神々に祝福されし者達【完結】   作:マイマイ

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語り手達の物語は続いていく。

さて、今回は………。


第3部捕喰117 ~ある男達の会話~2

――極東支部、ラウンジ内

 

「――諸君、今日はよく集まってくれた」

「何言ってるんですか、ハルオミさんの呼び出しならすっ飛んでいきますって!」

「そうですよ!」

「フッ……俺も随分同僚に恵まれたもんだな」

「…………」

 

4人用の机には、ハルオミ、コウタ、ロミオ、そして……フィアの姿が。

なんだかテンションが高めになっている3人とは違い、フィアの表情はどこか冷めている。

まあそれも当然だ、何せいきなりロミオとコウタにここへ連れてこられたのだから。

 

「ねえ、帰っていい?」

「何言ってんだよフィア! 今から崇高な話をするんだからさ!!」

「そうそう、お前だって聞けばきっと「聞いて良かった」って思えるって!」

「……………」

 

なんだか嫌な予感がしつつ、とりあえずフィアはコウタとロミオの言葉を信じる事にした。

フィアが沈黙したので改めて話を進めることにした3人。

場にどこか緊迫した空気が流れ始める中、ハルオミが口を開き。

 

「――お前ら、女性の胸と尻と脚、どこにに目が行く?」

 

隠そうともせずに、エロ話題を吐き出しやがりました。

そう、この三馬鹿が集まった理由……それは「女性の身体について熱く語ろう」というエロ目的であった。

上記の言葉を聞いてきょとんとするフィアであったが、コウタとロミオは同時に手を挙げ高らかに問いに答える。

 

「胸!!」

「おっぱい!!」

「ふっ……まだまだ2人とも若いな」

「じゃあハルオミさんはなんだっていうんですか?」

「胸と尻と脚……俺はみんな見る! そして全部楽しむ!!」

『さ、さすがハルオミさん………!』

 

ハルオミの頭を抱えたくなる発言に、コウタとロミオは謎の感慨を受けていた。

まだよく意味のわからないフィアには3人の熱く語る姿を理解できないが、本能で「こいつらはアホなんだ」という認識を抱いたのは余談である。

 

「この極東支部には本当に素晴らしい胸と尻と脚の持ち主がいるなあ……」

「コウタさんは、誰が一番胸が凄いと思います?」

「そうだなあ……胸だけで言うなら、ツバキ教官か?」

「誰ですか?」

「そんなロミオ君に……ほれ」

 

そう言いながら、コウタは懐から一枚の写真を取り出す。

それは密かに売買されている「極東支部女性職員プロマイド」の1つ、ツバキの写真であった。

彼女が映っている写真を見た瞬間、ロミオは目を見開き食い入るように見つめ始めた。

説明するまでもないが、ロミオの視線はツバキの大きく開かれた胸元にロックオンしている。

 

「こ、これは凄い……こ、こんなグレートなお胸を持つ人がこの極東に居るなんて……」

「まあ今は遠征に言っているけどな、それに胸はともかくとしてめちゃくちゃ厳しくて恐い人だから、下心全開で近づいたら…潰されるぞ?」

「何をですか!?」

「男で居たいなら詮索しない方がいいぞ。後はそうだな……我が第三部隊のカノン、彼女もなかなかじゃないか?」

「確かに」

「だがその反対にジーナは素晴らしい脚を持っている、そう思わんかな?」

『思います!!』

 

息ぴったりなコウタとロミオ、どことなく息が荒いような気がするが気のせいだろう。

……先程から完全に蚊帳の外状態になっているフィアは、三馬鹿の会話を右から左に受け流しつつ定着しつつあるパンプキンコーヒーに舌鼓を打っていた。

 

「だがただ単に胸や尻や脚がいいとしても、やはり“色気”が無いと台無しだと思わんかね!?」

「それには同意です」

「うちのナナとシエルがいい例ですよねー」

「……ナナもシエルも、可愛いと思うけど?」

 

同じブラッドの仲間の話題が出てきたせいか、先程から沈黙を貫いていたフィアがおもわず口を挟む。

瞬間――ハルオミが怒涛の勢いでフィアをこの会話に参加させようと動き出した。

 

「ほほう! 今の発言は一体どういう意味なのかね?」

「どういうって……そのままの意味だよ?」

「フィア、男が女の容姿を褒める時……それはやはり下心があるからだと俺は思っているんだ。

 そうかそうか……まだまだ子供だと思っていたが、知らない間に成長するんだなあ……」

「……………」

 

勝手にしみじみとしているハルオミを見て、ふとフィアは当たり前のように殺意が湧いた。

2人の容姿は一般的に見て可愛い部類に入るだろう、だからそう言っただけだというのに…一体なんだというのか。

 

「でもさ、フィアの言う通りシエルとナナって可愛いよな?」

「まあ容姿はいいのは認めますよ? でもナナは俺の事を先輩って呼ぶけど全然敬ってませんし、シエルはシエルで真顔でとんでもない毒を吐き出すときもあるんですよ?」

「ふむ……シエルは天然キャラ、と……」

「ハルオミ、何メモってるの?」

 

「ところでさ、フィアお前……最近ナナとシエルとやけに仲良くねえか!?」

「前から仲は悪くないと思うけど……」

「いやそうだけどさ、最近はやけにスキンシップが多いというか……」

「ロミオ君、スキンシップの部分をもっと詳しく」

「ナナのヤツからは背後からよく抱きついてるし、シエルはよくフィアを心配して顔を近づけたり………………チクショー、なんでコイツばっかりモテるんだよーーーーーっ!!!」

 

説明している途中で、突如として叫ぶロミオ。

それを冷ややかな目で見るフィアだが、ハルオミとコウタは彼の心中がよく理解できたのか、うんうんと何度も頷いていた。

 

「フィアはモテるなー、美少女2人に囲まれた気分はどうだ?」

「………?」

「意味が分からんって顔してますよ、ハルオミさん……」

「こりゃあ本気でわからんみたいだな……」

 

フィアはまだ13歳、そういった事がわからなくても仕方がないかもしれない。

だがあえて言いたい、勿体ないと。

 

「話は戻すが……エリナもいいとは思わないか?」

「……ハルオミさん、ロリコンだったんですか?」

「勘違いしたら困るなコウタ、俺が見たのは……あくまでエリナの尻だ!

 あの尻は間違いなく安産型、将来有望なのは間違いない!!」

「わ、わかるんですか……?」

「フッ……お前達も、まだまだだな」

(安産型………?)

 

それは一体どういう意味なのだろう、フィアは首を傾げる。

まあわからない事はシエルに訊く事にしよう、この3人にはなんだか訊きたくない。

……それがちょっとした一騒動になるのだが、それはまた後程。

 

「で、だ……みんながみんな、素晴らしいものを持ち合わせているが……胸、尻、脚、それら全てを高レベルで兼ね備えている女性が居る事を、お前達は知っているか?」

「だ、誰ですか……?」

「それはな……アリサとローザだ!!」

「あー……」

「た、確かにあの2人は………!」

(あ、コーヒー飲み終えちゃった)

 

「どっちも18なんだよな……なのになんだよ、あの色気」

「アリサさんは人妻だからまだわかるとして……ローザさんって、彼氏居るのかな?」

「居ないけどやめた方がいいぞ、シスコンカズキに勝てるなら話は別だけど」

「……………」

 

ローザの兄――カズキが仁王立ちしている姿を想像したロミオは、ぶるりと身体を奮わせた。

いや無理、あの人に立ち向かっていくとか自殺行為だろ常識的に考えて。

 

「それにさ、ローザってエリックさんと仲良いしあのままくっ付くんじゃね?」

「なん……だと……?」

「コウタ君、詳しく。そこもう少し詳しく!!」

「前々から仲が良かったですけど、カズキ達がクレイドルの部隊に映って人手不足になってから、よく2人でミッションに行くようになってますし。

 それにローザ、一部を除いて男の事を名前の後に「お兄ちゃん」って付けるじゃないですか? でもいつの間にかエリックさんは呼び捨てになってるんですよ」

「そういえばそうだったな……イケメンと超絶美少女のカップルか……お似合いだな」

「顔か? やっぱり男は顔なのか!?」

(コーヒー飲み終えたし、もう帰ろうかな……)

 

「なあフィア、お前は違うよな!?」

「………ロミオ?」

「お前はこのまま女の子とちゅっちゅしたりしないよな!?」

「………………」

 

正直、ロミオの言っている言葉の意味をフィアはまったく理解できていない。

できていないが……涙目で凄んでくるその姿が相当に不快だったため、気がつくと彼は拳を握り締めていた。

そしてそのままロミオの顔面に叩き込んだ、一応加減してだが。

 

「ぶべらっ!?」

「あ………」

「……うん、今のはロミオが悪いな」

「ああ、さすがの俺もちょっと引いた」

 

全員が、倒れたロミオへと同情を込めた視線を向ける。

もう帰ってもいいだろうかと思いつつ、フィアは視線を動かし……ある人物を見つけたので、声を掛けた。

 

「シエル」

「フィアさん、何をしているんですか?」

 

声を掛けられ、シエルはフィアの元へと駆け寄ってきた。

そして顔を押さえて呻き声を上げているロミオに気づき、シエルは怪訝な表情を浮かべる。

 

「あの……ロミオさんは一体どうされたんですか?」

「いきなり涙目で凄んできたから、つい手が出ちゃった」

「……どうしてそんな状況に?」

「よくわかんないんだ。あ、そういえばシエルに訊きたい事があったんだ」

「私にですか? 私に答えられる事なら……」

 

「うん、あのね……安産型って、何?」

 

「…………はい?」

「ちょ、バッ………!」

(こいつあヤバイな……)

 

フィアの質問に固まるシエル、コウタは慌て出しハルオミは早速逃げる準備を……。

……したのだが、それよりも早くシエルの射抜くような視線が2人を捉えてしまった。

 

「……ロミオさん、コウタさん、ハルオミさん、フィアさんに……一体何を教えたんですか?」

「え、あ、いや……」

 

いつも通りの丁寧口調、しかしその声色は驚くほど低くまるで地の底から聞こえてくるかのようだ。

聞くだけで身体を拘束されるような、そんな恐ろしさを醸し出している。

 

「フィアさんに変な事を教えないでください! おかしな子に育ったらどうするんですか!?」

「いやいや、俺達はただ男の喜びをだな……」

「フィアさんにはまだ早すぎます、それにあなた達のはなんだか凄く歪んでいるように聞こえますが!?」

「そ、そこまで言わなくても……」

「何か?」

「……イエ、ナンデモアリマセン」

 

怒り心頭なシエルを見て、3人はすっかり萎縮してしまっていた。

その後もシエルの説教は続き……三馬鹿達は反省した…フリをしつつ、ホルスターで強調されているシエルの胸部をガン見していたとさ。

 

 

「フィアさん、あんな会話なんか聞かなくていいんですよ?」

「うん、わかった」

「そ、それと……先程の質問ですが、他の人に訊いたら駄目ですからね?」

「どうして?」

「どうしてって…それは……と、とにかく駄目です。いいですね?」

「わかったけど……じゃあ、シエルが教えてくれる?」

「……………」

「どうして黙るの?」

 

 

 

 

 

 

 

To.Be.Continued...




書きながらふと「自分は何をしているんだろう」と思ってしまった………。
たまにはっちゃけるとやっぱり変になりますね、心的な意味で。

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