第四十一話
「一誠さま、起きてください。朝ごはんができましたよ」
ルフェイが一誠を起こす。
「………………スー」
しかし、まったく起きる気配がない。
「起きてください。ごはん冷めちゃいますよ?」
そう言って一誠の体をゆするルフェイ。さすがに起きたのか、目をあける一誠。
「……んぁ…………?」
しかし、ルフェイを数秒見つめると、そのまま眠り始める一誠。
「あの、本当に起きてください」
更に強く一誠を揺するルフェイ。しかし、今度は起きる気配がない。
「もぉ……。起きてくださいよ!」
そう言って、ルフェイは一誠が被っている毛布を奪い取る。
「………………ん?」
眠気眼でルフェイを見ると、そのまま毛布を奪い取ろうとする。
「え?……きゃっ!?」
予想以上に強い力に、ルフェイは毛布を持ったまま、ベッドに倒れこむ。
「え? え?」
そのまま一誠に抱きしめられる。しかも、枕に顔を沈める様な感じなので、一誠の顔がルフェイの胸に沈む。
「……あ、あぅ…………」
顔を真っ赤にしながら、呆然とするルフェイ。
「うぅぅ。起きてくださいよぅ……」
少しばかり涙目になるルフェイ。しかし、一誠は起きない。それどころか、夢見が悪いのか、顔に皺を寄せて、眉を八の字にしている。
「…………」
それを見たルフェイは、そのまま一誠の頭を抱きかかえると、まるで母親が子供をあやす様に撫で始める。
―――夢を見ているのだろう。何故なら、目の前の光景は十年も前の物なのだから―――
「神様ってこの程度なの?」
『そう言ってやるな、相棒。お前が規格外なだけだ』
不機嫌そうに顔を顰めている少年がそう呟き、少年の左手から響く声がそう言う。
少年の年齢は二桁にも届いていないだろう。普通の子供となんら変わらない服装をしている。それこそ、日本中探せば、何処にでもいそうな子供だ。だが、その周りが以上だ。崩れ落ちる巨大な城に、城門。そしてそこ等に倒れ伏している人々。……いや、戦乙女に神々。辺りには血と砂塵が舞っている。
「まさか、ロキやフェンリルまで破られるとはのぅ。今代の赤龍帝は末恐ろしいの」
魔法使いの様なローブを羽織り、地に着きそうな程長い白ひげを摩りながらそう言う老人。その手には槍が持たれている。
「笑い事じゃなかろう! まったく、いくらドライグを宿しているといえ、人間の子供にこうもやられるとは……」
隣の老人と同じような格好をし、持ち手が短い巨大な鎚を持ち、構えている。全体的にガッシリとした筋骨隆々の男性。
「ヴァルハラは半壊。……いや、ほぼ全壊と言っていいし、ユグドラシルもほぼ全焼。エインヘリャルにヴァルキリーも全滅。持ち直すのに何年かかるか……」
苦虫を何匹も噛み潰したような表情をする青年。……いや、少年。老人や男性と同じような格好をし、髪はまるで燃えているかのように赤い。その手には一本の剣が握られている。
『相棒。真中の老人はオーディン。大男はトール。小さいのはフレイ。世界でも、上から数えた方が早いほどの神格を持つ者たちだ』
「それって、神様の中でも強い方って事?」
『ああ、そういうことだ』
「そう。それは―――」
次の瞬間、少年―――兵藤一誠はフレイの目の前まで移動していた。
「楽しめそうだ」
いつの間にか、手に持っていた槍を振るう。それはフレイの左腕を切り飛ばし、そのままフレイを吹き飛ばす。
「―――ヌン!!」
トールがミョルニルを一誠目掛け、横向きに振るう。それを一誠は槍を斜め下から掬いあげるように振るうことで、ミョルニルごとトールの体を切り裂く。
「……弱いじゃん」
ガッカリしたようにそう呟く。一誠は落胆の瞳でオーディンを見る。
「おじいさんは、さっきの二人より強いの?」
『仮にも、ここ北欧を束ねる主神だからな』
「まったく、出鱈目じゃて」
オーディンが呆れながら、トンっと軽く槍の柄で地面を叩く。すると、淡い光がフレイとトールの体を包み、切断された個所を治す。
「へぇ。この程度のことはできるんだ」
「やれやれ、年寄りは大切にせんといかんぞ?」
そう呟いた瞬間、オーディンが吹き飛んだ。グングニールは真中から折れており、体中から血を流している。
「よわっちぃ神様を、どうして大切にしなきゃいけないの?」
心底くだらない。そういった感情を隠さず、一誠は倒れたオーディンを一瞥する。そして、その場から消える。
巨大な神殿。その神殿内の長大な廊下を歩く一人の女性がいた。百人見れば、百人が振り返るであろう美人。まるで造り物のように美しい女性。この女性こそ、ギリシア神話の全能神、ゼウスの娘。知恵と戦いの女神であるアテナだ。
「あら?」
いつも通る廊下内で、一人の少年を見つけた。ここら辺では珍しいが、普通の服装をした少年だ。
「どうして、こんなところに子供がいるのかしら?」
アテナは疑問に思いながらも、少年に話しかける。
「どうして、こんなところにいるの?」
「ゼウスって神様に会いにきたんだけど、広いから迷っちゃった」
その言葉を聞いて、アテナは怪訝な表情をする。こんな子供が一体父に、どんな用があるというのか。
「おと……ゼウスさまに一体何の用かしら?」
「戦いに来たんだけど」
その言葉を聞いて、唖然とするアテナ。それはそうだろう。なぜなら、齢十にも届いていない人間の子供が、ギリシア神話最強の神に戦いを挑みにきたというのだから。
「……そっか。それじゃ、その前にお姉さんと戦わない?」
アテナは一誠にそう、提案する。父であるゼウスを手間取らせるわけにはいかないし、相手は子供だ。少しばかり相手になれば、諦めて帰るだろう。
「お姉さん強いの?」
「うん、強いわよ。こう見えても戦いの女神だからね」
「そう……。それじゃいくよ」
かかってきなさい。アテナはそう言おうとしたが、それは叶わなかった。ものすごい衝撃を受けて、神殿内部を破壊しながら吹き飛ばされる。そして、そのまま気絶する。
「よわ……」
『やはり、相棒の相手にはならなかったか』
一誠はガッカリしたように、肩を落とす。
「な、何事だ!?」
崩壊した神殿の廊下に、二人の青年が出てくる。
「あれは誰?」
一誠はドライグに訊く。
『あれはアポロンとアレス。アレスの方は戦の神でもある』
「さっきのより強い?」
『ああ、強い。と言っても、ゼウスには遠く及ばんがな』
「そう。まぁ、いいや」
一誠はアレス達の方を向く。どうやら、向こうも一誠に気づいたようで、近づいてくる。
「なぜ、こんなところに子供が!? いや、それよりも危険だから、どこか安全な所へ―――」
アポロンが吹き飛ばされる。アテナと同じく、神殿内部を破壊しながら吹き飛ばされ、気絶する。
「っな!?」
アレスは慌てて槍を構える。だが、それよりも速く一誠の槍が振るわれる。
「…………はぁ」
一誠は歩きながら、ため息を吐く。
『そう、気を落とすな。相棒』
「だってさ……」
『はぁ、仕方がない。次辺りに聖書の神か、魔王辺りに行こうかと思ったが、あいつ等の所に行くか』
その言葉を聞いて、一誠は眉を寄せる。
「あいつ等?」
『この世界でも最強の存在たちだ。少なくとも、全盛期の俺程度では足元にも及ばん』
「そんな存在がいるの?」
一誠は目をキラキラ光らせながら訊く。世界最強の存在。それだったら、自分を楽しませてくれるかもしれない。
『ああ、無限の体現者、「
「何処にいるの?」
『オーフィスは判らんが、グレートレッドは次元の狭間を泳いでいる。相棒が少しばかり力を解放すれば、向こうから寄ってくるさ』
「そっか。……それじゃ、今すぐ往こうか」
一誠がそう呟いた瞬間、その姿が消える。
その後、俺は無限と夢幻を降し、世界最強の座に就いた。あらゆる勢力が俺を利用しようとした。だが、俺はそれを意に還さなかった。そんものに興味はない。世界の支配、覇権? そんな物がなんだと言うのだ。そんなこと、やろうと思えばいつでもできる。だからこそ、俺は興味を失った。
『人間風情が!』
ああ、五月蝿い。
『高々人間のガキが! 黙って我々の言うことを聞いていればいいのだ!』
黙れ、虫けらが。
『すまない! 言いすぎた。頼むこの通りだ!』
喚くな、消えろ。
『謝る! 謝るから、命だけはッ!!』
五月蝿い、死ね。
『貴様には、良心が無いのか!?』
化け物が、偉そうなことを言うな。
『ヒィィィィッ!?? 来るな、来るな化け物!!』
化け物はお前らの方だろ。
『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』『化け物』
黙れ、ダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレダマレ!!! バケモノハキサマラノホウダロウガ!!
『死ね』『消えろ』『殺す』『失せろ』『どこかに行け!』『なんで、お前みたいなのが生きているんだよ!!』『死ねぇェェェェ!! この
五月蝿い、ウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイウルサイ!!! オマエラノホウガキエロムシケラドモ!!
『お前みたいなのが存在するのがいけないんだ!!』
『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』『死ね』
―――アア、ウルサイ。ドウスレバシズカニナル? ……カンタンダ、スベテヲコワセバイイ。
我、目覚めるは―――
無限の破壊と―――
汝を紅蓮の―――
『Juggernaut ――― Drive!!!!!!!!!』
赤い、紅い。アカイアカイアカイ。全てが燃え散り、消えうせていく。―――ああ、とても静かだ……。
「…………ん?」
一誠は目を覚ます。何かが、一誠の頭を覆いかぶさる様になっている。
「……スー……」
ルフェイが、一誠を抱きかかえたまま寝ていた。
「………………」
一誠はそのまま、もう一度瞼を閉じる。なんだか、今度はいい夢が見れそうな気がしたからだ。
(―――ああ、温かい……)
そのまま一誠は、まるで母親に甘える子供のようにルフェイを抱きしめる。そのままもう一度夢の世界へ逝く彼の表情は、とても穏やかなものだった……。
久々の投稿なのに短くてすみません。
ここまで投稿が遅くなったのは、作者のモチベーションが駄々下がりだったのと、モンハン4にはまっていたからです。(プレイ時間が100時間を超えているのは内緒の話)
この前、友達との会話
「なのはやネギまより、オーフィスルートを頼む」
「『禍の団』ルートを書けと?」
「そういうことだ」
「おk」
ネギまとなのはは投稿すらしなくなるかもな―