ハイスクールD×Dの規格外   作:れいとん

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第十三話

それから二日後

俺は近くのコンビニに買い物をした帰りだ

この二日間に木場達が奪われた聖剣に襲われた

その時にバルパーの姿も確認したらしい

「…………誰だ?」

さっきから俺をつけてくる虫けらがいる

「あ~らら、まさか俺様が気づかれるなんてね~」

そう言って出てくる白髪の神父。腰にはエクスカリバーがある

こいつが木場を襲った聖剣使いだろう

それよりも気になることが一つある

「聖剣の気配を掴ませないなんてどんなトリックだ?」

「知りたい? そんなに知りたい? 特別に教えちゃうよ~ん。バルパーの爺さんが言うには俺の気配と同期させることでエクスカリバーの気配を気付かせないようにするだとさ!」

なるほど。こいつの気配が聖剣以上に濃いうえ、気配を同期していたからエクスカリバーに気づかなかったのか

(いいねぇ。また一つ俺は強くなった)

「それで? 何故俺を狙うんだ?」

「何々命乞い? でもごめんねぇ! コカビエルの旦那にアンタを殺すように言われてんだよね~。一瞬で殺してあげるからさ。安心して地獄に行きな! アーメン!!」

そう言った瞬間俺に切りかかってくる神父。……遅いな

俺は人差し指と中指で白刃取りをする

「……は? おいおいおい、どおゆうことだよ!?『天閃の聖剣』を使っている俺様を止めるなんて!!」

そう叫ぶ神父。……この程度か

俺は聖剣を離し神父に言う

「この程度か? ならさっさと失せろ。俺は今機嫌がいいからな。特別に見逃してやるよ」

「ふざけんな!! この程度の事で粋がってんじゃねえよ!!」

そう怒鳴りながら剣を振るってくる神父。さっきより速いのでこれが本気の速度なのだろう

(『天閃の聖剣』の能力込でこの程度か。……ノロマ)

俺は神父を蹴り飛ばす

「ぐほぉ!!!!?」

防御すらできずに吹き飛ばされる神父

「……帰るかぁ」

気配からして気絶している

(楽しくなってきたなぁ)

胸が躍るのを止められない

俺はこれからの事を楽しみにしつつ自宅に向けて歩を進める

 

 

次の日の朝

「一誠!!」

そう言って俺の布団を奪うリアス

(……前にもこんなことあったなぁ)

「……こんな朝っぱらからどうしたんだぁ?」

……ってか

「どうやって家の中に入ったんだ?」

「この前来た時に合鍵を作ったのよ」

スパン!!

「きゃ!!?」

「勝手にんなもん作ってんじゃねぇよ」

油断も隙もあったもんじゃない

「それよりも一誠!!」

怒鳴りかけてくるリアス

「なんだよ?」

「小猫に聞いたわ、祐斗にエクスカリバーを破壊するように促したって」

「ああ、そうだが?」

「そうだが? じゃないわよ。もし祐斗に何かあったらどうするのよ!!」

「知るか」

俺のその言葉に絶句するリアス

「今回の件は木場の個人的なことだろ?いちいち他人が口出す事じゃねぇだろうが」

「……私はあの子の『王』よ」

何かに堪えながら呟くリアス

「木場をどうにか救ってやりたいんなら自分でやることだな。俺には関係ねぇ」

「……そうね」

俺の言葉を聞き少しは冷静になったようだ

「……こんな朝早くからごめんなさいね。……そうよね。人にばかり頼っているようじゃ『王』失格よね」

その言葉を最後にリアスは魔法陣を使い帰って行った

……今回コカビエルが直接出てくるだろう。そうなった時あいつ等はどのくらい喰いつけるか

(オーフィスにグレートレッド、サーゼクスにアザゼル、俺が今まで戦ってきた連中はある意味完成した強さだ。リアス達みたいに未熟故に成長する奴等がどの程度まで強くなるか楽しみだ)

……最近ふと疑問に思う事がある

俺は何故アーシアに対しあそこまで感情移入をしているのだろうか?

アーシア以外に教会から追い出され魔女と呼ばれた奴に会ったことだってある。だがその時は特別な感情なんか思い浮かばなかった

(どぉいうことだ?)

今はどうでもいいか、聖剣の事を楽しむとしよう

 

 

次の日の深夜

どうやらコカビエルが行動を起こしたらしい

今は駒王学園にいるようだ

俺は駒王学園に向かう

数分で着いた

(学園に結界を張っているな。ソーナか?)

見ればソーナとその眷属達が結界を張っている

複数名で構成しているせいだろう。所々ぎこちない

(……まぁコカビエル如きが相手じゃぁこの程度の結界で十分だけどな)

俺は中の様子を盗み見る……

校庭の中央に聖剣が四本発光しながら浮いている。それを中心に校庭全体に魔法陣が書かれている

(あれ『擬態の聖剣』じゃねぇかよ。イリナの奴奪われやがったな)

奪い返しにきて逆に奪われてんじゃねぇよ

魔法陣の中心には初老の男、バルパーがいる

「これはいったい?」

姫島の疑問にバルパーが答える

「四本のエクスカリバーを一つにするのだよ」

……なるほど。元々エクスカリバーは一つの聖剣だった。融合させるのは可能だろう

「バルパー、あとどれくらいでエクスカリバーは統合する?」

空中から問いかける声。コカビエルだ

「五分も掛からんよ、コカビエル」

「そうか。ではたのむ」

コカビエルはリアスに視線を向ける

「サーゼクスは来るのか? それともセラフォルーか?」

「お兄様とレヴィアタン様のかわりに私たちが……」

ヒュッ! ドォォォォォオオオオンン!!!

コカビエルが体育館を吹き飛ばす

「つまらん、まあ、余興くらいにはなるか」

コカビエルが指を鳴らす

「さて、地獄から連れてきた俺のペットと遊んでもらおうか」

ギャォオオオオオオン!!!!

そう吠える三つ首の犬……ケルベロスだ

「ケルベロス!」

忌々しそうにリアスが呟く

「本来は地獄……冥界へ続く門の周辺に生息しているケルベロスを人間界に持ち込むなんて!」

戦闘態勢に入るリアスたち

「しかたない、消し飛ばすわよ! 朱乃!!」

「ええ!」

同時に攻撃を繰り出すリアスと姫島

だがケルベロスが吐き出す火炎弾に相殺される

「隙あり」

ドゴン!

搭城がケルベロスの頭の一つを上から殴りつける

俺が教えたことをちゃんと練習していたのだろう。いい具合に魔力が練れている

予想以上の攻撃に耐えられなかったのだろうその場でのたうち回るケルベロス

「いまよ!!」

リアスが叫んだ瞬間姫島と同時に攻撃する。今度は当たりケルベロスは絶命する

「ほう、少しはやるようだな。そうでなくては面白くない」

リアス達がケルベロスを瞬殺したのが意外だったのだろう。笑みを浮かべるコカビエル

「一匹ではたりないな。なら、これでどうだ?」

指をまた鳴らすコカビエル、その瞬間姿を現すケルベロス。今度は30以上はいるだろう

「加勢するぞ!!」

そう叫びながらケルベロスに攻撃するゼノヴィア。聖剣を振るい頭の一つを切り飛ばし、脇腹に聖剣を刺し、聖剣のオーラを使い絶命させる

ケルベロスの体が塵芥とかし、宙に霧散する

「聖剣は魔物に対し無類のダメージを与える!」

そう叫ぶと同時に他のケルベロスに切りかかるゼノヴィア

「私たちも負けられないわ!!」

そういって攻撃を開始するリアス

その後ろからケルベロスが一匹襲いかかる

リアスは気づいていない。……だが

「そうはさせないよ!!」

その言葉とともに魔剣が宙から降り注ぎ、ケルベロスの四肢貫き、地面に縫い付ける。木場だ

縫い付けられたケルベロスを姫島の雷撃が貫き、絶命する

「くらいなさい! コカビエル!!」

リアスから滅びの魔力が打ち出される

俺の教え通りに素早く且つソコソコ威力がある。普通の堕天使だったらそれで十分だろう。……だが

「ふん」

コカビエルがリアスの攻撃を弾き飛ばす

「この程度か? 興ざめもいい所だな」

瞬間エクスカリバーが一際大きく発光する

「……完成だ」

どこかしら、恍惚の感情を含ませながらバルパーが呟く

「四本のエクスカリバーが一つになる」

光が徐々に大きくなりながらもエクスカリバーが重なっていく

カッ!!!

光が収まると青白いオーラを放つエクスカリバーがそこには存在していた

その姿に満足したようにパルパーが語る

「エクスカリバーが一本になった光で下の術式も完成した。後二十分もしないうちにこの町は崩壊するだろう。解除するにはコカビエルを倒すしかないぞ?」

コカビエル如き1秒有れば十分だ。リアス達が死ぬ一歩手前で片付けるか

「フリード!」

コカビエルが叫ぶ

「はいな、ボス」

出てきたのは昨日の神父だ

「エクスカリバーを使え、最後の余興だ。四本の力を得たエクスカリバーで戦ってみろ」

「ヘイヘイ。まーったく、俺のボスは人使いが荒くてさぁ。でもでも! チョー素敵仕様になったエクスなカリバーちゃんを使えるなんて光栄の極み、みたいな? ウヘヘ! ちょっくら、悪魔でもチョッパーしますかね!」

狂った笑みを浮かべながらエクスカリバーを掴む

「木場祐斗! もし共同戦線の話が生きているなら、あの聖剣を一緒に破壊しようじゃないか!」

ケルベロスに対応しながらも木場に話しかけるゼノヴィア

「いいのかい?」

木場がゼノヴィアに問う

「最悪、私はエクスカリバーの核になっている『かけら』を回収できればいいからな!」

ゼノヴィアはそう答える

「バルパー・ガリレイ。僕は『聖剣計画』の生き残りだ。いや、正確にはあなたに殺された身だ。悪魔に転生したことで生き永らえている」

至って冷静にパルパーに告げる木場だが、その瞳には憎悪の炎が宿っていた。

「ほう、あの計画の生き残りか。この様な極東の島国で会うことになるとはな。」

木場を見下しながら話すパルパー

「私は昔から聖剣が好きだった。あらゆる英雄が強大な悪に立ち向かう時に手にする武器が! だからこそ私自身に聖剣の適性がないと知った時の絶望はでかかったよ!! 自身では使えないからこそ、聖剣を使える者に憧れた。そして聖剣を使える者を人工的に生み出す研究に没頭するようになったのだよ。君等のおかげで研究は完成した。礼を言うよ」

「……なるほど。読めたぞ。聖剣使いが祝福を受けるとき、体に入れられるのは―――」

ゼノヴィアが事の真相に気づいたようで、忌々しそうに歯噛みしていた。

「そうだ。聖剣を扱うのに必要な因子。その数値の低い被験者の少年少女から、因子だけを抽出し、結晶を作ったのだ。こんな風に」

バルパーが懐から光り輝く球体を取り出した。聖なるオーラで迸っている。

「……同志たちを殺して、聖剣適性の因子を抜いたのか?」

木場が殺気のこもった口ぶりでバルパーに訊く

「そうだ。この球体はそのときのものだぞ? 三つほどフリードたちに使ったがね。これは最後の一つだ」

「ヒャハハハ! 俺以外の奴は因子に適合できずに皆死んじまったけどな! う~ん、やっぱり俺様って特別? みたいな」

「……バルパー・ガリレイ。自分の研究、自分の欲望のために、どれだけの命をもてあそんだんだ……」

木場の手が震え、怒りから生み出される魔力のオーラが全身を覆う

「ふん。それだけ言うのならば、この因子の結晶を貴様にくれてやる。環境が整えばあとで量産できる段階まで研究はきている。まずはこの町をコカビエルとともに破壊しよう。あとは世界の各地で保管されている伝説の聖剣を掻き集めようか。そして聖剣使いを量産し、統合されたエクスカリバーを用いて、ミカエルとヴァチカンに戦争をしかけてくれる。私を断罪した愚かな天使どもと信徒どもに私の研究を見せつけてやるのだよ」

そう言って結晶を投げ捨てるバルパー

それは木場の足元まで転がって行った

「……皆……」

涙を流しながらそれを拾う木場

そのとき、木場が拾った結晶から淡い光が放たれる

それは徐々に増えていき、複数の人の形に成っていった

「皆……僕は、僕は……!!」

嗚咽を流しながらそれに語りかける木場

「……ずっと……ずっと、思ってたんだ。僕が、僕だけが生きていていいのかって……。僕よりも夢を持った子がいた。僕よりも生きていたかった子がいた。僕だけが平和な暮らしを過ごしてもいいのかって……」

その時結晶からでてきた彼らは口をパクパクとリズミカルに同調させていた……聖歌だ

木場も涙を流しながら聖歌を歌う

『僕らは、一人ではダメだった―――』

『私たちは聖剣を扱える因子が足りなかった。けど―――』

『皆が集まれば、きっとだいじょうぶ―――』

声が直に聞こえる。全てを見守るような、そんな温かさを感じる。

『聖剣を受け入れるんだ―――』

『怖くなんてない―――』

『たとえ、神がいなくても―――』

『神が見ていなくても―――』

『僕たちの心はいつだって―――』

「―――ひとつだ」

彼らの魂が天にのぼり、ひとつの大きな光となって木場へと降り注ぐ。やさしく神々しいが木場を包み込んだ

(この状況で至ったか……木場)

木場は至った、神器を極めたその先、世界も改変するその力を

俺の胸の内を歓喜がまわり巡る。木場は『禁手化』に至ったのだ

俺の予想を裏切る成長を見せてれた事に、俺は歓喜しているのだ

(随分よろこんでいるな?相棒)

ドライグが俺に語りかける

(ああ!俺は今歓喜しているよ!木場が予想外の『禁手』に至ったからな!! ああ、グレモリー眷属は最高だ! この俺を楽しませてくれる!!)

特別に力を持っているわけでもないのにここまでの成長を見せてくれた

(最初サーゼクスに頼まれた時はめんどくせぇだけだったが、感謝してもいいくらいだ!! 大した力を持たないあいつ等がどこまで力をつけ、俺に対抗してくれるのか、それが楽しみで仕方がない!!!!)

俺が木場の『禁手』に喜んでいる間にも戦場は動く

「バルパー・ガリレイ。あなたを滅ぼさない限り第二、第三の僕たちが生まれる」

「ふん、研究に犠牲はつきものだというものだ。昔からそういうものだ」

その言葉に憤怒の表情を浮かべる木場、だがその瞳にはさっきまでの憎悪はない

「祐斗! やりなさい! 自分で決着をつけるの!! 貴方は私、リアスグレモリーの『騎士』なのだから! 私の『騎士』はエクスカリバーごときに負けたりしないわ!!」

「祐斗君! 信じていますわよ!」

「……祐斗先輩! ファイトです!」

リアスに姫島に搭城に応援される木場

その頬に涙が伝う

「ハハハ! 何泣いてんだよ! 幽霊ちゃんたちと戦場のど真ん中で楽しく歌っちゃってさ。ウザいったらありゃしない。もう最悪。俺的にあの歌が大嫌いなんスよ! 聞くだけで玉のお肌がガザついちゃう! もう嫌。もう限界! てめえを切り刻んで気分を落ち着かさせてもらいますよ! この四本統合させた無敵の聖剣ちゃんで!」

木場は決意を決めた顔で呟く

「……僕は剣になる! 主を、仲間を守れるように! 僕の思いに答えてくれ! 魔剣創造!!!」

木場が最後に叫んだ瞬間その手の中には剣が一振り現れる

その剣から聖と魔、二つの力が感じ取れる

(聖書の神が存在しないからこそ成しえた『禁手』か……)

禁手(バランス・ブレイカー)、『双覇の聖魔剣』。聖と魔を宿す剣の力、その身に味わえ」

そう言って切りかかる木場、神父もそれに答えるように聖剣を振り下ろす

勝負は一瞬。木場の聖魔剣がエクスカリバーのオーラを消し飛ばしたのだ

「ありえねぇぇぇ! そんな駄剣が、本家本元の聖剣を凌駕するっていうのかよ!! 無敵の聖剣様なんだろオ!! 昔から最強伝説を語り継がれてきたんじゃねえのかよォォォオオ!!!!」

玩具を取り上げられた子供みたいに騒ぐ神父

「ならこいつはどうだ!!」

擬態と透明、天閃の能力を使い木場に攻撃を開始する。そこへゼノヴィアが横やりを入れる

「すこし持ちこたえろ!」

木場にそう言う

「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ」

ゼノヴィアの周りの空間が歪む

その歪みに手を突っ込んで無造作にまさぐる。

その歪みから一本の剣を取り出した。

「この刃に宿りしセイントの御名において我は解放する―――デュランダル!」

(……へぇ。デュランダルか、期待はずれかと思っていたが中々に楽しませてくれる)

今回の聖剣騒動に俺は大満足していた

「デュランダルだと!?」

「貴様、エクスカリバーの使い手ではないのか!?」

これにはパルパーもコカビエルも驚愕している。

「残念ながら私は元々からデュランダルの使い手でね。エクスカリバーを兼任してただけだよ」

「だが、私の研究ではデュランダルの域には達していないはず!」

「だろうね。ヴァチカンでも人工デュランダル使いはいない」

「なら何故……!」

「私は現存する人工聖剣使いと違い、数少ない天然ものさ」

それにはパルパーやコカビエルは愚か俺も驚いた

「デュランダルは想像を遥かに超えた暴君で触れた物は問答無用に斬り刻む。私の言うことも聞いてくれない故に異空間へ閉じこめておかないと危険極まりない代物だ」

そう言いながらゼノヴィアはデュランダルを神父に向ける。

「さて、フリード・セルゼン。お前のおかげでエクスカリバーとデュランダルの頂上決戦が実現する。一太刀で死んでくれるなよ? 折角の機会だ、存分にエクスカリバーの力を引き出してくれ」

デュランダルから膨大な聖のオーラが放たれた。聖魔剣を遥かに凌駕するオーラだ

「そんなのアリですかぁぁぁぁぁ!? ここにきてのチョー展開! んな設定いらねえんだよクソビッチがぁぁぁぁぁぁ!!!」

フリードが殺気を剥き出しにゼノヴィアに高速で透明の枝分かれした聖剣を放つ。

だが、ゼノヴィアはデュランダルを片手で一振りするだけで金属の砕ける音が響いた。

折れた枝別れのエクスカリバーが姿を現し、デュランダルからの剣風で校庭の地面が深く抉れる。

その威力は『破壊の聖剣』を上回っている。

「所詮は折れた聖剣か。……デュランダルの相手にもならなかったよ」

ガッカリしたようにゼノヴィアが呟く。

「マジかよマジかよマジですか!? 伝説の聖剣ちゃんが木端微塵の四散霧散かよっ! こいつぁひでえっ! やっぱ折れた物を再利用するのがいけなかったんでしょうか!? 人間の浅はかさと教会の愚かさを垣間見た俺様は成長していきたい!」

さっきまでの殺気も消え失せたフリードとの距離を詰める木場。

フリードもその動きに対応できていない。

木場の聖魔剣をエクスカリバーで受け止めようとする。

だが、金属の砕ける儚い音を断末魔にエクスカリバーは砕け散った。

「見ていてくれたかい? 僕らの力はエクスカリバーを越えたよ」

フリードは鮮血を流しながら倒れた

「聖魔剣だと……? 反発し合う二つが合わさるなど……」

バルパー・ガリレイが木場の聖魔剣にたいし考察していた。

「バルパー・ガリレイ。覚悟を決めてもらおう」

聖魔剣を向けてバルパーに斬りかかる木場。

「……そうか分かったぞ! 聖と魔、それらを司る存在のバランスが大きく崩れているのなら説明はつく! つまりは魔王だけでなく神も―――」

ズンッ。

パルパーが「神の死」に気づいたのだろう、その瞬間胸部を光の槍が貫いていた。

パルパーは口から血の塊を吐き出すと、そのままグラウンドへ突っ伏した。木場はすぐに駆け寄り、生死を確認をしようとするが、すでに絶命している。

「バルパー。おまえは優秀だったよ。そこに思考が至ったのも優れているがゆえだろうな。―――だが、俺はおまえがいなくても別にいいんだ。最初から一人でやれる」

宙に浮かぶコカビエルが嘲笑っていた。パルパーを殺したのはコカビエル―――。

「ハハハハ! カァーハッハッハハハハハハハハハッ!」

コカビエルは哄笑を上げ、地に足をつける。

―――先ほどとは比べ物にならない重圧がリアス達を襲う

「さて、サーゼクスの妹である貴様を殺すとしよう。そうすれば激怒して俺の前まで出て来てくれるやもしれん」

「……!? 貴方は何故そんなにも戦争を求めるの!!」

リアスがコカビエルに問いかける

その瞬間ゼノヴィアがコカビエルに切りかかる

それを受け止めつつ語りだす

「しかし、仕えるべき主を亡くしてまで、おまえたち神の信者と悪魔はよく戦う」

「……どういうこと?」

リアスが怪訝そうな口調で訊く。すると、コカビエルは心底おかしそうに大笑いした。まるで無知な者を笑うかのように。

「フハハ、フハハハハハハハハハハ! そうだったな! そうだった! おまえたち下々まであれの真相は語られていなかったな! なら、ついでだ。教えてやるよ。先の三つどもえ戦争で四大魔王だけじゃなく、神も死んだのさ」

『―――ッ!?』

「……」

信じられない表情を誰もが浮かべる。

「知らなくて当然だ。神が死んだなどと、誰に言える?人間は神がいなくては心の均衡と定めた法も機能しない不完全な者の集まりだぞ?我ら堕天使、悪魔さえも下々にそれらを教えるわけにはいかなかった。どこから神が死んだと漏れるかわかったものじゃないからな。三大勢力でもこの真相を知っているのはトップと一部の者たちだ。先ほどパルパーが気づいたようだがな」

「……ウソだ。……ウソだ」

少し離れたところで、力が抜けうなだれるゼノヴィアの姿があった。その表情は、狼狽に包まれている。現役の信仰者。神の下僕。神に仕えることを使命として、生きてきた存在―――。いまここで神の存在を否定されれば、生き甲斐を失えば、そうなるのは当然だろう。

(やはり狂信者でしかないのか)

俺は少しばかりゼノヴィアに失望する

「正直に言えば、もう大きな戦争など故意にでも起こさない限り、再び起きない。それだけ、どの勢力も先の戦争で泣きを見た。お互い争い合う大元である神と魔王が死んだ以上、戦争継続は無意味だと判断しやがった。アザゼルの野郎も戦争で部下を大半亡くしちまったせいか、『二度めの戦争はない』と宣言するしまつだ! 耐え難い! 耐え難いんだよ! 一度振り上げた拳を収めるだと!? ふざけるな。ふざけるなッ! あのまま継続すれば、俺たちが勝てたかもしれないのだ! それを奴はッ! 人間の神器所有者を招き入れねば生きていけぬ堕天使どもなぞなんの価値がある!? ……それに兵藤一誠!! あのクソ餓鬼だ!」

「一誠? 一誠がどう関係あるっていうのよ!!」

「俺はあいつを殺したいほど憎んでいるんだよ!! たかがドラゴンを宿しただけの、ただの人間のガキが我々堕天使を凌駕していることなどあってはならないことだ!!!」

強く持論を語るコカビエル。憤怒の形相となっていた。事の真相は想像以上に皆へ衝撃を与えている。アーシアは口元を手で押さえ、目を大きく見開いて、全身を震わせていた。

「……主がいないのですか? 主は……死んでいる? では、私たちに与えられる愛は……」

アーシアの疑問にコカビエルはおかしそうに答える。

「そうだ。神の守護、愛がなくて当然なんだよ。神はすでにいないのだからな。ミカエルはよくやっている。神の代わりをして天使と人間をまとめているのだからな。まあ、神が使用していた『システム』が機能していれば、神への祈りも祝福もエクソシストもある程度動作はする」

コカビエルの言葉を聞き、アーシアがその場にくずれた。

「俺は戦争を始める、これを機に! おまえたちの首を土産に! 俺だけでもあのときの続きをしてやる! 我ら堕天使こそが最強だとサーゼクスにも、ミカエルにも見せつけてやる!」

高らかに笑うコカビエル。

俺はケルベロスを全て消し飛ばす

「なに!!?」

「……堕天使が最強? 虫けらの分際でよく吠えたなぁ!」

こんな奴が最強? ふざけるな、この座は俺だけの物だ!!

 

 

<祐斗視点>

「それに兵藤一誠!! あのクソ餓鬼だ!」

「一誠? 一誠がどう関係あるっていうのよ!!」

「俺はあいつを殺したいほど憎んでいるんだよ!! たかがドラゴンを宿しただけの、ただの人間のガキが我々堕天使を凌駕していることなどあってはならないことだ!!!」

何故一誠さんはこんなにも恨まれているのだろうか?

「俺は戦争を始める、これを機に! おまえたちの首を土産に! 俺だけでもあのときの続きをしてやる! 我ら堕天使こそが最強だとサーゼクスにも、ミカエルにも見せつけてやる!」

先ほどよりも強力な圧力が僕たちを襲う。……これほどだなんて!!?

しかしコカビエルが僕たちを攻撃するより速く異変が起きる

まだ20匹以上いたケルベロスが一瞬にして消え去ったのだ

「なに!!?」

コカビエルも驚いている。その場に怒気を含んだ、僕たちがよく知っている声が響く

「……堕天使が最強? 虫けらの分際でよく吠えたなぁ!」

「兵藤一誠!!!!!」

コカビエルが一誠さんに光の槍を投げる。さっき体育館を吹き飛ばした時よりも強大な槍だ。

もし僕たちだったら跡形もなく消されているだろうそれを一誠さんは無造作に掴む

「なんだ、これは? せめてシェムハザ位の攻撃をしろよ」

光の槍を握り潰し、失望したようにコカビエルにいう

「貴様ァ!!!」

コカビエルは手に槍を持った状態で一誠さんに襲いかかる

一誠さんは右手に槍を持ち迎え撃つ

「どうした? 俺を殺したいほどに憎んでいるんだろう? もう少しやる気を出したらどうだ?」

「たかが人間如きがァ!!!!」

そういって僕たちでは目視することも困難な速度で切りあう二人

(「お前以上に速い奴なんざ、世の中には掃いて捨てるほどいる もっと世界を知るんだな」)

フェニックス戦の前に修行をつけてくれた時に言っていた言葉が思い出される

……僕たちでは手も足も出ないなんて

僕たちの事など眼中にないように振る舞う……。いや、事実眼中にないのだろう。

二人の戦闘をみて嫌でも理解させられる。本当の強者の戦闘を

「所詮口先だけか? 仮にもグリゴリの幹部なんだ。もう少し楽しませてくれよォ!」

「ほざけ!!!」

コカビエルが一誠さんの言葉に激怒して突っ込む

一誠さんはつまらなそうに一瞥する

次の瞬間コカビエルの片手が宙を舞っていた

槍を振るって腕を切断したのだろうが、槍を振るった瞬間が見えなかった

よく見ると、脇腹から血が滲んでいる。

その場に膝をつくコカビエル

あまりにも圧倒的だ。一誠さんは無傷なのに、コカビエルは片腕が無いうえに脇腹まで貫かれている

「……クソ!」

「こんなもんか。期待はずれだったよお前」

そういって槍を構える一誠さん

「もう飽きたしな。……死ね」

槍を振り下ろし、止めを刺そうとした瞬間

「……それは待ってくれないかな」

声が聞こえてきた

最初に気づいたのは朱乃さんだ、上空を見上げている。それにつられて僕も空を見上げる

ゾッ

全身を駆け巡る言い知れない絶望と恐怖

圧倒的な存在感と絶望的な実力差を振り回しながらそれは下りてきた

いやでも理解できる。この存在はコカビエル以上の存在だ!!

夜の闇を切り裂くような白い鎧に包まれた圧倒的力をもち君臨する存在。その形状はドラゴンにも見える。……まさか、

(白龍皇か!?)

一誠さんが宿すという赤き龍・ウェルシュドラゴンと対をなす白き龍・バニシングドラゴン

なぜこんな所に!?

「……へぇ、お前がドライグの言っていた『白いの』か」

「初めまして兵藤一誠、我が名はアルビオン。君の事はアザゼルから聞いているよ」

伝説の二天龍が会話をしている。だが決して友好的な物ではない

二人から先ほどよりも強力な重圧を感じる

(二人とも強すぎて底が見えない。……どうにかして部長だけでも逃がさないと)

もし二人が戦い始めたらその余波だけで僕たちは死んでしまうだろう

「それで? 何しに来たんだ?」

「アザゼルから命令されていてね。そいつを回収しに来たんだよ」

そう言ってコカビエルを指さす白龍皇

「はあ? こいつは俺の怒りに触れたんだ。邪魔するってんならてめぇも殺すぞ」

「俺もアザゼルに無理やりにでもコカビエルを連れてくるように言われているんだよ」

さらに重圧が増す二人。……まだ増すというのか!?

二天龍の、「赤龍帝」と「白龍皇」の対決が始まろうとした瞬間

「俺を無視するなぁぁぁぁアアアアア!!!!!」

膝をついていたコカビエルが一誠さんに襲い掛かる

「……はぁ」

一誠さんがため息を出した瞬間コカビエルが視界から消える

そして白龍皇に掴まれていた

「こちらに蹴り飛ばしてくるなんて酷いじゃないか」

白龍皇は今のが見えていらしい

「……萎えた。勝手に連れて行け」

そう言って二人の間から一触即発の空気が霧散する

僕は、たまらずその場に膝を着く

部長や朱乃さん達も膝をついている

「さっきのやり取りで理解した。君は今の俺では足元にも及ばない程の強者だ、アザゼルから聞いた時は半信半疑だったが納得した。

―――いずれ君と戦うその時を楽しみにしているよ」

「ドライグがあれだけ語っていたドラゴンなんだ。楽しませてくれよ?」

そう言って飛び立とうとする白龍皇

『無視か白いの』

―――初めて聞く声

声の発生源を探してみると一誠さんの左手にいつの間にか現れていた赤い籠手の宝玉から発せられていた

(あれが『赤龍帝の籠手』)

初めて見た。あれが十秒毎に力を倍増させるという神滅具

『起きていたのか、赤いの』

白龍皇の宝玉からも声がする

宝玉に宿る者同士が会話を始めたか?

『折角出会ったというのにこの様な状況ではな……』

『偶にはいいさ、いずれ戦う運命だからな。こういうこともある』

『……そうだな。だが白いの、以前の様な敵意が伝わって来ないが?』

『それは赤いの、お前も同じだろう。そちらも今までと段違いに敵意が低いぞ』

『お互い、戦い以外の興味対象があると言う事か』

『そう言うことだ。こちらはしばらく独自に楽しませて貰うよ。偶には悪くないだろう? また会おう、ドライグ』

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』

それを最後に会話を終了させたようだ

「俺はいずれ君を世界最強の座から引きずり降ろす!」

「……口先だけじゃない事を祈るよ」

そう言ってその場から消える二人。……誰も声を発せない。

「……部長」

「……何?」

僕が部長に語りかけると部長の眼には決意が映っていた

「僕は強くなります。もし今回みたいな事が起こっても貴女と仲間を守れるように……」

「ええ、私も強くなるわ。私の大切な人を失わないために。貴方も協力してちょうだい? 祐斗」

「……はい!!」

僕は部長の信頼に答える為にも必ず強くなる

「あらあら、私たちは除けものかしら?」

「私も強くなります!」

「……私たちだけ仲間外れなんて嫌です」

その言葉に苦笑しながら部長が言う

「……そうね。皆で強くなりましょう」

そうだ。僕にはこんなにも最高の仲間がいるのだ。一緒に強くなろう

 

 

後日

イリナさんはエクスカリバーの「核」をバチカンに持ち帰るため日本を発った

ゼノヴィアさんは神の死を知ってしまったために厄介者のように扱われたのが我慢できずに上の許可を取り悪魔になることにしたらしい。

その後部長に頼んで眷属にしてもらった。駒は僕と同じ「騎士」だ

……結構破れかぶれな所があったらしく自分が悪魔化した事に酷く落ち込む事がある

彼女は今まで神の為に生きていた為に何をしていいかわからないらしい

そんな彼女に部長が『悪魔は欲を持ち、欲を叶え、欲を与え、欲を望む者。好きに生きてみなさい』

と言ったものだから、彼女は女の幸せを感じたいらしくいきなり僕に子作りしようと言ってきた。

僕が断ると今度は『一誠さんに頼んでくる』と言っていた

……大丈夫かなぁ? 彼女、結構心配だ

「皆いるわね?」

部長が部室に入りながら確認を取る

「どうかしたんですか?」

何かあったのだろうか?

「実は今回の件で教会が悪魔側―――つまり魔王に打診してきたそうよ。『堕天使の動きが不透明で不誠実のため、遺憾ではあるが連絡を取り合いたい』――――と。あと、パルパーの件についても過去逃したことについては自分たちに非があると謝罪してきたわ」

あくまで遺憾なのか。まあ、基本的に敵同士だししかたがないのだろうけど

「今回のことは堕天使総督アザゼルから、神側と悪魔側に真相が伝わったわ。エクスカリバー強奪はコカビエルの単独行為。他の幹部は知らないことだった。三すくみの均衡を崩そうと画策し、再び戦争を起こそうとした罪により『地獄の最下層コキュートス』での永久冷凍の刑が執行されたそうよ」

コキュートスで凍らされたのならば二度と地上には出てこられないだろう

「あの事件は最終的に『白龍皇』が納めたことになったわ。自分達の組織の者が起こした事は自分達の組織の者が解決したい事にしたいらしいわね」

それは僕も聞いた。本当は一誠さんがコカビエルを倒したに

「それとね。これはお兄様が教えてくれた事なのだけれど」

なんだろう?

「実は一誠に三勢力がそれぞれ独自に謝罪の言葉と共に莫大な金銭を払ったらしいわ」

「実質一誠さんが今回の事件を解決したからですか?」

僕の質問に頭を振って否定する部長。じゃあどうして?

「今回の件で一誠が自分達の勢力を攻め込まないか怖がっているそうよ。もし攻め込まれたりしたら本当に種自体がなくなってしまうらしいわ。だからこそ謝罪と共にお金を払ったらしいの」

一誠さんは三勢力の首脳陣に警戒されているのか

……どれだけ強いのだろう。アルビオンは『俺はいずれ君を世界最強の座から引きずり降ろす』と言っていた。一誠さんも合宿の時に自分が世界最強だと言っていた

まさか本当に?

強くなりたい。あの事件が終わってから僕は酷くそう思う

(いや、強くなるんだ。部長や皆を守れるように! だって僕は『騎士』なのだから)

僕はさらに決意を強める




燃え尽きたぜ。真っ白にな・・・・・

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