神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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クジョウの暴走により、螺旋の樹の侵食が再び始まってしまう。
そんな中、樹の中から新種のアラガミが現われフィア達ブラッドは相手をする。

それと同時に――カズキとアリサの前に、倒した筈の悪魔が姿を現した。


第4部捕喰191 ~ブラッドストライカー~

 

 

「ど、どうして……?」

「どうして? ワタシはアラガミなんだから、いずれ復活するのはわかっていたでしょう? まあ、同じ意志が復活するとは思わなかったでしょうから、驚くのも無理はないだろうけど」

 

 そう言ってアンノウンは笑う、何度も見た心が凍りつくような冷たく不気味は笑みを浮かべる。

 ありえない、目の前の現実が信じられずアリサはおもわずそう思ってしまう。

 確かにいずれはアラガミは霧散したオラクル細胞を再集結させて戻るのはアリサとて知っている、だがアンノウンはアラガミの中でも異質な存在だ。

 たとえ姿形は元の状態に戻ったとしても、アンノウンであった意志まで復活する筈が……。

 

「――実はね、あの時カズキの光の剣を受けた時はまだ死んでなかったんだよねー」

「…………」

「でも今にも死にそうだったからさ、あのジュリウスとかいうヤツの終末捕喰に自分から巻き込まれたの。万が一終末捕喰を止められても……いずれ復活する手段はラケルが用意していたからさ」

「……じゃあ、螺旋の樹の中には」

「カズキとアリサなら樹の中に居るラケルの存在は感じ取れるでしょ? そう……今度こそ終末捕喰を成就する為に、ラケルは復活したってわけ」

「そんな……!」

「さてと――じゃあ、また楽しませてもらいましょうか?」

 

 そう言って、アンノウンは九尾を展開し右手に何かを生み出した。

 それは――ショートタイプの刀身パーツが装着された神機を模した剣、漆黒の輝きを放つ無骨ながらも美しく……不気味な刀身だ。

 確かめるように何度か軽く振ってから、アンノウンは切っ先をカズキ達に向ける。

 

「終末捕喰が成就されてそのまま消えてもよかったんだけど、またカズキと(ころ)し合えるのはやっぱり嬉しいね」

「なら今度こそ細胞一片残らず消滅させてやる。だけど……場所は変えさせてもらうぞ」

 

 ここはサテライト居住区内、この場所で戦闘を行うわけにはいかない。

 ただでさえ周囲の住人達が何事かと集まり始めているのだ、関係ない者を巻き込むわけにはいかないと思うカズキ達であったが……そんな2人の心中を察し、アンノウンは残虐性を孕んだ笑みを浮かべ。

 

――瞬間、轟音が巻き起こり。

 

――アンノウンの真横の地形が、文字通り()()()()()()

 

『――――』

「周りの人間達が気になって戦えないでしょ? だから……()()()()()()()()()()

 

 笑いながら言って、アンノウンは真横に向かって振り上げた剣を下ろす。

 何が起こったのか、2人は理解できない。

 いや、理解できないのではなく理解したくないだけだ。

 だってそうだろう? さっきまでそこに存在していた建物も、人も、跡形もなく消し飛んでいるのだから。

 けれど現実は決して変わらない、それを理解した居住区の人間達は――悲鳴を上げパニックに陥る。

 

「煩いなあ……やっぱりここ全部壊さないと集中して戦えないか」

「よ、よくも……自分が何をしたかわかってるの!?」

「わかってるよ。どの道終末捕喰が完結されれば全部の命は消えるんだから、遅かれ早かれだよ」

「違う!! 終末捕喰は阻止してみせるし、そういう問題じゃない!! やっと……やっと安心して暮らせる人達がここには居たの、ずっとずっとアラガミの恐怖と戦い続けて、明日は生きれるのかと不安になる毎日から開放されたのに……!」

 

 それなのに、目の前の悪魔は呆気なくそれを奪ったのだ。

 クレイドルのみんなの努力を、安息の地を手に入れようと頑張ってきた人達の命を、まるでゴミのように無にした。

 絶対に許すわけにはいかない、アリサは瞳に凄まじいまでの憤怒の色を宿し、アンノウンをバラバラに切り刻んでやりたい衝動に支配されそうになる。

 だが――その憤怒すら、隣に立つカズキの静かで重い怒りの前に、霧散する事になった。

 

「カズキ……」

「……憎しみに囚われるなアリサ、かつで君が僕に言った言葉だ」

 

 あれはもう三年以上前の話、エイジスでヨハネスの信念と想いを踏み躙った戦いに勝利した後。

 仲間達を傷つけ、己の欲望のままに全てを奪おうとしたアラガミ――オーディンを見て、カズキは自らの憎しみの心に狂い掛けた。

 だが、そんな彼を満身創痍の身体でアリサは守ろうとしてくれた、だからこそ今の自分はここに居る。

 

「この化物は決して許せない、でも憎しみだけに囚われて勝てる程甘い相手じゃない。僕達は僕達の信念を決して忘れずに勝たなきゃ駄目なんだ、ただ勝つだけでは……真に道を歩む事はできない」

「詭弁だね。ワタシの事は絶対許せないって、殺してやるって目が訴えてるよ?」

「当たり前だ。お前を憎まない道理があると思うのか? でも僕はお前のような化物じゃない……妻を、娘達を、そして……今を一生懸命に生きている人達を守る人間なんだ」

 

 だから、決してアンノウンのような化物にならず人間として勝たなければならない。

 自らの決意を口にして、カズキは神機を構え直す。

 

(……ありがとうございますカズキ、貴方は本当にいつだって私を守ってくれる)

 

 憎しみと怒りは、今尚渦のようにアリサの身体の中で暴れまわっている。

 だが彼女はそれを押し留め、自分のやるべき事となすべき事を冷静に考えられるようになっていた。

 カズキと共に目の前の悪魔を今度こそ滅し、フライアに向かいブラッド達の助けになる。

 ただそれだけを考え――カズキとアリサは同時に地を蹴った。

 

 最初に仕掛けたのはカズキ、上下左右からの連撃をアンノウンへと叩き込む。

 それをアンノウンは全て弾き、返す刀で突きをカズキの喉元に向けて放った。

 首を横に移動させる事で突きの一撃を回避すると同時に、左腕を小型のスサノオの尾剣に変化させると共に繰り出す。

 

「おっと、危ない危ない」

「っ」

 

 だが不発、アンノウンはその場で実に十メートル近い跳躍を見せカズキの攻撃を回避。

 そのまま彼等をこのサテライト居住区ごと葬ろうと、アンノウンは九尾を天に掲げ。

 

「――いい加減にしなさいよ、アンタ」

「っ」

 

 全身が震え上がるほどの低い声が響く。

 半ば無意識でアンノウンは尾を全て防御の構えに変える、瞬間――凄まじい衝撃が尾から全身に響き渡り、アンノウンの身体が大砲のように吹き飛んでいった。

 すぐさま勢いを殺そうとするが叶わず、吹き飛び続け……アンノウンの身体はサテライト居住区から遠く離れた岩山に叩きつけられた。

 岩壁に身体をめり込ませ、衝撃から吐血するアンノウン。

 

「ごぼっ……いたた、すっごい馬鹿力。アリサってばあんなに強かったんだ」

 

 とるに足らない相手だと思っていた、少なくともカズキに敗北し一度消えるまでは。

 けれどあの時は負けて良かったと今は思う、何故なら……前よりもはっきりと相手の力を図る事ができるようになったから。

 岩壁から抜け出したアンノウンの前に、カズキとアリサが着地し身構える。

 

「……効いた、凄いねアリサ。あの跳躍力もそうだけど……神機の一撃も、前とは比べ物にならないくらい強くなってる。何かした?」

「いつまでも、自分がどんな相手にも勝てると思われるのは癪なのよ。――アンタだけがアラガミなわけじゃない」

「…………」

 

 その言葉で、アンノウンはある予測を立てる。

 先程の凄まじい一撃は、彼女のアラガミ能力を用いてのものなのだろう。

 だとすればその能力は? 考察を続けるアンノウンに、アリサはあっさりと自分の力を言い放つ。

 

「別に特別な事はしていないわ。ただ私は自分の出せる最大の力を常に放ってるだけ」

「……神機使いが用いる『バースト』状態ってこと? だとしても、今の一撃はそれ以上のものだったと思うけど?」

「原理としては『バースト』状態と同じだけど、質は比べ物にならない。とはいっても……制御するのに負担が大きいけどね」

「たいしたもんだわー。ワタシにまったく適わなかったのがそんなに悔しかったの?」

「そんなくだらない考えじゃない、私の力はカズキの夢の為に存在しているのだから、強くならないといけないのよ」

 

 強い想いが込められた言葉、それを聞いたアンノウンは……笑う。

 だがそれは嘲笑の類ではなく、賞賛を込めた笑みであった。

 

「こんなに強い人間がカズキ以外に居るなんてね、世界が終わるまでもう少し楽しめそう」

「この世界は終わらせない、終わるのはお前だ……アンノウン!!!」

 

 地を蹴るカズキ、それをアンノウンは真っ向から迎え撃ち。

 死闘の終わりは、まだまだ見えなかった……。

 

 

 

 

 

 

「――どおりゃああああああっ!!!」

 

 裂帛の気合を込めた声を上げながら、ロミオは新種アラガミにチャージクラッシュを放つ。

 それを、新種アラガミは右の翼腕を前に翳し、そこに癒着したシールド型神機で真っ向から受け止めてしまった。

 このまま押し切ろうと更に力を込めるロミオであったが、逆に押し切られ弾き飛ばされてしまう。

 

「いってぇっ!? くっそ……硬すぎだろアイツ!!」

「それだけじゃねえ、あの巨体でなんてスピードだ……」

 

 スピアの切っ先を相手に向けつつ、ギルは舌打ちしながら驚愕を含んだ呟きを零す。

 

――新種アラガミは、想像以上の強さであった。

 

 巨体故の破壊力と、それに似合わぬ機動力。

 更に翼腕に癒着した装甲パーツによる防御力は、他のアラガミにはない頑強さを誇っている。

 まさかチャージグライドによる一点集中型の一撃すら真っ向から受け止められるとは思わなかった、攻防共に目の前のアラガミは完璧だ。

 

「焦るなロミオ、ギル、焦った所で活路が見出せるわけじゃない。どんなアラガミにも弱点はある筈だ」

「とはいうけどさ……それが中々見つけられねえんじゃキリがねえ……」

(確かに……だが、必ず付け入る隙はあるはずだ……)

 

 そう思いつつも、リヴィの心にはロミオ達と同じ焦りが滲み始めていた。

 既にレア博士達は極東に避難している、つまり憂いなく思う存分目の前の新種アラガミの相手ができるという事だ。

 しかし、彼女の第六感、本能とも呼べるものがこのアラガミとの長期戦を避けろと訴えていた。

 そしてそれは彼女だけでなくこの場に居る全員の総意でもあった、ロミオとギルが焦りの言葉を放つのもそれが起因している。

 

(何かが起ころうとしている、いつまでもここで足止めをくらっているわけには……)

 

 だが、そう思っていても現実は上手くいかない。

 相手の攻撃パターンはまだ完全に理解しているわけではないし、理解していたとしても高い攻撃力と機動力は十二分に脅威だ。

 闇雲に攻撃を仕掛けても、返り討ちに遭うのは目に見えていた。

 そんな中――フィアが何かを決意したような声色で、口を開いた。

 

「――ロミオ、ギル、リヴィ、3人であのアラガミの動きを止める事はできる?」

「えっ?」

「フィア、どういう事だ?」

「このまま闇雲に戦っても時間が長引き危険性が増すだけだ、だから……一気に勝負を仕掛ける」

「……それはわかるが、どうやって?」

 

 問いかけるリヴィに、フィアは思いがけぬ答えを返した。

 

「僕とシエルとナナの“合体技”で、一気にあのアラガミを倒す。でもその為には3人で動きを止めてほしいんだ」

「合体技って……前に私が発案したあれ?」

「ですがフィアさん、まだシミュレーションもまともに取り組んでいない現状でその戦法はあまりにも……」

「ぶっつけ本番でやる。大丈夫、僕たち3人ならできるさ」

 

 信じているからね、そう言ってフィアはシエルとナナに小さく笑みを向けた。

 その笑みを見た瞬間2人は理解する、これはもう何を言っても彼は考えを曲げないと。

 ……だが、この現状を打破するにはこれしかないと思うのも事実である。

 いつまでもこのアラガミに時間を掛けてはいられない、そう思っているのは彼だけではないのだから。

 

「よくわかんねえけど、オレ達であれの動きを止めればいいんだな? よっしゃ、ならやってやる!!」

「タイミングはこっちで指示するから、それでお願い」

 

 言って、フィア達は後方に後退していく。

 そしてロミオ、ギル、リヴィの3人は新種アラガミへと向かって走っていった。

 

「アレを3人で止めるのは、相当骨だぞ?」

「なんだよギル、ビビってんのか!?」

「ふん、お前と一緒に……すんな!!」

 

 スピアを展開させ、チャージグライドによる渾身の突きを放つギル。

 だがその一撃は愚直なまでの真っ直ぐさを持った攻撃であり、案の定呆気なく新種アラガミの装甲パーツに受け止められてしまった。

 当然ギルとてこの結果はわかっている、最初から自分の攻撃は通らないとわかっていたが……これで一時的に相手の動きを止める事ができた。

 

「どっせえええええええっ!!!」

 

 チャージクラッシュの体勢に入りながら、ロミオは大きく跳躍した。

 そのまま重力に逆らう事なく落下していき、その勢いを加えた一撃を新種アラガミに叩き込んだ。

 けれどその一撃も、もう一つの装甲パーツに受け止められ不発に終わる。

 

「ッ、ギャ……ッ!?」

 

 しかし、ギルとロミオの一撃を完全に防いだ新種アラガミからくぐもった悲鳴が上がった。

 2人の攻撃は確かに防がれたが同時に僅かに隙が生まれ、その隙にリヴィが新種アラガミの顔面に向けて銃撃を放ったのだ。

 ダメージは小さいが確かに攻撃が通じた、新種アラガミの動きが鈍った事を確認しそれを見たロミオはバックパックからスタングレネードを取り出し地面に投げつける。

 瞬間、凄まじい閃光が周囲を包み、新種アラガミの動きを再び止めた。

 

「フィア、どうだ!?」

「――こっちはいいよ、お願い!!」

「了解。ギル、頼む!!」

「任せろ!!」

 

 フィアの返事を聞くと同時に、ギルは新種アラガミの左に、リヴィは右へと周り込み地面にあるものを仕掛ける。

 それは「ホールドトラップ」と呼ばれるアラガミの動きを一時的に止める罠の一つ、それが瞬時に展開され新種アラガミを電磁の檻に閉じ込めた。

 

――そして、フィアとナナとシエルの3人は、勝負を仕掛けた。

 

「シエル、ナナ、いくよ!!」

「了解です。――牽制を仕掛けますのでお2人はその隙に接近を!!」

「OK!!」

 

 同時に地を蹴り新種アラガミに向かっていくフィアとナナ。

 その後ろから、シエルは連射能力を特化させたフルーグルを三発発射。

 秒を待たずに銃撃は前方の2人を追い越し、新種アラガミの右肩と左足、そして額を貫いた。

 

「どっせええええええいっ!!!」

 

 次に仕掛けたのはナナ、跳躍しながら新種アラガミに向かってハンマーを振り上げ、押し潰さんとばかりの力を込めて相手の頭部を叩きつける。

 爆撃めいた音と共に新種アラガミの頭部は地面に沈み小さなクレーターを生み出すが、ナナの攻撃はまだ終わらない。

 

「フィア!!」

 

 着地と同時にナナはハンマーを右斜め下に構えながら新種アラガミとの距離をゼロに縮め、掬い上げるような一撃をお見舞いした。

 再び響く爆音、それと共にナナの凄まじいパワーを物語るかのように新種アラガミの巨体が地面から宙へと吹き飛ばされる。

 そして――その時には既に上空にはアスガルズの刀身を構えていたフィアの姿があった。

 

「――うおおおおおっ!!!」

 

 一撃、二撃、三撃、四撃、五撃。

 風切り音を響かせながらサイズの刀身が新種アラガミを切り刻んでいく。

 鮮血が舞い彼の顔を赤く汚していくが、それに構わずフィアは六撃目となる一撃を叩き込もうとアスガルズを上段に構えた。

 振り下ろされる死神の鎌は新種アラガミの首を貫き、そのまま地面に落下。

 

「――りゃああっ!!」

 

 裂帛の気合を込め、フィアは力任せに刀身を手前に引き新種アラガミの頭部を左右から真っ二つに引き裂いてしまった。

 だがそれでも相手は生きている、しかし――彼等の攻撃はまだ終わっていない。

 

「ナナ、合わせて!!」

「任せてよ!!」

 

 アスガルズを手から放し、鞘に収めていたニーヴェルン・クレイグを抜き取るフィア。

 すかさず予め新種アラガミの背後に周り込んでいたナナの動きに合わせ、幾度となく斬撃を相手に浴びせていった。

 斬撃と打撃の衝撃が、確実に新種アラガミの命を削り取っていき――都合八発目の攻撃を叩き込んでから、2人は新種アラガミから大きく後退する。

 

「シエル!!」

「シエルちゃん、トドメ、宜しく!!」

「――了解です」

 

 2人の声を聞き、高台に移動していたシエルは静かに返事を返す。

 既に彼女は必殺の一撃を放つ準備を終えており、慈悲もなく――あっさりと勝負を決めてしまった。

 

「フルーグル、発射」

 

 引き金を引く、放たれるのは従来の威力と貫通力、そして速度に特化したフルーグルだ。

 光の速度に思えるほどの神速で放たれた銃撃は、新種アラガミの肉体を易々と貫き――内部から爆発した。

 飛び散る新種アラガミの肉片、さすがに巨体故に粉微塵にはならなかったものの、その体の半分以上が爆発によって吹き飛んでしまっている。

 当然、ここまで肉体を破壊されては生きている筈も無く、残った身体は地響きを響かせながら力なく倒れ動かなくなった。

 

『…………』

 

 その光景に、ロミオ達は勝利に喜ぶ事も忘れ茫然としてしまう。

 

「……すげえ、としか言いようがないって」

「あれだけの連携を即興でやったのか……信じられないな」

「それだけ、あの3人の絆は深いって事なんだろうな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――フィア達の戦いは終わり、けれどもう一方の死闘は未だ終わりを迎えてはいなかった、が。

 

『――――っ!!?』

 

 “それ”に気づいたカズキとアリサは、おもわずアンノウンに仕掛ける攻撃を中断するほどの驚愕に襲われる。

 対するアンノウンはそんな隙だらけな2人にも攻撃を仕掛ける事はせず、愉しそうに口元を妖しく歪ませていた。

 

「その顔を見るに、気づいちゃった?」

「……これは、どうして」

「アンノウン、あなた一体何を………!」

「言っておくけどこれはワタシの仕業じゃない、でも……これ以上戦っても“お互い”の為にならないでしょ」

 

 口に溜まった血を吐き出しつつ、アンノウンは跳躍しカズキ達から離れ近くの崖上へと移動する。

 

「早くアナグラに戻らないとみんな死んじゃうよ? ――螺旋の樹から生まれ続けているアラガミ達によってね」

「アンノウン!!」

「それが気になってワタシとの(ころ)し合いに集中できないのは困るから、今日は引き分けって事で終わりにしようよ?」

 

 じゃあね、一方的にそう告げアンノウンの姿が消える。

 悔しげに顔を歪ませつつも、カズキとアリサはすぐさまその場から駆け出し始める。

 

――いまだかつてない程の数のアラガミが、螺旋の樹の中からアナグラへと向かっている気配を感じながら。

 

 

 

 

To.Be.Continued...


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