ハイスクールD×Dの規格外   作:れいとん

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今回の話は人によっては嫌な気分になるかもしれません。それでもおkという人のみどうぞ


第三十八話

<アザゼル視点>

……はぁ。なんでこんなことになっちまったのかね?

俺は目の前に対峙し合っている二人の青年を見て、そう思う。

一人は光るような銀髪の青年。そしてもう一人は普通の人間よりも整った顔をしている見ため普通の青年だ。

この二人は神器の中でも十三種しかない『神滅具』、それも『赤龍帝の籠手』と『白龍皇の光翼』をそれぞれその身に宿している赤龍帝と白龍皇だ。しかも、この二人は二天龍に過去、現在、そして未来永劫『最強』と言われるほどの規格外だ。もし、そんな二人がぶつかりあったらどれだけ周りの被害が行くか、考えるだけでも頭が痛くなる。だが、今回の戦いは勝敗が見えている。勝つのは赤龍帝だろう。確かに今代の白龍皇ヴァーリ・ルシファーは強い。先の大戦で亡くなった先代ルシファーの孫にして神滅具たる『白龍皇の光翼』を宿す冗談みたいな存在だ。『禁じられし忌々しい外法』と呼ばれる禁手を使いこなし、さらに悪魔としての力もずば抜けていてその身に膨大な魔力を宿す。それを消費することで普通なら制御できない『覇龍』を数分間扱える程だ。もし俺がヴァーリと戦い、そして覇龍を使われたら絶対に勝てないだろう。俺はこれでも聖書に名が記される程の堕天使だ。その気になりゃ、小国を数分で滅ぼせる。通常の戦闘力でそんな俺でも勝てないだろうと思わせる白龍皇だ。歴代の赤龍帝ならヴァーリが絶対に勝てただろう。だが、それは歴代の赤龍帝だったらだ。

―――兵藤一誠。こいつの血族を遡っても異能に関わった者はだれ一人としていなかった。もし、『赤龍帝の籠手』が無ければただの一般人として関わり合いすら持たなかっただろう。―――普通なら。

最強、規格外、天災。今代の赤龍帝を示すとしたらこれ以上適切な言葉は無いだろう。そう今代の赤龍帝―――兵藤一誠は規格外だ。その身に宿す膨大な力。その力は世界中の神々を虫けらのように叩き潰し、名のある魔物や魔獣を埃を掃うように屠り、最終的には無限と夢幻の龍神すら降した。二天龍と称される赤い龍、ドライグの力である『赤龍帝の籠手』を使わずに兵藤一誠は世界最強の存在になったのだ。ヴァーリは確かに強い。だが、霞んでしまう。一誠の力の前ではヴァーリの強さは霞んでしまう。ヴァーリがその気になれば数十秒で人間界の首都は跡形もなく破壊できるだろう。だが、一誠がその気になれば数秒で世界を滅ぼせる。一誠からしたら俺たちやヴァーリは警戒する敵ではなく、どれだけ自分の力に耐えられるかの玩具でしかないのだ。―――今でも思いだせる。俺や他のグリゴリの幹部たちが一瞬で敗北した時の事を。あの時俺や他の奴らは一誠がなにをしたかわからなかった。普通なら力を行使する時何らかの兆候や微量に漏れた力を感じ取れる。だが、一誠の力は俺たちでは感知できなかった。その理由は簡単だ。一誠の力が強大過ぎたからだ。考えてもみてほしい。地上にいる人間に本当に星の広大さを理解できる者がいるか?空を見上げるだけで宇宙の巨大さを正確に感知できる者がいるか?それと同じだ。余りにも強大なその力は俺たちの感覚では感じ取れないほどなのだ。三大勢力の会談以降俺は何度か一誠の力を感じ取っていた。全てを押しつぶすような、敵対するだけでもバカらしくなるほどの力を。だが、それは言いかえれば俺如きにすら感じ取れるほどに一誠が力を落としていることに他ならない。はぐれ悪魔の黒歌が小猫を襲った時、旧魔王派がアーシアに危害を加えた時。どちらも俺に感知できる程度の力しか一誠は使っていなかったのだ。それ程に規格外なのだ、一誠は。

……この世界で一誠の力を理解できるのなんざ、それこそオーフィスかグレートレッドくらいだろう。そんな一誠が自分からしたら遥かに格下であるヴァーリに戦えと言った……何故だ? 俺には先ほどからそのことが疑問で仕方がない。ヴァーリは相変わらずだが、一誠も普段見せないような好戦的な表情をしている。――――こりゃマジでヴァーリが死ぬか?

さすがにそれは待ってほしい。ヴァーリを育てたのは俺なのだ。確かに今はテロリストであるがそれでも俺の大切な息子みたいなものであることに変わりはない。……ヴァーリが殺されそうになったら最悪俺の命を差し出してでも見逃してもらう。

―――確かにこの二人は二天龍をその身に宿す存在だ。歴代の『赤龍帝』と『白龍皇』は殺し合ってきたし、こいつらもお互いに殺し合う時が来るだろう。だが、それでもこいつらは若すぎる。日本において成人すらしていないのだ。もっと人生を楽しんでもらいたいと思うのは俺のわがままなのかね?

そんな俺の心情なぞ関係ないと言わんばかりに二人は戦い始めた。

 

 

<木場視点>

今僕の目の前で一誠さんとヴァーリが対峙している。お互いに好戦的な笑みを浮かべ、ただの一般人なら死んでしまいそうな圧力を放っている。二天龍の対決。赤龍帝と白龍皇は互いに殺し合う。裏の世界に関わっている者ならば殆どの者が知っている常識だ。

部長たちが心配そうに一誠さんを見ている。部長たちだけではなくアーサーたちも心配そうにヴァーリを見ている。

特に黒歌と美侯は青い顔で様子を窺っている。確かこの二人、小猫ちゃんに手を出そうとしてかなり手加減した一誠さんに手も足も出ずに敗北したらしい。そんな一誠さんが好戦的な笑みを浮かべて威圧しているのだ。青い顔にもなるだろう。

どうやらアーサーたちは本当に一誠さんがヴァーリを殺そうとしたら助けに入るようだ。

僕は改めて二人を見る。圧倒的強者による戦闘だ。得る物も有るだろう。

そして、ついに二人の戦闘が始まる。

 

 

「―――禁手化!」

『Vanishing Dragon Balance Breaker!!!!』

先に動いたのはヴァーリだ。即座に『白龍皇の光翼』を出し禁手化。禁手時の発光を目くらましにし、光速の速度で一誠の足元まで移動し、魔力を纏わせた拳でアッパーの要領で殴りかかる。対する一誠はなにもしない。好戦的な笑みを浮かべたまま棒立ちをしてるだけ。そしてヴァーリの拳が一誠の顔面へと叩きこまれる。

「―――っな!?」

ヴァーリは目の前に起こった結果に驚愕する。殴りかかった部分の鎧が砕けたのだ。神滅具たる『白龍皇の光翼』の禁手化状態の鎧がだ。『白龍皇の光翼』の禁手『白龍皇の鎧』は相当に堅い。無論、宿主の精神や強さによって堅さは変わってくるが、歴代最強の白龍皇であるヴァーリの鎧は類を見ないほどに強固だ。ヴァーリの鎧を砕ける存在などこの世に三桁といないだろう。そんな鎧がただ殴りかかっただけで砕けたのだ。ヴァーリは一旦、一誠から距離を取る。

ヴァーリは自分の右手を見る。殴った方の腕が痺れていたのだ。

(どういうことだ? まるで素手で巨大な鉄の塊を殴ったような感触だった。)

ヴァーリはその場から一歩も動かない一誠に語りかける。

「どういうトリックだい? 殴りかかったこちらの鎧が砕けた上に右腕が痺れている」

「……この程度か?」

驚愕し、興奮しているヴァーリとは対照的に一誠はどこか失望した表情をしている。

「なんだお前? 目の前の戦場から逃げたことはないとかどうとか、あれだけ偉そうなこと言っておいて……。口だけは達者で、所詮この程度なのか?」

一誠はガックリと肩を落とした。自分に対し、あれだけ正面切って物を言うのだからどれだけ強くなったのか興味があったのだ。それなのに……。

ヴァーリは表情を変えることはなかったが先ほどよりもさらに威圧感が増している。先ほどの一誠の態度と言葉を受け、その考えを変えてやろうと思ったのだ。

(どういう原理か解らないが、近接がダメなら遠距離で攻めるのみ!)

ヴァーリは神速で飛び上がり、一誠の真上へまで飛び上がると数百、数千の魔力弾を放つ。先代ルシファーすら超える力を持つヴァーリによる攻撃である。弾幕とも呼べるそれをまともに喰らったら、たとえ四大魔王とも言えど、致命傷になるだろう。だが、一誠は特に身構えることも防御をする構えもしない。そして、魔力弾の嵐に襲われる。その余波で粉塵が撒き上がり一誠の姿が隠れる。さらに戦闘用フィールドのあちこちに小型のクレーターが幾つも重なるようにできている。

(どういうつもりだ?)

ヴァーリの疑問を答えるように粉塵が晴れ、その中から一誠の姿が現れた。この戦闘が始まったときと変わらずに突っ立っている。だが……。

(―――バカな!? 無傷だと?)

そう無傷だったのだ。掠り傷一つどころか埃一つ被っていない。まったくの無傷。

(いや、考えてみれば当然か。今の攻撃がオーフィスに通じるとは思えない。それ以上の彼はあの程度の攻撃は防ぐ必要すらないのだろう。―――面白い! それでこそ目指す価値があると言う物だ! 輪郭すら見えない、この世界の頂点! 俺は今、その頂に登るチャンスを掴んだ。今は無理でも何時か必ず俺はあそこに……兵藤一誠の居座っている世界最強の座に就く! ―――だからこそ見せてやる! おまえの相手であるヴァーリ・ルシファーが最強の白龍皇だと!!)

ヴァーリはまた、大量の魔力弾を放つ。先ほど放った物より多く、数千、数万という数をヴァーリは放つ。魔力弾が着弾する寸前でヴァーリは動く。魔力弾の嵐とそれに伴って撒き上がる粉塵を眼隠しに一誠の背後に回る。そして、回し蹴りの要領で蹴りを一誠の首へと叩きつける。

ゴン!

ヴァーリの放った蹴りの衝撃で周りの粉塵が吹き飛ぶ。一誠は無傷。それに対し、ヴァーリの方は蹴った部分の鎧が砕けている。ヴァーリは一誠から距離を取る。

傍から見ても一方的な戦いだ。一誠はその場から一歩も動かずに攻撃もしていない。それなのに無傷。それに対し、ヴァーリの右腕と右足の鎧は砕けていて、一誠に有効打を与えるどころか、掠り傷一つ負わせることができない。

「理不尽なまでの強さだな。俺のように名のある悪魔の力を受け継いだわけでもなく、両親が魔術師というわけでもない。先祖に英雄はおろか魔術師すらいない。ただ、神滅具を宿しただけの人間。それなのに無限の龍神すら降すその力。―――なんなんだ、キミは?」

ヴァーリが思わずと言った感じでそう言う。それもそうだろう。一誠は血筋だけで見ればそこ等辺にいる一般人となんら変わらない。その身に神滅具を宿しているとはいえ、ヴァーリと違い、普通なら一誠はただの一般人と言っても過言ではない。ヴァーリのように強大な悪魔の力を持っている訳でも、英雄の力を引き継いでいる訳でもない。それなのにこの強さだ。たとえ、ヴァーリと才能だけが同じだったら一誠はヴァーリに勝てなかっただろう。なぜなら一誠は純粋な人間でヴァーリは旧ルシファー血族の半悪魔だ。それだけ悪魔と人間には差がある。魔力もそうだが純粋な身体能力を悪魔は遥かに人間を凌駕する。だが、一誠はヴァーリを遥かに凌駕する強さを持っている。この世界で一番非力な人間という種族であるにも関わらず、この世界を簡単に壊せるほどの力を持っている。

―――根本的に違うのだ。人間がどんなに努力してもチーターに速度で勝てないし、泳ぎでイルカより速く泳げない。それこそ、鳥の様に自力で空を飛ぶこともできない。それはそうだ。なぜなら根本的に存在の在り方が違うからだ。違うのだ。存在が、格が。強力な力をもつドラゴンが技術を必要としないのと同じだ。サーゼクス・ルシファーの『騎士』であり、木場祐斗の師でもある沖田総司は世界でもトップクラスの剣士だ。だが、その剣術がオーフィスやグレートレッドに通用するか?するわけがない。どれだけ技術を得ようが、圧倒的な力をもつ者の前では小手先の技など通用しないのだ。オーフィスに剣術や格闘戦の技術が必要だろうか? 必要ないだろう。技術もなにもなくただ力を行使するだけ。それだけで彼等は勝てるのだから……。

「―――ああ、もういい」

そう言った瞬間、一誠はヴァーリの目の前に移動していた。ほんの刹那の間にだ。一誠がいつ移動したか見えた者はここにはいないだろう。

「―――死ね」

先ほどのお返しだと言わんばかりに無雑作に蹴りを放つ。それは白龍皇の鎧を紙のように破り、放たれた弾丸のようにヴァーリを吹き飛ばす。二回、三回とバウンドし、地面を何度も転がり、そのまま倒れ伏す。たった一撃。それだけで勝敗は決したのだ。アザゼルやアーサー達がヴァーリに駆け寄り、黒歌が慌てて仙術による治療を施す。

(この程度か。口先だけの雑魚だったな。―――ヴァーリ・ルシファー。どれだけ偉そうなことを言おうが最後に物を言うのは『力』なんだよ。信念が、覚悟があるならある程度尊重しよう。だが、それを俺に通そうとするのなら、それ相応の物を見せてみせろ。それができないのなら、野良犬のように死んで逝け)

(……満足できなかったか?相棒)

(ああ。力も速度もない。全力のサーゼクスにすら劣る。…………無駄な時間だったよ)

(今代の白龍皇は歴代最強だったんだがな……。相棒、なぜ、今ヴァーリ・ルシファーに勝負を提案した? 初めから相手にならないことは解りきっていただろう。あと、三年もあればあいつは天帝クラスまで上り詰めてきたかもしれないのに)

(どこか期待していたんだろうな。ヴァーリの言葉を聞いて、期待していたんだ)

(期待?)

(ドライグ。俺はな、何かを成そうとするなら力が無ければそれはできないと思っている。……そうだろ?高校や大学に行くなら学力が必要だし、家族を養っていくなら財力。人に何かを命令するなら権力が必要だ。自分の考えを貫くのだって力が必要だ。何をするにも最終的には『力』が必要だ。ヴァーリは俺に対して自分の意思を突きつけてきた。なら、最低限俺を納得させるだけの力を見せてくれると思ったんだよ。……結果はこれだったけどな)

一誠をその場から一歩も動かず、傷一つ負わせていない。それに対し、ヴァーリはただの蹴り一発を食らっただけで地に伏している。それだけの差があるのだ。もし、ヴァーリの一撃を一誠の様にただ突っ立っているだけで受けたら、たとえ天帝と言えど致命傷は避けられないだろう。だが、それを受けた一誠やそれに準ずるであろうオーフィスやグレートレッドからしたらそうではない。それこそ、蠅がぶつかった程度の認識でしかないだろう。邪魔なら潰すし、無視しても問題ないのなら放っておく。今の一誠にとってヴァーリ・ルシファーとはその程度の存在でしかないのだ。そこ等辺に転がっている小石程の価値もないただの虫けら。その程度の認識だ。

(オーディンの護衛はどうするんだ?)

(知らねえよ。クソジジイがどうなろうが興味ねぇからな。殺しちゃいねぇし、ヴァーリ達だけでなんとかすんだろ)

(グレモリー眷属に被害が行ったらどうするんだ?)

(どうもしねぇよ。アーシアにはお守り渡してあるから確実に安全だろうし、リアスたちは自分たちでどうにかきり抜けるだろうよ)

(大切ではなかったのか?)

(ああ、大切だったな。……どうも最近あいつらに対する興味が薄れてきてるんだよなぁ。前はサーゼクスが頭下げてまで頼みこんできたから暇つぶし程度に護衛を請け負ったけど……。最近はある程度強くなったし、俺が守らなくても平気だろ。ってか、死んだらその程度の存在だったってだけだしな。アーシアだって悪魔なんだからある程度の覚悟は必要だ。何時かは自立する時が来る)

(……なんだか酷くブレているな)

(俺が?)

(最初はどうでも良く、アーシア・アルジェントを切っ掛けにグレモリー眷属を大切に思い、あいつ等が傷付けば怒る。それなのに今は興味が無くなってきたと言う。……どうしたんだ相棒? 昔のお前はそんなではなかっただろう? オーフィス同様。殆どのことに興味を示さない。ある種、完結した存在だったはずだ)

(……俺も人間だったってだけの話しだろ。………………ああ。そういうことか)

(どうした?)

(今、何となくわかったんだよ。俺がリアスたちを傷つけられてキレた理由が)

(……ほう?)

(簡単だ。あいつ等は、RPGで言うならまだレベル1の状態だった。リアスたちのレベルが上がっていくのを俺は傍から見、時には手伝い、あいつ等が強くなっていくのを楽しみにしていたんだ。……そんな風に育てたキャラを第三者が勝手に削除しようとしたから俺は怒った。子供の癇癪と同じようにな。……ただ、その育てたキャラの完成形が見えてきて、自分の思った通りの強さにならないから興味が失せた。宝石の原石みたいなもんさ。一生懸命磨いたのに、それが納得のいく物じゃなかったから興味が失せる。……俺にとってあいつ等はそう言う物だったって事だ)

(随分、身勝手な話だな)

(ああ、そうだな。……だが、それがどうした?俺は今までそうして生きてきたはずだ。自分の思った通りに生きてきた。あいつ等の内、誰か一人でも俺に一太刀でもあびせられる程度に育てばと思った。だが、ヴァーリ・ルシファーを相手にして解ったんだ。あいつより才能も力もない、戦う意志もないグレモリー眷属じゃ、いくら強くなったって、俺には未来永劫届かないってことが)

(…………相棒がそう言うのなら、それでいいさ)

(……?)

(なんでもないさ)

最後にそう言い、ドライグは神器の奥底に潜む。一誠もさっさと家に戻ろうとヴァーリから背を向けようとした時だった。

「……ま…だ…………だ」

ヴァーリが立ち上がろうとする。アザゼル達の手を払いのけ、黒歌の治療を拒絶する。そして自分の力だけで立ちあがる。鎧は蹴りを食らったところから無残にも砕け、全身に罅が奔っている。ヴァーリがほんの少し動くだけで、まるで砂の様にパラパラと崩れ落ちる。蹴られた個所の服は破け、ヴァーリの鍛えられた体を惜しみなく外界に晒している。普段なら美しいと思えるほどのその肉体は青黒く変色しており、見ている方が痛々しくなるほどだ。

「……こ、の…俺………を…………『白龍皇』を、………ヴァーリ・ルシファーを…………舐めるなァ!!」

そう叫んだ瞬間ヴァーリの口から大量の血が吐き出し、膝を着く。当たり前だ、一誠の蹴りをまともに受けたのだから。さっきの蹴りは、冥界最強の『戦車』であるスルト・セカンドですら余裕で絶命させることができるほどの威力だったのだ。ヴァーリが今生きているのは蹴りの直前で白龍皇の力である半減を発動できこと、歴代で最も強固と言える『白龍皇の鎧』を纏っていたこと、そしてヴァーリ自身がかなり肉体を鍛えていたからだ。もし、どれか一つでも欠けていたらその時点で死んでいる。

「止めろ! ヴァーリ!! これ以上動いたら本当に死んじまうぞ!?」

アザゼルが慌ててヴァーリを止めるが、ヴァーリはノロノロと立ち上がり、口を開く。

「アザゼル。ここで無様に敗北するわけにはいかないんだ。……俺は将来絶対に兵藤一誠を超える! それなのに俺は兵藤に敵と認識すらしてもらえない!! あいつが攻撃した時に視えた瞳が、まるで鬱陶し虫を踏みつぶすような、その程度の感情しか俺に抱いていなかった!!」

またもヴァーリの口から大量の血が吐き出される。これ以上動けばアザゼルの言った通り死んでしまうだろう。それなのにヴァーリは止まらない。全身から辺り一帯を押し潰すほどの神々しいオーラが迸り、鎧に残っている部分の各宝玉から七色の輝きが発せられる。そして、ヴァーリの口から呪詛にも似た呪文が発せられる。

「我、目覚めるは―――」

〈消し飛ぶよっ!〉〈消し飛ぶねっ!〉

ヴァーリの声に呼応するように別の声が発せられる。この世の全てを呪いそうな声が、歴代白龍皇の怨念が辺り一帯に響き渡る。

「止めろ! ヴァーリ!! 通常の状態ですら危険なのに、そんな状態で『覇龍』を使ったら確実に死ぬぞ!!」

アザゼルの必死の声も無視してヴァーリは呪文を紡ぐ。

「覇の理に全てを奪われし、二天龍なり―――」

〈夢が終わるっ!〉〈幻が始まるっ!〉

「無限を妬み、夢幻を想う―――」

〈全部だっ!〉〈そう、すべてを捧げろっ!〉

「我、白き龍の覇道を極め―――」

ヴァーリから一際大きなオーラが発せられ、最後の言葉が発せられる。

「「「「「「「「「「汝を無垢の極限へと誘おう―――ッ!」」」」」」」」」」

Juggernaut Drive(ジャガーノート・ドライブ)!!!!!!!!!』

ヴァーリの鎧が変質していく。まるで意思を持った生き物の様にヴァーリの全身を覆っていき、一誠の攻撃により破損していた箇所も再生していくように治っていく。そして、白金に輝く鎧を纏ったヴァーリは、見る者の心が奪われそうな程に美しかった。

「―――行くぞ!!! 兵藤一誠!!!!」

ヴァーリはそう叫び、一誠へと飛びかかる。ただ、飛び上がっただけなのに、地面が砕ける。

『Half Dimension!』

『DividDividDividDividDividDividDividDividDividDividDivid!!!!!!!!』

ヴァーリは半減の力を使い、一誠の力を自分の物としていく。

「…………がふっ!!?」

ヴァーリの口から先ほどとは比べられないほどの血が吐き出される。ヴァーリの鎧が空気に溶けるように崩壊していく。『覇龍』状態の鎧が……だ。理由は簡単だ。

(―――クソッ! たった一回の半減でこちらの許容量を遥かに超えるとは……ッ!? これほどの力を完璧に制御しているのか! ……キミに近づけば近づくほど、キミが遠のいて行くよ、兵藤一誠!まだだ、俺はこんなものじゃない!!俺の力を、信念を、意思を、意地を見せてやる!! お前が相手にしているのは最強の『白龍皇(ライバル)』だということを!)

『DividDividDividDividDividDividDividDiviDivDiDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDDD!!!!!!!!!!!!!』

さらに半減を使うヴァーリ。鎧はもはや見る影もなく、ヴァーリの右腕の部分しか残っていない。しかも、それもボロボロだ。もし、歴代の白龍皇が『覇龍』を完璧に使いこなせ、同じ事をできたとしても、莫大な力を抑えきれずに死んでいただろう。だが、ヴァーリは生きている。ボロボロの状態で、ほんの少し動くだけで死んでしまいそうな重傷なにも関わらず、ヴァーリは突き進む。今、ヴァーリを動かしているのは意地と怒りだ。現赤龍帝である兵藤一誠に自分の力を見せつけるための意地。そして、兵藤一誠に敵と認識してもらえなかった自分自身の不甲斐なさと弱さに対する怒りだ。それだけがヴァーリを突き動かす。前へ、ただ、我武者羅に前へと突き進む。一回の半減で自分では抑えきれないような力の奔流を何度も受け入れ、さらに吸収する。圧倒的な力をヴァーリは自分の意思で捻じ伏せ、それを自信の力とする。そして、一誠から奪った力を全てを右腕一本に集束させ、そのまま、一誠の顔面を殴る。……もし、ヴァーリが一誠の力を利用しなければ歴代白龍皇の怨念に体を乗っ取られていただろう。あれだけ傷付いたヴァーリが歴代白龍皇に乗っ取られなかったのは、一誠の力の奔流に当てられ、ヴァーリの体を乗っ取るどころではなかったからだ。それ程の力を籠めた一撃。

ものすごい衝撃がフィールドを襲い、一誠の後ろにあったフィールドを消し飛ばしていく。そのあまりの衝撃にアーシアはおろか、木場やアーサー、さらにはアザゼルやバラキエルまでもがまともに立っていられなかった。

もの凄い量の粉塵が辺りを包み込む。さすがに今のヴァーリの攻撃を見て、一誠の生死を心配するリアス達。

「―――っぅ。……どうなったんだ?」

アザゼルですら今の攻撃を無防備に受けた瞬間、一誠が死んだと思った。――――その時だ。粉塵が晴れ、そこから二人の姿が現れる。

「ヴァーリ!兵藤!」

アザゼルが思わず叫ぶ。二人からその場でピクリとも動かない。だが、アザゼルの声に答えるように変化が訪れる。ヴァーリの体が崩れ、地面に倒れる。

「―――っな!?」

その場で驚愕の声が上がる。それは誰が上げた声だったか?木場かもしれないしアーサーかもしれない、もしかしたらアザゼルだったかもしれない。―――一誠は無事だったのだ。ヴァーリの攻撃を真正面からまったくの防御姿勢を見せずに受けきって見せたのだ。この場にいる全員を纏めて100回は殺してもお釣りがつきそうな程、強力な攻撃を。受ければたとえ神々と言えど、塵一つ残らなかったであろう。そんな攻撃を一誠は受けきった。

「……とどかなかったか」

アザゼルが呟く。

ヴァーリが死ぬ気で攻撃したのに一誠はまったくの無傷だ。これでは余りにもヴァーリが報われない。―――本当に無傷なら。

一誠の額から血が流れる。それは致命傷とかではなく、それこそ唾でも付けておけば直ぐに塞がってしまいそうなほど、小さな傷だ。だが、届いたのだ。ヴァーリの一撃は間違いなく一誠に届いた。

 

―――そもそも、一誠が何故、あれほど無防備な状態で防げたのか? 一誠がいくら人外めいた強さを誇ろうとも、その肉体が人間の物であることには変わりない。確かに一誠は体を鍛えているが素の肉体強度は、悪魔はおろか英雄の子孫にすら劣る。それならどうやって防いだのか?簡単な理由だ。一誠は自身の持つ膨大な魔力で無茶苦茶なまでに体を強化しているのだ。暴力的なまでの魔力により、強化された一誠の体は神の本気の一撃すら容易く防ぐ。さらに一誠は自分の体を覆うように魔力の膜みたいな物を纏っている。この魔力による鎧とも言える物は魔力を使用したもの全てを遮る。むろん、魔力の鎧も完璧でなく、防げない攻撃がある。それは魔力を使用しない攻撃だ。魔力による防御は魔力無き攻撃を防げない。仙術や、天使、堕天使の光による攻撃も防げない。だが、それらは防ぐ必要すらない。仙術は自身も仙術が使えるため、防ぐことは可能だし、仙術で防げなかった場合は自身の体が乱される前に自信の宿している膨大な力で弾き飛ばせばいいだけだ。光による攻撃も身体強化した一誠を貫くには攻撃力不足だ。神の本気の一撃すら容易く防げる程だ。たとえミカエルやアザゼル、バラキエルの本気の一撃でも一誠に負傷を与えるのは不可能だ。もし、一誠にダメージを与えたければ、魔力を使用せず、尚且つ神の本気の一撃すら容易く防ぐ一誠の強化した体に防げないほどの威力の攻撃を与えるしかない。先ほど、天使や堕天使の光の力は防げないと言ったが、それは魔力に限定した場合だ。エーテリオンの力を使えば簡単に打ち消せる。オーディンのグングニール、トールのミョルニル、帝釈天のヴァジュラですら簡単に防げる。簡単に言ってしまえば近距離で神秘の力を行使せず、自身の身体能力だけで神ですら塵一つ残さない程の一撃を放てれば一誠に傷を負わせることはできるのである。だが、そんな事が出来るのはこの世界でオーフィスとグレートレッドくらいだろう。だが、ヴァーリはそれを成した。一誠から半減の力を使いその莫大な力のほんの一旦、それこそ0.1%にも満たない程度の力を吸収した一撃は一誠の魔力による防御を破り、全力、本気で身体強化したわけではないとは言え、一誠に掠り傷程度の傷を与えたのだ。それがどれほどのことか……。少なくとも戦闘で一誠に傷を負わせたのはこの世界でヴァーリが最初で最後だろう。

 

一誠は自分の額から流れ出る血を掬い、自分の目で確認する。一誠だって別に血を流したのはこれが初めてではない。だが、戦闘で負傷し、血を流したのは生まれて初めての経験だった。

「―――は、ははは」

一誠の心に歓喜が奔る。生まれて初めて戦闘によって血を流したことによる興奮だ。今まで、戦闘が楽しめたことはなかった。一番手応えが有ったオーフィスやグレートレッドは戦闘者ではない。死ぬ気で相手に勝つ、殺すと言った感情がないのだ。だが、初めて会えたのだ。自信を殺そうとする者で怪我を与えてくれる存在に。無論、一誠にも分かっているのだ。ヴァーリが放った一撃は自身の力を利用し、精神を振絞り、文字通り死ぬ気で放った攻撃だと。自分の存命中はおろか、ヴァーリの長い生涯で先の一撃と同等かそれ以上の攻撃はもう放てないだろう。だが、それでも歓喜は収まらない。今後、もしヴァーリが無事に完治し、年月をかけ、強くなろうが、今以上に興奮することも歓喜することもできない。それならば―――。

一誠の口がつり上がる。

「ヴァーリ・ルシファー、認めてやる。お前は俺が戦ってきた中でも最強の戦士だ。だから俺はお前に敬意を表そう。―――これはお前への礼だ」

一誠の左手に『赤龍帝の籠手』が現れ、莫大な量のオーラが放たれる。それは一誠の周りのフィールドを空間ごと破壊し、ヴァーリを吹き飛ばす。吹き飛んだヴァーリをアザゼル達が慌てて受け止める。そして、呆然とした表情で一誠を見る。

『周りの連中も皆殺しにするつもりか? 下手したらアーシア・アルジェントも巻き込まれかねんぞ?』

「それがどうした? 今はそんな事どうでもいい!!」

『…………そうか』

今の一誠に、ドライグの言葉は届かない。初めての経験、初めての興奮。生まれて初めての、心の奥底からの歓喜は、一誠に言葉に表せないほどの快楽を与えているのだ。今の一誠を止められる者はこの世界に誰一人としていない。

一誠からヴァーリとはまた違った呪文が紡がれる。

「我、目覚めるは―――」

(終わったね)(始まったな)

ヴァーリの時と同じように一誠とは違う声が複数響き渡る。だがそれは、歴代白龍皇の全てを呪うような怨念の籠った声とは違い、この世界の全てにたいし、慈しみ、憐れんでいるかのようだ。

「覇の理に辿り着きし、二天龍なり―――」

(いつだってそうでした)(いつだってそうだった)

アザゼルが光の槍を出現させ、アーサーもコールブランドを構える。

「無限を降し、夢幻を砕く―――」

(終焉を告げるのは)(終末を齎すのは)

バラキエルがアザゼル達に合流し、光の槍をアザゼルと同じように構える。

「我、真なる龍の覇王となりて―――」

(いつだって力です)(いつだって力だ)

美侯が青い顔で如意棒を構え、黒歌が真っ青な表情でヴァーリを治療する。

「「「「「「「「「「汝を紅蓮の煉獄に沈めよう―――ッ!」」」」」」」」」」

Juggernaut Drive(ジャガーノート・ドライブ)!!!!!!!!!』

左腕の籠手が一誠を包み込むように鎧を形成していく。全身を覆い、そこから新たな骨格が作られ、翼が生えていく。それはまるでドラゴンが……いや、この世界全てを破壊しうるだろう災害が生まれてくるような光景だった。籠手の宝玉から巨大な発光。全員が一瞬目を瞑り、そして次の瞬間には目を開ける。―――そこには災厄がいた。

「―――この姿になるのも久々だ」

一誠からそう呑気な声が聞こえてくる。先ほどまでのオーラは消え、今の一誠からは威圧感という物が感じられない。

それこそ、ヴァーリの『覇龍』の方が遥かに圧倒的だった。―――アザゼル達からしてみれば。

一誠が一歩踏み出す。それだけでフィール全体に亀裂が走り、空間が震える。

「……っち。あんまり長くはもたねぇか」

そう言った次の瞬間、一誠はアザゼル達の目の前まで移動していた。

「……兵藤?」

「退け」

一誠はただ一言発する。邪魔だから退け。そう言っただけだ。

「――――っあ」

一誠の声を聞いた瞬間美侯とアーサーが自分の得物を落とし、膝を着く。……本能で悟ってしまったのだ。今の一誠はヴァーリ以外を見ていない。もし、一誠の邪魔をするようなら子供がアリを踏みつぶすように自分たちは殺されるだろうと。恐怖を感じているが体が震えることすらない。余りの恐怖に体が正常に動かないのだ。黒歌は涙を流しながらヴァーリに治療を施そうとするが、仙術が発動すらしていない。今の一誠を前にして仙術を行使できる者など、孫悟空を含めたごく一握りの存在だけだ。

「本気でヴァーリを殺す気か?」

「退け」

アザゼルの問いかけに一誠はまともに答えようとはしない。

「―――頼む。ヴァーリを殺さないでくれ。確かにこいつは『禍の団』のテロリストかもしれないが、それでも俺にとって息子みてーなもんであることには変わりないんだ。だから頼む。どうしても気が収まらないと言うのなら俺の命を代わりに差し出すから」

そう言ってアザゼルは土下座する。堕天使の総督であるアザゼルが恥も外聞もなく、たとえ自分の命を代わりに差し出そうとも、息子であるヴァーリを助けてくれと命乞いをする。

「退け」

だが、一誠はアザゼルの言葉を意に介さない。

「頼む」

尚も引かないアザゼル。だが、今の一誠にとってアザゼルは邪魔でしかない。ならどうするか?簡単だ。排除してしまえばいい。仏の顔も三度まで。アザゼルが一応知り合いだから三回までは警告した。引かないようなら消す。それだけだ。

「―――アザゼル!!!」

バラキエルが慌ててアザゼルを押し飛ばす。

「――――っ!!!!!??」

音になっていない声が上がる。一誠が邪魔なアザゼルを退かそうと蹴りを放ったのだ。それを代わりに受けたバラキエルは血を辺りにまき散らしながら、リアスたちの方へと吹っ飛んでいく。勿論、『覇龍』状態の一誠の蹴りを食らったのだ。無事であるわけがない。慌ててリアス達が駆け寄ると、そこには上下で体が別れたバラキエルが横たわっていた。蹴りによって分断されたというのに、その断面は世界でもトップクラスの剣士が世界で最も素晴らしい名刀で切り裂いたかのように綺麗だ。幸いなことに心臓をやられていたわけではないので生きてはいる。だが、それも時間の問題だ。もし、先ほどの蹴りの威力がもう少し低かったらバラキエルの肉体は粉々になっていただろう。アーシアは余りの光景にへたり込み、朱乃は父の姿を呆然と眺めている。この中で一番早く動いたのは以外にもギャスパーだ。涙目になりながらも神器の力でバラキエルの時間を止め、これ以上失血しないようにする。普段だったらバラキエルに神器の力は効かなかっただろう。だが、今の様に死にかけならたとえ魔王であろうとも時間を止めることができるだろう。ただし、同じ神器を持っている他の存在だったらそれは不可能だ。

現魔王ルシファーの実妹にして、次期グレモリー家当主であるリアスの『僧侶』の『変異の駒』であるギャスパ―だからこそ可能だと言える。才能という点を見れば、ギャスパーはグレモリー眷属の中でも頭一つ飛びぬけている。そして、ゼノヴィアがバラキエルの下半身と上半身を繋げ、ギャスパーが停止を解除した瞬間木場がフェニックスの涙を切断面に振りかける。木場達の迅速な治療により、バラキエルが死ぬことはないだろう。

一誠は自分が殺しかけたバラキエルに興味の欠片も抱かない。今一誠の頭の内に在るのは自分に傷を付けた最強の相手を殺すことだけだ。

一誠がなぜ、ここまでヴァーリを殺すことに執着しているのか? 例えば、人が美しい光景を見たとしよう。そういった場合、大多数の人間が写真を取るだろう。人によっては見て記憶した光景を絵にして残したりするかもしれない。人だけではない。悪魔であろうが、天使であろうが楽しかったり、美しかったり、嬉しかった時の事をなんらかの方法で残そうとするのは当たり前の行為だ。だが、今の一誠の感情を記録として残すことはできない。なら、どうするか?それを一生の思い出にすればいい。無論、記憶による思い出は時が経つに連れ、劣化する。だが、それ以外に方法がないのだから仕方がない。もし、ヴァーリが今後また挑んでくるような事があったら、その度に今の幸福は薄れていくのだろう。ならば、ヴァーリを殺し、そしてヴァーリの死と共に自分の思い出としてずっと保持しておけば良いのだ。今ここでヴァーリを殺せば、将来、今以上に劣化した強さを持つヴァーリと戦わなくて済むのだから。

……生かせばヴァーリは今以上に強くなるだろう。だが、一誠を傷つけることは生涯不可能だ。一誠が、さっきと同じくらいに手加減すれば傷を負うだろうが、それではこの興奮を得ることはできない。油断も含めて、ヴァーリが一誠を傷つけられるのは今回一度きりだ。だからこそ、自分を傷つけることができた今のヴァーリを殺すのだ。自身が今まで感じられたことのなかった幸福を思い出にするために。そして、そんな興奮を与えてくれたヴァーリに礼をするために。ヴァーリの目指していた頂点の力を見せつけることで、ヴァーリへの手向けとするのだ。

「……あ、ああ……だ、ダメ………。ヴァーリを……殺させるわけには……いかない…………」

体をブルブルと震わせ、大粒の涙を滝のように流しながら黒歌は一誠の前へと立ちはだかる。両腕を広げ、自身が盾となる様に。一誠は黒歌の事を障害だと思っていない。もし、これが普通の悪魔などだったら逆に虐殺されていただろう。最上級悪魔クラスの力を持つ黒歌はそれだけ強い。しかし、一誠からしてみれば吹けば散ってしまう程度の存在だ。今の一誠にとって黒歌は気にする程の価値は無い。自分の邪魔をするというのならば消すだけだ。

「ヤメロオオオォォォォォォォォォォォ!!!」

アザゼルが絶叫を上げながら一誠に突撃する。自身が生み出せる最高の光の槍を構え、突進する。だが―――。

「――――っな!?」

気がつけばアザゼルは地面に横たわっていた。一誠がほんの少し、視線を向けただけで槍は砕け、四肢を切断され、宙を舞う。―――一誠は前から言っていたが、自分に迷惑をかけなければ、世界を滅ぼそうとアザゼル達には関与しないと公言している。最近はある程度仲が良かったが、基本的に一誠にとってアザゼルやサーゼクス、ミカエル達はどうでもいい存在なのだ。だから、自分のやろうとしていることを邪魔するなら容赦なく排除する。

「うおおおォォォォォォォォ!!!」

「ハアアアァァァァァァァァ!!!」

美侯とアーサーがそれぞれの得物を手に、一誠へと攻撃を仕掛ける。二人とも逃げ出したいほどに怖い。ほんの一秒先には無残に殺されている自分達のビジョンが明確に見えるほどだ。だが、ここで逃げたら男が廃る。黒歌があんなにも頑張って一誠へと立ち塞がっているのだ。普段、男女意識などないが、仲間を見捨てて自分だけ助かることなんてできるはずがない。

もし、これが物語だったら、黒歌達は傷付きながらもこの場を切り抜けられたかもしれない。だが、そんな都合の良いことは起こり得ない。邪悪なドラゴンからお姫様を助けてハッピーエンドで終わらせる事ができないのが現実である。仮にこの世界が物語で在ったとしても黒歌達は助からないだろう。何故なら、この『ハイスクールD×D』という世界に於いて、主人公は『兵藤一誠』しかありえないのだから。

 

―――結果は誰の目から見ても明らかだった。アーサーは両腕を吹き飛ばされ、この地上で最強とも言われる聖王剣コールブランドは粉々に破壊されている。美侯の方は如意棒こそ無事だったが、右腕と左足を切断され、綺麗な円形に削ったような穴が腹に空いている。

アーサーは薄れゆく意識の中で思う。

(……ああ、初めから解りきっていた事ではありませんか。こんな化け物に敵う筈がない。…………それにしても無様を晒しましたね。これでもソコソコ自分の強さに自信はありましたけど。掠り傷一つ負わせるどころか、触れられることすらできないなんて。両腕を吹き飛ばされ、聖王剣も粉々。盗み出した私が言うのもなんですが、両親には申し訳ないことをしました。…………ルフェイ。あなたは優しいから、敵討などとバカなマネはしないでしょう。ただ、できれば私のようなテロリストではなく、普通の人間として、幸せに生きてほしいですね。兄と呼ばれるほど立派な人間ではありませんでしたが、それだけが心配です。…………私と美侯は放っておいてもいずれ死ぬでしょう。黒歌もあのままヴァーリを庇えば殺されるでしょうね。ヴァーリもたぶん死ぬでしょうし。まぁ、このメンバーならあの世で一緒にいても退屈はしないでしょうが。……ふふふ。短い間でしたが、ヴァーリ達と一緒にいた時間はそれほど悪い物でもありませんでしたね)

アーサーはそこで意識が途切れる。

ヴァーリを庇っているのは黒歌一人だけだ。顔は涙の所為でボロボロ。足腰はガクガクと震えていて、立っているのも精一杯と言った感じだ。それこそ、そこ等辺の子供が押しただけで簡単に倒れてしまうだろう。今すぐ一誠の前からどかなければ、黒歌もそこ等辺に転がっている美侯やアーサーと同じ運命を辿るだろう。それでも黒歌は逃げない。黒歌が逃げないのは怖いからだ。黒歌は自分の妹である小猫のために自分の元主を殺し、SS級のはぐれ悪魔となった。その後、『禍の団』に勧誘され、ヴァーリチームに入った。それまで黒歌は一人だったのだ。上級悪魔による保護を失った黒歌はたった一人で地を這いずり、泥を啜ってでも生き延びてきた。そうまでして黒歌が生き残ってこれた理由は、妹の存在があったからだ。だが、いくら妹ことを思おうが、当時の黒歌は色々と限界だった。精神は摩耗し、体もボロボロ。もし、あのまま『禍の団』に勧誘されなければ、黒歌はそのまま野垂れ死んでいただろう。そんな自分を受け入れてくれたのがヴァーリ達だ。黒歌にとってヴァーリ達と一緒にいる時間は心やすらぐ、幸せ時だったのだ。もし、この場で逃げたら命は助かるだろう。だが、また一人になってしまう。それは嫌だ。だから、黒歌は引かない。一誠の手が黒歌に伸びる。黒歌はそれを呆然と見ているしかない。普段の黒歌なら目を瞑っても避けられるだろう。いや、たとえ人間の子供でも避けられる程度の速度でしかない。それなのに黒歌はそれを避けない、避けられない。

ギイィィィィン!

金属同士がぶつかった様な甲高い音が辺り一帯に響き渡る。木場が龍殺しの聖魔剣を二振り作り、それを交差する形で一誠の手を止めたのだ。

「―――っあ」

黒歌はもう限界だったようでその場にへたり込む。

「一誠さん。もういいでしょう? ヴァーリはもう虫の息です。これ以上はいけない」

木場が一誠にこれ以上は止めるように声をかける。

「……姉さま、だいじょうぶですか?」

小猫が心配そうに黒歌を支える。

「……あ……白音?」

黒歌が呆然と小猫の顔を見る。

「だめ、……逃げて…………」

黒歌はこの場から逃げるように言う。

もし、この場に長く止まっていたら最愛の妹が兵藤一誠(化け物)に殺されてしまうかもしれないのだ。小猫が死ぬかもしれないのは自分の死以上に怖ろしい。だからこそ、黒歌は小猫には逃げろと言う。

「……姉さまを見捨てることなんてできません。それに、一誠さんをどうにかしないと」

小猫は姉を安心させるように笑顔を向け、そう言う。黒歌を落ち着かせるように背中を摩りながら、一誠を見る。前にシャルバ・ベルゼブブを殺す時にたった一回だけ見た、『赤龍帝の籠手』の禁手化。その時よりも遥かに生物的なフォルム。『赤龍帝の鎧』よりもどこかおぞましさを感じさせる。

「退け」

一誠が一言そう発する。それは木場に向けられたものなのに、小猫は震えることを止められなかった。―――自分たちをなんとも思っていない。それこそ、同じ生物とすら認識していない。

「いくらなんでもやりすぎです。先生やバラキエルさんにまで手を出すなんて……。貴方はグリゴリを敵に廻すつもりなんですか?」

「退け」

一誠は木場の言葉を気にもしない。今の一誠に木場達に関する興味はない。子供が新しい玩具を買ってもらった後、今まで遊んでいた玩具に見向きしなくなるように。

「速く治療しなければ、先生たちが死んでしまいます。お願いですから、もう止めてください」

「退け」

「一誠さん!!」

木場がそう叫んだ瞬間、絶大な威力の聖のオーラによる一撃が一誠をのみ込んだ。見ればゼノヴィアがデュランダルを使い、一誠を攻撃したようだ。小猫は黒歌を、木場はヴァーリを抱え、その場から離れる。

「……解ってはいたが、あの程度では傷一つ負わせられんか」

ゼノヴィアがどこか呆れながらそう言う。デュランダルによる不意打ちをもろに食らったのだ。塵一つ残さずに消滅しても不思議ではない。なのにだ、一誠は傷一つ負っていない。掠り傷どころか、鎧に焦げ目すらついていない。

ゼノヴィアはデュランダルをしまい、アスカロンを構える。木場も聖魔剣を創造し、小猫も猫股モードになって構える。イリナは一歩後方に下がり、光による攻撃をできるように、ギャスパーは全体の援護をできるように構えている。

リアス、朱乃、アーシアの三人は余りの事態に呆然としていて、戦力として数えられないだろう。

一誠がゆっくりと木場に受け止められた掌をみる。そして、ものすごい重圧が全員を襲う。別にこれは一誠が意図として威圧してるわけではなく、先ほどから邪魔ばかり入るので少しばかり不機嫌になったために出ただけだ。普段抑えているそれと違い、無意識に出しているため意図として出す物より遥かに弱いが、一誠の加減無しの威圧はそれだけで死んでしまいそうな程に強烈である。

全員が歯を食いしばり、震える体を無理矢理押さえつける。

「―――来るぞ」

ゼノヴィアがそう呟く。一誠は軽く木場達の方に視線を向ける。すると、ゼノヴィアがまるでダンプカーに撥ねられた動物の様に宙を舞う。

「ゼノヴィア!?」

イリナが慌ててゼノヴィアへと駆け寄る。

「―――っぅ!? 大丈夫だ!」

ゼノヴィアはイリナに手を借りながらも立ち上がる。イリナはゼノヴィアの持っているアスカロンを見て、驚愕する。世界でも最高峰の龍殺しの聖剣であるアスカロンが真っ二つに折れているのだ。龍に属する存在でアスカロンを破壊できるものなど、二天龍クラスの化け物にしか無理だ。龍王クラスでも難しいだろう。ゲオルギウスが討伐したドラゴンは生き残っていれば、龍王の中でも上位に食い込めるほどの力があったのだ。そんなドラゴンの攻撃を弾き、強固な鱗を貫いた聖剣だ。それだけドラゴンに対し、アスカロンは有効な武器なのだ。そんな武器が一誠の不可視の攻撃により、一撃で折れたのだ。ドラゴン系の神器を宿している者でそんな事が出来るのは一誠くらいだろう。

「いま何をしたか視えたか?」

ゼノヴィアがアスカロンを収納し、デュランダルを構えながらそう訊く。だが、全員答えられない。一誠がこちらに視線を向けた瞬間、ゼノヴィアが吹き飛んだようにしか、見えなかったのだ。

「強いことは知ってはいたがここまで出鱈目とはな……」

ゼノヴィアは苦笑いをしながら、一誠を見る。初めから勝てると思うほど自惚れてはいなかった。だが、生き残るために足掻くことすら自惚れになるのだと思い知らされる。足掻くと言うことは大なり小なり、自分の力が相手に通じると言うことだ。これからゼノヴィア達がすることは足掻きではなく悪足掻きだ。そんなもの、なんの役にもたちはしない。

一誠が右手の人差し指を無雑作に木場達に向ける。次の瞬間に大規模な爆発。ギャスパーが後方にものすごい勢いで吹っ飛んでいく。

「ギャスパー!?」

ゼノヴィアが思わず叫ぶ。ゼノヴィア達が無事なのはギャスパーのおかげだ。神器を使い、目の前の空間の時を止め、それを壁のようにしたため、一誠の攻撃が周りに反れたのだ。だが、そのせいでギャスパーは戦闘不能だ。どれだけ強力な盾を持とうが、攻撃を受けた瞬間に衝撃が体に来るのと同じ原理だ。攻撃は防げても衝撃までは防げない。ギャスパーは両目から血を流して気絶している。

「クソ!」

ゼノヴィアが悪態を吐く。そして思う。自分は慢心していたのだろう。聖剣デュランダルの担い手で、教会でも上から数えたほうが早いエクソシストだった。これまで、なんども敵と戦い、勝ち、そして生き延びてきた。だが、そんな物この世界でもトップクラスの強者には通じるものではなかったのだ。現に、アスカロンは折られ、ギャスパーがやられた。

自分の後方から光による攻撃が一誠へと向かう。イリナが攻撃したのだ。だが、それが一誠へと辿り着くことはなかった。一誠から滲みでているオーラにイリナの攻撃が掻き消されたのだ。

一誠の手に、極炎で構成された剣が握られる。一誠は面倒くさくなったのだろう。ヴァーリもろとも木場達を消し飛ばすつもりだ。

一誠が適当に上に構える。剣の素人かと思わせるほどに無茶苦茶な構えだ。だが……。

「……まずいな」

木場が冷や汗を流しら呟く。そう、判ってしまうのだ。あれが振り下ろされた瞬間、自分たちはお終いだと。かなり離れているというのに、剣を構成している炎はこちらにまで熱を放っている。あんな物が放たれたら自分たちの防御力じゃ防ぐことなんてできない。

「それでも……!」

木場は龍殺しと氷の聖魔剣を大量に創造する。それを編むようにしてシェルターを何層も構築する。今木場が生み出した聖魔剣は数百、数千は超えるだろう。木場にしてもここまで大量の聖魔剣を創造するのは初めてだ。ゼノヴィアがデュランダルをチャージしている。イリナも光による攻撃を撃てるように準備している。一誠の攻撃を少しでも相殺するつもりなのだ。

一誠が剣を振り下ろす。それは木場の聖魔剣によるシェルターを氷のように蒸発させ、威力はまったく衰えを感じさせない。だが、シェルターを破るのに一瞬と言える時間はかかったのだ。最後の層が破られた瞬間ゼノヴィアがデュランダルにチャージしていた聖なるオーラを放つ。イリナもそれに続くように光による攻撃をする。

「皆さん!?」

アーシアが慌てて木場達へと駆け寄っていく。木場がリアスの、バラキエルが朱乃の盾となり、二人をかばったのだ。アーシアは一誠から渡されたお守りのおかけで無傷。小猫は黒歌を庇い重傷。ゼノヴィアとイリナも全身にやけどを負っている。

アーシアは近くにいる者から順に治療をしていく。一誠がヴァーリへと近づく。

「あいつ等ごと纏めて殺そうとしたんだが……。あいつ等が足掻いたおかげか? まさか生きてるなんてな」

一誠が気を失っているヴァーリに話しかける。一誠は剣を逆手に持ち、そのままヴァーリを殺そうとする。

「ダメです! 一誠さん!!」

アーシアが涙を流しながら一誠の前に立ち、その行為を止めようとする。木場達の治療よりも一誠を止めるほうが先決だと思ったのだ。

「アーシア。退いてくれないか?」

先ほどに比べれば幾分柔らかい声音。少なくとも一誠は直接的に戦う力が無いアーシアをある程度大切に思っている。本人がそれを自覚しているかは判らないが。もし、朱乃辺りが止めに入ってきたら先ほどと同じ無感情な声になっていただろう。

「お願いします! これ以上は止めてください!!」

アーシアの必死の懇願。さすがの一誠もアーシアを傷つけるのは戸惑う。なので、傷つけずに気絶させれば良いかと思い、それを実行に移そうとした瞬間―――。

バァン!

一誠の頭に攻撃が当たる。むろん、一誠にダメージは無い。

「……よくも白音を……美侯を、アーサーを……ヴァーリを!!」

涙を流し、震えながらも一誠に攻撃する黒歌。だが、一誠は気にもしない。この程度の攻撃ではダメージを食らうことは無いので、無視することにする。

「なんで……なんで効かないのよ!? ……このままじゃ、ヴァーリが殺されちゃう!!」

まるで子供の癇癪みたいに喚き散らしながら一誠へと攻撃する。

「お願い、止まってよぉ……お願いだから………これ以上私から大切な物を奪ないで…………」

最後には膝を着き、子供のように泣きじゃくる黒歌。一誠は気にも留めない。指先に軽く魔力を集中させ、アーシアを眠らせる。

今度こそ邪魔は入らないだろうと思った瞬間、雷光と紅い魔力が一誠の全身を襲った。

「お願い。止まって頂戴、一誠」

リアスがいろんな感情を我慢しているような表情で一誠に話しかける。

「彼はテロリストだけど旧ルシファーの血族であることに変わりないわ。彼を保護する義務が私にはあるの。だから、お願い」

リアスの今の心境は複雑だ。自分の愛している人間が自分の大切な下僕を傷つけ、自分たちの面倒を良く見てくれているアザゼルが殺されかけた。もし、これをやったのがヴァーリ・ルシファーだったら彼女は単純に怒りにその身を任せられただろう。だが、相手は一誠なのだ。リアス・グレモリーにとって初恋の相手。正直どの様な状況であれリアスにとって一誠とは敵対したくなかった。だが、大切な下僕悪魔を傷つけられ、そのまま何もしないのは『王』失格と言っても過言ではない。だからこそ、リアスは覚悟を決め、一誠を止めようとする。朱乃も似たような心境だ。自分にとって大切な家族を守るために。そして、今まで通りの日常を送るために、一誠を止めようとする。

黒歌一誠が攻撃された瞬間にヴァーリを自分の元へと転移させる。正直これは賭けだった。一誠の『覇龍』の影響でこの空間全体が崩壊し始めているのだ。その影響か、転移が上手く使えない。黒歌一人だけでもこの空間から転移して逃げることは不可能だろう。

「どいつもこいつも邪魔ばっかりしやがってよぉ……」

いい加減に腹が立ってくる一誠。一誠が先ほど感じていた興奮と幸福は時間が経つに連れ、薄れてきている。なぜ、全員邪魔するのだろう?自分がこのような事を経験できるのは今回だけだと言うのに……。

一誠は炎の剣を消し、手を上へと伸ばす。そして手の平から巨大な魔力の塊が生み出される。

『BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!!!!!!!』

それをさらに倍化していく。もはや大きすぎて、どのくらいのでかさか判断できない。

『いくらなんでもやりすぎじゃないか?』

「さっきから邪魔ばっかりしてくる方がわりぃんだよ。俺はヴァーリ以外に手を出すつもりはなかったんだぞ? それなのに俺の邪魔ばっかりしてきたんだから自業自得だろ」

『このままだとリアス・グレモリーも死んでしまうぞ? ルシファーにどう言い訳するつもりだ?』

「あ? リアスが俺の邪魔をしてきて面倒くさかったから纏めて消したって言っとけば問題ないだろ」

『問題大有りだ。下手したらルシファー眷属全員と敵対することになるかもしれんぞ?』

「だからどうした? そしたら全員殺せばいいだけだろ?」

『……相棒。お前にとってリアス・グレモリーとグレモリー眷属は殺してしまっても良い存在なのか? 相棒にとってあいつ等と過ごした時間は悪くないものだったのだろう?』

「ああ、存外楽しめたよ。けどな、そんな事どうでもいい。リアス達が俺に立塞がるなら消すだけだ」

『…………そうか。もう、俺はなにも言わんよ』

「……それじゃあな、ヴァーリ・ルシファー」

一誠はそう言って魔力をヴァーリ達目がけて放つ。リアスと朱乃と黒歌による三重の防御魔法陣が構成されるがそれは紙屑のように破れ、リアス達へと襲い掛かる。防御に限界まで魔力をつぎ込んだリアス達はそのまま気絶しそうになる。そして、ぼやけた視界に最後に映ったのは黒髪の少女が目の前に現れる光景だった。それだけを確認し、リアス達はその場で気絶する。




今回の話は50k越え、二万字超えでした。

正直一誠が『覇龍』を出すところまでノリノリで書いていましたが、途中からやりすぎじゃね?とか思いながらも執筆しました。……もしかしたらこの話消して書き直すかもしれないけど。

あ~、このまま行ったらロキとフェンリル戦が出てこないかも(汗)
下手したらあと2~3話はオリジナル話になるかもしれないし……。どうしよう?

同じような文章をもうちょいなんとかできれば後千~二千字は短くできたんじゃないだだろうか?
文才が欲しいとおもう今日この頃。

あと、このままリアス達と仲が悪くならないようにするつもりではあります。というかルフェイや黒歌も一誠に惚れさせたいんですよね。一誠と恋仲になるかどうかは別として。

後、もしこんな話が読みたいっていうのが有ったら仰ってください。書けるものならなるべく書くように努力するので。

皆様のご感想をお待ちしております!

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