一人は大柄な男性だ。
健康的な小麦色の肌、紺色の浴衣、銀色の着流し。
顔、腕、浴衣の間から無数の傷跡が見える。
どれも古傷だが、火傷や刀傷など、無数の傷跡が小麦色の肌を傷つけている。
そして、最も特徴的なのは左腕と左目が無いことだろう。
左腕の部分は浴衣が風に煽られ、ひらひらと舞っている。
左目は漆黒の眼帯をし、右眼は海の様に蒼い。
普段は大海原の様に穏やかな蒼眼を、いまは怒りが染めていた。
『……一誠、こいつぁどういうつもりだ?』
大柄な男性が、ドスの利いた声でそう話しかける。
魔王ですら震えるほどの怒りを向けられながらも、一誠は動じることすらせずに答える。
その左腕に六歳くらいの男の子を抱えながら。
「テレビで童心に戻るのが良いとか言われたからよぉ、昔みたいに行動してんだよ。んで、神仏はほぼ回りきったからおっさんの所に来たんだ」
『なら、直接俺に挑みにくればいい。なんでこんなことをしたんだ……っ!』
先ほどよりも怒気を発しながら、男性は一誠に怒鳴る。
そんな男性を、一誠はつまらなさそうな視線を向ける。
その瞳には確かな失望があった。
「おいおい、おっさん。アンタがこのくだらない家族ごっこに興じてふぬけているのが悪いんだろ? あの程度の奇襲を食らって、さらに人質まで取られる。……昔のアンタはもっと強かったはずだ。俺が知るアンタだったら、奇襲を食らおうが、ガキを人質に取られるなんてへまはしなかった。この十年でアンタはどれだけ弱くなった? あんまり俺を失望させんな。―――三大怪物の一体、ロタン・ベルフォルマー」
ロタン・ベルフォルマー。
聖書の神が創った兵器、『黙示録の皇獣』666に対する抑止力。
かつて世界を救った大英雄。
その力は、神仏はおろか二天龍すら凌駕する。
『……ふざけてんじゃねぇぞ』
普段、子供達を相手にしている様からは想像もできないほどの怒りを見せるロタン。
そんなロタンを見て、笑みを深める一誠。
「そう、それだよ。ふぬけてるアンタと戦るために態々来たわけじゃねぇんだ、そのくらいの気迫はだしてもらわねぇとなぁ」
ロタンは一誠を睨み、一誠はロタンに笑みを向ける。
今すぐにでも戦闘を始めそうな二人。
しかし、一誠はともかく、ロタンは迂闊に動けないでいた。
ロタンと一誠が一撃交わしたその余波だけでも、一誠に抱えられている子供が死んでしまうかもしれないからだ。
一誠が意図的に衝撃から守らなければ、本当に子供は死んでしまう。
硬直する場に、第三者が乱入する。
『いきなり失礼』
いきなり一誠の目の前に現れた橙色の髪をした女性、その髪は夕暮れの色をそのままうつしたかのように綺麗だ。
女性は一誠へと徒手で攻撃を仕掛ける。
いきなりの事で、一誠は僅かながらに反応が遅れる。
一撃目の貫手を弾き、二撃目の手刀をすれすれで避け、三撃目の拳を掴み、四撃の蹴りを防げないと悟り即座に後ろに下がる。しかし―――。
『これで子供は奪い返した』
いつの間にか現れた翠の瞳をした少女。
綺麗な紫色の髪をし、だぼだぼの魔女帽子を被っている。
そんな少女の手元に、先ほどまで一誠が掴んでいた少年がいた。
「やるじゃねぇかジズ。いつの間に転移させたんだ? それにビヒモスも」
『キサマが相手ではあの筋肉達磨も辛かろうからな、態々助けに来たというわけだ』
ジズ・ローヴェル、ビヒモス・アウリオン。
ロタンと同じ三大怪物。
ロタンは最強の戦士、ビヒモスは最高の王、ジズは最賢の僧侶。
三人揃えば最強無敵の怪物たち。
そんな怪物たちがいま、一誠の目の前に君臨していた。
『悪いな、助かった。……あとは俺がやる。悪いことした悪ガキには御仕置きが必要だからな』
ロタンは一歩前に出る、それだけで辺り一帯の空間を振るわせる。
圧倒的なまでの存在、二天龍すら超越した化物。
本気でキレているロタンを見て、一誠は笑みを深める。
「良い殺気だ、これなら楽しめそうだ。だが、アンタは甘い。こんな俺ですら家族に迎え入れようとする様な奴だ。もしかしたら急所を狙ったり本気で殺しにこねぇかもしれない。―――そこで、保険を掛けさせてもらった」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
一誠がそう言った瞬間、ジズに保護された少年がいきなり叫び出す。
少年の身に起きたことを見て、ジズは驚愕する。
『これは……?』
少年の体の中心に魔法陣の様な物が浮かび上がり、そこを中心にまるで迷路でも構築していくように線が走っていく。
わけが分からないが、一誠が何かをしたのは明白。ロタンは一誠を睨みつける。
一誠はそんなロタン達にクイズの答えを教えるかのように言う。
「『自立崩壊魔法陣』、名前の通り魔法陣こと対象を崩壊させる魔法だ。解除コードを入力すれば解けるが、俺はそれを教える気はねぇ。知っての通り、俺の使う魔法は異質だ。ジズなら時間をかければ解けるかもしれねぇが、それは時間があれば。……崩壊するまで一時間半。それまでに俺を倒すか殺すかすれば、それは解ける」
一誠がそう言った次の瞬間に、ロタンは一誠の目の前に現れた。
そしていつの間にか握っていた大太刀『斬馬刀・豪傑』を振り下ろす。
二メートルを優に超えるそれは、もはや大太刀と言うよりも、巨大な鉄塊だ。
一誠は空間を歪ませ、そこから一本の剣を取り出し、そのまま振るう。
一誠の剣とロタンの大太刀が衝突した瞬間、ものすごい衝撃と爆音が辺り一帯を吹き飛ばす。
『見たこともねぇ聖剣だ、なんて銘だ?』
ロタンは一誠が振るった聖剣を見て、驚く。
永遠に近い時を生きる悪魔の数倍、数十倍の人生の中で見たこともない聖剣が現れたのだ。
一誠はロタンの豪傑を受け止めながら答える。
「レイヴェルト、自作の聖剣だよ」
『聖剣レイヴェルト』
RAVEの世界でハムリオ・ムジカがレイヴの戦士、ハル・グローリーの為だけに鍛え上げた第十の剣。
その力は邪悪を切り裂き滅する、究極の破邪の剣。
その力は正しい所有者が掴むだけで氷漬けになった町一つを元に戻すほど。
一誠が創ったのはその劣化コピー、オリジナルの様に十の剣にはならない。
しかしその分だけ威力は絶大、レイヴェルトから放たれる聖のオーラだけで悪魔や魔獣なら魔王クラスですら焼くことが可能だ。
『オリジナルエクスカリバークラス以上の聖剣を作ったのかよ。相変わらずだな、一誠は』
十メートルほど後退し、ロタンは苦笑しながらそう言う。
そこには先ほどまでの怒りは微塵もなかった。
そんなロタンの様子を見て、舌打ちする一誠。
『あれ、見た目だけ派手で害はないだろ。最初は騙されたけど、あいつ等の様子見て判った。ありゃ単なるハッタリだ』
そう、一誠が少年に施した魔法陣は見た目だけが派手な物。
ただ単に、ロタンに本気を出させるためのモノでしかない。
「―――……っち、脳味噌まで筋肉に犯されてる筋肉達磨のクセに気づいたのかよ」
『……俺、泣いてもいいよな? なんでここまで言われてんの……』
一誠にそう言われ、本気で泣きそうなロタン。
そんなロタンを面倒くさそうに見る一誠。
『カカカッ。……口の悪いガキには、鉄拳制裁からの教育が必要だよなぁ?』
先ほどまでとは一転、目が据わり、どこか危なげなオーラを出しながら怒りを見せるロタン。
その顔には青筋が浮いている。
(あ~、流石にやりすぎたか? ……まぁ、いいか。ロタンだし)
流石にやりすぎたかと思う一誠だが、反省はしなかった。
一誠は無自覚であるが、ロタンの事を信頼している。
両親を覚えていない一誠にとって、ロタンは父親にも等しい存在なのだ。
……本人は無自覚の上にそれを認めようとしないが。
ガガガガガガガガガガンッ!
いきなりロタンが懐から、巨大な拳銃を取り出し、それを一誠に向けて発砲。
『対怪物専用マグナム・カエサル』
全長40㎝、重量20キロ、装弾数5発、弾は20ミリ専用弾。
無類の筋力を持つロタンが扱う事を前提に作られたマグナム、その威力はドラゴンの甲殻すら吹き飛ばすほどに規格外。
下手したら魔王ですら死ぬかもしれない様な威力だ、少なくとも人間に向かって撃って良い様なモノではない。
「邪魔」
一誠は適当にレイヴェルトを一閃する。
それだけでカエサルから放たれた十発の弾丸は、レイヴェルトの剣圧によって吹き飛ばされた。
「―――っ」
一誠はその場から高速で移動する。
先ほどまで一誠がいた場所に、豪傑を振りかぶったロタンが隕石の様に降ってきた。
ロタンが地面と衝突した瞬間、激しい爆砕音と振動が辺り一帯を支配した。
一誠とロタンは自分の得物を肩に構え、一旦仕切り直す。
「やっぱ、なれねぇ事はするもんじゃねぇな」
そう言って、レイヴェルトを亜空間に仕舞う一誠。
ロタンはロタンで、同じように武器を収納している。
『カカカッ。こいよ、一誠。暇つぶしの相手くらいはしてやる。その後は拳骨してからの説教だ』
「っは、無様にやられんじゃねぇぞ!」
一誠とロタンはお互いに拳を交える。
一瞬の拮抗の後、一誠は高速で拳や蹴りを放つ。
一瞬の間に数千、数万と放たれる攻撃は、片腕しかないロタンを圧倒的に上回る速度だ。
しかし、全てを防がれる。
ロタンは片腕で弾けるだけ弾き、そうできないモノは受け止めるか避けていく。
(ロタンには未だに届かないか……)
(また強くなったな。まだまだ荒削りな部分はあるが、前に比べて格段に良くなっている)
目線の動きや呼吸、ほんの僅かばかりの筋肉の動きなどで一誠の攻撃を読み、防いでいく。
圧倒的な強さを誇る一誠だが、そんな芸当はできない。
数えきれないほどの戦場を渡ってきたロタンが相手では、どうしても『経験』の差が出てしまう。
能力でも力でも一誠の方が上。しかし、ロタンからしたら赤子にも満たない様な年齢の一誠では戦闘技術では圧倒的に劣ってしまうのだ。
(これ以上速度と攻撃を増やせばロタンには余裕で届くんだが。……それじゃ意味がねぇからな)
(純粋な才能だけで言ったら曹操たちにも劣る。……それでもこれだけ強ければ十分だと思うんだがなぁ)
一誠はさらに高みを目指して、ロタンは成長してく我が子を見守る様な温かさを宿して、戦闘は激しさを増していく。
(そもそも一誠の強さは純粋な技術によるものじゃねぇ。どっちかつーと、人間よりも悪魔の方に近い。……まったく、これ以上強くなってどうするつもりなのかねぇ?)
ロタンからしたら一誠の成長は嬉しい。しかし、これ以上強くなる意味があるのかと思う。
全力の戦闘ならば、一誠はロタンよりも強い。しかし、一誠は自身の強みを活かさずに、さらに強くなろうとしている。
純粋な近接戦闘の技術は、下手したら曹操にすら劣る。
一般的な人間と同じで、真剣に取り組めばソコソコのレベルまでに行くが、プロレベルにはならない。
一誠の才能はその程度でしかない。二流、もしかしたら一流レベルにまで辿り着けるかもしれない。しかし、超一流にはなれない。
それでも尚、一誠が近接戦闘でも強いのは、性能の差があるからだ。
相手が技術で上回るのならば、圧倒的な力と速度で上回れば良い。一誠がしているのは自身の
……どれだけ武術を鍛えようとも、ジェット機が突っ込んできたら受け流す事など不可能。それと同じで誰も一誠に勝つ事ができなかったのだ。
(とは言え、これ以上はマズイ。ジズが『絶霧』で辺りの衝撃を抑えてくれてはいるが……これ以上は後々あいつ等がうるせぇからな)
ジズとビヒモスが先ほどから視線で訴えかけているのだ。
『とっとと終わらせろ。一誠の子守りはお前の役目だろ』……と。
ロタンは一誠の放った蹴りをわざと大きく弾き、一瞬の隙を作る。
そして、一誠の目の前の空間を思いっきり殴りつける。
ロタンの殴りつけた空間に罅が入り、徐々に広がっていく。
「―――っ、あっぶねぇな」
一誠は慌てて回避する。
『空間割り』
その名の通り、空間を叩き割って衝撃波を発生させる。
しっかりと調整しなければ、大陸が割れてしまうほどの威力をほこる。
さらに―――、
『そろそろ終わらせねぇと、後が怖ぇからな』
何時の間にか一誠の背後に現れたロタンは、そのまま一誠の腕を掴む。
そしてそのまま一誠を凍てつかせる。
『氷河時代』
半径数kmを絶対零度の世界に変えてしまう絶技、一度発動すれば半世紀は溶けない。―――普通ならば。
ビキビキっと震えながら音を立てて割れていく氷。
あと数秒もしないで氷の中から出てきそうな一誠に、ロタンは追撃をかける。
『朧火』
巨大な蒼炎が天高く、まるで柱の様に聳え立つ。
酷く静かに冷たく見えるそれは、見た目とは裏腹に全てを灰燼とかす業火。
バアアァンッ!
しかし、一誠には効かなかった。
一誠の暴力的な魔力により、朧火は内側から弾き飛ばされる。
だが、朧火を破るのに一秒以上の時間が掛った。その間に、ロタンは次の攻撃の準備を終えていたのだ。
朧火から出てきた一誠の周りに磁場が形成されていた。
そして、ロタンはそれを一誠目掛けて振り下ろした。
『雷塵』
極大かつ圧倒的な質量の雷を対象に叩きつける。
絶縁体、もしくは耐性でもない限り対象は即死してしまう程の大技。
それ程の大技なのに、一誠は無傷。
一誠の体から放出しているエーテリオンに拒まれ、一誠本体にかすりもしなかった。
雷塵の影響か、辺りには大量の砂塵が舞いあがっていた。
一誠はロタンへと突っ込む。
次の瞬間には、ロタンの眼前へと現れた一誠は鋭い蹴りを放つ。
しかし、それはロタンに届かなかった。
磁力操作による砂鉄と、重力による二重の拘束具が一瞬だけ一誠の体を拘束したのだ。
だが、一誠はそれをほぼノータイムで破壊し、そのままロタンに蹴りを叩きこんだ。
―――正確には叩きこんだと錯覚させられた。
「―――っ!?」
そこで初めて一誠の瞳が驚愕に染まる。
一誠の蹴りはロタンを打ち砕くどころか、そのまますり抜けたのだ。
そして、一誠の目の前に存在していたロタンは、まるで幽霊のようにその姿が霧散した。
「水蒸気か……」
一誠は冷静に、そう呟く。
先ほどまでのロタンの正体はコレだ。
『氷河時代』によって造られた氷を『朧火』によって溶かされた際に発生した水蒸気に、魔術で鏡の様に映していた幻影だ。
普通なら絶対に気づいただろう。しかし、ロタンを映していた水蒸気はロタンの力によって生み出されたもの。
さらに、二重の拘束によって一瞬だけ一誠の気がそちらに向いた。
そのおかげで、一誠は幻影が本物だと思いこまされたのだ。
『オラァァァァァァッ!』
ロタンはそのまま地面に差し込んでいた手で掴んでいた大地を無理矢理上げる。
ロタンによって引き起こされた地殻変動は、巨大な土山を作り出した。
土山は一誠目掛けて、前へ前へと進んでいく。
その度に大きくなる土山は、まるで土による津波を想像させる。
「ふん!」
ドゴン! と、一誠は目の前に迫っていた土山ごと、周囲の大地を踏み砕いた。
目の前の光景に、流石のロタンも頬を引き攣らせ、唖然とする。
「下から盛り上がってくるんなら、上から叩き潰せば良いだけだろうが」
『理屈は分かるけどよ、いくら何でも出鱈目すぎるだろ』
「オメーが言えた事じゃねぇだろうが」
大地から山を作り出すと言う、天地創造にも等しい事象を引き起こす攻撃をしたロタンか、それを難なく防ぐ一誠。
…………はたして、どちらの方が出鱈目なのか? それは今は亡き聖書の神にも分からないに違いない。
◆
「はぁ、はぁ……ロタン。テメェ人間に『雷拳骨』なんてぶちかますんじゃねぇよ。死ぬわ」
『ゼー、ハー……一誠。お前、そのくらいでくたばる様なタマじゃないだろ』
「……うるせー。俺はお前と違って、クソ弱い人間なんだよ」
『お前がクソ弱かったら、今頃世界は滅んでるな。何だよ、最後の一撃? 本気で死ぬかと思ったぞ……』
「ありゃ、思わず力んじまったんだよ。……つーか、俺より年上なんだから、少しは手加減しろ」
『一誠相手に手加減する程、余裕はねぇよ。……そして、お前はもう少し年上を敬える事を覚えろ』
あれから数時間以上戦っていた一誠とロタン。
その結末はかなりくだらなく、呆気の無いものだった。
『まったく、このバカ者どもめ』
『被害を抑える、こっちの身も考えてもらいたいね』
決着の着く様子を見せないロタンと一誠に、ジズとビヒモスが痺れを切らし、お互いの最大火力を二人に叩きこんだのだ。
流石のロタンと一誠も、ジズの最大火力の魔術とビヒモスが放つレーヴァテインに気を取られ、お互いに放った攻撃を避けられずにクリーンヒット。
更にジズとビヒモスの攻撃も直撃し、一誠とロタンは二人仲良くボロボロになりながら地面に仰向けに倒れる事と成ったのだ。
「俺はお前等みたいなチート回復力はねぇんだぞ? 少しは加減しろよ」
一誠は未だにボロボロだが、ロタンの方は既に回復しきっていた。
聖書の神に造られた彼等三大怪物は、フェニックスも真っ青の超回復能力を有している。
『なら、次からはなるべく早く決着をつけるべきだね』
ジズが傷付いた一誠に、回復魔法を掛ける。
一誠の全身を少しの間淡い光が包み、全身の怪我が治癒される。
『はい、治ったよ。次からは無茶しない事だね』
「悪いな、ジズ。…………所で、その右手に持っている物は何だ?」
『見て判らないかい? メスだよ』
「オマエまだ俺を解剖しようとしてんのか!!?」
一誠はジズに捕まり、ロタンの方は…………
『来い。破壊された箇所の修復に、今日やるはずだった仕事。やることは沢山あるんだ』
『ちょっと待て、破壊したのは俺だけじゃないんだ。一誠にも手伝わせるべきだろ?』
『八割方貴様が原因だろう。辺り構わず大技を連発するからだ』
『ちょ、ま―――』
『聞く耳持たん、来い』
ロタンは首根っこをビヒモスに掴まれ、そのままズルズルと引きづられて行く。
「ダアァァァッ! クソ、まだ体が痺れて動けねぇ!!」
『ふふふ、観念するんだね』
『傷自体は治っているが、上手く体を動かせないんだけど?』
『そうか、頑張れ。ちなみに、今日中に仕事が終わらなければ、当分禁酒だ』
『嘘だろ!!?』
この場にいる四人は全員が全員、出鱈目なまでの力を誇る。
単独で国を滅ぼせて当たり前、世界を滅ぼせて当然と言う化け物たちだ。
裏切られ、殺意と恨みと恐怖を向けられ、刃を向けられてきた。
幸せと言うには程遠い人生を送ってきた。
しかし、そんな怪物たちだからこそ、彼らにしか分からない幸せがある。
少なくとも、今現在は少なからず幸せだろう。
「『ふざけんなァ!!』」
幸せ…………かもしれない。
正直、前半の部分はいらなかったと反省している。
書き途中の話を、日を跨いで書くとちぐはぐになってしまう。
……それはともかく。
今回、地蔵菩薩さまの三大怪物とコラボをさせていただきました。
三大怪物は『自分も二次創作を書きたい!』と思うようになった作品です。
そんな作品とコラボをさせていただいて、感謝の気持ちしかありません。
地蔵菩薩さま。この様な駄文しか書けない作者とコラボしてくださって、誠にありがとうございます。
……ちなみに、ジズ編とビヒモス編も予定しております。(ただいま執筆中)