乙女は戦車道に恋してる   作:くりむぞー

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いやまさか艦これのイベントが1日で終わってしまうとは・・・(活報参照

てなわけで、時間に余裕ができたので執筆を進めましたが今回は丸一話、秋山殿の潜入回です。

安定のキャラ崩壊を引き起こしていますので注意をお願います。


別件ですが、最近読んだ夏目漱石風のガルパンSSが面白くてハマっています。


ラブ戦車道3

 抽選会があった日の翌日。

 西住殿の為ならたとえ火の中水の中戦車の中と息巻いていた優花里は、その日は彼女にしては珍しくも学校を欠席しサンダースとの戦いに向けた戦車道の練習にも参加せずにいた。

 心配する他のチームメイトとは裏腹に大体の事情を把握しているあんこうチームは、生徒会チームことカメさんチームに朝方その事について説明すると不用意に連絡を取り潜入の邪魔をしてしまうことがないように気をつけ、前日に連絡を取ると互いに約束をした時間帯まで優花里抜きでも行える練習に勤しんだ。

 その後、時間を適度に潰した彼女らは、時計を見てそろそろかといった面持ちで己が持つ携帯を握り締める。

 ――すると、みほの携帯が一番に振動し始めて一斉に皆が何事かと画面を覗き込んだ。急ぎ確認すれば予想通り優花里からであり、潜入には成功した模様で欲していた情報は入手出来たとの報告がそこには書かれていた。

 また、映像記録として残したようであるので、確認して貰うためにも先に自宅の部屋に上がっていて欲しいともあった。

 ……ということで、学校から帰る足で彼女の自宅もとい実家の『秋山理髪店』を訪れることになった一同は、友達だと名乗った事に対して彼女の父親にオーバーリアクションで驚かれつつ、戦車関係のグッズが全体的に並ぶ優花里の部屋へと上がった。

 

「……ええと、確かメールには窓を開けておいてってあったんだっけ?」

 

「うん、そうだね」

 

 茶菓子と飲み物が母親によって運ばれ、あとは優花里の到着を待つばかりとなった彼女らは、追加で書かれていた『隣家がある方の窓の鍵を外しておいてください』という要求に答え、確認しながら日当たりが悪い方の窓を開いた。

 ……流石に開いた直後に彼女が部屋に入り込んでくるということはなかったが、窓から下を見ればわざわざ登って来れるように色々と設置がなされていたるのがよく見えた。誰にでも登って来れるようになっているかといえばそうではないようであり、それなりの運動神経は要求される作りになっているようであった。

 なるほどと沙織とみほが感心をしていると、道路側の道から丁度そこへ某コンビニエンスストアの制服を纏った人物が現れる。見慣れたセーラー服姿ではないものの、特徴的な癖っ毛からすぐに誰であるかは判明した。――そう、彼女らが待っている相手である秋山優花里、その人だった。

 軽く声をかけて報告通り無事な様子を視認した面々は彼女が部屋に入るのに手を貸してやり、再びなるほどこれでは家の玄関から堂々と入るのは憚れるなと彼女の容姿を間近で見て思った。

何せ帰宅した娘が学校以外の制服を着ているのだから、もし目撃してしまえば要らぬ心配をするというものだ。それを自然と配慮出来る辺り、良い家族なのだと少女達は微笑ましくなった。

 

「――っと、それで肝心の潜入の成果となりますがこちらをどうぞご覧ください!」

 

 汚れがやや付着している自作だという制服を脱ぎつつポケットから小型の端末を取り出した優花里は、せっせと部屋にあるテレビにそれを接続しリモコンを操作して再生できるように一人準備を整えた。少しして映像が再生されると『実録!突撃!!サンダース大学付属高校』と銘打たれたタイトルが一番に表示され、潜入し終えたばかりであるのにいっちょ前に凝った作りになっていることがわかった。

 

「一体何処で編集したんだ?」

 

「ああ、帰りの途中でです。行きと違って帰りは割と暇というか快適だったもので……」

 

「快適?」

 

 4人が疑問符を頭の上に浮かべるのを余所に映像はコンビニ船を降りるところから切り替わり、いよいよ校内に潜入する場面へと移り変わる。

 特に怪しまれていない辺り、優花里の作った制服はよほど完成度が高く素人の目には判別不能なのだろう。……などと評価を真っ当にしていたら、あっという間に彼女はトイレに潜伏することに成功し、背負っていたバッグから独自ルートで入手したと思われるサンダースの制服を取り出して着替え始めた。

 

『……では、無事潜入できましたのでサンダースの制服に着替えたいと思います』

 

「ええっ!?(ガタッ」

 

「座れよ」

 

 みほが優花里の下着を晒す瞬間を見逃さまいとして立ち上がりかけるが、その行動を予期していた麻子に肩を掴まれて制される。

 そして残念なことに彼女が見たかったであろう映像はそれはもうばっさりカットがなされており、次の瞬間には装いも新たに学校の廊下を歩く優花里の姿が映し出されていた。

 ……悲しい現実に、床にひれ伏し何度も拳を打ちつけるみほ。

 

「くそぉ……くそぉ……っ!!」

 

「――酷いよゆかりん! 何で折角のシーンをカットしちゃうのよ!」

 

「そ、それは……不特定多数にもこの映像は見られる可能性がありましたので………」

 

「まぁそりゃそうだろうな」

 

 所属チーム以外に、参考資料として見られるかもしれない可能性を考えれば当然の編集であると言えるだろう。

 しかし、ここでブレないのが優花里であり、我らがあんこうチームの西住隊長であった。 

 

「でも、安心してください……ディレクターズカット版として、私の生着替え映像を収録したバージョンもちゃんと用意してありますから!」

 

「――言い値で買います」

 

「おい、何ていうスピードで財布用意してるんだ……見えなかったぞ」

 

「いえいえ、西住殿からお金を取ろうなんて滅相もないですよっ! 勿論無料ですって!!」

 

「………(無言の三万円提示」

 

「妙に生々しい額払ってんな、おい!?」

 

 騒がしい彼女らを放って映像は進み、いよいよサンダース高が保有している戦車が格納されている倉庫の内部へと迫った。

 そこでは予想通り、主力であるとされるシャーマンがずらりと陳列して停車しており、左から順にM4A1型・M4無印、生産台数が少ないと有名なM4A6と置かれて整備が行われていた。

 恐らくメインの車輌はこれらのいずれかによって構成されるのだと思われるが、サンダースは今回映った車輌の台数以上に戦車を多く保有していることで有名な高校だ。……つまり、映せた内容だけが学校の全てではないのである。

 加えて、毎年の新型戦車の申請の噂とくれば、映像外に切り札の一つや二つ……否、何十と隠し持っていたとしても不思議ではない。現に、高セキュリティで守られているブロックの倉庫もあり、その認識は彼女の中でより強まっていった。

 そうして優花里は、一番に知りたい情報に辿り着くべく運良く一回戦突破に向けて開かれていたサンダースの全体ブリーフィングへ紛れ込むと、直接聞き出すまでもなく出場車輌の選定について有力な情報を入手することに成功した。

 

「シャーマン・ファイアフライ1輌、M4A1シャーマン76mm砲搭載型1輌、M4シャーマン75mm砲搭載型8輌かぁ……」

 

「……編成的に舐めてかかられてはいないようですが、その分手加減無用でやりにくそうです」

 

「で、去年と比較して使ってる車輌はどうなの、ゆかりん?」

 

「今回は杞憂だったようですね。……まあ、一回戦ですから無難かつ相手を圧倒出来うる編成にしたということも考えられますけれど」

 

 フラッグ車はM4A1シャーマンに決まった様子であるので、一回戦のサンダースの切り札は消去法から考えてもファイアフライが妥当だろう。

 だとすると、相手方には17ポンド砲を扱えるだけの優れた砲手がいるとみえる。如何にこちらのフラッグ車を狙わせないかが作戦の肝だといえるかもしれない。

 ブリーフィングは質問タイムへと移行し、さらに情報を得るには格好の機会となった。

 

『――小隊編成はどうしますか?』

 

『おおー、良い質問ね! 今回は完全な二個小隊は組めないから、三輌で一小隊の一個中隊にするわ』

 

『フラッグ車のディフェンスは?』

 

『ナッシング♪』

 

 狙われない自信かもしくは秘策があるのか、サンダースの隊長は不敵に微笑みVサインを優花里に飛ばしてみせる。

 ……が、ここで早くも隣に立ち並ぶ副官達が優花里の顔が見慣れない顔であると気づき始めたようであり、徐々に表情を歪ませ警戒心を露わにし始めた。

 そこに追い討ちをかけるが如く、何も把握していない様子の隊長であるケイが質問者である彼女の名前を自然に問おうとすると、いよいよ雲行きは怪しくなり逃げる算段を整えざるを得なくなった。

 真面目に名前を名乗ろうが偽ろうが結果は大して変わらないのはもはや明白だとして、優花里は包囲されて逃げられなくなる前に逃げるべく懐へ手を伸ばして全力で身構える。

 

『……ところで貴女、所属と階級は?』

 

『――第六機甲師団、オッドボール三等軍曹であります!』

 

『!?』

 

 どうせバレるのだから盛大に巫山戯てやろうと思った彼女は、名乗りを上げた直後に所持していた筒状の物を幾つか床に落とし目を腕で覆い隠す。

 ……その刹那、周りには閃光が溢れるとともにスモークが大量にバラ撒かれ、視界は完全に塞がれて雪国の銀世界のように白一色となった。各所からは阿鼻叫喚の悲鳴が聞こえ、ブリーフィングに参加していた生徒達は騒然と化す。

 その隙を逃さず逃亡を図った優花里はバク転を数回かましてから最短ルートにて出入り口に急行をし外に出ると、追加の目眩ましを巻きつつ予め用意していた逃走経路を駆け足で辿っていった。

 

「なかなかに危険な橋を渡りましたね……追手の方は居たのでしょうか?」

 

「そ、それが……居たことは居たのですが、思わぬ相手でして厄介なことになったんですよー……」

 

「厄介ってどんな?」

 

「それは映像を観てれば自ずとわかります……」

 

 げんなりとした顔をした彼女はリモコンの早送りボタンを押してやや映像を飛ばすと、本当に意外な相手が追跡者として優花里に迫っており嬉しそうに笑い声を上げていた。

 

「――あれっ、この人ってサンダースの隊長さん……?」

 

「……何でこの人が直々にゆかりんを追って来てんの」

 

「というか、さっきブリーフィングで映っていた時より服が開けてるんだが気のせいか……?」

 

 麻子の指摘は正しく、単独で優花里の後ろを走っているケイの服装は直前の記憶にあるものよりも乱れきっており、そもそもな話上着が完全に何処へと消えていた。

 それどころか、駆け抜けている最中に自身でシャツのボタンを器用に外していて、気づけばケイは胸元からお腹にかけて完全に露出をしていた。……ブラジャー?悪いがそんなものは何処にもないとだけ言っておこう。

 

『逃さないわよーっ、オットボール三等軍曹! 大人しく御用になりなさーい!!』

 

『――嫌ですよ! 私には心に決めた方がいるんですっ、捕まってたまりますか!』

 

『そんな人すぐに忘れさせてあげるわっ! ……勿論、ベッドの上でだけどね!』

 

 舌舐めずりをしたケイは目を輝かせながら加速を行い、瞬く間に優花里との距離を三メートル近くまで縮めてみせてくる。どうやら体力には相当の自信があるようである。

 一方で、優花里は逃げる途中で回収した荷物を担ぎながら走るという二重のハンデを背負っている為、少しの気の緩みが取り返しの付かないことになりそうだった。

 

『……ええいっ、これでは予定していた帰還ルートは使えません! こうなれば、西住殿から渡された秘密のスイッチを使うまでです!!』

 

「秘密のスイッチって?」

 

「緊急脱出用スイッチだよ。こんな事もあろうかと事前に持たせてあげておいたの」

 

「――一体何が始まるんですか?」

 

「第三次大戦です」

 

「おいィ!?」

 

 皆が緊張して見守る中、画面中の優花里は躊躇わずグリップ状のスイッチのボタンを押し込み、点滅するボタンのライトによって何かが発動するのを逃走を続けながら待った。

 ところが、その何かが起こるよりも先に大洗の命運をかけた命がけのチェイスは佳境を迎えてしまい、彼女は学園艦の端の――下を見れば海しかない、飛び込めば命があるかもわからない本当に端近くで立ち往生してしまうことになった。

  

『……さあ、観念しなさい! これ以上抵抗するならこの場でお仕置きよ!』

 

『完全なレ○プじゃないですか!?』

 

『どうせ合意になるからいいじゃない、さあさあ!脱いだ脱いだ!』

 

『駄目だこの人、気に入ったモノはとことん壊れるまで愛でるタイプの人だ……捕まったら最後、ビデオレターであられもない姿を皆に送られてしまいますぅ!』

 

『……よくわかったわね、ますます私の虜にさせたくなっちゃったわ!』

 

 ケイは怪物的なまでの、セクハラ魔人的なオーラを解き放ち優花里を萎縮させにかかる。

 心なしか胸ぐらを掴まれるかのような、太ももをねっとりと撫でられるかのような感覚が身体を襲うが、あくまで感触だけであり物理的なダメージを受けたわけではなかった。

 ――と、思いきや急に布地一枚分涼しくなった違和感が急に彼女を支配する。

 

『えっ!?』

 

『い・た・だ・き♪』

 

 優花里は自身の胸元のボタンがいつの間にか開かれていることに驚くと同時に、ふとケイの腕元を見やった。すると、そこには今日彼女が着ていたはずの下着が腕章のように巻かれていてコレクションと化していた。

 

「そんな……優花里さんのブラジャーを盗んだだけじゃなく、パンツもずらしたの!?」

 

「――パンツは盗まないのかよっ!」

 

「いやだって麻子、パンツって脱がしにくいじゃん……」

 

「それはブラジャーにも言えることだろうがっ! ――というか、戦車道やってる連中の隊長はみんなこんな変なのばっかりなのか!?」

 

「やだなー、そんなわけがないよ麻子さん」

 

「……嘘をつけっ!」

 

 場面は戻って、衝撃を受けて狼狽える優花里がそこにはあった。

 何せ、視認できないほどのスピードでセクハラを実行されたのだ。驚くのも無理はなく只々彼女の額からは汗がダラダラと溢れる。つまるところ最高に拙い状況であり、まさに背水の陣と言うべき状態へと彼女は陥っていた。

 

『どう転んでも酷い目に遭うのは目に見えていますっ! ……ならば、一か八か賭けに出るまで!!!』

 

『何をする気? ――もしかして、ストリップショー?』

 

『……いいえ、違います。仲間を………信じるんですよ!』

 

 そう言い切ったあんこうチームの装填手たる少女は、未だに点滅し続けてるスイッチを祈る形で手に持つと静かに『その時』を待った。

 対するケイは、その行為の意図が理解できずに首を傾げその場から一歩も動かずにいた。――それが二人の運命の分かれ目となるとも知らずに。

 ……次の瞬間、優花里の背後の空には包帯などを巻いて傷だらけのクマが大きく描かれ『グレートみほ号』と表記された一機のヘリが出現し、ギリギリの距離からラダー付きのロープを素早く降ろした。

 

『ええっ、フォッケ・アハゲリスFa223!? どうしてドイツのヘリが此処に……!!』

 

 動揺する声が上がるが、それを無視してヘリからはスピーカーにのせて聞き覚えのある声が聞こえた。 

 

『――早く乗りなさいっ、そこのもっさり髪ワンコガール! その女を相手にするのは危険よ!』

 

『その声はまさか――いや、それよりも今は絶好のチャンスですっ!!』

 

 注意がヘリに向けられている隙を突いた優花里は、怒号とも取れる指示に従い垂れ下がったラダーに捕まるとヘリの搭乗口から垣間見えた人影に向けて合図を送った。

 慌ててケイが逃さまいと駆けるものの時既に遅し。一人の少女を吊り下げたヘリは余計なことをせずに滞空していた場所から即座に離れて、高度をみるみる上昇させていった。

 

『オットボール三等軍曹ぉー! 試合の時にまた会いましょうねー!』

 

『……そんなことよりも盗った私の下着、ちゃんと洗って返してくださいよぉ~!!』

 

『それは約束できないわー!』

 

『――何で!?』

 

『既に私のモノだからよっ!!!』

 

 おまえのものは俺のものだとジャイアニズムよろしく叫んだケイは高笑いをしつつ手を大きく振って、それ以上の追跡はしてこなかった。

 てっきり、保有している航空機を全機使ってでの激しいドッグファイトが開始されるのではとドキドキしていただけに何ともあっけないものである。

 

「ブラジャー一つを犠牲にして得た情報なのかよ、これ……」

 

「……つまり、優花里さんは今ノーブラということなのでしょうか?」

 

「うん、着てないね(もみもみ」

 

「結構、胸あるねーゆかりん」

 

「んぁ……そこは弱いんですって……」

 

「確かめるついでにいちゃつくなよゴルァ!」

 

 兎にも角にも無事に脱出が出来た優花里はやがて機内に回収されたわけであるが、そこで待っていたのは器用に操縦桿を握っている先日顔をあわせたばかりの逸見エリカであった。

 彼女は丁寧にもロープを回収してくれたもう一人の黒森峰の生徒について紹介をし、その少女もまた去年の決勝戦でみほに助けられた一人であると語ってくれた。ちなみに、名前は赤星小梅であると少女は頭を下げて名乗り、優花里を席に誘導して座らせた。

 

『間一髪でした……しかしどうして、逸見さん達が私を助けてくれたんです?』

 

『……それは副隊長、いえ今の貴女達の隊長に頼まれたからよ。……あと、こちらの独自の調査でサンダースの隊長に良からぬ噂が確認されたのもあるわ』

 

『良からぬ噂、もしやさっきのアレだったりしますか?』

 

 ヤバそうな心当たりがそれしか思い当たらない優花里は恐る恐る問うと、エリカは背中を向けたまま『ええ』と肯定をし深い溜息をついてから言った。

 

『あのケイという女は、およそセクハラをすることに関してはプロの痴漢以上に長けているのよ。貴女も多分味わったでしょうが、あの女の相手を脱がせようする速度は尋常では無いわ』

 

『最悪の場合はどうなるんですか……?』

 

『……その場で犯されるだけじゃない、最後は想い人の顔も忘れるぐらいに蹂躙されるそうよ。あと、重度のダメージ服フェチで可愛いと思った子の服は光の速さで破かれるそうよ』

 

『それでいてチームメイトとの結びつきもとても強いんです……なので、生半可な連携ですと本当に命取りになりますよ秋山さん』

 

『ひえー……』

 

 色んな意味で情報を入手することが出来てよかったと思った彼女は腰を抜かしつつも身を引き締め、帰ったらサボることになった分以上に練習に取り組もうと胸に誓う。

 そんなわけで親切にも近くまで送り届けてもらえる事となった彼女は、映像を移動中に纏めて今に至る。

 

「これで戦術は……立てれそうですか?」

 

「少し脱がせ技が厄介かな……スピードもテクニックも相当みたいだし」

 

「――そっちじゃないだろ!?」

 

「あっ、勿論試合の方は大丈夫だよ麻子さん。フラッグ車もわかったことだし戦術については私が何とかしてみせるよ」

 

 二重に意味でやる気に満ち溢れたみほは鼻息を荒くしてガッツポーズを優花里とともに決めてみせる。

 

「ならいいが……」

 

「というか、麻子にとっては試合よりも明日からのことが大事でしょ? もしかして忘れてる?」

 

 沙織が心配な面持ちで麻子を見るが、何を言っているんだと言わんばかりの表情で彼女は首を傾げる。

 

「……何をだ?」

 

「いや朝練を。明日からやるんだよ?」

 

「何の?」

 

「戦車道の」

 

「………」

 

 ただでさえ朝が弱いというのに運動部の部活動のように早起きし無くてはならない事実を知った麻子は、露骨に嫌そうであり得ないといった顔のまま固まりその場に倒れ伏した。

 どさくさに紛れて服を軽く脱がせてみるがそれでも無反応である。

 

「あ、気絶してる」

 

「じゃあ、私がキスで起こすよみぽりん」

 

「出来るんですか沙織さん?」

 

「これでも寝ている隙に麻子の唇は何度も奪ってるからね、お手のものだよ」

 

 艶めかしく舌を出した彼女は麻子の頭の下に手を滑り込ませると、大胆にも皆の目前で重ね合わせ部屋中にそれはもうジュルジュルと過激な音を響かせたのであった。

 余談だが、耳を甘噛みするなどしても結局起きなかったので沙織が背負ってお持ち帰りすることになったのであるが、その後麻子が沙織にがどんな行為をされたのかはわからなかった。

 ……ただ一つ言うのであれば、その日から不思議と布団が湿るようになったと言っておこう。断じて、お漏らしをしたというわけではないのであしからず。

 

 

 

 

 

 

「そういえば武部殿、男の方に興味があったのでは?」

 

「それは今でもそうなんだけど、なかなか好みの人が見つからないからさー……」

 

「……成程、構ってあげたいというか、世話をしてあげたいと感じる冷泉殿に現状は意識が向いているというわけですね」

 

「何というか、お母さん的な気分も味わえるしね?」

 

「逆バブみというわけですか、勉強になりますねぇ」 

 

 後の大洗戦車道の母と称されるようになる少女のめくるめく人生は、まだ始まったばかりだった。




さて、戦闘シーンはどうしたものやら。

サンダース編後は時系列に沿ってアンツィオ編になる予定です。
OVA仕様になる予定ですが、ドゥーチェは変態キャラにはなる予定はありません(周りがならないとは言っていない

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