ハイスクールD×Dの規格外   作:れいとん

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第二十六話

搭城が倒れてから日にちは経ち、リアスとソーナのゲームまで後五日だ

リアス達は修行を仕上げ、オカルト部全員が集まっている。俺が知る限り、約二週間ぶりのことだ

木場とゼノヴィアが修行の顛末を語る。修行をする前に比べて、遥かに強くなっている

俺も一応、修行っぽいことをしていたのでそのことを語る。すると全員が引く

「一誠。貴方本当に人間?」

いきなり失礼なことを言ってくる。たかがタンニーンの領土でドラゴンとサバイバルをしていただけなのに

「タンニーンが泣いていたぞ」

アザゼルも引きながら言う。仕方ないだろうが。偶には体を動かしたくなるんだよ

「ま、まあ、いい。報告会は終了だ。明日はパーティだ。今日はもう解散するぞ」

アザゼルのその言葉で報告会は終了する

 

 

その日の夜

「おい、どうしてこうなった?」

「いや、なんというか……すまない」

何故か俺はゼノヴィアと一緒に寝ることになった。

「あんなに広い部屋にいると落ち着かなくてな。……誰かと一緒なら、落ち着いて眠れると思ったのだがな」

ゼノヴィアがそう答える。こいついきなり俺の部屋にやってきて『一緒に寝てくれ』と言い、俺の答えを聞く前にベッドに潜り込んできたのだ

「……なんだ。眠れないのか?」

「……うん。なんだかんだで考えてみれば、男と寝るのはまだ慣れないんだ。いくら性的な意味でなくても……緊張するものだな……」

ゼノヴィアが苦笑しながら答える

「……俺だって初めての経験だよ。おかげ様で、目がさえてしかたねぇ」

「あなたでもそうなるのだな」

ゼノヴィアが俺の手を握ってくる

「……どうした?」

「…………こうすれば落ち着けるかと思ってな……」

そうつぶやいてから直ぐにゼノヴィアから寝息が聞こえてくる

(………………寝よ……)

俺も目を瞑り、夢の世界へと入り込む

 

 

次の日の夕刻、俺は客間で待機していた。今日は上級悪魔同士のパーティがある。俺も参加で、リアス達と一緒に会場に行くことになっている。リアス達が着替えているため、俺は客間にいるのだ

「兵藤さん」

誰かに呼ばれる。その声に振り返る。俺を呼んだのは匙だった

「お前か。どうした?」

「実は会長がリアス先輩と一緒に会場入りするっていうので、ついてきたんです。で、会長は先輩に会いに行ってしまいました。仕方ないので屋敷の中をうろうろしていたら、ここにでたんです」

確かに、この本邸はかなり広い。迷うのも仕方ないだろう

「もうすぐゲームだな」

「はい」

「少しは鍛えたようだな」

匙が発するオーラを見ればすぐにわかる

「これでも、相当ハードなメニューをこなしたんですけどね」

匙が苦笑しながらそう答える。少しして、匙は真剣は面持ちで言葉を紡ぐ

「兵藤さん。先月、若手悪魔が集まったときの事を覚えていますか?」

「ああ。それがどうした?」

「あれ、俺たちは本気です。……お、俺……。せ、先生になるのが夢なんです!」

匙は顔を真っ赤にしながら、ハッキリとそう言う

「ソーナが言っていたあれか?」

俺が訊くと、匙は顔を紅潮紅潮させながらも真摯に答える

「ええ、会長はレーティングゲーム専門の学校を設立しようとしています。ただの学校じゃありません。悪魔なら上級下級貴族平民関係なしに受け入れる、誰にも自由な学校なんです。会長に聞いたんです。悪魔業界は少しずつ、差別やら伝統やらなんかが緩和されてきたけど、まだまだ根底の部分で受け入れがたい部分もあるって。だから、レーティングゲームの学校もいまだに上級悪魔の貴族しか受け入れていない。ゲームには誰にも平等でなければいけない―――。これは現魔王さまたちがお決めになられたことなんです。平等なのに下級悪魔の平民にはゲームの道が遠いんです。おかしいでしょ?もしかしたら貴族以外の悪魔でもやり方しだいでは上級悪魔に昇格できるかもしれないのに。可能性はゼロじゃないはずなんです!」

匙は真剣に将来の事を考えているのだろう

「会長はそれを何とかしたいって言っていました。下級悪魔でもゲームができるってことを教えたいって。だから、この冥界に誰でも入れる学校を作るんです!会長はそのために人間界でも勉強されているんだ!スポットが決して当たらなかった者たちに可能性を与えるんだ!ゼロに限りなく近くても!ゼロじゃなきゃ上級悪魔になれるかもしれないんだ!兵藤さん!俺は、その可能性を信じて上級悪魔になろうとしています!俺が上級悪魔になれたら、それは、俺以外の奴でもなれるってことだから!」

匙は拳を振り上げて宣言する。

「だ、だからこそ、俺はそこで先生をするんだ。いっぱい勉強して、いっぱいゲームで戦って、いろんなものを蓄える。それで『兵士』のことを教える先生になるんです!……会長は俺にも手伝ってほしいって。こんな俺でも学校の先生になれるかもしれない……。お、俺。昔はバカなことばっかりしていました。親にも迷惑かけたし、周りの人間にも嫌われていた。でも、会長となら、夢が見れるんです!俺は生涯会長のお側にいて、会長の手助けをする!会長の夢が俺の夢だから!」

匙は照れながら話を続ける

「へへへ。お袋には、悪魔になった事内緒だけど、それでも将来の夢を話したら泣いちゃって。先生になるんだ!ってガラにもないことを言ったからかもしれないけど。でも、悪くなかったんです。お袋の安心した顔って」

匙は照れながらも将来の夢を語る。

「そのためには、まず、今回のゲームに勝つことだな」

「はい!上にバカにされた以上、俺たちは結果で見せなきゃいけませんから」

匙が真剣な瞳をしながらそう言う

「……ねえ、兵藤さん。俺、俺、いつになったら主さまのおっぱいを揉めますかね?」

匙が真剣にそう言ってきた

「いきなりなんだ…」

俺は若干引きながらも理由を訊く

「会長から聞きました。兵藤さん、リアス先輩たちのおっぱいを一度は触った事があるって……」

リアス、アーシア、ゼノヴィアだな。アーシアはリアスの悪い影響を受けすぎだ

「あれは、俺の意思じゃねぇしな。ありていに言えば運だろ」

俺が適当に答える

「運!?運って何ですか!!そんな幸運、俺には一切降りてきませんよ!!」

匙が俺に詰め寄ってくる

「そんなこと、俺が知るか。それに、そんなことを言っていたら、セラとのことはどうなる?」

「セラフォルーさま?」

「ああ、昔、あいつと一緒に風呂に入ったことも、一緒に寝たこともあるぞ?」

俺がそう告げると、匙は心底ショックを受けたような表情となる

ふらふらと俺から離れていき、椅子に力なく座る。目は大きく見開いており、全身をガクガクと震わせている

「……風呂?寝た?……なんだ、それ……。お、俺なんて、一度もそんなことを会長と……」

匙は小言をつぶやいている

「一誠、お待たせ。あら、匙くん来ていたのね」

パーティようにドレスアップをしてきたリアス達が部屋に入ってくる

リアス、姫島は文句なしだ

アーシア、ゼノヴィア、子猫も十分似合っている。―――しかし

「なぜ、お前もドレスなんだ?」

「だ、だって、ドレス着たかったんだもん」

ギャスパーがムキになりながら答える。見た目は美少女で十分通るだろう

「サジ。サジ、どうしましたか?」

同じくドレスアップしてきたソーナが匙を怪訝そうに見る

その後軽い地響がし、何かが飛来する重い音がする

しばらくして執事が来て言う

「タンニーンさまとその御眷属の方々がいらっしゃいました」

どうやら、俺たちの迎えがきたようだ

 

庭にはタンニーンと、同じサイズのドラゴンが十数体いた

「来たぞ、兵藤」

「ああ」

「おまえたちが背に乗っている間、特殊な結界を背中に発生させる。それで空中でも髪や衣装やらが乱れないだろう。女はその辺大事だからな」

随分と気を遣えるドラゴンだ

「ありがとう、タンニーン。会場まで頼むわ。シトリーの者もいるのだけれど、大丈夫かしら?」

「おおっ、リアス嬢。美しい限りだ。そちらの件は任せてくれ」

かくして俺たちはドラゴンの背に乗り、冥界の空へと飛び立つ。俺はタンニーンの頭部に乗っている

『今更だがドラゴンの上からこの風景を見るとは。なんともいえん体験だな』

ドライグが苦笑しながらそう言う

「ハハハハ、それは面白い体験だろう、ドライグ。しかし、力のある強大なドラゴンで現役なのは俺を含めても三匹か。いや、俺は悪魔に転生しているから、元の姿で残っているのはオーフィスとティアマットぐらいだ。残りは封印されたか、隠居したか。ウーロンもミドガルズオルムも二度と表に出てこないだろう。そして、ドライグ、アルビオン、ファーブニル、ブリトラは神器に封じられてしまった。―――いつの時代も強いドラゴンは退治される。強いドラゴンは怖い存在だものな」

タンニーンの口調は少しだけ寂しそうだ

「笑わせんな。お前らは強くなんかねぇ。オーフィスもグレートレッドも、ドライグもアルビオンも、お前もだ、タンニーン。御大層な名前をしているクセして直ぐにやられる。お前らドラゴンなんかそんなもんだ。」

俺がそう言うとタンニーンは苦笑する

「お前からしたらそうだろうな。最初俺は信じられなかったぞ、オーフィスやグレートレッドを打破する存在なんて。しかも10にも満たない人間の子供がだ。………初めは、サーゼクスが俺をからかっているのかと思ったぐらいだ」

「そんなのしらねぇよ。お前ら人外の存在ってのは、たった16歳のガキに負けるほど弱かっただけだろ?」

その言葉を最後に俺たちは会話を終える

 

 

パーティ会場となるホテルはかなりでかい。俺が住んでいる町の住人は入りきるんじゃないだろうか?

俺たちを乗せたドラゴンはスポーツ競技をなどで使用する会場に降り立つ

「じゃあ、俺たちは大型悪魔専用の待機スペースに行く」

「それじゃあな」

「ありがとう、タンニーン」

リアスがタンニーンに礼を告げる。タンニーンを筆頭にドラゴンたちは羽ばたき、この敷地のどこかに移動する

俺たちはスポーツ会場にまで迎えに来ていたホテル従業員に連れられ、リムジンに乗る

「一誠。さっき私はソーナに宣戦布告されたわ。―――『私たちの夢のためにあなたたちを倒します』と」

リアスが俺に話しかけてくる

「学校――-。レーティングゲームの学舎。ソーナはそれを建てるために人間界で学生をしながら、人間界の学校システムを学んでいた。――誰でも入れる土壌のある人間界の学校はソーナにとって重要なものだったのよ」

匙も同じことを言っていたな

「それでも勝つわ。私たちには私たちの夢と目標があるのだもの。前回と違って今度こそ勝つわ。あなたの力に頼らないで、私たちの力だけで!」

そう力強く言うリアス

「そうか」

俺はそう呟くことしかできない。しばらくすると車はホテルに到着した

「最上階にある大フロアがパーティ会場みたいね。一誠。各御家の方に声をかけられたら、ちゃんとあいさつするのよ?」

「あ?なんで俺がんなことしなきゃいけねぇんだよ。めんどくせぇ」

「一誠……」

「俺はサーゼクスに呼ばれたから来ただけだ。悪魔の世界とかに興味はねぇし、仲良し小好しになるつもりはない」

そもそも俺が悪魔如きと仲良くしなくちゃいけない理由はない。俺に歯向かうなら滅ぼせばいいだけだしな

そうこうしている内にエレベーターも到着し、外に出ると会場の入り口が開かれる

『おおっ』

リアスの登場に、そこにいた悪魔たちが感嘆の息を漏らす

「リアス姫。ますますお美しくなられて……」

「サーゼクスさまもご自慢でしょうな」

ここにいる悪魔たちがリアスに見とれている

「うぅぅ、人がいっぱい……」

ギャスパーがそう言葉を漏らす。ここには人じゃなくて悪魔しかいないがな

「一誠、あいさつ回りするわよ」

「あ?」

いきなりそんなことを言ってくる。なんでも、フェニックス戦以来、伝説のドラゴンである俺に興味がある上級悪魔が大勢いるらしい

「いかねぇよ。いいかげんにしろ」

俺はそう言ってリアスから離れる。あいつ、なんでもかんでも自分の言うことが正しいと思っていやがる

 

 

「うぜぇ」

さっきから俺に話しかけてくる悪魔が多い。ほとんどが俺に眷属になれと言ってくる。中には高圧的に言ってくる奴がいたが、そいつは壁の中に埋めといてやった

俺がフロアの隅っこに座っているとアーシアとギャスパーも来た。どうやら疲れてたので逃げてきたようだ

「一誠、アーシア、ギャスパー、料理をゲットしてきたぞ、食え」

ゼノヴィアが大量の料理を盛った皿を器用に持ってやってきた

「ほら、アーシア、飲み物ぐらい口につけたほうがいいぞ」

「ありがとうございます。ゼノヴィアさん……。私、こういうの初めてなんで、緊張して喉がカラカラでした……」

アーシアはゼノヴィアからジュースをもらうと、口をつけ始めた。

俺達も料理に口をつける。………しばらくして、料理も無くなり、一段落する

と、そこへ人影。ドレスを着た金髪の女の子だ。俺をものすごく睨んでいる。誰だ?

「お、お久しぶりですわね、赤龍帝」

「誰だ?おまえ?」

見おぼえがないな

「レイヴェル・フェニックスです!まったく、これだから人間は頭が悪くて嫌になりますわ」

ああ、フェニックス家の当主と一緒にいた小娘か

「それで?俺に何の用だ?」

「ええ、聞いてくださいよ!お兄様ったら、貴方のおかげで塞ぎ込んでしまいましたわ。よほど敗北がショックだったようです。ま、才能に頼って、調子に乗っていたところもありますから、良い勉強になったはずですわ」

兄が相手でもバッサリ切るな、こいつ

「と、ところで赤龍帝―――」

「その赤龍帝ってのやめろ。俺の名前は兵藤一誠だ。兵藤でも一誠でも好きに呼べ」

「お、お名前で呼んでもよろしいのですか!?」

なぜか嬉しそうな反応をするレイヴェル

「コ、コホン。で、では、一誠さまと呼ばせていただきます」

顔を赤くしながらそう言う

「レイヴェル。旦那さまのご友人がお呼びだ」

顔の片側に仮面をつけた女がレイヴェルに話しかける

「わかりましたわ。一誠さま、今度、お会いできたら、お茶でもいかがかしら?わ、わ、わ、私でよろしければ、手製のケーキをご、ご、ご用意してあげてもよろしくてよ?」

レイヴェルがドレスの裾を上げ、一礼して去っていった

「やあ、赤龍帝」

レイヴェルに知らせに来た仮面女が俺に話しかける

「おまえ、だれ?」

「そう言えば自己紹介をしていなかったな。私はイザベラ、ライザーさまの眷属で『戦車』だ。よろしく」

「それで?なんのようだ?」

「ああ、君と話してみたいと思ってね。私たち全員が瞬殺されたのは、結構衝撃だったけどね」

「おまえらが弱すぎるだけだろ。たった一撃でやられやがって、不死だって言うから、そこそこ期待していたんだがな」

「そういってくれるな。まさか、あそこまで高密度の攻撃を食らうとは思わなかったんだ。現にレイヴェルですら、一緒にやられていたからね」

あいつも一応フェニックスだからな

その後、少し話してイザベラは去っていった

「一誠さんて、悪魔の交友が多いんですね……」

ギャスパーが尊敬の眼差しで言ってくる。正直うれしくない

俺の視界の端に小さな影が映る。――子猫だ。急いでなにかを追いかけている

「一誠!一緒に来て頂戴」

いきなりリアスが俺の腕を引っ張る

「今度はどうした?」

「小猫が何かを追うように飛び出していったのが見えたのよ」

「ああ、俺も見かけた」

「この前も無理して倒れたでしょ?心配なの」

「……わーったよ。俺もついて行ってやる」

なにかを追いかけているのは確かだろう

 

 

エレベーターで一階まで降りて、俺が気配を探す。どうやら森の中にいるようだ

「森?ホテル周辺の森にあの子は行ったのね?」

俺とリアスは子猫を追いかけて、森の中へ入る




遅くなって申し訳ない

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