ハイスクールD×Dの規格外   作:れいとん

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第三十七話

俺は今木場とギャスパーと模擬戦をしている。二人とも夏休み前と比べると強さが雲泥の差だ。それに連携もしっかりとこなしている。ギャスパーがコウモリを無数に放ち、木場の気配を隠す。そして辺りの地形を利用して木場が奇襲を放ってくる。しかも木場は的確に人体の急所を狙ってくる。後ろから気配がし、槍を振るってそれを迎撃する。それは聖魔剣だった。さらに気配。四方八方から聖魔剣が俺を目掛けて飛んでくる。

……なるほど、考えたな。どうやら木場が創造した龍殺しの聖魔剣をギャスパーが魔力を使ってこちらに飛ばしてきたようだ。龍殺しの聖魔剣はまだまだ未完成のようで龍に対する攻撃力が1から2に上がるような程度でしかない。それでも通常の聖魔剣よりは効果があるだろう。俺はそれをすべてたたき落とす。後ろから気配が二つ。俺は後ろを振り向きそれを迎撃する。さらに左右から計5つの聖魔剣が俺に降り注ぐ。俺はそれも全て叩き落とす。すると何かが俺の頬の近くをギリギリに通過する。

どうやら木場は計6つの聖魔剣を俺に放っていたらしい。しかもその内の一本は不可視の聖魔剣だ。無論それだけなら俺には通じないがギャスパーが結界なにかを応用したのだろう。そのおかげで直前まで気がつかなかった。

……いいねぇ。俺に勝つためにあらゆる工夫をしてきている。なら、俺ももう少し力を出そうか。

俺は木場を凌駕する速度でギャスパーが放ったコウモリを一匹残らず叩き落とす。それこそ1秒と経っていないだろう。そして、俺の事を窺っていた木場の背後を取り、頭を掴む。そしてそのまま地面にたたきつける。

「……っま、ここまでだな」

俺のその言葉で模擬戦は終了した。

 

 

「おまえら強くなったよなぁ」

「本当ですか?」

俺のその言葉に嬉しそうにする木場。今の木場だったらタイマンでフェニックスを倒せるだろう。半年足らずでここまで成長したのだから驚愕だ。今回俺は力はかなり抑えていたし仙術も使わなかったが、俺に攻撃を悟らせなかったのだから大概の敵には通じるだろう。

「グレモリー眷属で一番強いのは木場、おまえだよ。今のおまえなら並みの上級悪魔なら圧倒できるだろう。まぁ、油断はしないことだな」

ああ、本当に油断しない方がいい。いくら冷静では無かったとはいえ、あんな雑魚に不意を突かれたんだからな。あえていいわけをするのなら、いくら俺でもオーフィスの蛇を使い気配を消されたのでは感知できない。おかげであの雑魚が攻撃する直前までわからなかったからな。

……ただ、不思議だ。確かに俺はアーシアをわざと危機的状況に陥れた。なのに何故アーシアが消えた瞬間あんなにキレた?悲しんだ?

「しかし、一誠さん速いですね。気がついたら地面に叩きつけられていましたし」

木場が苦笑しながらそう言う

「なんだ、悔しいのか?」

「ええ、まあ。フェニックス戦以降より速度を磨いていたのですけど……さっきの一誠さんと同じことなんてできませんよ」

「確かにおまえはほんの少しすばしっこいだけだからな。まぁ、でも、あともう半年もすればアザゼルを速度で抜くことも可能だろうよ」

「先生よりもですか?」

「ああ。つってもあいつもそこまで速くはねぇけどな。ハーデスや帝釈天の方が遥かに速い」

「やっぱり先生でも冥界の神や天帝には敵いませんか?」

「ああ、無理だろうな。ハッキリ言ってアイツそこまで強くねぇし。でも、今の木場じゃあいつに勝てないだろうけどな」

そう、アザゼルはそこまで強くない。実力だけならセラやファルビー辺りと同等程度かそれ以下だ。堕天使の陣営は三勢力の内で一番弱いだろう。

「おいおい、酷言い草だな?」

そこへアザゼルが話しかけてくる。

「なんの用だ?」

「ほら、差し入れ。女子部員お手製のおにぎりだ」

休憩する俺たちの傍にアザゼルも座る。

「おまえら強くなったな。初めてあったときはそこ等辺にいる中級悪魔と互角ってくらいだったのにな。昔のお前らだったらさっきの一誠に十秒と持たなかったろ」

苦笑しながらそう言うアザゼル。

「ものすごく手加減されていますけどね」

木場が苦笑しながらそう返す。

「っま、それは仕方ねえよ。こいつに本気なんて出されたらそれだけで世界の滅亡だからな」

その言葉を聞いて頬引き攣らせるギャスパーと木場。

そうなんだよなぁ。正直力が強すぎるってのも考えもんだ。

「ところでよ……」

アザゼルが顔に影を落としながら俺に話しかけてくる。

「朱乃とケンカしたんだって?」

「いや、そんなつもりはないんだがな……。どうにも俺の発言が気にくわなかったらしい」

俺がそう言うとアザゼルは頭を抱える。

「そりゃ、俺に頼まれたから仕方なくって言えば怒るだろうよ……」

はぁ。とため息を出すアザゼル。

「事実だ。お前にたのまれてなきゃいくら姫島に誘われたとはいえ、あんな人ごみに誰が行くか」

俺がそう言うと今度は木場が俺に話しかけてくる。

「先生に頼まれなかったらデートにすら行かなかったんですか?」

「いや、行っただろうがもっと人がいない所か静かな所に行ったな。映画とか」

「もし、朱乃さん以外にデートに誘われたらどうしましたか?」

「相手によりけりだな。リアスやアーシア、小猫に誘われたなら行っただろうが他の……そうだな、フェニックス眷属の……カーラマイン?だったかが相手だったら断ってるな」

「朱乃さんだから誘いに乗ったんですか?」

「そうだ。どうでもいいような奴のために時間を使わねぇよ」

俺がそう言うと木場は何故かほっとしたような表情になる。

「それじゃ、練習を再開しましょうか」

そう言って立ち上がる木場とギャスパー。俺もそれに倣うように立ち上がり、そして木場達の修行を再開したのだった。

 

 

オーディンのクソジジイが来日してから数日たったある日の夜。

俺は深夜だというのに目を覚してしまった。

(―――ロキか)

(ああ、それにもう一つの気配。これは―――)

(フェンリルだな。ってことはロキの目的は十中八九オーディンだな)

(どうする?助けに行くのか?)

(どうするかなぁ。フェンリルにロキは十年前に叩き潰したから興味の欠片もねぇんだよなぁ。フェンリル相手じゃアザゼルも分が悪いだろうがオーディンのクソジジイがいるしなぁ。正直俺が助けに行かなくってもリアスたちは生きて戻れるだろうよ。アーシアにはお守りを渡してあるしな……お?この気配)

(白いのだな。それとその仲間たちか。…………くく。存外善戦しているじゃないか)

(オーディンのジジイを抜けば4:6くらいで不利だな。ロキはともかくフェンリルを抑えきれてない)

(仕方ないさ。あいつは全盛期の俺や白いのには及ばないが、それに準ずるくらいの力があるからな)

(どーすっかなぁ。正直どうでもいいんだよなぁ。リアスたちも無傷とはいかないだろうけどそんなもん後で治療すればいいだけだし。う~ん、…………お?)

(どうやら北欧の悪神は一旦引いたようだな)

(そうみたいだな。それじゃ俺は寝る)

(おいおい。白いのが現れたんだぞ?もう少し警戒したらどうだ?)

ドライグがため息交じりにそう言う。だが、その声音には幾らかの諦めが混ざっていた。

(寝みぃんだよ。それにヴァーリ如きどうとでもなるしな。寝込みを襲ってくるようならその場で殺してやるよ。それじゃあな)

そう言って俺はまた眠り始める。

(……はぁ、まったく。もう少しやる気を出しても良いと思うんだがな……)

そう言ってドライグは神器の奥底へと潜っていった。

 

 

翌日。起きてすぐに兵藤家の地下一階の大広間に向かうと、そこにはリアスたちが集まっていた。

集まっているメンツはグレモリー眷属+イリナ、アザゼル、バラキエル、シトリー眷属―――そしてヴァーリとその仲間たちだ。

俺が部屋に入ると全員が俺に視線を向けてくる。―――なんでこいつら俺の家に勝手に上がり込んでんだ?

リアスが俺に近づいてくる。

「おはよう一誠」

「よぉ、ところでどうしてこいつ等が俺の家に上がり込んでんだ?」

「実は昨日ロキとフェンリルに襲われてね。そこをヴァーリ達に助けてもらったのよ」

「そんなことはどうでもいい。どうしてこいつらが俺の家に上がり込んでんのか理由を説明しろ」

「これから色々とヴァーリ達と話しあうことになったのよ。それでアザゼルが密会ができて且つ安全なところが良いからここを使わせてくれって言うから」

「誰が許可した?」

「私だけど?」

………………いい加減にしろよ。俺はリアス頭を掴むとそのまま潰さない程度に力を入れる。

「ちょっ!?痛い痛い!!はな、離して!!」

突然の行動に周りは呆然としている。十秒くらい経ってからリアスを解放するとリアスは床に膝をつく

「っ~!?……いきなりなにするのよ!!」

そう俺に怒鳴ってくる。俺はしゃがみリアスと同じくらいの目線になるともう一とリアスの頭を掴む。するとリアスは涙目になり、怯える。

「おまえいい加減にしろよ?ここは俺の家だぞ?なのに俺の許可なく勝手にこいつ等を家に入れたあげく勝手に使う?普通俺の許可を取るよな?この家だって勝手に改築するしよぉ。お前マジなんなの?ここはおまえの家じゃねぇんだよ。俺の家なの。わかる?」

俺がそう言うと首を叱られた子供のように縦に振るうリアス。周りの奴は俺の怒気に当てられたのか動く気配はない。

「おまえこれ以上勝手をするようなら本気でこの家から追い出すからな」

俺はそう言って立ち上がる。次に勝手なことをしたらマジで家から追い出すか。俺はそんな事を考えつつ、そのまま部屋を出ようとした時、アザゼルから声をかけられる。

「ちょっと待ってくれ一誠!」

俺は視線だけをアザゼルに向け、めんどくさそうに訊き返す。

「んだよ」

「実は一誠にもオーディンの護衛に参加して欲しいんだ」

アザゼルがそう言ってくるが俺は間髪入れずに答える。

「嫌だね。なんで俺があんなクソジジイを守んなきゃなんねえんだよ」

「そこをなんとか頼む。ロキだけならともかくフェンリルがいるんじゃ俺たちだけじゃ後手に回って守りきれないかもしれねえんだよ。北欧の主神を失うわけにはいかないしな」

「断る。俺は別にオーディンのクソジジイが死のうが生きようが興味の欠片もねぇからな。守りたきゃおまえらで勝手にやってろ」

俺がそう言うと今度はヴァーリが話しかけてくる。

「兵藤一誠。おまえは興味ないのか?神殺しの牙を持つ神狼―――フェンリルに……」

「ねぇよ。十年前にロキ共々叩き潰したからな。興味の欠片も湧かねぇよ」

俺がそう言うと驚いたような表情をするヴァーリ。

「そうか……。すでに戦ったことがあるのか……。俺は昨晩初めて戦ったが楽しかったよ。パワー、スピード。純粋な戦闘力なら俺よりも上だろうな」

今のヴァーリなら確かにそんなもんだろう。ただ、こいつは負ける気はないようだが。

「ロキ一人なら俺一人でもなんとかなるかもしれないが、フェンリルまでいるのなら今の俺では両方を同時に相手にはできない。だが―――」

ヴァーリが真っ直ぐに俺へ視線を送る。

「二天龍が手を組めば話しは別だ」

『―――っ!』

ヴァーリのその言葉に俺と美侯たちを除いた全員が驚愕する。そんな周りを無視してヴァーリは続ける。

「今回の一戦、俺は兵藤一誠に共闘を申し出る」

 

 

<木場視点>

「二天龍が手を組めば話しは別だ」

『―――っ!』

その言葉に僕たちは驚愕した。強者との戦いを楽しむヴァーリがまさかそんなことを言い出すなんて。僕や部長、先生たちが驚愕する中ヴァーリはさらに言葉を続ける。

「今回の一戦、俺は兵藤一誠に共闘を申し出る」

その言葉をはなった瞬間一誠さんの雰囲気が変わった。

「―――ククク、クッハハハハハハハハハハ!!」

いきなり一誠さんが笑い始めた。まるで荒唐無稽なことを話しをした人間をバカにするように、共闘の申し出をしたヴァーリを見下すように、本当に心の奥底から可笑しいと感じているように。そんな一誠さんをみて僕は何故か冷や汗が止まらなかった。笑い終わった一誠さんからものすごい重圧が放たれる。それはヴァーリに放たれたものだろうにその余波だけで僕は膝を着く。僕だけではない、見れば小猫ちゃんの姉である黒歌や孫悟空の末裔である美侯。そして聖剣コールブランドの使い手であるアーサーすら膝をついている。この場で立っているのは一誠さんを除けばヴァーリに先生、バラキエルさんだけだ。立っているが平気というわけではなく三人の顔には汗が浮かび上がっている。

「おまえが俺と共闘?」

「……そうだ」

「フェンリルやロキ如きを一人で撃退すらできない、禁手を使ってもアザゼルやバラキエルと互角程度の力しかないようなお前と?……笑わせるな。なぜ、お前如きと共闘なんざしなきゃならねぇんだよ。最低でもオーフィスと互角になってからそう言うことは言え」

一誠さんがそのまま部屋を出ようとするとヴァーリが口を開く。

「―――逃げるのか?」

そう言った瞬間部屋の空気が凍った。まるで時間が止まったような静寂が部屋を包み込む。その静寂を破ったのは一誠さんだ。

「……あ゛?今なんつった?」

「逃げるのか?と言ったんだ」

ヴァーリの返事を聞いて一誠さんはゆっくりと振り返る。

「………逃げる?」

「そうだろう?確かに今の俺ではキミと共闘なんてできないだろう。精々足を引っ張って敵もろとも殺されるのがオチだ。だが―――」

そこで一旦呼吸をしてヴァーリはさらに話しを続ける。

「キミのように戦いから逃げたりはしない。……そうだろう?幾ら強力な力を持っていようが、目の前の戦いに参戦しないのは逃げだろ?」

「――――っは」

その言葉を聞き一誠さんは鼻で笑う。だが、さっきまでの押しつぶされるような重圧はない。

「――――おもしれぇ、良いだろう。次にロキが襲ってきたら俺も出張ってやるよ」

その言葉を聞き、アザゼル先生がほっとした表情を作る。

「ただし、条件が一つある」

一誠さんがそう言うと今度はアザゼル先生が口を開く。

「なんだ?」

一誠さんは先生を無視するように口を開く。

「―――ヴァーリ・ルシファー。今すぐ俺と戦え」

その言葉にまた部屋に緊張が奔る。それはそうだろう。下手したら今すぐ二天龍の殺し合いが始まるのだ。周囲にどれだけの被害がでるか想像もつかない。

「俺としては願ったりだが……どういう風の吹きまわしだ?」

「もし、お前が俺と戦って生き残れたらロキとフェンリルを俺が叩き潰してやるよ。だが、お前が無様に俺に殺されるだけならこの話しは無しだ。お前らだけで勝手にやれ」

「―――いいだろう。それで?どこで戦うんだ?」

「サーゼクスがリアスたちのために用意した訓練用フィールドでやる。あそこならいくら壊してもかまわねぇからな」

付いてこい。そう言って部屋から出る一誠さん。それに続き部屋から出るヴァーリ。その後を追うように先生やバラキエルさん、アーサーたちが部屋を出る。そして、部長を皮切りに僕たちも部屋を出て、フィールドに続く魔法陣がある部屋に向かう。

 




更新が遅くなってすみません。実はこの話は六月の頭に書き終わっていたのですが、次話をある程度書いてから更新しようと思っていたらいつの間にか七月に……。

それと、どうしてもヴァーリ戦を書きたかったのでこんな感じになりました。無理やり感が半端無いです。

すみません。最近規格外となのはがスランプ気味なんです。特になのはなんてまだ、本編にすら書いていないというのに。

それと、最近になって久々にタッグフォース6をやっていました。すみません。ただ、どうしても「人は特殊勝利だけで決闘できるか?」を使ってみたくて。更新をさぼり、ゲームとニコ動にどっぷりと浸かっていました。言い訳のしようもございません。マジでごめんなさい。

ただ、言い訳を言わせてもらえるなら、ニコ動が面白すぎるのがいけないんだ!作者マイクラやったことないのにマイクラ系の動画ばっかり見てるし。ゆっくり実況とかもすっげー面白いし!……あと、葬式とかいろいろあったし。
はい、言い訳タイムでした。すみません。どれだけ、時間をかけようとこの作品は完結させるので、よろしければ、これからも宜しくお願いします。

そう言えばD×DのアニメPV第二弾が公式サイトで出てましたね。ヴァーリめっちゃイケメンでした。そしてコカビエルがすっげー想像と違った。もっと厳つい昭和親父みたいな、頑固系の外国人を想像していた。

次回は今月中には投稿できると思います。 最近熱くなってきたので皆様も健康には十分お気を付けください。それでは!また次話で ノシ

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