Fate/Zero フィオ・エクス・マキナ(完結) 作:ファルメール
「切嗣……大丈夫ですか?」
「ああ、何とか……」
助手である久宇舞弥が運転する軍用ジープに揺られながら、だらりと全身の筋肉を弛緩させたように力なく助手席に座る切嗣は隠し切れない疲労を滲ませた声で返した。
倉庫街でフィオと遭遇し、命からがら彼女から逃げ切った彼であったが、その代償は安くはなかった。
恐るべき敵から一刻も早く、少しでも遠くへと逃げ延びる為に断続的ながら固有時制御を乱発した彼の体には、今は相応の負荷が返ってきていた。筋肉も骨も血管も神経も、体中が悲鳴を上げている。
今夜はもうアインツベルン城へと帰還して体を休めたい所であったが……状況はそれを許してはくれないようだった。
調べなければならない事が出来た。
いきなり現れたとんでもないイレギュラー、フィオ・レンティーナ・グランベル。
「切嗣、これを……」
舞弥は、昼間にセイバーが持っていたのと同じ観光客向けに作られた冬木市案内のパンフレットを手渡す。付箋が挟まれたページを切嗣が開くと、そこにはとあるイタリアンレストランの紹介記事があり、小さくだがフィオの写真が載せられていた。腕利きのオーナーシェフとある。
こんなちっぽけな冊子の小さな記事……冬木のセカンドオーナーである遠坂時臣とてここまでは目が届かなかったらしい。あるいはうっかり見落としていたのか。どちらにせよ、彼女が教会にマスター登録に現れるまで、その存在には気付いていなかったに違いない。
切嗣がそう考える根拠としては、もし時臣がフィオの存在と参戦に気付いていたのなら、もっと早くに何らかのアクションを起こしていたに違いないからだ。何の動きも見せなかったのが、知らなかった何よりの証拠だ。
舞弥とて見付けられたのはただの偶然である。この冬木でケーキの美味しい店を探していたら、たまたま目に入った記事を彼女は覚えていたのだ。
「切嗣……彼女は、何者なのですか……?」
「…………」
魔術師殺しは僅かに言い淀んで、そして話し始める。
「魔術の名家グランベル家の17代目当主、元・時計塔のロードにして封印指定の魔術師……だけでなく、八極拳・サンボ・合気道・柔術など格闘技のエキスパートで、武器戦術・爆発物のプロフェッショナル。今は引退した僕の師匠から、命が惜しければ絶対に手出しするなと何度もきつく言われた、たった一人の相手だ……」
「それほどの敵、なのですか……?」
「ああ、必要なら魔術王ソロモンにネックハンギングツリーをキメかねない女だ。たとえうつらうつらしている所を簀巻きにして紀元前1万年前にレイシフトさせても、次の瞬間にはカルデアへとにっこり笑って現れる。ご丁寧に土産まで用意してね……」
「は、はあ……」
まさかと言いたげな顔の舞弥に、切嗣は苦笑する。当然と言えば当然の反応だ。今の言葉は一言一句違わずナタリアからの受け売りだが、自分もまた彼女から最初に彼女の事を聞かされた時は、何かの冗談だろうと一笑に付したものだ。
ナタリアはこうも言っていた。
心を落ち着けて、自分が思い描く事の出来る最悪の悪夢を想像しろと。
フィオは、その悪夢より恐ろしいのだ。
「一番の問題は別にある」
「と、言うと?」
「今まで彼女に返り討ちにされた魔術師殺しの数は、正確な数は不明だが10人や20人ではきかない。”魔術師殺し殺し”とも言える存在なんだよ」
「それは……つまり……!!」
魔術師殺しである切嗣の戦い方は、フィオには知り尽くされていて先読みされるという事なのだ。だから彼女は、倉庫街でも的確に”狙撃手”の居そうな位置を把握して回り込む事が出来たのだ。
「恐ろしい相手だよ……」
同時に、彼女は自分の”母”を救ってくれた恩人でもある。
心のどこかで会いたいとは思っていたが、それがまさかこんな形になってしまうとは……!!
だが、殺さなければならない。
自分が今まで殺してきた人間の為に、彼女には死んでもらわなければならない。
それにしても……どうして自分の情報網では、彼女のような怪物がこの戦争に参加するという情報を、何も掴めなかったのだ?
しかもコックだと?
「訳が分からないよ……」
時は、3日前に遡る。
フィオの朝は、熱いシャワーを浴びる事から始まる。そうして一日の始まりである事を心身に刻み込み、爽やかな気持ちでその日を頑張るのだ。
それは繰り返されていく、平凡ながら穏やかな日常。
しかしこの日、異変があった。
「……っ!?」
不意に走った痛みと熱さに、フィオは胸を押さえる。何かの病気かとも思ったが、痛みを感じているのは肺や心臓ではなく、寧ろ彼女の皮膚の表層と、それに魔術回路。
一分も経ってその焼けるような痛みが治まりそして鏡を見ると、彼女の胸には中央の剣と、その左右に三対六枚の羽の紋様。三画の令呪が浮かび上がっていた。
「こ……れは……」
確か、時計塔に居た頃に文献で読んだ事がある。
極東、冬木の地で60年周期で行われる魔術師達の闘争。
それを皮切りに、コック暮らしで埃を被りカビを生やしていた記憶がどんどんと蘇ってくる。
万能の願望機である聖杯を巡っての殺し合い。
歴史上の偉人、神話の英雄を現代に召喚し、マスターと共に最後の一組になるまで戦い抜くバトルロイヤル。
その参加資格者の証である令呪が、今、彼女の胸にも宿ったのだ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーーーーーっ!!!!」
さしもの彼女も思わず絶叫してしまう。
「ど、どうしたんですか!? 店長!!」
そのバカでかい声を受けて、隣の部屋から既にばっちりメイド服を着込んだシャーレイが駆け込んできた。彼女は死徒だが、フィオは自分の店のウェイトレスとして働いてもらう為に、朝型に体質改善させたのだ。太陽光は遮光の魔術を掛けてやれば問題は無い。
「ああ……エラい事になってしまった……」
結局この日は仕事どころではないと店を閉めて、フィオは難しい顔で冬木の町並みを歩いていた。
始まりの御三家でもなく、聖杯戦争に参加する意志が無い、どころか今朝までその存在すら忘れていた自分に、何で令呪が宿るのだ?
彼女は知らない事だが、聖杯は基本的に御三家や戦争に参加する意志を持ったマスターに対して優先的に令呪を配布する。しかし、開始期日が迫っても規定の人数が集まらない場合、聖杯は参加する意志の無い魔術師や、魔術師ですらなく魔術回路を持っているだけのような格の劣る者もマスターとして選び、無理にでも空席を埋めて7人の枠を揃える。
フィオの場合は、前者であった訳だ。
「何でこんな事に……」
悩むが、しかし今はそんな原因の考察・究明よりも宿ってしまった令呪をどうするかだ。
しばらく店は休まなければならないだろうが、こんな物騒な物はさっさと放棄して、教会に逃げ込むか……?
そう、それが良い。
そうと決まれば善は急げだ。今すぐ教会に……
「ん?」
行こうとした所で、フィオは自分が住宅街にまで歩いてきていた事に気付いた。考え事に夢中で、どこを歩いているかなんて全く気が回らなかった。
気を取り直して教会へと向かおうとしたフィオであったが……
しかし、ある家の前を通り掛かった所でその足が止まる。そこでは、警察による捜査が行われているようだ。
そう言えばここ最近、この冬木では猟奇殺人の事件が話題に上がっているが……
現場の周囲には人だかりが出来ていて、そこに集まっている人々は口々に、
「一家皆殺しですって……」
「おお、怖い」
「酷いわねぇ……」
などと言っているが、それはテレビのニュースを見ているのと同じで実感のこもった言葉ではない。フィオとて同じであり、彼女もまた、目の前の現実を遠い世界の出来事のように感じていた。
ある言葉を、聞くまでは。
「何でも子供の血で、魔法陣みたいなのが描かれていたとか……」
「!?」
足が止まる。
この時期に魔法陣、だと?
まさか、いや、ひょっとして……?
胸に生まれた疑念に突き動かされ、フィオは暗示の魔術を使って捜査現場へと踏み入って、そして表情を凍て付かせた。
バケツ何杯かの赤ペンキをブチ撒いたようで酸鼻を極める現場の片隅には、既に運び出された被害者の血で、魔法陣が描かれていた。これは明らかに、サーヴァント召喚を行う為のもの。
用心深く、そっと指を這わせてみるフィオ。
「……!!」
そうあってほしくないと思っていた最悪の事態が、現実に起こってしまっていた。この魔法陣からはまだ僅かながら魔力が感じられる。間違いない。誰か、恐らくはこの惨劇を演出したクソ脚本家が、この魔法陣を使ってサーヴァント召喚を行ったのだ。
「何て事……!!」
ぎりっ、と奥歯を噛み締める。
こんな非道を行う輩がマスターになったとあれば、サーヴァントを使って更なる兇行に及ぶは必定、火を見るよりも明らかというやつだ。
もう一つ。今の今まで失念していたが、何も外道狼藉を働くのはこの殺人鬼マスターだけとは限らないのだ。
霊体であるサーヴァントは、魂食いを行って能力を増幅する事が出来る。優勝を望むマスターが、自分のサーヴァントを強化する為に一般人を襲撃するような暴挙に出たとて、何もおかしな話ではない。目的の為に手段を選ばない、魔術師というのはそもそも、そうした生き物なのだ。
ぐっ、と胸に手を当てる。
こうなってはもう、教会に逃げ込む訳には行かなくなった。
自分を除いて魔術師が6人と、最高峰の使い魔が6騎も夜な夜なこの町をうろつく事になるのだ。通り魔どころの騒ぎではない。
そんな奴等を野放しにしたままでは、おちおち夜も眠れない。
「仕方無いわね……こうなったら、私がさっさと優勝して聖杯を手に入れるしかないか」
それで金銀財宝でも満漢全席でも、適当な願いを叶えてしまえば、魔術師達がこの町で暴れる理由も消滅する。
数年ばかり過ごして、この町にもそこに住んでいる人達にも、愛着が湧いてしまったし。こんな悪趣味なイベントは、ちゃっちゃと終わらせてしまおう。
「……そうして奏者よ、そなたは余を召喚した訳だが……」
自宅に帰ってきたフィオへ向かって、リビングの一角に特別にあつらえられたソファーにどっかりと腰掛けたライダーがワイン片手に言う。3日前に召喚されたばかりだと言うのに、彼女はもうすっかりこの家に馴染んでしまっている。天井にはフィオが錬金術で拵えたシャンデリアが吊されていた。これもライダーが蛍光灯を見て「このような機能性だけのものでは余の居室の明かりには似合わぬ」と言い出したものだ。
まぁ、現界の為の魔力はこちらが供給するとは言え矢面に立って戦うのは彼女達サーヴァントなのだし、この程度の我が儘は聞いてやるのがマスターの度量というものであろう。それに確かに蛍光灯よりこっちのがオシャレだしと、フィオも何だかんだで付け替えには積極的だったりした。
「余らが優先して叩くべきサーヴァントはどいつなのか、未だはっきりとはしないな?」
「ええ……」
半分は残念そうに、もう半分はからかうようなライダーの言葉に、フィオは頷く。
今の所自分達が接触出来たあるいは間近で見たサーヴァントは、セイバー、ランサー、アーチャー、バーサーカーの4騎。
フィオはまずは殺人鬼マスターとそいつが呼び出したサーヴァントを叩こうと考えていたが、果たしてライダーを除く6騎の内どいつがそうなのか……?
断定は不可能。だが、少なくとも絞り込みは出来ている。
まず、セイバーとランサーは除外しても良いだろう。あの二人はどちらも、己の宿願の為とは言え無辜の民を殺し食って恥じないような英霊ではない。
アーチャーも、セカンドオーナーである遠坂のサーヴァントである点から考えて可能性は低い。
となると残る可能性としては、バーサーカー、キャスター、アサシンのいずれかという事になる。
「……で? 奏者よ、そなたはどいつが怪しいと見ておるのだ?」
「確たる証拠も無いのに、思い込みは重大な危機を招くわよ? ライダー」
そうは言ってみるものの、ターゲットでない可能性が高いサーヴァントは、もう一騎いる。
アサシンだ。
マスターの天敵たるこのクラスは、人間でありサーヴァントに比べれば能力的に遥かに劣るマスターを相手にする事を前提としているので高い白兵戦能力や強大な破壊力を発揮する宝具などは必要とせず、気配遮断による隠行・暗殺に特化している。
よって十全のパフォーマンスを発揮する事や、現界の維持にはさほど高い魔力や魔術師としての技量を必要とはしないのだ。なのに敢えて神秘の漏洩に繋がるような兇行を犯してまで魂食いを行わせる理由が無い。
となると、残るのはキャスターとバーサーカーだが……
こいつらは、どっちも怪しい。
キャスターはクラス特性からして、最短で勝利を得ようとするなら十分な魔力を確保して強力な魔術を行使したり堅牢な工房を作ろうとするだろう。
バーサーカーは魔力消費が激しいクラスであるが故に、マスターの魔力事情は常に逼迫している。過去の聖杯戦争では、狂戦士のクラスを使役したマスターは全て魔力切れで自滅したと言うし、そうした事情を知っていれば尚の事、ミイラになりたくないマスターが魔力を自分以外の所から供給しようとする可能性がある。
要するに断定は出来ないがどちらも、サーヴァントの意志あるいはマスターの指示で、魂食いを行う動機が十分にあるのだ。
では未だ姿を見せないキャスターは兎も角、あのバーサーカーのマスターに問い質せば良いだろうという考えに行き着くのだが、数合わせで選ばれたマスターの悲しさ、事前準備を全くしていなかったフィオはそうした情報面に於いて、他のマスターに水をあけられてしまっていた。
よって、一人ずつ”面接”して下手人を捜しているのだが、やはりそのようなやり方では上手く行かない。それに今になってよくよく考えてみれば、そもそもそんなやり方をする奴等が表に出てくるか? という話でもある。
「手がかりと言えば、マスターが殺人鬼であるという事と、もう一つ」
ライダーはそう言うと、すぐ傍の台に置かれている物に手を伸ばした。
「この”矢”が召喚に際し触媒として用いられたという事だけか……奏者よ、間違いないのか、それは?」
「ええ、召喚が行われた家の、魔法陣の近くの棚に置かれていた物よ。私が確認した時、その矢にも僅かながら魔力が残留していた。間違いなくそれは英霊を招き寄せる触媒として使われた聖遺物よ」
尤も、惨劇のあった家は魔術師の家系でもなんでもなかった。多分、考古学の研究の為に持っていたとかさもなくば史跡を訪れた時に何かの切っ掛けで手に入れて、そのまま記念品として持ち帰ったとかそんな所だろう。触媒として用いられたのも殺人鬼マスターが意図してそうしたのではなく、偶然描かれた魔法陣のすぐ近くにこれが置かれていたというだけに過ぎないだろうと、フィオは見ている。
「ふむ……しかしこんな何の変哲もない矢一本ではな……」
弓矢を武器にした英霊などそうでない者の方が少ないぐらいだろうし、特定は不可能。ライダーは溜息を吐いて、机上にその矢を転がした。
と、そこに、シャーレイが地図を片手に入ってくる。
「店長、頼まれていた調査、終わりました」
「ご苦労様、早速見せてくれるかしら?」
フィオの指示を受けて、シャーレイはテーブルの上に地図を広げる。その地図には、ちょうど未遠川を下流から上流へと遡るようにして、アルファベットが等間隔で書き込まれていた。
「奏者、これは?」
「シャーレイに、水の中の術式残留物の調査を頼んでおいたのよ。それで、結果は?」
「はい、術式残留物が確認出来たのは河口のA地点からP地点までで、Q地点より上流の水からは確認出来ませんでした」
「……つまり、どういう事だ?」
ライダーは魔術を使う事は出来ても専門家ではない。フィオはくすくす笑って、説明を始める。
「水の中に魔術を使用した痕跡が残っていたって事よ。それがP地点とQ地点との間で途切れている、という事は……?」
「その二箇所の間に、何かがある?」
倉庫街の時と同じで、可愛い生徒を見る教師の顔になってフィオが笑う。
「そうそう。で、シャーレイ、その間に何かあった? 排水溝とか用水路とか……」
「はい、普通の車ぐらいなら入りそうなぐらい大きいのが一つありましたけど……」
「成る程、ではそれを遡っていった先に、いずれかの魔術師の拠点があるという訳か!!」
掌をぽんと叩いてライダーが言うが、フィオは難しい顔だ。
「どうしたのだ、奏者よ」
「店長?」
「……気に入らないわね」
「「は?」」
「シャーレイ、やらせておいてこんな事を言うのはアレだけど、実を言うと私は、この作業で結果が出るとは思ってなかったのよ」
あくまでダメ元、打てる手は全て打っておくという意味で行わせた調査だった。
キャスタークラスは勿論、人間であろうと聖杯戦争に招かれる程の魔術師ならば痕跡の隠滅も完璧にやってみせるだろう。少なくとも自分ならと、フィオは思う。今回のように水から術式残留物を検出されるなど、魔術師としてはあまりにも初歩的なミスだ。
ならば何故、こうも簡単に拠点の手がかりが見付かるのだ?
「罠、と考えておるのか? 敢えてその術式残留物とやらを流して、引っ掛かった者を偽の工房へ……」
「いや……」
誘き寄せるにしてもあからさますぎて、これでは却って誰も近付かないように思う。
寧ろ初歩的すぎて、優秀な魔術師が揃っているだろう聖杯戦争では逆に見落とされるレベルだ。「この戦争に参加する魔術師がこんな簡単なミスをする筈がない」という先入観・思い込みによって。フィオだってその一歩手前ぐらいには居たのだから。
「気に入らないわね……何か、しっくりと来ない」
イマイチ表情の晴れないフィオであるが、これ以上考えても答えが出そうにない。次の報告を聞く事にした。
「水汲みと並行して、市内で遠坂家と間桐家以外で強い魔力が感じられる場所を探していたんですが……」
シャーレイはそう言うと、赤いサインペンを取り出して地図上の一点に丸を描いた。
ここは確か……
「冬木ハイアットホテル、その最上階から私でも分かるぐらいの凄い魔力を感じました。多分、魔術工房がそこにも……」
「成る程……」
フィオはううむ、と唸る。
どうにも気に入らない、排水溝の先にあるだろう拠点と、ホテルの最上階にある拠点。どちらに先に向かうべきか……?
しばらく考えた後、フィオは結論を出して「うん」と強く頷く。指針は、固まった。
「ライダー」
「どうした、奏者よ?」
「今日は、もう一働きしてもらうわよ」
「帰ってきたばかりで悪いけど」とのマスターの言葉を受けて騎乗兵はにっこりと笑うと、
「うむ、任せておけ!!」
まだグラスに残っていたワインを一息で空にして、勢い良くソファーから立ち上がった。