ハイスクールD×Dの規格外   作:れいとん

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第二十七話

森を進んで数分、俺とリアスは小猫を発見した。しかし、直ぐに小猫の前には行かずに木の陰に隠れる

小猫は何かを探し求めるように森の真ん中でキョロキョロと首を動かしている

そして、何かに気づいて視線をそこへ動かす。

「久しぶりじゃない?」

聞き覚えのない声。音も立てずに現れたのは、黒い着物に身を包んだ女性。さらに頭部には猫耳があり、どことなく小猫に似ている。

「―――っ!……あなたは」

小猫は酷く驚いた様子で全身を震わせている

「ハロー、白音。お姉ちゃんよ」

白音。これが小猫の本名なのだろう

「黒歌姉さま……!」

絞り出すような声をだす小猫。やはり、こいつが小猫の姉。猫股妖怪、猫魈の転生悪魔でSS級の『はぐれ』か

「会場に紛れこませたこの黒猫一匹でここまで来てくれるなんてお姉ちゃん感動しちゃうにゃー」

ああ、あれか。あれはこいつの使い魔か何かなのだろう

「……姉さま。これはどういうことですか?」

小猫の声には怒気が含まれている。が、相手は笑むだけだ

「怖い顔しないで。ちょっと野暮用なの。悪魔さんたちがここで大きな催ししているっていうじゃない?だからぁ、ちょっと気になっちゃって。にゃん♪」

手を猫みたく丸めてウインクをするはぐれ―――黒歌。

「ハハハハ、こいつ、もしかいしてグレモリー眷属かい?」

今度は聞いたことのある声。そこに現れたのは孫悟空の末裔、美侯だ。

ふいに美侯の視線がリアスの方に向けられる

「気配を消しても無駄無駄。俺っちや黒歌みたいに仙術しってると、この流れの少しの変化でだいたいわかるんだよねぃ」

俺は普通に、リアスは意を決して、木陰から出ていく

「……一誠さん。部長」

「ひさしぶりだなぁクソ猿。ヴァーリは元気か?」

「おいおい、アンタまでいるとはねぃ。まったく気がつかなかったよ。……ヴァーリは元気だ」

黒歌も驚いている。俺は仙術も使って気配を消していたからな。気がつかなかったのも無理はない

「それで?なぜ、貴方たちがここにいるのかしら?テロでも起こしに来たの?」

リアスがそう訊く。二人は笑みを浮かべる

「いんや、そういうのは俺っちらに折れてきてないねぃ。ただ、冥界で待機命令が出ていてねぃ。俺も黒歌も非番なのさ。したら、黒歌が悪魔のパーティ会場を見学してくるって言いだしてねぃ。なかなか帰ってこないから、こうして迎えに来たわけ。OK?」

ふむ。どうやら、嘘はついていないようだ

「美侯、この子だれ?」

黒歌が俺を指さす

「赤龍帝」

「本当にゃん?へぇ~。これがヴァーリを退けた現赤龍帝なのね」

黒歌が目を丸くしながらそう言う

美侯があくびをしながら言う

「黒歌~、帰ろうや。どうせ俺っちらはあのパーティに参加できないんだし」

「そうね。帰ろうかしら。ただ、白音はいただいて行くにゃん。あのとき連れていってあげられなかったしね♪」

「勝手に連れ帰ったらヴァーリが怒るかもだぜ?」

「この子にも私と同じ力が流れていると知れば、オーフィスもヴァーリも納得するでしょ?」

「そりゃそうかもしれんけどさ」

黒歌が目を細める。子猫はそれを見て体をビクつかせる

「この子は私の眷属よ。指一本でも触れさせないわ」

リアスが憤怒の表情でそう言う

「あらあらあらあら、何を言っているのかにゃ?それは私の妹。私にはかわいがる権利があるわ。上級悪魔様にはあげないわよ」

ビリッ

リアスと黒歌が睨みあう。一触即発の気配だ

「めんどいから殺すにゃん♪」

その瞬間、空気と雰囲気が変わった

「……黒歌、あなた、仙術、妖術、魔力だけじゃなく、空間を操る術まで覚えたのね?」

リアスが苦虫を噛んだ表情でそう言う

「時間を操る術までは覚えられないけどねん。空間はそこそこ覚えたわ。結界術の要領があれば割かし楽だったり。この森一帯の空間を結界で覆って外界から遮断したにゃん。だから、ここでド派手な事をしても外には漏れないし、外から悪魔が入ってくる事もない。あなた達は私達にここでころころ殺されてグッバイにゃ♪」

黒歌がそう言う。そのとき空中から声が聞こえてくる

「リアス嬢と兵藤がこの森に行ったと報告を受けて急いで来てみれば、結界で封じられるとはな……」

「タンニーン!」

リアスがほっとした様子で叫ぶ

「ドス黒いオーラだ。このパーティには相応しくない来客だな」

美侯がタンニーンを見て歓喜する

「おうおうおう!ありゃ、元龍王の『魔龍聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』タンニーンじゃないかぃ!まいったね!こりゃ、もう大問題だぜ、黒歌!やるしかねぇって!」

「うれしそうね、お猿さん。いいわ。龍王クラス以上の首を二つ持っていけば、オーフィスも黙るでしょうね」

どうやら、俺もカウントされているらしい。―――――随分となめてくれるなぁ

「リアス、小猫。タンニーンに乗ってろ」

「一誠?」

「さっさとしろ」

「………わかったわ。小猫!タンニーンの背中まで行くわよ!」

リアスが子猫を連れて空へと上がった

「なに?君が私たち二人の相手をするつもりなのかにゃ?オーフィスを倒したって聞いたけど本当?」

そう笑いながら話しかけてくる黒歌

「おまえら如きザコが俺の首を持っていく?随分となめくさった事を言ってくれるもんだなぁ。おまえ」

 

 

<リアス視点>

「リアス、小猫。タンニーンに乗ってろ」

一誠が声のトーンを落として私にそう言う

「一誠?」

「さっさとしろ」

「………わかったわ。小猫!タンニーンの背中まで行くわよ!」

私は一誠の言うとおり、小猫をつれて、タンニーンの背中に乗る

「どうした?リアス嬢」

「一誠があなたの背中に乗っていろって」

「そうか。どうやら兵藤が暴れるらしい。しっかりと捕まっていろ」

タンニーンがそう言う。私たちは、空から下の様子を見る

「なに?君が私たち二人の相手をするつもりなのかにゃ?オーフィスを倒したって聞いたけど本当?」

黒歌が笑いながら一誠にそう言う

「おまえら如きザコが俺の首を持っていく?随分となめくさった事を言ってくれるもんだなぁ。おまえ」

一誠がそう呟いた直後、莫大な力の奔流が生まれる

「大丈夫か?リアス嬢」

タンニーンが私たちの事を気にかける

「ええ、平気よ。小猫、あなたは大丈夫?」

「……大丈夫です」

そう答える小猫にいつもの元気がない

(私はこの子の『王』なのに)

自分自身の無力さが嫌になる。私は何一つ、自分で守ることができない

 

 

<一誠視点>

俺はこの結界が耐えられる程度に力を開放する

「にゃぁぁ。これはちょっとやばいかも」

「二天龍は両方化け物だねぃ」

黒歌と美侯は冷や汗を流しながら後ずさる

「このくらいは耐えろよ?」

カッ

ドゴォォォォォォォォォォォォオオオオオオオンッッ!!!

俺が右腕を前に出し、そこから砲撃した音だ

「ゲホゲホ……。ノータイムの攻撃でこの威力、随分と出鱈目ね」

「あ~、死ぬかと思った」

どうやら生きているようだ

「ほ~、この程度は耐えるか」

「今度はこっちの番にゃ!!」

そう言って黒歌の体から霧が発する。それは徐々に広がり、森全域を覆う勢いだ

「毒霧が聞かないなんて……!これなら、どうにゃん!」

「俺っちも行くぜぃ!!」

黒歌が妖術、仙術、魔力の攻撃を雨霰と放ち、美侯が棒を持って俺に殴りかかってくる。俺は手に槍を作り迎撃する

ガァン!!

俺は美侯を吹き飛ばし、槍を一閃させる

「そんな!?あの程度の動作で攻撃と霧を全て吹き飛ばすなんて!?」

「こいつは、マジでやばい!」

美侯と黒歌は冷や汗を流しながら、そう言う

「どうした?俺の首を持っていくんだろ?さっさとかかってきたらどうだ?」

まだヴァーリの方が楽しめるだろう

「化け物め……ッ!!」

黒歌が苦々しく呟く

「おいおい、結界が耐えられるギリギリのラインで戦ってやっているんだ。もう少し楽しませてくれよ?」

「伸びろォォォォッ!如意棒ッッ!」

美侯が不意をつき、如意棒を伸ばし、俺に叩きつけようとする

スパンッ!

「……そんな、如意棒が切られるなんて!!?」

意外に脆いな

「この程度か?初代のジジイはお前と比べることが失礼なほど強かったぞ?」

「まだだァ!!!」

美侯が俺に殴りかかってくる。俺はそれを全て捌いて行く

「どうした?この程度か?」

「おらおらおらおらおらおらおらおら!!!」

ガガガガ、キキキキン、カカン!!

薙ぎ、突き、殴打。ありとあらゆる方法を使って如意棒を叩きつけようとしてくる

「――――――飽きた」

ガァン!

俺が無造作に槍を一閃させて美侯を吹き飛ばす

「くらえ!!」

黒歌が妖術と仙術を混ぜた波動を俺に放ってくる。俺はそれを切り裂く

俺は槍を適当に投擲する。それは結界を破壊しながらも空に消えていった

「タンニーン!俺は戻るぞ!」

俺はタンニーンにそう言い、黒歌達に背を向ける

「どういうつもり?」

黒歌が俺に訊いてくる

「お前らが弱すぎるからな、萎えたんだよ。俺ぁ帰る」

「バカにして!!」

俺の答えを聞いて憤怒の表情になる黒歌。尚も俺に攻撃しようとした瞬間空間の裂け目が生まれ、そこから姿を現す者がいる。――男性だ。背広を着た若い男性。手には強大なまでの聖なるオーラをだす剣が握られている

「そこまでです、美侯、黒歌。悪魔が気づきましたよ」

メガネをかけた男性は黒歌と美侯にそう言う

「おまえ、ヴァーリの付き添いじゃなかったかい?」

男性はメガネをくいっと上げて言う

「黒歌が遅いのでね、見に来たのですよ。そうしたら美侯までいる。まったく、何をしているのやら」

そう言ってため息をつく

「聖王剣コールブランド。またの名をカリバーン。地上最強の聖剣と呼ばれるコールブランドが白龍皇のもとに……」

――――へぇ、あれが

俺は聖剣を持っている男とこの方を向く

「それで?そっちの二本目はなんだ?」

俺の問いに男性は腰の帯剣を指さす

「こっちは最近発見された最後のエクスカリバーにして、七本中最強のエクスカリバー。

支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』ですよ」

あれが行方不明とされていた最後のエクスカリバー

「そんなに話して平気なの?」

「ええ、実は私もそちらのお仲間さんに大変興味がありましてね。グレモリーの姫君!聖魔剣の使い手さんと聖剣デュランダルの使い手さんによろしく言っておいてくださいますか?いつかお互い一剣士として相まみえたい―――と」

タンニーンに乗っているリアスにそう話しかける

「さて、逃げ帰りましょう」

男がコールブランドで空を斬る、すると空間の裂け目がさらに広がり、数人が潜れるだけのものになる

「さようなら、赤龍帝」

男がそれだけ言い残すと、黒歌と美侯を引き連れ、、空間の裂け目に消えていった

その後悪魔たちが騒ぎに気がつき、魔王主催のパーティは急遽中止となった

 

 

「失態ですね」

魔王領にある会談ルームで『神の子を見張る者』の副総督シェムハザが、開口一番にそう言った

なんでも魔王主催のパーティにテロリストが襲撃したことは天使、堕天使にとって悪魔側の警戒心の有無を問うものらしい。っでテロリストを撃退した『赤龍帝』の俺も会談に一緒に出ろってことらしい。まぁ、なんだかんだ言われて、結局出ていることになっていただろうが……

「相手は『禍の団』独立特殊部隊『ヴァーリチーム』の孫悟空『美侯』と猫魈『黒歌』、さらに聖王剣コールブランド使いも関与。一人一人が絶大な力を有するチームの三名も来るとは……。だいたい悪魔の管理能力は――」

シェムハザが小言を言い始める。遠くではチビドラゴン化して出席しているタンニーンと上役たちがもうすぐ始まるリアスとソーナの戦いを予想している

「俺はリアス嬢を応援させてもらおうか。聖魔剣使いに聖剣デュランダル使いがいるしな」

「アザゼルのもたらした知識はレーティングゲームに革命を起こしそうだよ。下手すれば半年以内に上位陣に変動があるかもしれない」

「そりゃよかった。ここ十数年もトップの十名に変化がなかったものですから。これでおもしろいゲームが拝めそうですな」

こいつら協定を結んでから緊張感がまるでねぇな。こんなんで大丈夫か?三大勢力。

部屋の扉が開かれる。入ってきた人物を見て俺以外の全員が度肝を抜かれた

「ふん。若造どもは老体の出迎えもできんのか」

古ぼけた帽子をかぶった隻眼のジジイ。白く長い髭を生やしており、それは床につきそうなぐらい長い。服装は質素なローブで、杖をしている

「―――オーディン」

誰かがそう呟く。そう、正体は北欧の主神オーディンだ。鎧を着た戦乙女ヴァルキリーを引き連れている

「おーおー、久しぶりじゃねぇか、北の田舎クソジジイ」

アザゼルが悪態をつく

「久しいの、悪ガキ堕天使。長年敵対していた者と仲睦まじいようじゃが……また小賢しいことでも考えているのかの?」

「ハッ!しきたりやら何やらで古臭い縛りを重んじる田舎神族と違って、俺ら若輩者は思考が柔軟でね。わずらわしい敵対意識よりも己らの発展向上だ」

「弱者どもらしい負け犬の精神じゃて。所詮は親となる神と魔王を失った小童の集まり」

オーディンがそう言いかえす

「クッハハハハハハハ」

こいつは随分とおもしろいことを言う。思はず笑ってしまった

「一誠?」

「何かおかしかったかのう?赤龍帝」

「――ハハハ。は~、いや別に、ただ、俺からしたらお前らが底辺で自分は一番下じゃないって言い争っているようにしか聞こえなくってなぁ」

俺がそう言うと眉をピクっと痙攣させるオーディン

「……どういうことかの?」

「お前ら人外の存在ってのは人間に媚びへつらって、寄生していなきゃ生きていけない虫けらみたいなものだろう?それこそ、人間がいなきゃ生きていない程の脆弱さだ。それに、弱者の負け犬ってのは全ての神話の存在に言えることだしな」

「……わしらも弱者の負け犬と言いたいのか?」

オーディンが怒りを抑えているのがわかる

「そうだろう?たった六歳の人間のガキに手も足も出ずに無様に敗北してんだからなぁ」

俺が見下しながらそう言い、オーディンが俺を睨む。―――と、そのとき、サーゼクスが席を立つ

「お久しゅうございます、北欧の主神オーディン殿」

サーゼクスがオーディンを席へと招く

「……サーゼクスか。ゲーム観戦の招待来てやったぞい。しかし、おぬしも難儀よな。本来の血筋であるルシファー眷属が白龍皇とは。しかもテロリストとなっている。悪魔の未来は容易ではないのぉ」

オーディンがサーゼクスに皮肉を言う

ジジイの視線がサーゼクスの隣、セラに移る

「時にセラフォルー。その格好はなんじゃな?」

「あら、オーディンさま!ご存知ないのですか?これは魔法少女ですわよ☆」

セラがピースを横向きのチョキにする

「ふむぅ。最近の若い者にはこういうのが流行っておるのかいの。なかなか、悪くないのぅ。ふむふむ、これはこれは」

………ざんねんだなぁ。こんなんことで世界に名だたる主神を消さなくてはならないなんて。まぁ、ただのスケベジジイだからいいのか?

「オーディンさま、卑猥なことはいけません!ヴァルハラの名が泣きます!」

「まったく、おまえは堅いのぉ。そんなんだから勇者の一人や二人、ものにできんのじゃ」

オーディンのその一言にヴァルキリーは泣きだす

「ど、どうせ、私は彼氏いない歴=年齢の戦乙女ですよ!私だって、か、彼氏ほしいのにぃ!うぅぅ!」

オーディンは嘆息する

「すまんの。こやつはわしの現お付きじゃ。器量は良いんじゃが、いかせん堅くての。男の一つもできん」

護衛対象より弱い護衛とか意味あんのか?

「聞いとるぞ。サーゼクス、セラフォルー、おぬしらの身内が戦うそうじゃな?まったく大事な妹たちが親友同士というのにぶつけおってからに。タチが悪いのぉ。さすがは悪魔じゃて」

「これぐらいは突破してもらわねば、悪魔の未来に希望が生まれません」

「うちのソーナちゃんが勝つに決まっているわ☆」

二人ともシスコン全開だな

「さてと。『禍の団』もいいんじゃがの。わしはレーティングゲームを観に来たんじゃよ。―――日取りはいつかな?」

オーディンのその言葉に場は今度開かれるゲームの話題へと移る

(さて、このゲーム。リアスはどうソーナを攻略するかな?)

今回のゲームを観て、匙にあのことを話そう




ゲームの話どうしよう。あんまり考えてなかった

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