神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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新種アラガミに勝利すると同時に、ブラッドアーツを習得するリヴィ。
その際に彼女はジュリウスの意識と感応し、彼がまだ螺旋の樹の中で生きている事を知る……。



第4部捕喰190 ~災厄の目覚め~

 

 

 

「ほ、本当なのリヴィちゃん!?」

「ああ。ブラッドアーツを習得した際に……ジュリウスの意識が流れ込んでいた。まず間違いなくジュリウスはあの螺旋の樹の中で生きているだろう」

 

 リヴィの言葉に、ブラッド達の表情に明るさが宿る。

 新種アラガミ――クロムガウェインとの戦いに勝利し、無事極東へと戻ってくる事ができたフィアとリヴィ。

 現在、クロムガウェインとの戦いで負傷したフィアは医務室で治療を受けており、リヴィはフェルドマンにブラッドアーツ習得の報告の後、彼の見舞いに医務室へと訪れ他のブラッドメンバーと合流。

 そして螺旋の樹での事を皆に話し、冒頭に戻る。

 

「ジュリウスが、生きてる………!」

「へっ、アイツ……しっかり俺達との約束を守ってるみたいだな」

「さすがジュリウスだよな!!」

 

 ナナ、ギル、ロミオの3人はリヴィの言葉を聞いて驚きと喜びを隠し切れない。

 一方、フィアとシエルは喜びこそするものの……ある懸念が浮かび上がり素直に嬉しさを表現できないでいた。

 そんな中、リヴィが2人の懸念に思っている事を言葉にして3人に告げる。

 

「……君達の気分を害するつもりはないのだが、あまり希望的観測を抱き過ぎるのも良くはない」

「へ?」

「確かにジュリウスは生きていると思う、けれどそれは“人として”生きているという意味に繋がるわけじゃない。それだけは忘れないでくれ」

「あ……」

 

 明るかった場の空気が、急速に冷えていく。

 ……もう少し言い方があったかもしれない、発言した事をリヴィは少しだけ後悔した。

 しかし間違った事は言っていない筈だ、そう自分に言い聞かせるリヴィだが……あまり、褒められた行為ではなかったかもしれない。

 

「……すまない。嫌な事を言ってしまった」

 

 場の空気を乱した事に対して、リヴィは謝罪の言葉を口にしながら頭を下げる。

 せっかく歩み寄れたというのにこれでは……そう思ったリヴィであったが、皆の反応でそれが杞憂である事を知った。

 

「いや、確かにお前の言う通り期待し過ぎるのは問題だな」

「…………」

「そうだね。気を引き締めていかないと、ありがとうリヴィちゃん」

「あ、いや……」

 

 予想外の言葉に、上手く反応を返せないリヴィ。

 

「でもホントしっかりしてるよなー、そういう所はすげえって思うぜ?」

「…………っ」

 

 笑顔を浮かべながら、上記の言葉を口にするロミオを見て、リヴィの身体が固まってしまう。

 褒められた、嬉しい、頭ではそう思っているのだが……緊張からか、今までと同じように睨むような視線を彼に向けてしまう。

 結果、彼は睨まれていると誤解して顔を引き攣らせてしまった。

 ああまたか、自分の不甲斐なさに呆れてしまうリヴィだが……このままでは駄目だと己に言い聞かせ。

 

「…………がとう」

「えっ?」

「あ、ありが、とう……ロミオ」

 

 顔が熱い、きっと真っ赤になっているであろう自分の顔を想像してますます恥ずかしくなってくる。

 だがちゃんとお礼が言いたかった、そして普通に話せるようになりたくて彼女は気恥ずかしさに耐え続ける。

 一方のロミオは、リヴィのまさかの反応に当初は何もできなかったが、暫くして羞恥に耐えながらお礼を言う彼女を見て彼まで頬を紅潮させていった。

 その微笑ましい光景に、他のブラッドメンバー達が揃って生暖かい視線を2人に送っていたのは言うまでもない。

 

「ブ、ブラッドのみんなに報告がある。局長は三日後に螺旋の樹の内部調査を開始するそうだ、各員それまで鋭気を養っておいてくれ。い、以上だ!!」

 

 一気にそうまくし立て、リヴィは逃げるように医務室から出て行ってしまった。

 

「……リヴィちゃん、可愛い」

「そうですね、なんというか見ているこっちが微笑ましい気持ちになりました」

「変わったなアイツ。――フィア、螺旋の樹の中で何かあったのか?」

「うん、色々とね」

『えっ?』

 

 フィアの発言に、シエルとナナは同時に反応を返した。

 ちょっと待ったなんだその発言は、色々あったって何が色々なんだ。

 そんな事を思いつつ、2人は頭の中で想像を膨らませる。

 

(ま、まさか……いえ、いくら男の人と女の人が2人っきりだからといって、アラガミが居るような場所で……そ、そんな……)

(ま、まさかのリヴィちゃんが新しいライバル!? 拙いなー……ただでさえ強敵がすぐ傍に居るのに……)

 

「……ギル、ロミオ、2人はどうしたのかな?」

「さあ、な……」

「フィア、お前も大概鈍感だよなー」

(お前にだけは言われたくないと思うぞ、ロミオ)

 

 心の中でツッコミを入れつつ、怪我人のフィアの前でいつまでも騒ぎ立てるのもよくないだろうと思ったギルは、自身の想像力で苦しんでいる2人を現実に戻そうと声を掛ける。

 

「そろそろ行くぞ。三日後の調査も大事だが目の前の任務も大事だ、そうだろう?」

「……そうですね。フィアさんは調査の日までゆっくり休んでください、たとえ傷が癒えたとしても任務に行ってはいけませんよ?」

「でも……」

「もしこの約束を破ったりしたら、ベッドに縛り付けちゃうからそのつもりで」

「…………」

 

 本気だ、ナナの言葉と目を見てそう判断したフィアはおとなしく頷いておく事にした。

 彼の頷きを観て満足したのか、「ゆっくり休んでね」と告げてナナは医務室を後にする。

 他のメンバーもフィアに一言告げてから医務室を出て行き……けれど、ギルだけはその場に留まった。

 

「ギル……?」

「ん、ああ……悪いな、俺もすぐに出て行く」

「それはいいけど、僕に何か言いたげだね?」

「別に小言を言うつもりはないさ。もうそんな事を言わなくてもお前は立派な大人だからな」

 

 言って、ギルは優しくフィアの頭を撫でる。

 その行動が自分を子供扱いしているのではないかと思いつつも、心地良いのでフィアは何も抵抗しなかった。

 

「……お前は、どんどん先に進んでいくな」

「えっ?」

「初めて会った時からお前は強かったが、それでも同時に誰かが傍に居なければ壊れてしまう程に脆かった。だが今のお前は違う、ブラッドを引っ張る隊長としても1人の人間としても本当に強くなりやがった。それが……少し、寂しくてな」

 

 ギルにとって、フィアは自分の隊長であり仲間であり……弟のようでもある。

 そんな彼がいつの間にか自分の助けなど無くても1人で前に進み、強くなっていくというのは少しだけ寂しいと思ってしまったのだ。

 無論そんな感情はギルの勝手なものに過ぎない、けれど強くなったフィアを見るとついそう思ってしまう。

 

「……この強さは僕1人で手に入れたものじゃないよ。それに僕はまだ1人で居られるほど強くなんかない、仲間が居ないと……何もできないんだ」

「フィア……」

「だからこれからも傍に居て支えてほしい、我儘かもしれないけど……みんなが居ればどんな困難でも立ち向かえるから」

「ああ……任せろ、俺達がいつでもお前の傍に居てやる」

 

 もう一度彼の頭を撫でてから、ギルは手を振って医務室を出ていき……静寂が訪れる。

 暇である、だが傷が癒えていない以上はおとなしく休み、一刻も早く状態を万全なものに戻さなくては。

 無理や無茶は自分にとって大切な人達の心を苦しめる、それが理解できているフィアは寝直そうと布団に潜り。

 

「し、失礼します……」

 

 気弱そうな声を放ちながら、1人の男が医務室へと入ってきた。

 誰だろうと思い半身を起き上がらせながらフィアは医務室の入口へと視線を向けると、入ってきた男性と視線が合わさった。

 

「……クジョウ博士」

「あ、ブ、ブラッド隊の隊長さんでしたか……」

 

 医務室に入ってきたのは、神機兵の技術研究者のクジョウであった。

 フィアに声を掛けられ、クジョウはびくっと身体を震わせながらもどうにか反応を返す。

 相も変わらず気弱そうな雰囲気と見た目だ、こちらは普通に話しかけただけだというのに驚くとは……。

 

「え、ええと……い、医務室の先生はいらっしゃらないのですか?」

「用事があるからって出掛けてる、いつ戻ってくるかはわからない」

「そ、そうですか……」

「何か薬を探しているの?」

「あ、いえ、その、えっと……」

 

 しどろもどろになるクジョウ、人によっては彼の態度は不快に見えるだろう。

 けれどフィアは黙って彼の言葉を待っていると、たっぷり一分間かけて漸く彼は返答を返した。

 

「え、栄養剤をいただこうかと思いまして……その、最近は忙しかったですから」

「栄養剤ならそこの白い戸棚の上から二段目の右側にある、ラベルがあるからすぐわかると思うよ」

「え、あ、は、はい……」

 

 言われた通りの場所を探るクジョウ、すると目当てのものが見つかったのか一つの小瓶を棚から取り出した。

 

「助かりました、しかしよく知っていますね」

「一時期医務室では世話になってたから。……それより大丈夫? 具合、悪そうだけど」

 

 クジョウの顔色は決して良いものではない、少し青ざめているし目の周りには隈も見れた。

 

「え、ええ、大丈夫ですよ。顔色が悪いのはいつもの事でして……ははは、私は昔からこうなんですよ」

「でも、無理をしてはいけないと思う。クジョウ博士はレア博士と一緒に頑張らないといけないのはわかっているけど……クジョウ博士の代わりは、何処にも居ないんだよ?」

「――――」

 

 フィアがそう言うと、クジョウは目を見開いたまま固まってしまった。

 一体どうしたのだろう、何かおかしな事を言ったつもりはないのだが。

 

「クジョウ博士、どうしたの?」

「…………あ、い、いえ……その、少し我を忘れていました。まさかそのような事を言われるとは思っていませんでしたので……」

「………?」

 

 首を傾げるフィア、彼が何を言っているのかよく理解できない。

 そんな心中を察したのか、クジョウは自嘲するような苦笑を浮かべ……自らの過去を話す。

 

「わ、私は小さい頃から暗く、その……人と話す時も上手くいかなくて、よくいじめられていました。

 運動も苦手で、得意な事といえば読書と勉強だけで……そのせいか、「陰気メガネ」などという呼び名で、呼ばれていましてね。はは……」

「…………」

「幸いにも勉学で成績を残せたからか、フェンリル傘下の企業で研究者としての道を歩めたのですが、そこでも人間関係は改善されず……ま、まあそれは私が悪いのでしょうが」

 

 クジョウは笑う、まるで自分は駄目な人間だと罵るように。

 成人しても彼は友人に恵まれず、ただただ研究に没頭して孤立していき、それが強いコンプレックスと変わるのに時間は掛からなかった。

 結果、彼は卑屈で気弱、更に軽い対人恐怖症という枷を背負う事になってしまった。

 だからこそ彼は常に「自分は誰かに必要とされているのか?」と思うようになってしまい、そんな彼にフィアが上記の言葉を告げたものだから驚き……けれど、嬉しいと思ったのだ。

 

「あ、そ、その……申し訳ありません。私は何故このような事を君に言ってしまったのか……不快な思いをさせてしまい、その……」

「そんな事ないよ、それにそういう事は誰かに吐き出した方がいいと僕は思っているから。この際全部吐き出してしまった方がいいと思う」

「…………君は大人ですね、まだ13なのでしょう? 対する私はいい歳をして本当に情けない……」

「大人だからってみんなが強いわけじゃない、人は1人では生きられないから誰かに支えてもらったり甘えさせてもらったりしないと、生きてはいられない」

 

 だから、無理をする必要はないとフィアはクジョウに言った。

 彼は今の自分が出来上がってしまったのは自分自身が悪いと思っているようだが、それは違うとフィアは思った。

 周りに彼を支えてくれるような仲間が居なかったから、彼は幼少期の自分から脱する事ができなかったのだろう。

 自分とて仲間が居なければ、変わる事ができなかったのと同じように……彼もまだ、きっと変われていないのかもしれない。

 

「……君は本当に大人だ。否が応でも自分の小ささが理解できてしまう」

「クジョウ博士……」

「ああ、いえ……別に責めているというわけではなくてですね、その……えっと……も、申し訳ない、言葉が見つからなくて……」

 

 しどろもどろになるクジョウに、フィアは小さく苦笑する。

 まだまだ彼が変わるのに時間が掛かりそうだ、けれどきっと彼も自分のように変わっていけるとフィアはそう思えた。

 

「で、では私はこれにて……怪我、早く治るといいですね」

「ありがとうクジョウ博士。無理はしないようにね?」

「あ、ありがとうございます……そ、それでは」

 

 ペコペコと頭を下げてから、クジョウは医務室を後にする。

 その光景にフィアは再び苦笑を浮かべてから、今度こそ休もうと布団に潜り込んだ。

 

 

 

「……もっと早くに、あなたに出会えていれば、変われたかもしれませんね……」

 

 

 

 

 

 

 

――そして三日後、“その時”は遂に訪れる。

 

 フィア達ブラッド達はフライアの旧神機兵保管庫へと集合していた。

 彼らの傍には有人型の神機兵が二機、巨大な制御装置を担ぎ上げている。

 そして、螺旋の樹の前には……ジュリウスの神機を構えたリヴィの姿が。

 

『これより作戦を開始する。リヴィ、準備はいいな?』

「はい」

 

「いよいよかあ……なんか、こっちまで緊張してきた」

「緊張しすぎてもしもの時には動けない、なんていうのはやめろよロミオ?」

「わかってるっての」

「ブラッドは指示があるまで待機、いいね?」

「はい、了解しています隊長」

 

 遂に、作戦が始まる。

 内容としては、まずリヴィがジュリウスの神機を用いて螺旋の樹を開口させる。

 更に予め装着された大型クローが付いた開口装置にてリヴィが切り拓いた部分を広げ、内部への道を開き道を構成。

 しかし内部はかなり不安定な空間になっているという事なので、道を開いた後は神機兵を用いて制御装置を設置し、少しずつ調査範囲を広げていく……といった内容だ。

 フィア達ブラッドはその間神機兵の護衛および、アラガミが現れた際は排除するのが任務である。

 

 ……正直に言えば、すぐに螺旋の樹の内部調査を開始しジュリウスの姿を確認したい。

 しかしフェルドマンは当然ながらそれを認めず、ブラッド達もそれは充分に理解していたので素直に引き下がった。

 

「クジョウ博士、大丈夫?」

 

 神機兵βに乗ったクジョウへと声を掛けるフィア。

 調査の前倒しによって神機兵搭乗者の育成が間に合わなかった為、急遽研究者であるクジョウが搭乗する事になってしまった。

 螺旋の樹の中へと入って制御装置を設置していくだけとはいえ、一研究者であるクジョウにとっては多大なプレッシャーになるだろう。

 なのでなるべく彼の負担を減らそうと、フィアは声を掛けたのだが……彼の返答はなかった。

 

「クジョウ博士?」

『…………は、はい。だ、大丈夫……です、はい……』

「…………」

 

 もう一度呼びかけると、今度は反応が返ってきた。

 けれどクジョウの息は乱れ、やはりというべきか彼の精神には負担が掛かっているようだ。

 しかし今更作戦を中断するわけにはいかない、ここはどうにか彼に頑張ってもらうしかあるまい。

 

「うおっ!?」

「きゃっ!?」

 

 突如として、突風が巻き起こる。

 前方を見るとリヴィが螺旋の樹に神機による一撃を叩き込み、開口装置によって樹の一部が開かれていた。

 作戦が始まった、気を引き締め状況を見守るブラッド達。

 開口は無事に終わり、まずは神機兵αが制御装置を持ちながら樹の中へと入っていく。

 

「……この中に、ジュリウスがいるんだね」

「そのようですね。――焦らず行きましょう」

「だな。神機兵も動き出したし、俺達も行くぞフィア」

「わかってる、いこうみんな」

 

 神機兵αの後ろについていくように、フィア達も動き出す。

 ……だが、神機兵βが一向に動きを見せない事に気づき、フィアは立ち止まり神機兵βへと振り返った。

 

――そして。

 

『――あああああああああああああっ!!!!』

「えっ―――」

 

 突如として奇声を上げ、神機兵βは樹の内部へと向けて走り出した。

 そのスピードは速く、瞬く間にブラッド達を追い抜かし、あっという間に見えなくなった。

 

「な、なんだ!?」

『ブラッド、聞こえるか? 神機兵βを止めろ、早く!!』

「くっ………!」

 

 状況はよくわからなかったが、フェルドマンの言う通り今すぐにクジョウを止めなくてはならないというのは理解できた。

 急いで機の中へと入りクジョウを追いかけようとしたブラッド達であったが……先程以上の突風が吹き荒れ、彼等の足を止めてしまう。

 

「な、なんだよこれ!?」

「これは……オラクルエネルギーの放出!?」

 

 そう、シエルの言う通りこの風はただの風ではなく……オラクルエネルギーの放出による突風であった。

 そのエネルギー量は凄まじく、どんなに力を込めても吹き飛ばされないようにするので精一杯だ。

 神機兵βの姿は既になく、嫌な予感がフィアの頭に過った瞬間。

 

「――さあ始めましょう。今度こそ全てを一つに還す為に」

『ぎゃあああああああああっ!!?』

 

 聞き慣れた女性の声と、神機兵αに乗った状況管理局員の断末魔の叫びが、ブラッド達の耳に入った。

 それと同時に、何かが螺旋の樹内部から飛び出してくる。

 それは――フィアとリヴィが戦った新種アラガミ、クロムガウェインに酷似した……けれどそのアラガミとは違う新種であった。

 姿形はクロムガウェインと似ているものの、頭部には仮面のような装甲を纏い、翼腕の手甲辺りにはシールドタイプの装甲パーツが装着されている。

 そのアラガミは右の翼腕に掴んでいた、既に動かなくなった神機兵αをゴミのように投げ捨てブラッド達に向かって雄たけびを上げた。

 

『ブラッド、頼む……排除してくれ!!』

「了解。みんな、いくぞ!!」

 

 フィアの指示に全員が頷きを返し、新種アラガミへと向かっていく。

 それを見てフィア達を完全に敵だと認識した新種アラガミは、翼腕を大きく広げもう一度雄叫びを上げながら……彼等の命を奪おうと動き出した。

 

 

 

――同時刻、第003サテライト居住区内。

 

 

 

「っ!!?」

「これは……!?」

 

 カズキとアリサは、同時にある異変に気づく。

 螺旋の樹から、“何か”が現われ――それが真っ直ぐこちらに向かってくる。

 その存在感と威圧感はただただ異質で異常、2人はぞわりと身体を震わせながらもすぐさま自身の神機を持って外に駆け出す。

 間違いなくこちらに向かってくる何かと戦闘になる、本能がそう訴え2人は居住区内から離れようとして。

 

「――あー、やっと出られた」

 

 その前に、異形の存在が2人の前に現れてしまった。

 

「なっ――!?」

「…………」

 

 現われた存在を見てアリサは目を見開いて驚愕し、一方のカズキは無言のままであった。

 ……心のどこかで、現われた存在の目星が付いていたからかもしれない。

 だがこの予測は外れてほしかったと、思わずには居られなかった。

 何故なら、2人の前に現れたのは。

 

 

 

「――アンノウン」

「久しぶりだねカズキ、会いたかったよ」

 

 かつて死闘の果てに打ち倒した最悪のアラガミ、アンノウンだったからだ――。

 

 

 

 

To.Be.Continued...




またお前か。
というツッコミはご勘弁を、第4部が始まる前から決めていた事ですので。

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