エンドレスさんがラスボスなら一誠は隠しダンジョンのウラボス(ナニ
※今回は今までで一番のシリアス回です。それが苦手な方はブラウザバックしてください。
とある町のとある住宅。
「一誠さま……」
「ルフェイ……」
そこにはお互いに抱き合う一組の男女がいた。―――一誠とルフェイだ。
一誠がルフェイの元へと帰ってきて二週間以上の時間が過ぎた。一誠の怪我も完治しており、オーフィスやグレートレッドと戦っても全然問題ないほどだ。
たった半月であるが、一誠は行方不明となっていた。生きているのを信じていたルフェイであるが、寂しい思いをした。一誠も一誠で、ルフェイの温もりに飢えている状態なのでお互いに抱き合っているというわけだ。
ここ最近、お互いに暇さえあれば抱き合っている。
しかし、そんな二人の至福の時間を邪魔する存在がいた。
「我も」
そう言って、オーフィスはぶら下がる様に一誠の首に両手を回して背中に抱きつく。
「……おい、オーフィス」
一誠は口元をヒクつかせながら、オーフィスに話しかける。ルフェイは一誠と抱き合ったまま、困った様な表情でオーフィスを見ている。
「何?」
オーフィスは一誠にぶら下がったまま聞き返す。表情は無表情だが、なぜ話しかけられたのか判らないといった雰囲気を出している。
「なんでいきなり俺にぶら下がってんだ?」
「一誠、ルフェイ、抱き合っている。我も」
どうやらオーフィスは、一誠とルフェイが抱き合っているから自分も一誠に抱きついたらしい。子供が大人のマネごとをする様な理由で一誠に抱きついたオーフィスを、ルフェイは苦笑して見ている。一誠も呆れた様に溜息を吐いている。
「はぁ、ったく……」
「ふふっ。オーフィスさまには敵いませんね」
しかし、悪い気はしなかった。どこにでもある平穏、誰にでもある平和。一誠とルフェイにとっては、そんな当たり前な時間を過ごせるだけでこの上なく幸せなのだ。
一誠とルフェイはまた抱きしめ合う。一秒一秒、この幸せをかみしめるように……。
―――世界の変化は劇的だった。エンドレスとの戦いで死亡したと思われた兵藤一誠が生きて戻ってきたのだ。一誠が死亡したと思い、この世界の覇権を狙って動こうとしていた勢力は一気に鎮火した。
さらに『禍の団』も真っ二つに割れていた。一誠がサマエルに力を奪われたオーフィスを保護し、その事実を全勢力に公表したのだ。確かにオーフィスは『禍の団』の首領だった。しかし、力を奪われる前のオーフィスすら寄せつけない一誠が保護してしまったのだ。どこの勢力も歯痒く思いながらも何も言いだせなかった。触らぬ神に祟りなしと言うし、何もしない方が賢明なのだ。……本物の神仏がそうであるというのが何とも言えない皮肉であるが。
『禍の団』には奪われたウロボロスがいるが、それでも元の状態に比べたら遥かに弱い。『無限の龍神』が『有限』の存在になってしまったのだ。『禍の団』から離反する者が数少ないのは仕方のないことだろう。
一応三大勢力や北欧、ギリシャはオーフィスの力を最低限に落とすまでの封印をすることを一誠に求めた。しかし、一誠はその願いを一蹴した。理由はルフェイを守るための戦力が少なくなるからだ。
そのおかげで、現兵藤家は一誠(世界最強)とオーフィス(全盛期の二天龍より二回りの強さ)とフェンリル(神殺しの牙を持ち、全盛期の二天龍に匹敵する力を持つ)という数こそ少ないモノの、世界中の勢力を敵に回しても余裕で返り討ちにできるだけの戦力が揃っている。さらにルフェイ自身も最上級悪魔とも一対一で戦えるほどの猛者だ。一誠の渡した指輪の力やゴグマゴグもあり、下手したら魔王クラスや神仏ともやりあえる可能性がある。……魔王クラスの実力者がもっとも弱いというのが一番恐ろしいところである。と言うよりも一誠一人で過剰戦力だ。その所為もあり、兵藤家は今まで以上に危険区域扱いになっている。
しかし、当の本人達は平和な日常を送っていた。
「少し速いですけど、お昼ごはん作っちゃいますね」
ルフェイは一誠から離れると、そう言ってエプロンを付ける。冷蔵庫の中身を見て、何を作ろうかと笑顔で考えるルフェイ。そんなルフェイに名残惜しそうな視線を向ける一誠とぶら下がったままのオーフィス。
「いつも悪いな」
「ご飯、ご飯」
一誠はルフェイにそう言い、オーフィスはいつの間にか席に着いてフォークを握っている。そんなオーフィスを一誠は咎める。
「おい、オーフィス。ちゃんと手を拭け」
オーフィスはコクリと頷くと、洗面台まで行って手を洗う。一誠は棚から食器を出しながら口を開く。
「あいつとは昔からのつき合いだけど、ああも子供みたいだとは思いもしなかった」
「オーフィスさまは純粋なんですよ」
一誠が溜め息交じりでそう言うと、ルフェイは料理をしながら笑顔でそう答える。
三十分もすれば料理が完成し、全員が席に着く。
「いただきます」
「いただきます」
「はい、召しあがれ♪」
こうして三人は少し早めの昼食を食べ始める。……ちなみに外にいるフェンリルはルフェイの手作り料理を、涙を流しながら食していた。普段は一誠の意向でドッグフードか生肉(ミノタウロスやドラゴン)しか与えられていない。哀れである。
あれから一時間後。昼食も食べ終わり、一誠達はお茶を飲みながらまったりとしていた。
「……平和だ。最近になって平和のありがたさを実感する」
まるで一気に老けこんだ様な瞳をしながら、一誠は茶を啜る。そんな一誠にルフェイは苦笑する。しかし、同意見だった。
「……ん」
ルフェイは静かに一誠によりかかる様に抱きつく。後ろから一誠の首に手を回し、一誠の肩の辺りに嬉しそうに顔を埋める。
一誠もそんなルフェイを、どこか嬉しそうに受け入れる。しばらく無言でそうしている一誠とルフェイ。そんな一誠とルフェイの様子をじーっと見つめるオーフィス。
ピンポーン!
どれだけそうしていただろうか? 一誠とルフェイの幸せな時間は突然の来訪者によって終わりをむかえる。
「誰でしょうか?」
「……この気配はリアス達だな。それにソーナまでなんの用だ?」
ルフェイは一誠から離れ、疑問に思う。グレモリーはともかく、なぜシトリーまで来たのか。
一誠は面倒くさく思いながらも立ち上がる。そして、そのまま玄関まで行く。
「……なんのようだ? リアスはともかくソーナまで」
一誠がドアを開けると、そこには何とも言えない表情をしているリアスとソーナがいた。
出てきた一誠を見て、リアスはソーナに視線を向けて促す。リアスから促されたソーナは少しばかり逡巡したあと、意を決したように口を開く。
「突然申し訳ありません。実は、お願いしたい事がありまして……」
リアスではなくソーナが頼みごとというのに訝しげになる一誠。リアスならまだ分かる。一誠がルフェイの元へと帰ってきたあと、その事を知ったリアス達が祝いに来てくれたし、その後リアス達の修行をつけたりもしている。一誠やルフェイと違って学校や上級悪魔としての仕事があるリアスは常に時間があるというわけではない。なので、時間が空くと直接赴いて修行を頼んでくることがある。リアスや木場達が訪ねてきたというのなら分かる。しかしソーナが直接訪ねてきて、尚且つ頼みごとするという事に疑問を思ったのだ。
「お願い?」
一誠がそう訊き返すと、ソーナはどこか疲れた様な雰囲気を出しながら口を開く。
「はい、実は―――」
ソーナはそこから先を言えなかった。突如魔法陣が目の前に現れたからだ。
その魔法陣が弾けるように光ると、一人の女性が現れた。その身に膨大な魔力を宿した―――アニメなんかの魔法少女がしている様な衣装を着た女性だ。
「やっほー、イッセーくんお久しぶり☆ 今日はお願を聞いてくれてありがとね☆」
「セラ……」
突如現れた女性―――セラフォルー・レヴィアタンはテンション高めでそう言う。
いきなり現れたセラフォルーにリアスとソーナは頭を痛め、一誠はどこか呆れている。
「……俺はまだ、そのお願いごとってのを聞いていないんだが? まぁ、いい。とりあえず上がれ、中で話しは聞くから」
「ありがとう☆」
一誠に促され、セラフォルーは笑顔でお礼を言いながら兵藤家へとあがる。そんなセラフォルーに溜息を何度も吐きながらも同じように家へとあがるリアスとソーナ。
「んで? お願いってのはなんだ? ……そしてお前は邪魔だ、オーフィス」
「我、ここ、お気に入り」
全員にお茶を入れたルフェイは一誠の隣に腰を降ろす。ちなみにオーフィスは胡坐で座っている一誠の膝の上に座っている。
「うん、イッセーくんに映画に出てもらいたいの☆」
「………………は?」
セラフォルーのその願いを聞いて、一誠は間の抜けた表情をする。隣にいるルフェイも驚いている。オーフィスは無表情のままだ。
そんな一誠達のようすを見て、申し訳なさそうな表情をするソーナ。そんなソーナに同情的な視線を送るリアス。
「私が主演をしている特撮番組『マジカル☆レヴィアたん』の映画を撮影しているの、それの敵役としてイッセーくんに出て欲しいんだ☆」
テンション高めにそう言うセラフォルーに、一誠は呆れた様なため息を吐きながら言う。
「なんだ、その奇想天外な番組は……」
「内容は、私こと悪魔の味方レヴィアたんが天使や堕天使、ドラゴン、教会関係者を相手に大暴れするの☆ 悪魔の敵は纏めて滅殺なんだから☆」
かわいくポージングしながらそう言うセラフォルー。しかし、言っていることはかなり不吉極まりない。
「……お前らって俺の目の前で和平を結んでいたよな? それに悪魔の敵って言うんなら、アザゼル辺りにすればいいじゃねぇか。あいつならサーゼクスなんかと同じでノリノリで参加すると思うぞ?」
「監督さんのモットーが『作品に反政府的なメッセージを織り交ぜる』なんだって☆ それにアザゼルちゃんにはもう出てもらったし☆」
「オマエ現魔王のヒトリなのに、その監督の行動を容認していいのか? 仮にも外交担当だろ……。アザゼルは既に出ていやがったのか、あの暇人神器オタクめ」
セラフォルーの話しを聞いて嘆息する一誠。面倒くさいし断ろうかと考えていた時だった。隣に座っているルフェイがもじもじしながらセラフォルーへと話しかける。
「あ、あの。いつもマジカル☆レヴィアたんを楽しみにしています。差し支えなければサインをいただけないでしょうか?」
そう言って、どこからか色紙を出してセラフォルーへと差し出す。その色紙を受け取って嬉しそうにサインを書くセラフォルー。
「ありがとう☆ これからも応援よろしくね☆」
「はい! やった、サインもらえました!」
サインの書かれた色紙を受け取ると、嬉しそうに笑うルフェイ。そんなルフェイに複雑な表情をするリアスとソーナ、そして一誠。
そんな一誠をじーっと見つめるセラフォルー。
しばらくして、一誠は諦めたように息を吐いた。
「ルフェイは撮影現場に興味があるか?」
「はい!」
その言葉を聞いて決心したようで、一誠はセラフォルーの方を見ながら言う。
「その映画に出るよ」
「やったー! ありがとう☆ それじゃ、今すぐ行こうか☆ 時間も押してるしね☆」
セラフォルーがテンション高めでそう言うと、その場全員の足元に巨大な魔法陣が現れる。そして弾ける様な発光のあと、その場にいた全員が転移をした。
一誠達が転移した場所はとある無人島の海辺だった。
船が停泊できるような所は無く、海は岩礁だらけで砂浜も見当たらない。島の景色は険しそうな森と山で殆どを占められている。
絶海の孤島といった感じだ。
さらに「ギーギー!」と明らかに普通の生物ものでない鳴き声が聞こえてくる。
転移してきた一誠達に近寄る人影があった。ゼノヴィアにギャスパー、それに小猫とアーシア。さらに匙までいた。
匙は一誠に話しかける。
「お久しぶりです、兵藤さん」
「よぉ。なんでお前らもいるんだ……って聞くまでもねぇか」
一誠がとある方向に視線を向ける。そこには如何にも監督といったスタイルをした中年男性と話すセラフォルーの姿があった。
「……それでは、来ていただいて早々申し訳ありませんが、時間も押しているので撮影に入ります」
そう言って、スタッフの一人が一誠に台本を渡す。その台本を読み始める一誠を尻目に、セラフォルーはある提案を監督にする。その提案を聞いた監督は面白そうに笑うと、数人のスタッフに指示を出す。そしてセラフォルーは一誠に聞こえないようにルフェイにある事を言う。それを聞いたルフェイは驚いた表情をする。
『レヴィアたんの最終決戦。復活、伝説の龍帝!』
「龍帝さま、龍帝さま。どうか我が闇の願いを叶えたまえ~。その悪しき力で憎きレヴィアたんを倒したまえ~」
最終決戦用のセットで一際目立つドラゴンの像の前で邪悪な巫女役のアーシアが棒読みながら一生懸命お祈りをしていた。このあと、幾つかの台詞をアーシアが言ったあと、邪悪な龍帝役の一誠がでてくる。
一誠は今回のために作られた『赤龍帝の鎧』を模した物を装着していた。悪魔の技術で作られたそれは見ためよりも軽く、そして頑丈だ。しかし、全身鎧のそれは相応の重さがある。
「ここが龍帝を封じた場所ね! はっ! すでに祈りが始まっているわ! 大変!」
レヴィアたんが登場し、祈りをしているアーシアと対峙する。
「お祈りを止めなさい!」
そう言ってステッキをかまえるレヴィアたん。
アーシアは立ち上がり、天を仰ぐ。そして―――。
「ああ、龍帝さま。いまこそ復活の時でございます」
最後にそう言った瞬間、カッ! と一瞬の閃光が辺りを包み、そして鈍い音を立てながらドラゴンの石像が崩れていく。
スモーク演出の中、像からゆっくりと飛び出してくる一誠。
「……小娘、貴様が我を蘇えらせたのか?」
少しばかり棒読みではあるものの、一誠は台本通りにセリフを言う。
「はい、そうです! 龍帝さま、今こそ憎きレヴィアたんを―――」
アーシアがそこまで言いかけて、凍った。一瞬の発光のあと、氷は粉々に砕ける。―――その後には何も残っていなかった。
一誠―――龍帝は自分の体の調子を確認する様な仕草をしながらセリフを言う。
「……ふむ、久々の現世だ。久方ぶりに気分が良い。このままあのコウモリ共の巣窟―――冥界でも破壊するか?」
そんな龍帝を見て、レヴィアたんは憤慨した様な表情をしながらセリフを言う。
「そんなっ! あの子は貴方を復活させたのに! どうしてッ!?」
龍帝は理解しがたい愚か者を見下すような雰囲気を出しながら、レヴィアたんにセリフを言う。
「貴様程度の小娘に勝てぬ様なモノは我が配下には要らん。我自らがゴミ掃除をしてやったのだ、感謝をしてもらいたいぐらいだ」
レヴィアたんは怒りを宿した表情をしながらステッキをかまえると、セリフを言う。それに伴う様に、場の雰囲気は緊張したものとなっていく。
「許さないわ、龍帝! 冥界には行かせない! 貴方はここで私が滅殺してあげるんだから!」
「喚くな、小娘。まずは冥界の前にキサマを血祭りにしてやろう」
レヴィアたんは極大な魔力をステッキに集める。その魔力の波動たるや空気を震わせ、ピリピリと肌を傷める。しかし、龍帝は動こうとする気配すら見せない。そして―――。
「龍帝! あなたを倒すわ!」
そのセリフと共に、レヴィアたんはステッキに集められた魔力を一誠目掛けて放つ。しかし、
「邪魔だ」
それは龍帝には効かなかった。軽く片腕を振ることで魔力の塊は明後日の方向へと弾かれる。
龍帝はつまらなさそうにレヴィアたんを見下しながら、セリフを言う。
「この程度か? 小娘、キサマの目の前に居るのは龍の帝王。キサマ如きが逆らうなど考えること自体が愚かなことなのだよ、悪魔の小娘」
そう言ってから一誠は無雑作に片手を前に出す。そしてその手の先が光ったと思った次の瞬間―――。
ドッガアアアアァァァァァァァァァァァンンッ!
無人島の遥か彼方で、ものすごい規模の爆発が起こる。そしてその爆風は島全体を揺らす。
出鱈目な光景を作りだした龍帝は、攻撃を放った方の腕に視線を向けると、呟くようにセリフを言う。
「―――ふむ、長らく封印されていた影響か。この程度の力しか出ないとはな……」
その呟きを聞いたレヴィアたんは焦った様な表情をしながらセリフを言う。
「あれで全力ではないと言うの!?」
その言葉を聞いて、心外そうにする龍帝。そしてレヴィアたんに絶望のセリフを言う。
「これは随分と舐められたものだな。今の我の力など、全盛期の十分の一ほどもない。……まぁ、それも時間の問題だがな」
あれほどの力でも全盛期の十分の一以下。しかも、時間が経てば力が完全に戻ってしまう。そうなってはどう足掻いても龍帝を倒せない。
ならば、力の戻らないうちに倒さなければと思うレヴィアたん。
しかし体は動かない。いまのレヴィアたんの体を支配しているのは恐怖だ。龍帝の誇る圧倒的なまでの力を目の当たりにして、生物としての本能が恐怖に震えているのだ。
しかし、恐怖に負ける様なレヴィアたんではない。何故なら彼女の後ろには冥界の未来である子供達がいるのだから。正義の味方『魔王少女マジカル☆レヴィアたん』は、この程度では決して屈しない。
体の震えが止まり、力強い瞳でこちらを睨みつけてくるレヴィアたん。そんなレヴィアたんを見て、はじめて興味が出た様な雰囲気を出す龍帝。
「ほう、この我を前に恐怖を克服したか。良い、久方ぶりにおもしろい者に出会ったものだ。―――小娘、名を名乗れ」
レヴィアたんはしっかりと自分の足で立ち、ステッキをかまえながら、油断なく名乗る。
「私はレヴィアたん。正義の味方、魔法少女マジカル☆レヴィアたんよ! 龍帝! 冥界を貴方の思い通りになんかさせないんだから!」
ステッキに先ほど以上の魔力を集めながらレヴィアたんはそう叫ぶ。
レヴィアたんの叫びを聞いて、そこで初めて龍帝はかまえをとる。
「レヴィアたんか……、なんとも珍妙な名前だ。だが、その名、しかと覚えた。この我に名を覚えられたことを光栄に思うが良い、レヴィアたん。死後、あの世で自慢するがいいわ!」
「私は死なない! 滅びるのは貴方の方よ! 龍帝!!」
こうして正義の魔法少女『マジカル☆レヴィアたん』とこの世に復活した伝説の龍帝との決戦の火蓋は切って落とされた。
「あ~、疲れた。肉体的よりも精神的に疲れた……」
映画の撮影も無事に終わり、自宅に帰った一誠達。
演技をいままでしたことのなかった一誠は、精神的にかなり疲れていた。帰ってすぐに風呂に入り、そのままベッドに横になっていた。
「まぁ、偶には良いか……」
一誠はそう呟いてから目を瞑り、そのまま寝ようとする。
コンコン。
寝ようとしたが、突然一誠の部屋のドアがノックされ目を覚ます。
「い、一誠さま……。入ってもよろしいですか……?」
扉の向こうから遠慮がちなルフェイの声が聞こえてくる。
「大丈夫だ、入ってこい」
一誠はそんなルフェイの様子に訝しげに思いながらも、入ってくるように言う。
「し、失礼します……」
そう遠慮がちに部屋に入ってきたルフェイを見て、一誠は―――唖然とした。
ルフェイは顔を赤く染め、恥かしそうにモジモジしながら一誠に訊く。
「あ、あの……似合っていますか……? レヴィアタンさまが私にくださったんですけど……」
そう、ルフェイは魔法少女の格好をしていたのだ。服とスカートの間に見えるおへそ、開いた胸元から見える普段は着痩せにより小さく見えていたボリューミーな胸。そしてかなり短いスカートから見えそうで見えない下着、それはまさしく絶対領域!! ほんの少しの些細な動きで下着は見えてしまうだろう。……しかし! 恥かしそうにスカートの裾を掴むルフェイがそのまま動かなければそこはまさしく神聖な絶対領域となる!
とある異世界の太陽を司る神は言った、『見えなければ芸術』だと。見えてしまえばそこまで。だしかし、だがしかしだ! 見えなければ色々ともう……想像によってあらゆる下着……可能性を見ることが可能なのだ!
一誠は混乱しながらもルフェイに話しかける。
「あ、ああ。似合ってる……。でも、こんな夜中にそれを着てどうしたんだ……?」
一誠がそう訊くと、ルフェイは少しばかり迷った後に何かを決意した様な表情をする。
ルフェイは一誠の質問に答えず、静かに一誠の方へと近づく。そして―――。
「……ん……」
「…………! …………」
ルフェイは覆いかぶさる様に一誠にまたがると、そのままキスをする。
一誠は驚き、思考が追いつかないながらもルフェイを受け入れる。
しばらくすると、ルフェイは口を離す。
「一誠さま……。私……もっと一誠さまを感じたいです……」
ルフェイの潤んだ瞳、口から出される熱い吐息、緊張しているせいか、流れる汗。さらに覆いかぶされる形で接触している部分から伝わる体温、そしてルフェイから流れてくる甘い匂い。
これら全てが思春期である一誠の頭を一瞬で沸騰させる。しかし、一誠は最後の理性を総動員させながら口を開く。
「急にどうしたんだ……?」
一誠はルフェイの目を見ながらそう訊く。ルフェイはどこか、不安そうな表情をしながら答える。
「私、怖いんです。また戦いがあった後一誠さまがどこか不明になってしまうのが。……分かってはいるんです。あのエンドレスっていうのが例外的なバケモノだって……。あのバケモノを倒したいま、一誠さまはどんな存在と戦っても必ず勝てるって。勝ってちゃんと帰って来てくれるって……。……それでも、……それでも不安なんです。また一誠さまが目の前から消えてしまうんじゃないかって」
ルフェイは涙をポロポロと零しながら一誠にそう言う。
あの時、オーフィスによって映し出されていた一誠が消えたあと、ルフェイはどうしようもない恐怖を覚えた。一誠が行方不明となっていた半月間、ずっと恐怖していたのだ。もしかしたら一誠は死んでいるのではないか、もしかしたら一誠とは二度と会えないんじゃないか。そんな事を考えないようにしていが、それでも悪いことを考えてしまうのが人間だ。一誠はちゃんと帰ってきたが、それでもまた消えてしまうんじゃないかという不安が消えることはない。一度覚えてしまった恐怖、トラウマは中々に克服できないのだ。
一誠はルフェイの体を掴むと、そのまま場所を入れ替わる様に優しくルフェイを押し倒す。
「……ルフェイ。正直、これ以上我慢ができない。……本当に良いんだな?」
むろん一誠だって、思春期の男子だ。色々と溜まるものがある。ルフェイの事を真剣に愛しているし、そういうことだってしたかった。
しかし、できなかった。理由は単純だ、それは一誠が恐怖を抱いたからだ。いままで誰かに愛され、愛するという事を経験したことのなかった一誠はルフェイにそういう事を求めて拒絶、嫌われるのではないかと思い最後の一線が踏み出せなかった。正直いまだって恐怖がある。全てが終わった後にルフェイに嫌われるんじゃないかという恐怖が。
しかし、そんな一誠の不安を掻き消す様にルフェイは頷く。
「はい。……だって、私は一誠さまの事を愛していますから。―――大好きです、一誠さま」
そう儚い笑顔で応えるルフェイに、一誠の理性は限界を迎えた。無理矢理舌をねじ込む様なキスをする。
二人の夜はまだまだこれからだ……。
シリアスだと言ったな? あれは嘘だ。(今回一番のシリアスポイント:レヴィアたんVS龍帝)
そんなわけで後日談でした。一番要望の多かった結婚式ですが……PIXIv辺りにその様子の絵を誰かが投稿してくれたら書きます(オイ
一応これでハイスクールD×Dの規格外は完結です。しかし、とある方とのコラボや番外編、そしてIFルートなどまだまだ投稿する予定はたくさんあります。
少しばかり休んだらまたがんばります。それでは。ノシ