黒き悪徳を為す王として   作:望夢

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ニトプラ成分どこいった?いやあいつなら休暇だってさ。

デモベのリプレイ動画や小説、マンガにアニメ見返したのに頭の中が光の亡者の思考の所為でlightのままのノリから抜け出せぬぇ。

おっかしいなぉ、リトルボーイとかロッズ・フロム・ゴッドとか連発して街が滅茶苦茶になってブチギレ九郎ちゃんと殺し愛いするはずだったのになぁ。

ナイア「こんなの絶対おかしいよ!!」

カッス「いいぞもっとやれ!! 俺にお前を愛させてくれぇぇぇ!!」

獣殿「ご苦労だったなカールよ。卿も一局如何かな?」

水銀「星を操る事など容易いものですよ獣殿。しかし黄昏の輝き、あれほどの意志力とは。やれやれ、女神殿を差し置いて思わず恋をしそうになってしまったよ」

閣下「悪を断つ死の光。なるほど、彼も私と同じ道を歩むか」

刹那「もうやめてやれって……」

あまりの理不尽さにナイアさんが不憫に思う練炭であった


我らが英雄譚

 

 遥か天空に座する大導師を見上げるアウグストゥスの心境は、可能ならばあの絶対強者の少年を地に落とし、四肢を砕いて地べたを這いずる様を玉座から見下ろしながらその顔に浮かぶ絶望を肴に悦に浸りたかった。

 

 確かに強い力を持つ魔術師だ。アンチクロスは皆、一対一で大導師に挑み敗れ、その力に平伏したのだ。

 

 しかし六の頭の力に逆らわれれば如何に大導師であろうと降せると思っていたのだ。

 

 これが不意打ち、あるいはクトゥルーを召喚したあとのぺルデュラボー、本来のマスターテリオンであれば討たれていただろう。なにしろ彼は討たれてもまた生まれ変わることができる。そして、マスターテリオンの代わりにブラックロッジを手中に納めたアンチクロスとの戦いは大十字九郎が成長するために必要なファクターだ。

 

 だがクロウリードは違う。如何に最強の魔術師であっても、マスターテリオンであっても、彼は代役。その命はひとつしかないのだ。故にいつも不意打ちには気を配っていたし、反逆されたら返り討ちにしてきた。

 

 今回も同じだが、そこには外的要因が関わっていた。

 

 覇道鋼造が魅せた人の輝き。そしてエンネアが再び運命と対峙した。

 

 人の輝きを魅せられて、奮い起たない魔王が居ようか。人の輝きを愛するが故に自身は黒き王の席に居るのだから。

 

 しかし、だからこそ憧憬する。羨望する。自分もそうでありたいと思ってしまった。

 

 故に新世界の道をいくエンネアの為に、なによりも自身の抑えきれない渇望の為にクロウリードは立ち上がった。黒き王から光の英雄に。その属性反転をアウグストゥスは手助けしてしまったのだ。

 

 それはある意味身に染み付いたカウンターだったのだ。

 

 必ず裏切られるから、その時命を守るために瞬時に切り替わるスイッチ。一気に臨戦態勢になるためのスイッチが勢い余ったのだ。そして邪悪に挑まれたから反転した属性が勢い余って光の使徒へと進化してしまったのだ。

 

「さて、次はどちらだ? どちらでも構わんぞ。2対1でも構わん。これは御前の決闘ではないのだからな」

 

『くっ、ティトゥス!!』

 

『……参らせて頂く、大導師!』

 

「いいだろう。来るがいい!」

 

 鬼械神――皇餓(おうが)を駆り、ティトゥスは天に座す光に向かって駆け上がる。

 

 その巨大な刀を、クロウは軍刀と鞘をクロスさせて受け止める。サイバスターがその手の魔法剣と魔王剣で皇餓の勢いを止めた。

 

 肩を突き抜ける痛みを気合いで耐えながら、再び煌めきを放つ極光剣にて皇餓の刀を溶断した。

 

 そして鞘から伸びる光の剣が皇餓の装甲を切り裂く。崩れ落ちる皇餓から飛び出す影は魔人ティトゥス。その刀の強襲を真正面からクロウは受け止めた。

 

「ぐぅっ」

 

 両手の刀の斬撃を、両手の刀と鞘で受け止めた時、ティトゥスから伸びた第三、第四の腕に握られた刃がクロウの胸を刺し貫く。肉を裂き、骨を断つ手応えをティトゥスは疑問に思いながらもその感触を感じていた。

 

「大導師、何故」

 

「貴様は本気で挑んできただろう。不意打ちではなく真正面から」

 

「大導師…」

 

 ティトゥスは魔人だ。血肉に餓え、人の身では満足できなかった邪剣であっても戦士の礼節を知るものだ。

 

 破壊、怨恨、恐怖、そのどれにも当て嵌まらずに戦士として挑んだティトゥスは、他のアンチクロスの様に悪の敵である英雄の弧線には触れずにここまで肉迫できたのだ。

 

 外道の技なれど技量は戦士のもの。故にこそ、本気を出した魔人の剣士には本気で応えなければ罰当たりだろう。

 

「そうさ。人間やればなんでも出来るんだ。要は本気じゃないんだよ。本気で求めれば手に入れられるのに、無理だと諦めてしまうんだよ。ふざけるな、諦めなければ叶うんだよ。否――叶えてみせよう。それが犯した犠牲を礎に、明日を切り拓くと誓った意味がない!!」

 

「ぐっ!? なにっ」

 

 出血も、傷が深くなることも構わずにクロウはティトゥスの刀を更に自分の身に押し込み、背筋と腹筋で刀の自由を殺すという破天荒な対処法で一瞬ティトゥスの動きを完全に止めた。

 

 そして無理矢理な体勢ながらも手の刀でティトゥスを斬りつけた。

 

「ぐはあっ、こ、れは…っ」

 

「闇に光あれ。その極光は邪悪を断つ死の光なり」

 

 触れただけでも放射能の毒光が体内に浸透して激痛が襲い続ける。放射性分裂光(ガンマレイ)が、今ティトゥスの身体を蝕んでいるのだ。

 

 剣士としての目がクロウの斬撃を捉えていた。僅かに反応が遅れて胸を掠めた斬撃。ただティトゥスは知らなかったのだ。その万象絶滅の斬撃は決して触れてはならないものだった事を。

 

 身体を蝕んでいる激痛を捩じ伏せながらも新たに刀を鍛えたティトゥスの眼前には既に金髪が散りばめられていた。

 

 斬ッ――!!

 

 反応できない速度で間合いに入られ、そして目で捉えられなかった斬撃は戦士の勘が無意識で防御させていた刀ごと魔人の身体を両断した。

 

 稲妻を帯び、炎を帯び、恒星(ほむら)の輝を纏う極光剣の輝きをその目に焼きつけながら魔人の剣士は光の英雄の前に散った。

 

『クソッ、役立たずどもが!』

 

 魔人の剣士の散り際に残心を感じていたクロウの耳に障る声が聞こえた。

 

『消し去れぇぇい!!』

 

 レガシー・オブ・ゴールドから放たれる幾筋ものビーム。しかしその光源は光の英雄を止めるには至らない。

 

 その一発一発が人間を軽く呑み込むものであっても、穢れた光ごときで英雄が足踏みするわけもない。

 

「笑止! この程度の光が、光を名乗れるか。正しき光、黄金の輝きの前に散れ!!」

 

 夢の力でその力を振るうことすら畏れ多いというのに、あのような穢れた存在が光を操ることが我慢ならない。

 

 本物の黄金の輝きを知るが故に。

 

「故にこそ、この怒りが貴様にもわかるだろう――終段・顕象!!――」

 

 黄金の輝きを共有できる神性への接続。その力を我が身に降ろす。

 

「天昇せよ、我が守護星――鋼の恒星を掲げるがため」

 

 身体から放たれる輝き以上の熱量が、クロウの身体を渦巻き始めた。黄金の英雄の力を振るう不埒もの。しかしながらその光を侮辱する輩への怒りは共感できた。

 

「おお、輝かしきかな天孫よ。葦原中国(あしはらなかつくに)を治めるがため、高天原(たかまがはら)より邇邇芸命(ににぎのみこと)を眼下の星へ遣わせたまえ」

 

 機神召喚よりも更に上、人造であっても神をその身に降ろすという自殺行為であったとしても、悪を断つ為ならば是非もなし。

 

 耐えられないのならば、耐えることが出来るまで覚醒すれば(つよくなれば)いい。

 

日向(ひむか)高千穂(たかちほ)久士布流多気(くしふるたき)へと五伴緒(いつとものお)を従えて。禍津に穢れし我らが大地を、どうか光で照らしたまえと(かしこ)(かしこ)み申すのだ」

 

 故に、なればこそ教えてやるのだ。真なる光を魅せてやるのだ。穢れた光では世界は照らせぬと弁えさせるのだ。

 

「鏡と剣と勾玉は、三徳示す三種宝物(みくさのたから)。とりわけ猛き叢雲よ、いさや此の頸刎ねるがよい――天之尾羽張(あめのおはばり)がした如く」

 

 神でありながら意思を持つその存在は普通の人間など呑み込まれとしまう意志力を持っている。

 

 ()()()()()()()!! 今さら神様拵えたくらいで呑み込まれるほど柔な意志力はしちゃいない。幾星霜の那由多の果ての永劫回帰を繰り返したこの精神力を無礼(なめ)るな!!!!

 

 なればよし――その意志あらば、この光を魅せてやるのだ。

 

『我は炎産霊(ほむすび)、身を捧げ、天津の血筋を満たそうぞ。国津神より受け継いで(ほむら)の系譜が栄華を齎す』

 

「天駆けよ、光の翼――炎熱()の象徴とは不死なれば、絢爛たる輝きにて照らし導き慈しもう。遍く闇を、偉大な雷火で焼き尽くせ」

 

 その金髪は深みを増し、黄金の中に黄昏を抱く金色となり神々しささえ感じさせる色合いを帯びながら、その身からは夜を焼き尽くさんとするかの様な輝きがより一層激しさを増して太陽そのものが顕現しているかの様だった。

 

『ならばこそ、来たれ迦具土神。新生の時は訪れた。煌く誇りよ、天へ轟け。尊き銀河を目指すのだ』

 

『「――これが、我らの英雄譚」』

 

 光が収束し、その誕生の時を迎え、そして爆裂した。

 

超新星(Metalnova)――大和創世、日はまた昇る(Shining Sphere)希望の光は不滅なり(riser)!!!!』

 

 アーカムシティの夜に、太陽が生まれた。黄金の煌めきによる光ではない。それは正しく太陽の光を放っていた。

 

 そしてその手に握る黄金の光の極光剣は更に耀きを増して黄昏を抱く金色へと天昇する。

 

『いざ、鋼の光輝は此処に在り――城滅せよ!』

 

霆光(ガンマレイ)天御柱神(ケラウノス)!!」

 

 そして敢えて光の極光剣に拘ったのは、その神性が最も魅せられた光の代名詞だったからだろう。

 

 太陽の光を授け、更に輝きを放つ極光剣は何処までも伸びてゆき、穢れた光で世界を焼かんとする邪悪を断末魔さえ響かせずに裁ち切った。亜高速で迫るガンマレイを止められる存在は皆無である。

 

 光の英雄の力、そして焔の神性の力、窮極呪法兵葬まで使った自らをして恥も反省もない。それは力を借りた神性と模した光の英雄に対する侮辱である。故にこの身は英雄として白き王と対峙する。

 

「っ、マスターテリオン……」

 

「否。今のおれは黒き王ではない。光の魔王の眷属(むすこ)にして、光の英雄の亡者。甘粕黒羽(あまかすくろう)だ」

 

「甘粕…黒羽…?」

 

「汝、言葉遊びも大概にしろ。汝はマスターテリオン、魔術の真理を求道する金色の獣であろう!」

 

 クロウに対してアル・アジフは憎悪を向け、マギウス・ウィングでその喉元を掻き切らんとした。――そのマギウス・ウィングが何故か燃えて大惨事だが。

 

「んなあ!?!? あちいぃぃ!!!!」

 

「く、九郎!? おのれぇぇっ」

 

『騒がしいぞ魔導書の小娘が。我が輝きを魅せる天駆翔を害するのならば、その屑紙を悉く燃やし尽くすぞ』

 

 クロウの身体には僅かにだが神性の力が残っていた。その力がアル・アジフに警告する。ある意味の最後通告だ。

 

「クロウ……」

 

 まるで迷子になった仔猫の様な足取りで近付いてくるエンネア。クロウはその背後に聳え立つ鬼械神をその太陽の黄昏を宿した光の極光剣で切り捨てる。

 

「あっ……」

 

 瓦解する機械神。それは運命との訣別。すべてが今から始まる英雄譚(マイソロジー)

 

 その綴りの1節は、因果の破壊なり。

 

「決着はつける。大十字九郎、そして覇道鋼造。因果地平の彼方にて、お前たちを待つ」

 

 光の中に融け、クロウは天空へと飛び立った。

 

「クロウ…っ」

 

 見上げてもそこには既に光はなく、太陽もまた消え失せていた。

 

 運命の語り部の少女は独り、慟哭のままに声をあげた。

 

 そして、黄昏の神々の一夜は明けた。

 

 

 

to be continued…

 

 


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