ハイスクールD×Dの規格外   作:れいとん

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第三十三話

<木場視点>

神殿の入り口に入るなり、僕たちは耳にオーディンさまから譲り受けた通信機器を取り付けた。

すると聞き覚えのある声が聞こえてくる

『無事か?こちらアザゼルだ。オーディンの爺さんから渡されたみたいだな』

―――先生だ。

『言いたいこともあるだろうが、まずは聞いてくれ。このレーティングゲームは「禍の団」旧魔王派の襲撃を受けている。そのフィールドも、近くの空間領域にあるVIPルーム付近も旧魔王派の悪魔だらけだ。だが、これは事前にこちらも予想していたことだ。現在、各勢力が協力して旧魔王派の連中を撃退している』

予測していた?どういうことだろう。

『最近、現魔王に関与する者たちが不審死するのが多発していた。裏で動いていたのは「禍の団」旧魔王派。グラシャラボラス家の次期当主が不慮の事故死をしたのも実際は旧魔王派の連中が手にかけてたってわけだ』

グラシャラボラスの次期当主候補は『禍の団』にやられてたのか。現魔王の血筋だから狙われたのだろう。でも、どうしてディオドラが『禍の団』に?

『首謀者として挙がっているのは旧ベルゼブブと旧アスモデウスの子孫だ。俺が倒したカテレア・レヴィアタンといい、旧魔王派の連中が抱く現魔王政府への憎悪は大きい。このゲームにテロを仕掛けることで世界転覆の前哨戦として、現魔王の関係者を血祭りにあげるつもりだったんだろう。ちょうど、現魔王や各勢力の幹部クラスも来ている。襲撃するのにこれほど好都合なものもない。先日のアスタロト対大公アガレスの一戦から今回の件を予想できる疑惑は生じていたんだよ』

つまり、僕たちの試合は最初から旧魔王派に狙われていた。敵のターゲットは現魔王と現魔王の血縁者―――部長。そして、観戦しに来ていた各勢力の頭。オーディンさまもターゲットの一人だったのだろう。

「では、あのディオドラの魔力が以前よりも上がったのは?」

部長が先生に問いかける

『オーフィスの力を借りたんだろう。ディオドラがそれをゲームで使ったことは奴らも計算外だったろうな。それゆえ、グラシャラボラス家の一件と併せて、今回のゲームで何かが起こるかもしれないと予見できたんだ。しかし、奴らは作戦を途中で覆さなかった』

無限の龍神の力はあそこまで急激なパワーアップを可能にするのか……。

『あっちにしてみればこちらを始末できればどちらでもいいんだろうが。俺たちとしてもまたとない機会だ。今後の世界に悪影響を出しそうな旧魔王派を潰すにはちょうどいい。現魔王、天界のセラフたち、オーディンのジジイ、ギリシャの神、帝釈天とこの仏どもも出張ってテロリストどもを一網打尽にする寸法だ。事前にテロの可能性を各勢力のボスに極秘裏に示唆して、この作戦に参加するかどうか聞いたんだがな。どうつもこいつも応じやがった。どこの勢力も勝ち気だよ。いま全員、旧魔王の悪魔相手に暴れているぜ』

どの勢力もテロには屈しない姿勢というわけだ。

「……このゲームはご破算ってわけね」

『悪かったな、リアス。戦争なんてそう起こらないと言っておいて、こんなことになっちまっている。今回、お前たちを危険な目に遭わせた。いちおう、ゲームが開始する寸前までは事を進めておきたかったんだ。奴らもそこまで仕掛けてくるだろうと踏んでいたからな。案の定、その通りになったが、お前たちを危ないところに転送したのは確かだ。この作戦もサーゼクスを説得して、俺が立案した。どうしても旧魔王派の連中をいぶり出したかったからな』

「もし、私たちが万が一にも死んでしまったらどうするつもりだったんだ?」

ゼノヴィアが何気なく聞くと先生は真剣な声音で言った

『俺もそれ相応の責任を取るつもりだった。俺の首でことが済むならそうした』

―――先生は死ぬつもりだったんだ。そこまで覚悟して、旧魔王派の連中をおびき寄せたんだ。

「先生、アーシアがディオドラに連れ去られたんです!」

『ああ、こちらでもそれは確認している。だからこそ兵藤がそこにいるんだ』

アーシアさんが攫われたから一誠さんは不機嫌なのか

「アザゼル。アーシアの身に万が一にも何かあったら、そのときは覚悟しておけよ」

そうドスの利いた声でアザゼル先生に話しかける一誠さん。その声を聞いただけで背筋が震える

『わかってるよ。―――それよりもお前ら気をつけろよ?このフィールドは「禍の団」所属の神滅具所有者が作った結界に覆われているために、入るのはなんとかできるが、出るのは不可能に近いんだよ。―――神滅具「絶霧(ディメンション・ロスト)」。結界、空間に関する神器のなかでも抜きんでているためか、術に長けたオーディンのクソジジイでも破壊できない代物だ』

「先生も戦場に来ているんですか?」

『ああ、同じフィールドにいる。かなり広大なフィールドだから、離れてはいるがな』

オーディンさまだけではなくアザゼル先生までここにいるのか

『いいか。これだけは気をつけてくれ。一誠がいるからそちらの心配はあまりしていないが、フィールドが危険なことに変わりはない。ゲームは停止しているため、リタイヤ転送は無い。危なくなっても助ける手段はないから肝に銘じておけ』

確かに。今回も僕たちは一誠さんの重りにしかなっていない

「小猫、アーシアは?」

部長が小猫ちゃんにサーチするように促した。だけどそれよりはやく一誠さんが答える

「神殿の奥だ。そっちからアーシアとディオドラの気配を感じる」

そう言ってそのまま無言になる一誠さん。一誠さんを覗いて全員が無言でうなずきあうと神殿の奥へ向かって走り出したのだった。

 

 

神殿のなかは、広大な空間だった。大きな空間がずっと続いていく感じだ。広間に巨大な柱が並ぶぐらいで他に目立ったものはない。

神殿を抜けると、さらに前方に新たな神殿が現れ、そこを目指す。それを何度か繰り返していくうち、とある神殿の中に入ったとき―――気配を感じた。

僕たちは足を止めて、一斉にかまえた。

前方から現れたのは―――フードを深く被ったローブ姿の小柄な人影が十名ほど

『やー、リアス・グレモリーとその眷属の皆』

―――っ!

神殿中にディオドラの声が響く!どこから?

『ハハハ、辺りを見渡しても僕は見つからないよ。僕はこのずっと先の神殿でキミたち待っているからね。―――遊ぼう。中止になったレーティングゲームの代わりだ』

ふざけたことを!!

声は魔力を使ってこちらへ飛ばしているのだろう

『お互いの駒を出し合って、試合をしていくんだ。一度使った駒は僕のところへ来るまで二度と使えないのがルール。あとは好きにしていいんじゃないかな。第一試合、僕は「兵士」八名と「戦車」二名を出す。ちなみにその「兵士」たちは皆すでに「女王」に昇格しているよ。ハハハ、いきなり「女王」八名だけれど、それでもいいよね?何せ、リアス・グレモリーは強力な眷属を持っていることで有名な若手なのだから』

どこまでも卑怯な!

「いいわ。あなたの戯言に付き合ってあげる。私の眷属がどれほどのものか、刻み込んであげるわ」

部長が勢いよくそう言う。そんな部長を無視して一誠さんが一歩歩み出す

「一誠?」

「悪いが、てめぇの戯言に付き合ってやるほど心にゆとりがねぇンだよ」

そう言った瞬間一誠さんの姿が消えた。そしてディオドラの眷属全員の胸に、何かに貫かれたような跡があり、そこから血が勢いよく溢れ出る

一誠さんはつまらなそうに手に持っている槍を霧散させる。一瞬の出来事だった。ほんの一瞬でディオドラの眷属全員の胸を貫き、絶命させたのだ

 

 

次に待ちかまえていたディオドラの『女王』と『僧侶』も一誠さんが瞬殺して終わった。そして『騎士』が待っているであろう神殿に足を踏み入れたとき、僕たちの視界に見覚えのある者が映り込む!

「や、おひさ~」

白髪の神父―――。

「フリード・セルゼンッ!」

そう、僕たちの目の前に現れたのはフリードだった。エクスカリバーの事件のとき以来だ。生きていたのか

「まだ生きていたんだなって、おもったっしょ。イエスイエス。僕ちん、しぶといからキッチリキッカリ生きてござんすよ?」

『騎士』の二人はどこにいるんだ?

「おんや~、もしかして『騎士』のお二人をお探しで?」

フリードは嫌な笑みを浮かべると、口をもごもごと動かし、ペッと何かを吐きだした。それは指だった

「俺さまが食ったよ」

フリードがそう言った瞬間小猫ちゃんが鼻を押さえながら目元を細めた。

「……その人、人間を辞めてます」

小猫ちゃんが忌むようにそう呟いた

やつはにんまりと口の端を吊り上げると、人間とは思えない形相で哄笑をあげる。

「ヒャハハハハハハハハハハッハハハハハッ!てめえらに切り刻まれたあと、ヴァーリのクソ野郎に回収されてなぁぁぁぁぁぁっ!腐れアザゼルにリストラ食らってよぉぉぉぉぉおおっ!」

ボコッ!ぐにゅりっ!

異様な音を立てながらフリードの体の各所が不気味に盛り上がる。神父服は破れ、四肢は何倍にも膨れ上がった。

「行き場無くした俺を拾ったのが『禍の団』の連中さ!奴ら!俺に力をくれるっていうから何事かと思えばよォォォォオオっ!ぎゃははははは!合成獣だとよっ!ふははははははっははははっ!」

ドラゴンやコウモリ、そのほかにもいろんなものを混ぜたような、異形の形になるフリード

「ヒャハハハハハハッ!ところで知っていたかい?ディオドラ・アスタロトの趣味をさ。これが素敵にイカレてて聞くだけで胸がドキドキだぜ!」

フリードが突然ディオドラの話しをしだす

「ディオドラの女の趣味さ。あのお坊ちゃん、大した好みでさー、教会に通じた女が好みなんだって!そ、シスターとかそういうのさ!」

アーシアさん!僕の中で何かが繋がった

「つまり、アーシアはディオドラにはめられたってことだな」

一誠さんがそう呟く。そう、元々おかしかったんだ。現魔王の血縁者で上級悪魔であるディオドラが教会の近くで眷属も引き連れず、怪我をし、たまたま悪魔も治せるアーシアさんに助けられる。考えれば考えるほど、あまりにも話しができすぎている。

どこまでも下種なんだ!ディオドラ・アスタロト!!僕の中で殺意が渦巻く

「そうか、……もういい、お前は死ね」

いつの間にかフリードの目の前まで移動し、その体をバラバラに切断する一誠さん。先ほどと同じで、いつ移動したのか、いつ切断したのか、まったく視界に捕えることができなかった

「虫けらがァ」

最後にフリードの頭を踏みつぶし、残りの死体は燃やしつくされた。

「行くぞ」

そういって走り出す一誠さん

ディオドラ・アスタロト!僕はお前を許さない!

 

 

僕たちがたどり着いたのは―――最深部にある神殿だった。その内部に入っていくと、前方に強大な装置らしきものが姿を現す。そしてその中心には―――アーシアさんが磔にされていた

「アーシアァァァァァァァッ!」

ゼノヴィアが叫ぶ。よかった。見たところ外傷も衣類の破損もない

「やっと来たんだね」

装置の横から姿を現したのはディオドラ・アスタロトだった。やさしげな笑みがより一層の殺意を高めさせる

「……一誠さん?」

アーシアが一誠さんの元へと顔を向けた

―――目元が腫れあがっている。

泣いていたのだろう。それも尋常なじゃないほどの量の涙を流したと思えるほど、目が赤くなっている。

それを見て一誠さんは感情を押し殺したような声でディオドラに話しかける

「……ディオドラ、おまえ、アーシアに事の顛末を話したのか?」

先ほどフリードから告げられた真実。それは決してアーシアさんに聞かせてはいけないものだ。

だが、ディオドラは一誠さんの問いににんまりと微笑みながら答える

「うん。全部、アーシアに話したよ。ふふふ、キミたちにも見せたかったな。彼女が最高の表情になった瞬間を。全部、僕の手のひらで動いていたと知ったときのアーシアの顔は本当に最高だった。ほら、記録映像にも残したんだ。再生しようか?本当に素敵な顔なんだ。教会の女が堕ちる瞬間の表情は、何度見てもたまらない」

アーシアさんがすすり泣き始めていた

「そうか、もういい…………。てめぇは殺す」

一誠さんからものすごい殺気が放たれる。それは物理的に空気を押しのけ、神殿内部にひびが走る。

「アハハハ、凄い殺気だね!これが赤龍帝!でも、僕もパワーアップしているんだ!オーフィスからもらった『蛇』でね!キミなんて瞬殺―――」

ガッ!

ディオドラの真横に移動した一誠さんがディオドラの顔面を掴んだ。そして―――

ドゴォォォォォォオオンッ!

勢いよく壁に叩きつけた。そしてそのまま床に放り投げる

「てめぇは楽には殺さねぇぞ」

そう言って空間の中に手を突っ込みそこから瓶を一つ取りだす。あれは『フェニックスの涙』!

「あの焼き鳥野郎を解放する対価で結構な数をもらってたんだよ。」

そう言ってディオドラに涙を振りかける一誠さん。そしてディオドラの首に足を乗っける。そして踏みつぶす。涙をかける。踏みつぶす。涙をかける。踏みつぶす。何度も何度も。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。

踏みつぶしては涙を振りかける。それは永遠の、そして、一瞬の出来事のように感じた

「答えろ。あれはなんだ?」

そう言ってアーシアさんを閉じ込めている装置を指さして問う一誠さん

「……あの装置は機能上、一度しか使いえない。が、逆に一度使わないと停止できないようになっているんだ。―――あれはアーシアの能力が発動しない限り停止しない」

「続きを言え」

一誠さんがそう言うと苦しそうにしながらもディオドラは答える

「その装置は神器所有者が作り出した固有結界のひとつ。このフィールドを強固に包む結界もその者が作り出しているんだ。『絶霧』結界系神器の最強。所有者を中心に無限に展開する霧。そのなかに入ったすべての物体を封じることも、異次元に送ることすらできる。それが禁手にいたったとき、所有者のすきな結界装置を霧から創りだせる能力に変化した。―――『霧の中の理想郷(ディメンション・クリエイト)』、創りだした結界は一度正式に発動しないと止めることはできない」

一誠さんはさらに問いだす

「発動の条件と、この結界の能力は?」

「……発動の条件は僕か、他の関係者の起動合図、もしくは僕が倒されたら。結界の能力は―――枷に繋いだ者、つまりはアーシアの神器能力を増幅させて反転させること」

―――っ!

つまり回復の能力を反転させる。それはつまり―――。

一誠さんはさらに問いだす

「効果範囲は?」

「……このフィールドと、観戦室にいる者たちだよ」

その答えに全員が驚愕した。アーシアさんの回復の応力は凄まじい。悪魔や堕天使さえも治す!それが増幅されて反転させられたら……ッ!

「……各勢力のトップ陣がすべて根こそぎやられるかもしれない」

その答えを聞いて一誠さんを除く全員が青ざめる

一誠さんは聞くことだけ聞くとアーシアさんの元へと歩き出す

「もう大丈夫だからな?」

そう言って優しく微笑む一誠さん。そして装置に軽く触れると―――。

バギン!

アーシアさんを捕えていた枷が壊れ、アーシアさんが解放される

「……ど、どうやって?」

ディオドラが恐る恐るといった感じで思わず呟く。それに一誠さんはつまらなそうに答える

「ただ、魔力を流して内側から壊しただけだ」

「一誠さん!」

アーシアさんが一誠さんに抱きつく

「アーシア」

それをやさしく受け止める一誠さん。その表情は心なしかほっとしているように見える

「信じていました……。一誠さんが来てくれるって」

「当たり前だろう。でも、ゴメン。辛いこと、聞いてしまったんだろう?」

アーシアさんは首を横にふり、笑顔で答える

「平気です。あのときはショックでしたが、私には一誠さんがいますから」

ゼノヴィアが目元を潤ませながらアーシアに近づく

「アーシア!良かった!私はお前がいなくなってしまったら……」

アーシアさんはゼノヴィアの涙をぬぐいながら微笑む

「どこにも行きません。一誠さんとゼノヴィアさんが私のことを守ってくれますから」

「うん!私はお前を守るぞ!絶対にだ」

そう言ってアーシアさんと抱き合うゼノヴィア

「部長さん、皆さん、ありがとうございました。私のために……」

アーシアさんが一礼すると皆も笑顔で答える。

今度は部長がアーシアさんを抱き、やさしげな笑顔で言う

「アーシア。そろそろ私の事を家で部長と呼ぶのは止めてもいいのよ?私を姉だとおもってくれていいのだから」

「―――っ。はい!リアスお姉さま」

部長とアーシアさんが抱き合っている

「よかったですぅぅぅぅぅぅっ!アーシア先輩が帰ってきてくれてうれしいよぉぉぉっ!」

ギャスパ―くんもわんわん泣いている。小猫ちゃんがそんなギャスパ―くんの頭をなで始めた。よかった皆無事に帰れそうだ

「さて、アーシア。帰ろうか」

「はい!と、その前にお祈りを」

アーシアさんはそう言って天に何かを祈る

「アーシア、何を祈ったんだ?」

一誠さんが訊くと恥ずかしそうに言った。

「内緒です」

笑顔で一誠さんのもとへ走り寄るアーシアさん。

カッ。

突如、僕たちをまばゆい何かが襲う。視線を送るとアーシアさんが―――光の柱に包まれていた。

光の柱が消え去ったとき、そこには―――。

「……アーシア?」

誰もいなかった。




更新です。あ~この一誠を使ってネギまとかリリカルなのはとかの二次が書きたい

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