ハイスクールD×Dの規格外   作:れいとん

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今回は独自解釈がかなり含まれます。そんなの嫌だ、こんなのありえないだろう。って思われた方はブラウザバックをしてください。

それでは、どうぞ。

追記
今回は後書きに没シーンがあります。よければそちらもどうぞ。




第三十九話

「なんでてめぇがここに居るんだ? オーフィス」

突然の乱入者。一誠が放った一撃はそいつに防がれた。だが、それもしかたないだろう。なにせ防いだ相手は『無限』を体現する龍神なのだから。

「アルビオンを通してヴァーリから連絡がきた。黒歌達を助けてほしいと。だから、アルビオンの気配を頼りに、我、来た」

ヴァーリはボロボロの死にかけ状態だが、生きているのだ。気配だけを頼りに周囲を把握し、美侯とアーサーが死にかけなのが判った。このままでは黒歌も危ないと判断したヴァーリは『白龍皇の光翼』を通してオーフィスに連絡を取ったのだ。自分は死んでも構わない。元々長生きなどするつもりはなかったし、これだけの強者相手に今までで最高の一撃が放てたのだ。それだけでも十分満足している。だが、黒歌達はダメだ。彼等は今回の事と一切関係ないのだ。少なくとも自分の目の前で仲間が死ぬのは認められない。

「退け、オーフィス」

「ダメ。ヴァーリ達、グレートレッドを倒すのに必要」

「そんなこと俺にはどうでもいい。邪魔するならてめぇも殺すぞ?」

「それでもダメ。我、ヴァーリ達を連れて帰る」

「そぉかよ。…………なら死ね」

一誠からの不可視の攻撃。先ほどアザゼルを沈め、デュランダルを破壊した攻撃だ。アザゼルが反応できない事から魔王クラスでも防ぐことは不可能だ。だが、オーフィスには効かない。

腕を無雑作に振る。それだけで不可視の攻撃は弾かれる。

「えい」

オーフィスが両腕を前に出す。掛け声はかわいいが、そこから暴力的なまでの攻撃が一誠を襲う。むろん、オーフィスの後ろにいるヴァーリ達を巻き込まない程度に手加減をした一撃だ。だが、最上級悪魔クラス程度なら瞬殺できる攻撃だ。しかし、一誠には効かない。まるで埃を掃うように攻撃を吹き飛ばす。

「えい」

オーフィスは後方にいるヴァーリ達に手をかざす。すると、ヴァーリ達(リアスやアザゼル達も纏めて)の姿が消えた。

「……ヴァーリを何処にやった?」

「この空間、もう限界。このままだと次元の狭間に放り出される。今のヴァーリ達じゃ『無』に当てられて消滅する。だから、避難させた」

「……っち。めんどくせぇことしやがってよぉ。死ぬ覚悟はできてんだろうな?」

「我、死なない」

「死ぬさ。―――俺が殺すからな」

その言葉を最後に無限の龍神と規格外の赤龍帝はたった二人だけの戦争を始める。

 

 

<木場視点>

「―――っ!?」

病室の様な部屋で僕は目を覚ます。

僕は一体? …………そうだ。たしか部長を守るために一誠さんの攻撃を受けて……。どうやら僕はベッドに寝かされていたらしい。治療も施されているようで体には傷一つ見当たらない。

辺りを見回してみれば皆も同じような状況だ。しかも、ヴァーリ達までいる。黒歌が心配そうにヴァーリ達を看護している。

「気がついたかい?」

「サーゼクスさま!」

部屋にサーゼクスさまと部長達が入室してくる。さらに続くようにアジュカさま、ファルビウムさま、セラフォルーさまが入室しくる。

「ど、どうしたんですか?」

僕は思わず訊いてしまう。このような所に四大魔王さまが全員集結なされているのだ。

「今、冥界……いや、世界中が危機に陥っていてね」

危機? しかも世界中で? どういうことだろう?

「事はリアス達から聞いているよ。一誠くんとオーフィスが衝突しているんだ」

「オーフィスと一誠さんが!? どういうことですか!?」

サーゼクスさまのその言葉に僕は驚いてしまった。なにせ『無限の龍神』オーフィスと一誠さんが戦っていると言うのだ。世界でも三指に入る存在同士の戦いだ。それがどれだけの災害か……。

「どうやらオーフィスはヴァーリを助けに来たらしい。そして、ヴァーリやリアス達を冥界に強制転移させ、その後一誠くんと衝突したと言ったところだろう」

「オーフィスが僕たちを助けてくれたということですか?」

「そういうことになるだろう。本人は纏めて一誠くんから逃がすためにそうしたのだろけどね。それでも、オーフィスがキミたちを助けたのは事実だ」

……まさか、オーフィスに助けられる日が来るなんて思いもしなかった。

「ここは我々魔王と魔王が認めた者しか入れない特殊な施設だ。ヴァーリ達はテロリストだからね。一般の目があるところで治療を施すことはできない」

確かにそうだ。ヴァーリは旧ルシファーの末裔でもある。もし、上層部の方々に知れたらヴァーリとその仲間は全員処刑される可能性が高いだろう。

「お前ら無事だったか」

何処かホッとしたような声。見ればアザゼル先生とバラキエルさんがそれぞれ女性と男性の手を借りて、部屋に入ってくる。

「先生! 無事だったんですか!?」

「無事ってわけじゃねえけどな。アーシアのおかげで五体満足ではある」

先生は確かに自分の足で立って歩いている。

「後ろにいるこいつらはベネムネとタミエルだ」

このお二人が! 先生やバラキエルさんと同じで聖書に記されている堕天使。

「……ところで、今の状況を把握しているか?」

「はい。一誠さんとオーフィスが戦っているんですよね?」

「そうだ。ただ、事はそれだけでは済まないかもしれないんだがな……」

「どういうことですか?」

「外を見てみろ」

僕は先生のその言葉を疑問に思いながらも、ベッドから立ち上がり、外を見る。

「……っな!?」

僕は目の前の光景に絶句した。

「……どうなっているの?」

どうやら、僕と同じく目を覚ました小猫ちゃんが目の前の光景に呆然としている。小猫ちゃんだけではなく、ゼノヴィアやイリナさん、ヴァーリやアーサーたちも目を覚ましている。

「……どういう状況だ? アザゼル」

ヴァーリが上半身だけを起こし、先生に訊く。

「お前は寝てろ。今回一番怪我が酷かったんだぞ!」

あの怪我であれだけ無茶したのだ。死んでいても不思議ではない。

「ヴァーリ君だね? 初めまして。私はサーゼクス・ルシファー。キミと同じルシファーを名乗らせてもらっている者だよ」

サーゼクスさまがヴァーリに話しかける。

「初めまして。俺はヴァーリ・ルシファー。『紅髪の魔王』と呼ばれる貴方とは一度会ってみたかった」

ヴァーリがサーゼクスさまにある程度敬意を払ってあいさつをする。

「キミたちにはすまないが、今、キミたちは監禁状態と思ってくれ。少なくともテロリストであるキミたちを建物の外へ出すわけにはいかない」

「治療してもらっただけ感謝しているさ」

「…………旧ルシファーの末裔であるキミをこの様な所に閉じ込めてすまなく思う」

そう言って本当にすまなさそうな表情をするサーゼクスさま。旧魔王の血族にたして思うところがあるのだろう。

「先ほども言ったが旧ルシファーの血族で、テロリストである俺と同じくテロリストである美侯たちを治療してもらったんだ。気にしないでくれ」

ヴァーリが苦笑しながらそう言う。

「先ほども質問したがこれはどういう状況なんだ?」

ヴァーリはそう言って窓の外を見る。窓の外は見渡す限りの空間が割れていて、次元の狭間がここからでも見える。ヴァーリの質問に答えたのはサーゼクスさまだ。

「どうやらオーフィスと一誠くんは訓練用フィールドから場所を移し、次元の狭間で戦っているようだ」

「ああ、十年前とまったく同じ現象だ」

アザゼル先生がそう呟く。―――っ!? これが!? 前に先生が列車の中で一誠さんと出会った時の話をしてくれた。たしか、巨大な振動が襲い、外は見渡す限り空間が割れていたと。

「次元の狭間の『無』にあてられず、さらにはオーフィスと互角にやりあう。……解っていたつもりだがとんでもないな」

ヴァーリが苦笑しながらそう呟く。普通の人間、というより殆どの存在は次元の狭間で生存することすらできない。それは、先ほどヴァーリが言ったように次元の狭間の『無』があらゆる存在を無に還してしまうためだ。

「しかも、丸一日以上戦っているからな」

先生の言葉に今まで眠っていた僕たちは驚愕する。なにせ、あのオーフィス相手に一日以上戦い続けていると言うのだ。ヴァーリはどこか呆れながら呟く。

「人の身でありながら一日以上オーフィスと戦い続ける。…………理解すればするほど、強くなればなるだけキミが遠のいて往くよ。兵藤一誠」

その表情は諦めと歓喜が入り混じった様な、矛盾をした笑みを浮かべている。

先生が連絡用の魔法陣で誰かと話している。

「……ああ、それじゃ、今すぐ来てくれ」

最後にそう言って魔法陣を消す先生。誰と連絡をとっていたのだろう?

「サーゼクス。どうやら着いたようだ。もうすぐこの部屋に来るそうだ」

「そうか。彼等が着き次第たのむぞ、アジュカ」

「ああ、解っているとも」

一体なんのことだろう? 彼等と言っていることから複数の存在が来ることが解るが、一体誰が? そんな僕の疑問に答えるように部屋のドアが開かれ、そこから幼生のスプライトドラゴン位の大きさのタンニーンさまと綺麗な青髪で長髪の美人な女性が入ってきた。……誰だろう? 始めて見る人だ。

「来たぞ。サーゼクス」

「まったく、なぜ私がこんなところに来なければならんのだ」

青髪の女性がため息を吐きながらそう呟く。タンニーンさまが少しばかり呆れたような雰囲気を出しながら言う。

「お前はまだ、そんな事を言っているのか。下手したら世界の終わりなんだぞ? お前だって巻き込まれる可能性がある。今更グダグダ言うな、ティアマット。それにお前、兵藤に好意を持っていただろ?」

「おまッ!? 私は別に兵藤なんか……!!!」

タンニーンさまの言葉を聞いて顔を真っ赤にする女性。ただ、僕たちはタンニーンさまの口から出た名前を聞いて驚愕した。

タンニーンさまは彼女の事をティアマットと言った。『天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)』ティアマット。タンニーンさまを含む龍王の中で唯一の雌にして、龍王最強と称されるドラゴン。その力は魔王と同等かそれ以上と言われるほどに強力だ。そんな存在がなぜ此処に?

「初めまして、ティアマット殿。私はサーゼクス・ルシファー。こちらの要請に応えていただき感謝します。」

「魔王ルシファーか。話には聞いている。なんでもベルゼブブと共に規格外の悪魔だとか」

「……来ていただいて早々に申し訳ありませんが、お願いします」

「……そうだな。タンニーン! 始めるぞ!」

その言葉を皮切りにこの部屋一帯に広がる様に魔法陣が展開される。初めて見る陣だ。見ればティアマット殿、タンニーンさま、アザゼル先生、ヴァーリが陣に組み込まれている。ティアマット殿が青、タンニーンさまが緑、アザゼル先生が金、ヴァーリが白。各々がそれぞれの色に光る。アジュカさまが小さい魔法陣を幾つも展開し、この部屋に展開された魔法陣を調整するように小型の魔法陣を動かす。

「…………これでいいだろう」

その言葉を最後に巨大な魔法陣が一際大きく発光する。魔法陣の中心に映像が流れ始めた。そこには一誠さんとオーフィスが映っている。

「これは『龍門(ドラゴン・ゲート)』を応用した物だ。兵藤とオーフィスはどちらもドラゴンだからね。ちょっと術式を弄ればこの通りだよ」

アジュカさまが呆然としている僕たちにそう説明してくれる。

ヴァーリが獰猛な笑みを浮かべ、

「この世界で頂点に君臨している者と君臨していた者による戦闘。……兵藤一誠やオーフィスがどれだけ強いのか解るかもしれない」

そう言って食い入る様に映像を見始める。僕たちグレモリー眷属を含め、この部屋に居る誰もが映像に集中する。―――そこには最強の人間と最強のドラゴンによる戦争がおこなわれていた。

 

 

全身に赤い生物的な鎧を纏った一誠が上段から蹴りを叩きこむように放つ。オーフィスは片手で無雑作に受け止める。拮抗は一瞬。オーフィスが受け止めた瞬間、オーフィスを中心に地面が陥没する。オーフィスは空いているもう一方の手を一誠へと向け、攻撃を放つ。一誠はオーフィスの攻撃を無雑作に弾き飛ばす。弾け飛ばされたオーフィスの攻撃は巨大な爆発を起こし、空間を軋ませる。一誠は右手をオーフィスの眼前に持っていき、力を放つ。絞り込み、貫通、抉るような一撃ではなく、ただ、無雑作に相手を吹き飛ばすような、点ではなく面を破壊する一撃。

オーフィスは防ぐことをせず、派手に回転しながら吹き飛ばされる。吹き飛ばされたオーフィスは直ぐに体勢を立て直し、片手を前にだす。一誠とオーフィスが同時に攻撃を繰り出し、二人の攻撃が衝突、一誠とオーフィスを簡単に巻き込むほどの強大な爆風が巻き起こる。その規模たるや、魔王や神でも防ぐことが不可能な程だ。だが、互いに無傷。たとえ魔王や神が防げないほどの爆風だろうが、この二人からしたら防ぐ価値もない。この程度ではたとえ防げなくても掠り傷一つ負わないのだから。

「……相変わらず、一誠は強い」

「お前は相変わらず、大層な名前を持っているクセに、たいしたことねぇな」

「……一誠の持っている力、我の存在を削る。我とも、グレートレッドとも違う力。…………一誠の持っているその力、なに?」

オーフィスは小首を傾げながら一誠に問いかける。だが、一誠は答えない。

 

―――なぜ、一誠が過去オーフィスやグレートレッドに勝てたのか? それはもう、エーテリオンのおかげとしか言いようがない。エーテリオンは純粋な力としても強大だ。なにせ、感情の乱れにより、ほんの少し漏れた力だけで大地を、大陸を、星を割りそうになったのだ。純粋な力の容量だけでも悪魔や堕天使、神や魔王。ドラゴンすら遠く及ばない。 グレートレッドは夢幻を司るドラゴンだ。誰かが抱いた夢を、誰かが見た夢を、誰かが思い描いた夢を。オーフィスが『無限』を司る完璧な単一生命体なら、『夢幻』を司るグレートレッドは究極の群生生命体だ。グレートレッドはオーフィスと同等かそれ以上の力を持っている。しかし、グレートレッドは有限の存在だ。無限に限りなく近いが、有限なのだ。グレートレッドの力は世界中にいる存在の夢とイコールだ。無限であるオーフィスが有限であるグレートレッドを倒せない理由。余りにも莫大な『数』であるグレートレッドは『無限』であるオーフィスと同等か、それ以上の領域に存在しているのだ。有限であるがゆえに無限であるオーフィスを超える。

一誠の宿すエーテリオンはグレートレッドの力の総量を超えているのだ。故に、純粋な力のみでも十分オーフィスやグレートレッドを打倒することが可能だ。たとえ足りなかったとしても一誠には『赤龍帝の籠手』がある。倍化していけば、そのうちオーフィスの居る領域まで届かせる事ができる。なにせ『赤龍帝の籠手』は神すら屠れる『神滅具(ロンギヌス)』なのだ。ならば、『龍神』であるオーフィスを殺せない道理は無い。

さらにもう一つ。エーテリオンの特性とも言える物のだ。 本来エーテリオンが存在したRAVEの世界で、エーテリオンは『忘却の王』エンドレスを消滅させる事ができる唯一の力だった。エンドレスは改変された時を戻すために生まれた世界の修正力のような存在だ。時を操り、自由に世界を改変できる『星の記憶』の力を使い、エンドレスを消し去ろうとも、またエンドレスは生まれてしまう。それゆえに『終わり亡き者(エンドレス)』と呼ばれていた。さらに、エンドレスは(亜人を含む)人々の記憶と邪悪な意思、つまりは負の感情により具現化し、最終的には人々の記憶の集合体である『星の記憶』すら忘却させるまでの怪物となったのだ。人々が発する負の感情とは、たとえ他の存在を殺そうが叶えようとする欲望という名の夢だ。そんな夢の集合体。

―――つまり、エンドレスとは『無限』でもあり、『夢幻』でもある存在なのだ。そんなエンドレスを完璧に消滅させた力だ。ならば、高々『無限』の存在でしかないオーフィスと『夢幻』でしかないグレートレッドでは『魔導精霊力(エーテリオン)』を宿し、十全にその力を振るう一誠に敵う筈もない。ある意味、エーテリオンは『最強の龍殺し』と呼ばれるサマエル以上にオーフィスやグレートレッドにとって天敵だ。なにせ、ピンポイントなまでに『無限』と『夢幻』を消滅させる事に特化しているのだから……。

 

(―――っち。オーフィスをぶっ殺すのは簡単だ。だが、それじゃぁ俺の気が収まらない。なら、もうちっとばかし遊んでから殺すことにしようか)

一誠は一日以上オーフィスと戦い続けていると言うのに、そんな事を思う。全世界の勢力の中でグレートレッドを除いて最強とまで言われていたオーフィスを相手にだ。それほどまでに強大、それほどまでに規格外。それがこの世界に存在する『兵藤一誠』という存在だ。

「グダグダとうるせぇな。こっちはてめぇに邪魔された上に、あの時感じた興奮や歓喜はもう欠片も残ってねぇんだ。……だから、ちったぁ俺を楽しませやがれぇ!!」

飢えた肉食獣の様な咆哮を上げ、オーフィスへと突っ込む一誠。無雑作にオーフィスへと殴りかかる。オーフィスも一誠の拳を迎撃する様に拳を振る。衝突。二人を中心に地面は吹き飛び、巨大なクレーターができあがる。その衝撃だけで空間が悲鳴を上げる。

二人が衝突、力を振るう度に空間が震え、軋み、破壊される。世界中にいる、神秘に関わっている者全てがこの戦争の行く末を見守っている。これだけの化け物同士が殺し合っているのだ。魔王や神であろうとも外側から見ていることしかできない。

オーフィスが一誠から距離を取り、オーラによる攻撃を数十万、数百万と放つ。一撃一撃が、当たれば各神話の主神クラスといえども、塵一つ残さないほど、強力な攻撃だ。対する一誠は無雑作に腕を一閃させる。それだけで、オーフィスから放たれた攻撃は一誠に届くことなく、爆発する。今度は一誠が攻撃をしかける。一誠は上空へと昇り、自身の周りに、エーテリオンによって構成された槍を大量に展開する。そして、それを放つ。放たれた槍の一本一本は、全盛期の二天龍ですら余裕で消し飛ばすほどの力が込められている。それが数億、数十億という、数えるのもバカらしくなるほどの量が、雨霰とオーフィスへ降りそそぐ。それを放たれたオーフィスは上段回し蹴りを、空に向けて放つ。オーラをこれでもかというくらいに込められた一撃は、一誠から放たれた槍の豪雨を全て破壊し、弾き飛ばす。

先ほどの攻防でもお互いに無傷。もし、この場に他の存在がいたら、その余波だけで消し飛んでいるだろう。この化け物同士の戦争に介入できるのは同じ化け物であるグレートレッドだけだ。

 

 

<木場視点>

僕たちは一連の戦闘を見て、言葉も出なかった。一誠さんとオーフィスの戦い、その規模に唖然とするしかなかった。ただの牽制程度に放たれている攻撃。それすら、ここに居る全員を簡単に消し飛ばせるであろう威力だ。……僕たちは今まで、一誠さんに助けられてきた。ライザー・フェニックス氏とのレーティングゲーム、堕天使コカビエルとの戦闘。更に、部長と小猫ちゃんは黒歌と美侯の襲撃された時も一誠さんが撃退したという。僕たちはいつも一誠さんの足を引っ張ってばかりだ。それこそお荷物になっていたと言っても過言ではない。だからこそ、強くなろうと決意した。一誠さんに届かなくてもいい。せめて、足手まといにならないように。そう思って今まで修行をしてきた。眷属の皆との連携も練習した、神器や自分の持つ力の研磨もしてきた。……けど、そんな物、なんの役にも立たない。たとえ、僕の長い悪魔人生で、毎日血反吐を吐くほど修行したとしてもあの二人には遠く及ばない。僕たちは自惚れていたのだ。強くなっていけば、いつか足手まといにならないだろうなどと。そんな事不可能だ。もし、僕たちが一誠さんの足手まといにならないほどに強くなれたとしたら、それは、あの戦争に参加できる程の化け物になったということだ。

「ハハハハハハハハハハハハ!!! これほどか!!? これほどまでにあいつ等は強いのか!? 一撃一撃がここに居る連中を虫けらのように屠れる程に強力!! たとえ、万全の状態で『覇龍』を発動しようと、一秒と生存できないであろう戦場。俺には参加する資格は無いと言わんばかりの戦争!! これがこの世界で頂点に君臨しうる者同士の戦いか!! オーフィスは『無限の龍神』と言われるだけの、各勢力のトップたちが相手にならないほどに強大だ! 全盛期の二天龍が歯牙にもかけてもらえないほどの存在だと実感できる!! 兵藤一誠は『覇龍』を一日以上維持し、さらに、あれだけの攻撃をしかけても息切れ一つ起こしていない。なるほど、俺程度では敵にすらなりえないか。ハハハハハハハハハハ!!!!」

ヴァーリが興奮と狂気の笑みを浮かべながら笑う。その瞳は決して諦めてはいなかった。ヴァーリは未だに、一誠さんを倒すことを諦めていないのだ。

『それだけではないぞ? ヴァーリ・ルシファー』

部屋に声が響き渡る。聞き覚えのある声。

「ウェルシュ・ドラゴン。ドライグか?」

『ああ、そうだ。こちらに若干とは言え、干渉してくる力を感じたからな。感じからして龍門だったから、意識だけこちらに持ってきたのだ』

ヴァーリが話しかけ、ドライグが答える。―――なるほど。龍門は元々龍を専門の召喚用ゲートだ。精神だけでもこちらに飛ばしてくることも可能なのだろう。

「こちらに来てよかったのか? ドライグがこちらに来ては『赤龍帝の籠手』の力を兵藤は使えないのではないか?」

『問題ないさ。倍化だけなら問題なく発動できる。……まぁ、そもそも相棒は神器の力を使っていないがな』

……え? 一誠さんは神器の力を使っていない? で、でも、鎧を全身に纏っているじゃないか。それなのに神器の力を使っていない?

「だが、兵藤一誠は、『覇龍』を発動しているじゃないか」

ヴァーリがそう訊くと、ドライグから信じられない言葉が出てくる。

『相棒はできうる限り戦闘を楽しめるように、『覇龍』を発動しているにすぎん。『覇龍』を制御するのに膨大な力が必要だからな。まぁ、相棒の持つ力からしたら微々たる物だが』

「…………つまり、こういうことか? オーフィス相手に力をセーブするため、『覇龍』を発動しているにすぎないと?」

『そういうことだ。相棒が本気出したらオーフィスと言えど、直ぐに戦いが終わってしまうからな。相棒はヴァーリを殺し損ねた怒りを発散するためにも、わざと戦闘を長引かせているにすぎん。……今の相棒はもはや、お前に興味を持ってはいないがな』

その言葉を聞いてどれだけ一誠さんが出鱈目なのかを再認識してしまった。前にアザゼル先生から聞いたことがあるが、先代ルシファーさまを超える魔力を持つヴァーリが、その魔力を消費して、漸く数分間扱える程に『覇龍』は危険だと言っていた。歴代の『白龍皇』で『覇龍』を制御できたのはヴァーリが初めてだと言う。そんな『覇龍』を一誠さんは自らの枷にするためだけに一日以上維持しているという。

さすがのヴァーリもドライグの説明を聞いて、絶句している。

『赤いの。今代の貴様の宿主は随分と出鱈目だな?』

ヴァーリの背中に神器が現れ、宝玉から、声が聞こえてくる。

『まあな、白いの。だが、それはお互いさまだろう? 歴代の赤龍帝だったら、まず間違いなく、ヴァーリには勝てなかっただろうさ』

『そうだろうな。私も初めてヴァーリの力と才能を理解した時、今回はこちらの圧勝だと思ったくらいだ。……まさか、ここまで今代の赤龍帝が化け物だとは思いもしなかった』

『それもしかたないさ、白いの。なにせ、相棒はわずか二歳の時に俺の存在を認識し、たった一撃で俺を死の淵にまで追い込んだんだからな』

その言葉を聞いて、アルビオンから驚いたような雰囲気が伝わる。

『そんな幼いころに赤いのを認識し、更には一撃で瀕死にまで追い込んだ? 俺が言うのもなんだが、今代の赤龍帝はとことん、規格外だな』

『それもしかたないさ。俺だって相棒のことを化け物だと思っていたくらいだしな。あいつが力の制御を覚えるまで、ほぼ毎日死にかけていたよ』

『兵藤一誠が今現在、振るっている力のことか?』

『ああ、そうだ。相棒曰く、「殺さないように手加減をするのは10tトラックで蟻を潰さないように、踏むようなもの」との事だ。』

『ククク。我々が蟻か。……まぁ、納得はできるな。全盛期の俺とお前が手を組んだとしても、兵藤一誠には掠り傷一つ、負わせることはできないだろうさ』

ドライグとアルビオンが何処か楽しげに会話している。それはきっと、今までだったらありえない事だったのだろう。

『そうだな。六歳のころにはオーフィスとグレートレッドを相手に、圧勝していたからな。龍王以上のドラゴンが集まろうとも、相棒には勝てないだろうな』

「あいつは、そんな昔から出鱈目だったのか。今思えば、よくもまぁ、私はあいつに襲い掛かって生き残れたものだ……」

「俺なんかサーゼクスに紹介されたとき、いきなりトカゲ呼ばわりされたからな。しかも、その後、あいつと戦ったが、手も足も出なかった。挙げ句に『龍王だとか二天龍だとか、大層な名前しているクセして、たいしたことない奴が多いなぁ。まぁ、飛んで火を吐ける程度のトカゲじゃそれも仕方ないのかなぁ?』とか、言われたからな。……これでも龍王に数えられた者として、それなりの自負があったんだが……」

『クククク。タンニーンは一回だけだろう? 俺なんて五歳にも満たない人間の子供に毎日殺されかけた、ただの大きい赤トカゲに過ぎんからな。ククク……』

『……お前達、どれだけ苦労したんだ? まぁ、落ち込むな。あれだけ出鱈目な存在だ。それもしかたない』

この場に居るドラゴンのうち、三体が落ち込む。『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』と『天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)』、『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』が目の前でおもいっきり落ち込み、『白い龍(バニシング・ドラゴン)』が呆れながら慰めている。……シュールだ。こんな非常事態だと言うのに、どこか、温かな雰囲気が、場を包み込む。サーゼクスさまやアザゼル先生、他の魔王さまやベネムネさまたちも苦笑している。

「なぁ、ドライグ。どうして兵藤はヴァーリを殺そうとしたんだ?」

アザゼル先生がドライグに訊く。それは、疑問に思ったことの答えを知りたいだけといった感じだ。

『それはな、相棒にとって初めて満たされた戦闘だったからだ』

どういうことだろう? 疑問に感じた僕たちにも解りやすいように、ドライグは答える。

『……そうだな、例え話をしよう。ヴァーリ・ルシファー、お前は格闘術をかじった程度の普通の人間相手に、周囲を気にしながら手加減をしなければならないとしたら、どう感じる?』

「そんなもの、苦痛でしかない。俺が望むのは強者との戦闘だけだからな」

ドライグの問にヴァーリは間髪入れずに答える。

『苦痛だろう? 相棒もそれは同じなんだよ。相棒は今まで全力、本気という物を出したことがない。今まで、一番力を出すことができたオーフィスやグレートレッドも相棒の敵ではないしな。相棒が今までの人生で戦闘と感じれたのは二回だけだろうな。一回目はオーフィスとグレートレッドを相手にしたとき。二回目は昨日お前と戦ったことだ。それ以外は相棒にとって戦闘ですらなかった。相棒は強すぎるがゆえに今まで苦戦や負傷をしたことがなかった。今までの相手は敵意や殺意をもって相棒を殺そうとした者は力不足で相棒には届かなかったし、相棒に届くであろうオーフィスやグレートレッドは相棒に勝とうとする極限の意思とも言うべきものがない。相棒を純粋に打倒、または殺そうとして届いたのはヴァーリ・ルシファー、お前一人だけだ。相棒は初めて戦闘で心が震え、満たされたんだ。故に相棒は初めて出会えた『敵』であるお前を殺そうとしたんだよ』

「今までで、兵藤の『敵』に成り得たのはヴァーリただ一人だけってことか? 兵藤はヴァーリと違って戦闘狂じゃないだろ?」

アザゼル先生がドライグに確認と疑問を投げかける。

『それは勘違いだぞ? アザゼル。 相棒はヴァーリすら超える戦闘狂だ。ただ、先ほども言った通り、今まで相手になる奴が存在しなかったから、それも仕方がないのだがな。たとえ、帝釈天やゼウスが相手であろうとも、相棒にとってそれは苦痛に感じるお遊戯でしかない。相棒が余りにも強すぎたために、誤解をしているが、兵藤一誠はヴァーリ・ルシファー以上に凶悪なドラゴンだよ』

確かに言われてみれば納得できるかもしれない。一誠さんはコカビエルとの戦闘で『飽きた』と言って止めを刺そうとしたし、他にも『萎えた』とか言って戦闘を中断したりしていた。

強すぎるが故に、満足の往く戦場に巡り合えたことが無い。……それは僕には理解できないものだ。ただ、ほんの少しだけなら気持ちが分かるかもしれない。僕だって強い剣士と戦えば、高揚するし、全力の戦闘の後は、疲れと共に言葉に表せない満足感が湧き上がる。もし、剣を持ち始めたばかりの一般人しか相手がいなかったら、剣による立ち合いを苦痛に感じるだろう。

「なるほど、今までの戦いは戦闘ですらなかったわけか。兵藤一誠にとってロキやフェンリルが相手では戦場にすらなりえないのだろう」

ヴァーリがそう言う。僕たちグレモリー眷属だけでは、ロキかフェンリルのどちらかでも勝てないほどの強者だ。そんな強者すら、一誠さんからしたら弱者になる。

「だが、俺は諦めるつもりはない!! いつか、兵藤一誠を超えてみせる! 今は、その頂点という椅子に座って、踏ん反り返っていればいいさ。必ず俺が、その椅子からお前を引きずり降ろす!!」

ヴァーリが獰猛な笑みを浮かべながらそう言う。…………これが、ドラゴン。争いを望み、争いを引きこみ、争いを巻き起こす。ヴァーリや一誠さんこそ、ドラゴンの本質なのだろう。

『ハハハハハハハハ! あそこまでコテンパンにやられて、まだ相棒を超えることを諦めないか! 白いの、今代の白龍皇は歴代で最もおもしろい奴だな』

『そうだな。才能、経験、力、意思、そして執念。ヴァーリは歴代でも最高の相棒だよ。

……なぁ、赤いの。我々二天龍の争いも今回で最後だろうな』

『ああ、そうだろうな』

その会話を聞いて、この場に居る誰もが驚く。二天龍の争いが終わる?

「なぜだ? アルビオン」

『簡単な理由だ。 赤いのと俺がもはや争う気が起きないからだ』

「どういうことだ? なぜ、そんな事が分かる?」

ヴァーリの問いかけに、今度はドライグが答える。

『俺と白いのは長い間、互いに殺し合ってきた。 最初は確かに、明確な意思を持って、白いのを殺そうとしていたが、そんな物、1000年も過ぎれば消えてなくなる。 ドラゴンの敵意が消えうせるほど、長い付き合いだ。お互いの考えくらい、ある程度は理解できる』

『赤いのの言う通りだ。我々はお互い、歴代でも最高の宿主に出会えた。なら、今回を最後に、これ以上争うこともなかろう』

「アルビオンやドライグがこれ以上争う気がないのは分かった。だが、俺達以降の宿主が戦わないわけではないだろう?」

確かにそうだ。いくら二人に戦う意志がなくても、一誠さんやヴァーリ以降の宿主が戦わないとは限らない。

『俺達が次の宿主に出会うことはない』

「なにを言っている? 神器の封印を解く方法でもみつけたのか?」

アザゼル先生が興味深そうに訊く。

『いや、そうではない。 今代の相棒が死ぬ前に、俺達を消してもらえばいい』

…………え? いま、ドライグはなんて言った? 

『宿主ならば神器に潜り、俺たちと相対することができる。 今回の『赤龍帝』と『白龍皇』の決着がつき次第、相棒に殺してもらえば、俺達が次の宿主に宿ることはない。相棒だったら俺を殺すことくらい、朝飯前だろうからな』

たしかに、一誠さんならドライグを殺すこともできるだろう。それでも、そんなの絶対に間違ってる! 自分の相棒に殺してもらうなんて……ッ!!

「…………お前も同じ意見なのか? アルビオン」

ヴァーリが感情を感じさせない声でそう問いかける。

『ああ、俺も赤いのと同じ意見だよ。今は無理でも、お前ならばそのうち俺を殺すことができるほどに強くなるさ。兵藤一誠を超えるのだろう? お前なら、あいつを超えることも不可能じゃない。 あいつを超えることができれば、俺を殺すことなんて簡単なことだ』

「………………。そうか、分かった。ただし、俺が兵藤一誠と勝敗を決する時は力を貸してもらうぞ? アルビオン」

『それは当然だ。今回で赤いのと争うのは最後になるだろうが、負けるつもりはない』

『それはこちらの台詞だ、白いの。お前と決着をつけるからには、俺だって勝つつもりで戦うさ』

そう言って好戦的な気配が、ドライグとアルビオンから放たれる。

「やれやれ、このバカどもの争いも今回で最後か……」

「また力の有るドラゴンが消えるのか。…………そのうち、ドラゴンという種族自体、消えて亡くなってしまうのかもしれないな」

ティアマット殿と、タンニーンさまから寂しげな気配が漂う。このお二方からしたら、ドライグやアルビオンは古いつき合いの、腐れ縁なのだろう。

『俺は、そろそろ戻るとするか。相棒の方も、もうじき終わりそうだからな』

『そうか。……それじゃあな、ドライグ。お前との会話も悪い物じゃなかったよ』

『こちらもだよ、アルビオン。俺も、今回の会話は悪い物じゃなかった。 …………それではな』

そう言った瞬間、ドライグの気配が部屋から消えてなくなる。

「……こちらも決着がつくか」

ティアマット殿が映像を一瞥し、そう言う。先ほどまで、ドラゴン同士の会話に気を取られていた皆が、映像に集中する。

 

 

何度目になるか判らない衝突。一誠の槍と、オーラを纏ったオーフィスの拳が激突する。地面には数えきれないほどのクレーターができており、空間の殆どがガラスのように割れ、いろんな光景が見える。一誠が槍を振るう。その速度は異常。一瞬という刹那の間に数えきれないほどの攻撃がオーフィスを襲う。対するオーフィスは、本体に当たるものだけを防ぎ、振るわれた槍を掴み、握りつぶそうとする。一誠はオーフィスに槍を掴まれた瞬間、槍を消し、新たに槍を作りだし、それを振るおうとする。しかし、オーフィスが掴んだ槍が消えた瞬間、後ろに退避したため、それは叶わなかった。

一度距離を置き、仕切り直す。

一呼吸空けて、一誠が突っ込む。オーフィスは、一誠が自身に届くまでに、オーラによる弾幕を放つ。一誠はそれらを弾き、または、切り裂きながらオーフィスの目の前へと到達する。そのまま踏み込み、斜め下から掬いあげるように、槍を一閃させる。オーフィスの右腕が付根から切断され、宙を舞う。一誠はそのまま空いている手でオーフィスの首を掴み、地面へと叩きつける。一誠はオーフィスを押さえつけるように馬乗りし、左手を槍で地面へと縫い付ける。オーフィスは切断された右腕を瞬時に回復させ、そのまま一誠を掴もうと右腕を伸ばすが、一誠が左手でオーフィスの右手首を掴み、そのまま拘束する。

一誠は『覇龍』を解除し、新たな槍を右手で構えながらオーフィスへと話しかける。

「やっぱり大したことねぇな。オーフィス」

「一誠が強いだけ。やっぱり、一誠にはグレートレッドを倒すの、手伝って欲しい」

その言葉を訊いて、さすがの一誠も呆れた表情をする。

「お前、こんな状況になっても、まだ、グレートレッドのこと考えてたのかよ」

「我の願いはここで静寂を得ること。そのためにもグレートレッドが邪魔」

「―――っは。この状況で生き残れたら、勝手にグレートレッドに挑めばいい。……生き残れたらだがな!!」

そう言って槍を振るう一誠。それはオーフィスの首を的確に貫こうとする。

「―――っ!?」

その槍が直前で止まる。あと、一、二㎝でオーフィスの首に届くといったところで、一誠が槍を振るうのを止めたのだ。

一誠はおもむろに立ち上がると、手に持っていたのと、オーフィスの左手を縫い付けていた槍を消す。

「……?」

一誠の突然の行動に、オーフィスは首を傾げながら、一誠を見上げる。一誠はしばらく何かを考えていたようだが、オーフィスを一瞥したあと、その場から姿を消す。

 

 

こうして、ドラゴンと人間の戦争は終結した。これを見て、世界中の者たちが新たに思い知る。これがオーフィス(ウロボロス)だ、これが兵藤一誠(規格外)だ、これが世界最強(頂点)なのだと。

改めてオーフィスや一誠を警戒する者。オーフィスや一誠、そしてこの二人と同等であろうグレートレッドを利用できないかと考える者。どうにかして、一誠やオーフィスを排除しようとする者。

―――少しずつではあるが、龍の因子は確実に世界を動かし始めていた。

 




待たせてしまった割には戦闘が少なくて申し訳ありません。

オーフィスやグレートレッドを倒せることに関しては、作者の独自解釈と勝手な設定(というより妄想)なので、これで納得していただけると幸いです。

実は、前回の話を書いていて、あるアイデアが浮かんだんですが、さすがにこれは無い。って言いきれるほど酷かったので没にしました。

以下没シーン

一誠が剣を振り下ろす。それは木場の聖魔剣によるシェルターを氷のように蒸発させながらも、威力はまったく衰えを感じさせない。だが、シェルターを破るのに一瞬と言える時間はかかったのだ。最後の層が破られた瞬間ゼノヴィアがデュランダルにチャージしていた聖なるオーラを放つ。イリナもそれに続くように光による攻撃をする。だが、それでも一誠の攻撃を相殺することはできなかった。全てを燃やし尽くすほどの業火が木場達に襲いかかる。
「---っな!?」
一誠から驚きの声が上がる。そう、木場達は無事だったのだ。いきなり現れた第三者が一誠の攻撃を防ぎ、木場達を助けたのだ。
「悪魔さん、助けに来たにょ」
「な、なぜ貴方がここに!?」
アーシアから驚きの声が上がる。それはそうだろう。なぜなら、自分たちを助けてくれたのは、アーシアのお得意様なのだから。
「悪魔さんが危険な目に遭っている気がしたにょ。だから、助けに来たにょ」
「ここは危険です! 今すぐ、逃げてください!!」
木場が乱入者に対し、そう言う。それもそうだろう。なぜなら、彼は悪魔を知っているだけの一般人なのだから。だが、ここにいる全員は知らない。木場達を助けにきたは最強無敵の『漢の娘』だと言うことを。
「この正義の魔法少女、ミルたんが来たからにはもう安心だにょ!」
ミルたんが全身の筋肉を膨張させ、一誠へと突っ込む。それに対し、一誠は魔力弾を数発放つ。先ほど自分の攻撃が防がれたのは偶然、または奇跡でも起こったと思ったのだ。それゆえに、魔王を消し飛ばせる程度の魔力弾を数発放ち、ミルたんを消そうとする。だが、そんな一誠の期待は裏切られることとなる。
「ミルキィィィィィィィィィ・スパイラルゥゥゥゥゥ・ボォォォォォムァァッ!」
一誠が放った魔力弾を、あろうことか拳で消し飛ばしたのだ。あまりの事態に一誠は思わずミルたんの接近を許してしまう。
「ミルキィィィィ・サンダァァァァァ・クラッシャァァァァァッッ!」
ミルたんの蹴りが一誠へと炸裂する。
「----ッガ!!!?」
なんと、ミルたんの蹴りは一誠の『覇龍』の鎧を砕き、強化された体に甚大なダメージを与えたのだ。
「---っぅ!? おもしれぇ、さっこうにおもしれぇゾ!! ミルたん!! てめぇは俺がぜってぇにぶっ殺してやるよォ!!!」
一誠がそう怒鳴るが、ミルたんはそれを無視するように、一誠へと馬乗りする。そして……
「ミルキィィィィ・アルティメットォォォォォォ・ストォォォォォムゥゥァァッ!」
これでもかと言わんばかりの拳の弾幕が一誠を襲う。一誠は抵抗らしい抵抗ができず、拳を食らう。一撃が当たるごとに鎧は砕け、骨は軋み、今まで味わったことのない激痛が一誠を襲う。
「これをくらって、改心するにょ! ミルキィィィィィ・ホーリィィィィ・バァァァァストォォォォッッッ!!」
最後に体を引き締め、全体重をのせたミルたんの一撃が一誠の顔面へと放たれる。その一撃をくらった一誠は盛大に血を吐き、気絶する。
「これでもう、安全だにょ。悪魔さん!」
ミルたんが笑顔でアーシア達にそう言う。

あの場面でなぜ、ミルたんを出そうという考えが浮かぶんだ。……これもきっと暑さの所為に違いない! こんなもの、ちょっと考えなくても没いきだよ! ってか、だれもこんなの望んでねぇし!!
実に恐ろしきはミルたんの存在か……!!

正直、このまま行ったらマジでヴァーリ戦以降がIFになりそうです。ぶっちゃけ、ヴァーリチームにフェンリルを参加させるアイデアが思いつかない! さすがにそれは拙い。

このような駄文ですが、これかもよろしくお願いします。


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