乙女は戦車道に恋してる   作:くりむぞー

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最初は反抗期で家出する西住殿を書こうと思ったら、ガチ百合モノを書いていた。
多分一発ネタなので続くかどうかはわからないです


ラブ戦車道

 

 ――西住しほが実の娘である西住みほを、強制的に転校させた判断が間違いであると気づいたのは事が終わった直後のことであった。

 

 事のきっかけは、第62回戦車道全国高校生大会の決勝戦。

 第53回大会から続いている連覇記録を二桁へと伸ばせるかが懸かった大事な試合の最中、運命の悪戯なのかアクシデントは突如として起こった。

 当時、西住みほは黒森峰のフラッグ車の車長を一年生ながらも務めており、姉である隊長のまほと息のあった連携をみせて、トーナメントでこれまで戦った相手にしてきたようにライバルのプラウダ高校を追い詰めていた。

 しかし、包囲網を狭めていく作戦の途中、退路を断たれてたまるかと足掻いたプラウダのフラッグ車両から強烈な一撃を受けて、彼女の乗るフラッグ車に随伴していたⅢ号戦車が悪天候によって増水していた元々底が深いであろう川へと落下する。

 無視してしまえばまだ優勢をそのまま維持し、最終的には勝利を掴むことも容易であっただろう。……が、ここでみほは黒森峰の、いや西住流の戦車道の流儀に反する行為を実行に移した。そう、目先の勝利よりも共に戦う仲間を優先し、フラッグ車より離れ単身で川に飛び込んだのである。

 ……結果、車長のいない黒森峰のフラッグ車は立ち往生し、プラウダ高校にとって格好の的となってしまったことで試合には敗北する運びとなり、黒森峰は九連覇で記録をストップし準優勝という屈辱をその年は味わうことになった。

 その後、当然ながら責任追及が行われ、矛先は持ち場を離れた副隊長のみほに向けられたわけであるが、どういう訳かその動きはすぐに沈静化してしまい誰も彼女を責めるようなことはしなくなった。何故ならば―――

 

「――この期に及んでまた貴女は手を出したのですか、みほ」

 

「はい、そうですけど……何か?」

 

「……まったく」

 

 眉間に指を添えた母親であるしほは、悪びれない様子のみほがある方法により批判的な声を根絶した事について酷く頭を悩ませていた。

 というのも、ある方法とは暴力でもなければ言葉巧みに言い包める話術でもなく……ずばり、肉体交渉であったのだ。それも男と女との、というわけではなく女同士の……世間一般的な知識では『百合』と称される禁断のモノであり、これまでもみほは行為を繰り返しては彼女の注意を何度も受けていた。

 なお、しほが行為について実態を把握することになったのは、ある時にみほの姉であるまほの部屋を訪れた際に、みほと熱いキスを交わしている現場を目撃したからに他ならない。……まあ、そこだけを切り取って考えれば歪んだ姉妹愛であるとしてきつい説教の一つで片付けられたのであろうが、事は残念ながらそう簡単ではなかった。

 説教を続けていると、何と芋づる式にまほ以外の人間にも手を出していたことが暴露され、そこでようやく彼女は黒森峰のチームメイトがほぼ全員みほによって性的に食われているのだと彼女は悟った。そして、今回の決勝戦での騒動によって完全に全員が全員みほと関係を持ったことを把握し、しほは深い溜息をついて顔を両手で覆った。

 

(……一体どこで教育を間違えたのかしら、助けて常夫さん)

 

 昔は元気で明るく、笑顔の絶えない良い子であったというのに、何をどう間違えてしまえば同性を当たり前のように襲う人間になるのか、彼女にはまるで理解が及ばなかった。

 ……さらに言うならば、姉のまほも存外に酷いと言えた。

 あろう事か妹であるみほを平然と嫁であると言い張り、本人の公認を得ての添い寝までしているのである。

 また、一日一回はハグを行っているようで、ミホニウムがどうたらと意味不明な事を述べており、ハグが出来ない時が来ると薬物中毒者の如くのたうちまわる始末だった。

 

「………」

 

 ――と、まほの奇行の事をついでに振り返っていた傍から、呼んでもいないのにも関わらず、まほがちゃっかりとみほから少しだけ離れた場所に出現していた。

 しほは「お呼びじゃない」と手で蚊をはらう仕草をし、退室するよう伝えるもまるで効果がなかった。それどころか、じりじりと詰め寄って行き、終いにはみほの横に堂々と真顔で座ってまでみせた。

 しかも、怒られている真っ只中だというのに寄り添い合い、猫のようにじゃれついているではないか。これには怒るのを通り越してただただ呆れ返るしかなく、胃がどうしようもなく痛んだ。

 

「お母さん、お腹が痛いの? もしかして三人目―――」

 

「ただの胃痛よ、このバカ娘共がぁぁぁあああああ!!!」

 

「名前はどうする? 私はそうね………」

 

「――貴女はもっと姉らしく振る舞いなさいよぉぉぉおおおおお!!!」

 

 ……腹立たしいのは、散々常軌を逸した行為を繰り広げているというのに、やる時はしっかりやるところだ。

 決勝戦も勝手な救助活動を行なうまでは圧倒的なコンビネーションによって無双し、次から次へと相手車両を撃破していたのは彼女の記憶に新しかった。――そう、あの時だけは自慢の娘達だと心から誇りに思っていた。

 だというのにこの残念な有り様である。本当に落差が激しくてしほは言葉が出なかった。というか泣きたかった。

 

「そんな事よりもっ!! みほ、貴女が力づくで解決しようが優勝を逃した原因であるという事実は消えません。その事はわかっているのでしょう?」

 

 いい加減調子が狂うので無理矢理話を元に戻したしほは、長机を強く叩き調子を取り戻すべく激高すると、有耶無耶になりつつあったプラウダ戦での責任追及についてみほに突きつける。

 あくまで彼女が解決できたのは黒森峰だけに限った話であり、西住流としての面子の問題はまだ残っているのだ。此処でお咎め無しというわけには流石にいかないのである。

 

「……責任を取れってことですよね、お母さん。わかっています……覚悟は出来ています」

 

「往生際が良いですね、珍しく……まあ、かと言って処分は軽くしませんけれど」

 

「――遠慮無く勘当して下さい。それで全てスッキリするでしょうから」

 

「――えっ?」

 

「よし、私は書類を用意してくる。待ってろみほ、10秒以内に戻るから」

 

「ちょ、ちょっと!? 私はまだ何も言ってないわよっ!!」

 

 勝手に話が進み、みほは自分から勘当を要求したかと思えば、呼応してまほが廊下へ飛び出していった。

 数秒後、彼女は瞬く間に超人的なスピードで戻ってくると、手にはしほが一度は目にしたことのある書類……婚約届を持って机の上に置いた。よく見れば、既に片側にはまほの名前が書かれているのがわかる。つまり、もう片側には必然的に………

 

「さあ、早く勘当をお願いします」

 

「何でそう乗り気なのっ!? 貴女、勘当されたら此処に居られなくなるのよ!?」

 

「だから、お姉ちゃんと結婚するんですよ。そうすれば同じように此処に居られます」

 

「この国じゃ女同士じゃ結婚は出来ないの! ソレぐらい常識だってわかっているでしょう!?」

 

「……じゃあ、海外に移り住もうか。みほ」

 

「綺麗なところに住みたいなぁ、私は」

 

「もうやだこの姉妹」

 

 勘当をかつてここまでポジティヴに考えている人間がいたであろうかというぐらいに、歪みに歪みきっている西住姉妹に対してしほはもうお手上げということで頭が上がらなかった。

 だが、ここで完全に屈してしまうのは我慢ならないというもの。よって彼女は、考えるに考えて彼女らの思い通りにさせないある名案を思い付く。

 

「みほ……貴女に処分を言い渡します」

 

「はいっ!!」

 

「望み通り此処から出て行かせてあげるわ」

 

「「やったあああああああ!!!」」

 

「けど、勘当はしないわよ」

 

「「えっ……?」」

 

 喜びを分かち合う姿から一変して硬直した二人は、意味がわからないと首を傾げる。

 そこにしほは、追い討ちをかけるように一つの宣告をした。

 

「……みほ、貴女は戦車道以前に倫理観が欠けています。このまま戦車道を続けても、恐らくそれは改善されることはないのでしょう。ですから、一度貴女には一般常識を最初から教え込まねばなりません」

 

「つまり、どういうこと……?」

 

「貴女を戦車道のない学校へ転校させるということです。 ……ああ、ちなみにまほは付いて行かせないわよ」

 

 それを聞いたまほは鬼の形相になると、実の母親に対して言うことではない罵詈雑言を一気に捲し立てる。

 

「この鬼!悪魔!死神!」

 

「……どうとでも言いなさい、絶対に撤回などしないわ」

 

「度胸無し!奥手!マグロ!ドM!スケベ!」

 

「おい」

 

「はよ三女作れ!まだ行ける年齢だろうがっ!!!クソババア!!!」

 

「もう完全に貴女の願望丸出しじゃない! それに誰がババアよ!」

 

「お前のことだよクソババア! というか、これからミホニウムなしでどう生きていけばいいんだあああああ!!!」

 

 毟る勢いで髪を掻くまほは生きがいが奪われることに絶望をし、只管に近所迷惑な金切り声を部屋中に響かせる。

 対する戦車道を暫く止めて普通の高校に入れと伝えられたみほはというと、まほとは対照的に意外にもリアクションは薄く如何にも冷静な様子であった。

 

「わかりました。ちなみに、何処の学校へ行くとかは決まっていますか?」

 

「……それは追って伝えるつもりです。何時でも発てる準備だけはしておきなさい」

 

「はい」

 

「ちょっと待て、みほ! お前までお姉ちゃんを殺す気かっ!?」

 

 ガバッと起き上がったボサボサ頭の姉は信じられないという、悲しみに満ちた表情を彼女に向ける。……がしかし、みほは聖母のような笑みを向けて言う。

 

「大丈夫だよ。一生会えないわけじゃないんだし……」

 

「で、でも――」

 

「心配なら毎日自撮り写真送るから……それで暫く我慢してね、お姉ちゃん?」

 

「……わかった、それで手を打とう。なるべく、ギリギリな感じなのを頼むな」

 

「任せて」

 

「――いいの、それでアンタ達はっ!?」

 

 揃ってサムズアップを決め「いいんです」と元気に答えた姉妹は、退室していいという指示が出ていないというのに立ち上がると、最初から最後まで二人だけの世界を貫き通していちゃつきながら堂々と自室に戻っていった。

 そうして、部屋に一人となったしほは正座の状態から足を崩し盛大に息を吐くと、再び大きく息を吸って一番に言いたいことを呟いた。

 

「……どうしてこうなったのよ」

 

 

 

 ――また数ヶ月後。宣告通りにみほを戦車道のない学校へと転入させたしほは、同じことを余計に苛立ちながら述べていた。

 

 

 

「黒森峰の機甲科の生徒が全員ストライキですって!? どういうことよ!!」

 

「ミホニウム欠乏症のせいです。お気の毒ですが―――」

 

「巫山戯てないで説得してきなさいよ、アンタ隊長でしょうがっ!!!」

 

「……まあ、私がストライキの首謀者なんですけどね」

 

「バカああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 卓袱台をひっくり返すように机の上に書類を盛大にまほにぶちまけにかかった彼女は結局、感情のままに叫ぶしかなかった。

 

「どうしてこうなったのよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 しほの母親としての災難はと止まることを知らずにまだまだ、いやどんどんと続いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方で、強制的に転校させられたみほはというと運命の悪戯に導かれて、戦車道が存在しない大洗女子学園で再び戦車道の授業を受けることになっていた。

 勿論だが母親のしほには内緒であり、この事はまほと黒森峰にいる親しい仲間たちのみが知っていた。

 ちなみに、初めのうちは戦車道がない学校であることに心から意気消沈し、しほが望んだ通りのさも品行方正な優等生のように振舞っていた彼女であるが、戦車道をやってくれと頼まれた今ではこの変わり様だ。

 

「――戦車道よ、私は帰ってきたあああああっ!!!」

 

「活き活きしていますねぇ、西住殿!」

 

「うんっ!」

 

 必要な戦車を探索によって確保するなかで仲良くなった戦車マニアの少女……秋山優花里の手を取ったみほは、興奮のあまり優花里を平然と片腕の腕力だけで振り回してみせた。

 それどころか、勢いに任せて割り当てられたⅣ号戦車に乗り込むと、雄叫びを祝砲にのせてグラウンドを駆け回り皆の度肝を抜かせた。

 

「いやー、本当にみぽりんって戦車道が好きなんだねぇ」

 

「うん、大好きっ!」

 

「――もっと具体的に言うと?」

 

「傷ついてもへこたれず凛々しく戦う女の子が大好きなの! そこに大好きな戦車が加わればもう最高としか言えない! あと、お姉ちゃあああああん! 見つけたよ、私の戦車道ぉぉぉぉぉ!!!」

 

「……なんか、色々道理をすっ飛ばしている気がするが気のせいか」

 

 軽くその台詞を言うのに必要な激闘の記録が抜けてはいるが、それは別に些細な事である。重要なのは戦車道を通して、何を得るのかどうかということだった。

 ということで、最初から一部のメンバーがクライマックスな大洗戦車チームは、初心者が戦いの感覚を掴めるようにと親善試合を有名校に申し込み、そのなかで聖グロリアーナの承諾を受けていた。

 ……一応、みほのかつての母校の黒森峰からも密かに試合を承諾する旨の通達が来ていたが、戦力差があるとはいえ親善試合の時点で決勝戦並の戦いを求められる事になりそうだと予感した生徒会長の決断で回避された。

 そして試合当日、地上の大洗の町を舞台にハプニング満載で聖グロリアーナとの戦いが執り行われたわけであるが、結果的に大洗女子学園はあえなく敗北し、最後辺りまで生き残っていたみほが乗る後のあんこうチームはコアなファンが多いセーラー服を黒い煤で汚していた。

 

「……負けちゃいましたねぇ」

 

「でも、おかげで課題が見えてきたのではないでしょうか」

 

「戦車の数に限りがある以上、やれることは少ないぞ……」

 

「その少ない何かでやっていくしかないかー……ってあれ、ところでみぽりんは?」

 

 気付けば一緒に降りたはずであったみほはその場から忽然と姿を消していた。

 何処へ行ったのか各自が探すと、暫くして麻子が発見し、人差し指でいる方向を指し示してみせる。

 そこには、聖グロリアーナの隊長と思わしき少女が付き添いの人間とともに立っていて、何やらみほに話しかけていた。

 

 

「……まさか、黒森峰に居たはずの貴女とこうしてこの場で戦えるとは思わなかったわ」

 

 前大会で対戦した経緯から、互いに探り合いを繰り広げていた彼女らは、奇妙な巡り合わせに驚きつつも落ち着きを払った態度で会話を交わす。

 

「そういうダージリンさんこそ、よく無名校との試合を引き受けてくれましたね」

 

「私の流儀は、来るものを拒まず。今回の場合、ダークホースに成り得るかもしれない相手かどうか見極めようかと思っていたけれど、結果はともかく思わぬ収穫が得られて満足よ」

 

 さも面白かったと言わんばかりに、聖グロリアーナの隊長であるダージリンは笑みをこぼし、運ばれていく互いの車両を横目に眺める。

 

「……聞きますけど、貴女の目から見て大洗の戦車道はどう映りましたか?」

 

「そうね……改善点はとても多いけれど、急ごしらえのチームにしては動けていたと思うわ。……あと、一つ聞くけれど、今のところ戦車はあれだけかしら?」

 

「それについてはご想像に任せます。ですがまあ、かの四大校のように数を用意するのは無理だと言っておきます」

 

 戦車道を復活させるにあたって文科省から少しの助成金でも貰えればまだ変わっていたのかもしれないが、貰えない事には今ある車両で勝てるように工夫を凝らすしか方法はない。

 願わくば、今回までに見つかった戦車以外の車両が今後僅かでも見つかることいいのだが、どう状況が運ぶかは全て時の運であった。

 

「なるほど……しかし貴女なら、例えこの劣勢な状態であっても覆してしまうのでしょうね」

 

「……それはどうでしょうか」

 

「ご謙遜なさらないで頂戴。……黒森峰の『影の軍神』、いや『女帝』さんでよかったらかしら?」

 

 ダージリンはみほに自分から詰め寄ると、彼女の顎に手をやんわりと添えて傾けさせ、至近距離で瞳を覗き込んでみせる。

 

「……ダージリンさん、貴女は」

 

「私も貴女と……『同類』よ。戦車も紅茶も、そして戦乙女も大好物なの……時間さえあれば一晩中貴女と語り尽くしたいものだけれどね」

 

 公式戦が控えている事もあり、時間に余裕がないダージリンは、だからせめてもの餞別だと唇をみほの口に寄せる。

 そして、その意図を汲み取ったみほは、されるよりも先に彼女の頭の後ろに手を回して後ろにやや倒れさせ、口の中に無理矢理舌を入れ込んだ。

 

「んんっ!? あっ……待っ……て」

 

「ふむ……紅茶の味がするかと思ったら、意外にもミルクみたいな甘い味がするんですね」

 

「冷静に分析などしなくていいから、この体勢はやめなさい……」

 

「嫌です」

 

 攻める側でありたかったダージリンは、完全に受け身になっている状況が納得できずに顔を赤らめたままそっぽを向いた。

 ――すると、ちょうどそこへみほを探しに来た沙織達が合流し、隊長同士がダンスの一ポーズをしているという最高に訳のわからなくなっている状況についてコメントを述べる。

 

「何やってんの」

 

「口説かれたので、口説き返してた」

 

「まあ大胆」

 

「――西住殿、今度私にもお願いします!」

 

「うん、いいよ」

 

「いいのかよ」

 

 麻子のツッコミを余所に、両者は公式戦での互いの健闘をそのままの姿勢で誓い合うと、別れ際に持ち寄った品物を手渡し握手を交わした。

 

「直接戦うことになるかはわからないけれど、その時は覚悟してもらうわ」

 

「なら、今度こそは勝たせていただきます」

 

「心から楽しみにしているわ……二重の意味でね」

 

 そう言って、聖グロリアーナの面々は踵を返して去って行き、すぐに姿形が米粒のように小さく見えなくなった。

 ――で、気になる渡された粗品の中身であるが、5人分の高級そうなカップと茶葉が幾つか入っており、優花里がその中の一つを手にとって何であるかを確認する。

 

「んー、聞いたことのない名前ですね」

 

「特注品か、オリジナルなのでしょうか?」

 

「どれどれググってみようか」

 

「――いや、私が既にした。100%コイツは………

 

 

 

 

媚薬入りの紅茶だ」

 

「なーんだ」

 

「なーんだ、じゃないだろ!!!」

 

「それで、こっちは何渡したんだっけ?」

 

「今朝捕れたらしい、アンコウ」

 

「凄まじく釣り合わない!」

 

 そんなこんなで親善試合は無事に(?)終わり、試合中に得られた教訓はその後、みほの指導の下で着実に反映していくこととなった。

 乙女達の波乱に満ちた戦車道は、まだ始まったばかりである。

 

 

 

 

 

 

「ああもうっ! みほじゃなくて貴女の方を勘当してやろうか!!?」

 

「そんな事したら、誰が西住流を継ぐんです? ……ああなるほど、みほと私で新・西住流を作れということですか。わかりました」

 

「――違うに決まってんでしょ! いい加減キレるわよ!!!」

 

「いつもキレてるじゃないですか」

 

「誰のせいだと思ってんのよ、この………うっ!?」

 

 限界を超えてしほが、まほの反抗に対してカムチャッカファイヤーインフェルノしそうになっていると、彼女の身に突然の変化が訪れる。

 何故かわからぬが急な吐き気と激痛が襲い、立っていられなくなってしまったのだ。

 物に掴まって立ち上がろうと試みても、力が入らないどころかヘナヘナと外へ抜けていく。意識も朦朧とし喋ることもままならず崩れることしか出来ない。

 ……これにはふざけていたまほも真顔になり、直ちに救急車を電話で呼び出すとともに仕事中の父親にも一本連絡を入れ、病院へと駆け込んだ。

 気になる容態であるが、処置室に運ばれてから小一時間程度経過した後に明らかとなった。

 

 

「おめでとうございます、三人目ですよ!」

 

「……え」

 

 衝撃の言葉にまたもや意識を失いかけるしほだったが、そうなる前にこれだけはどうしても言いたかった。

 

「謀ったわね、まほぉぉぉぉぉオオオ!!」

 

「――あっ、みほ。お姉ちゃんだよ、三人目出来たってさ。うん、女の子だと良いね」

 

「話を聞きなさい、この親不孝者があああああ!!!」

 

 自宅に引き続いて病室にも苦労人の叫びは響くのであった。

 

 

 




普段シリアスばっか書いてるからギャグになるとふざけまくりたくなる。

追記、とりあえず抽選会については書くかもしれない。

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