黒き悪徳を為す王として   作:望夢

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今回、カッス成分が増々なので色々とご注意です。つまりノリで書いています。


夢を追う魔王

 

 月明かりの照らす夜中のアーカムシティ。

 

 しかしその上空で激しく火花を散らす存在が居た。

 

「おおおおおあああっ!!!!」

 

 煌めく粒子をその翼から放ちながら大空を舞う黒い天使。

 

「はああああああああっっっ」

 

 竜の鱗を重ね合わせた翼から光を放ちながら大空を舞う刃金の巨人。

 

 摩天楼の空を、月明かりよりも激しく照らす閃光は魔剣と魔刀の衝突によるもの。

 

 魔力と魔力の衝突によって生まれる衝撃と閃光は即ちそれは魂のぶつかり合いだ。

 

「イア! イタクァ!!」

 

「行け、黒き獄鳥よ!」

 

 少女たちの呪詛が世界を蝕む。男たちの闘気が鋼鉄の身体に熱き血潮を循環させる。

 

 風の加護を受けた魔導誘導弾と黒き獄鳥たちが衝突し、いくつもの火球を生み出す。

 

「魔刃鍛造! 複式!!」

 

「クロハ!」

 

「イエス、マスター! エーテルフェザー、展開!」

 

 次々と鍛え上げられる偃月刀。刀身の魔術回路を輝かせ、炎を纏い回転しながら射出される。

 

「黒き羽と共に、死の舞を踊れ!」

 

 飛来する偃月刀の群れを、翠色の羽が撃ち落とす。

 

「アトランティス、ストライクッ!!」

 

「ABRA――」

 

 刃金の巨人の脚と、黒き天使の腕を紫電が纏う。

 

「でああああああっっ」

 

「HADABRAァァ!!!」

 

 重力を味方にした速度、それに合わせて時空間歪曲エネルギーを爆裂させたスピード。目に見えて空間が歪むほどのエネルギーを充填させた必殺の蹴りが降ってくる。

 

 それを雷の洗礼をもって迎え撃つ。が――――

 

「押し負ける…か」

 

 シュロウガの腕から放たれていた稲妻を打ち払いながら近づいてくるデモンベインに舌打ちをしつつ回避行動に移る。

 

「エーテルフェザー!」

 

 翼を広げ、推力を最大にしてデモンベインの攻撃圏外から逃れる。ギリギリで避けるシュロウガに、間近を過ぎた時空間歪曲エネルギーの余波が襲い、コックピットを激しく揺さぶる。

 

「…っ」

 

「あぅっ」

 

 苦悶の表情を浮かべながら、クロウリードは攻撃直後のデモンベインを追撃する。背中の翼から光を放ちながら射出される翠色の羽の弾丸が闇夜を切り裂いてデモンベインの背中に迫る。

 

「魔力弾追尾、後方6時」

 

「シャンタク、フルパワー!!」

 

 しかしデモンベインは脚に紫電を纏いながら背中の飛行ユニットから激しくエーテルを散らし、その場で180度方向転換。物理法則もあったものじゃない動きにさすがのクロウリードも一瞬面食らってしまう。あんな動きをしたら中身のパイロットが保ちはしないだろう。

 

 だが魔術師ならばそんな物理法則も無視出来る。魔術とは己の描く世界で今ある世界を壊し、侵し、有り得ざる結果を無理矢理現世に顕現させるのだから。

 

 羽の弾丸を蹴散らしながらデモンベインの一撃がシュロウガを捉えた。

 

「っ、障壁か!」

 

「フィールド出力全開、抜けさせるな!!」

 

「イエス、マスター」

 

 ディフレクトフィールドがデモンベインの一撃を防ぎ、フィールドのエネルギーと時空間歪曲エネルギーが互いに鬩ぎ合い、激しい閃光を灯す。

 

 コックピットさえも眩しく照らす閃光に瞳を焼きながらも、クロウリードは額に汗を浮かべながら笑っていた。

 

 空という自身の得意なフィールドで防戦に押し込まれつつある。その現状が厭に愉しく思えて仕方がない。

 

 幾度、幾億繰り返せど、この時の興奮だけは至福の一時のひとつだった。

 

 黒き王として白き王と戦う時は、黒き王として物語りの補助が入る。黒き王でいる限り自分は白き王に負けはしない。それこそ白き王が神器を抜かなければ。

 

 しかし物語りの助けを借りて座しているだけならばこうも多くの回帰をする事はなかっただろう。

 

 何時からだろうか、覇道鋼造との一騎討ちを始めたのは。それこそ、人の身でしかないクロウには思い出すことは出来ない。しかし人として、輝きを忘れないその在り方に心を奪われたのは確かだ。

 

 黒き王との戦いの果て、覇道鋼造となる大十字九郎。齢老骨の身となっても邪悪への怒りと憎悪で立ち上がり、折れぬことを知らぬ英雄の残滓との戦いは唯一クロウリードという人間が真の意味で魔王(人間)として輝ける相手だった。

 

「いいぞ、その粋だ。先程の切り返しも驚嘆に値する。それでこそ魔を断つ剣というものだ!」

 

「飽きもせずに同じ減らず口を。貴様は変わらんな、哀憫の魔王」

 

「くははははは。……お褒めに預かり恐懼感激の極みなり。あぁ、変わらんとも。魔王(ひと)として人間(ひと)に討たれることこそ本懐。であれば、お前との戦いはその本懐に最も近い興奮を与えてくれる!!」

 

 黒き王として白き王に、世界に仇なす大敵として存在し挑まれる時ほど魂が躍動する事はない。

 

 もとよりこの身は魔王の眷属。もとよりこの魂は魔王に売り渡した。であれば、魔王として世界に仇なす大敵として挑まれるこそ本望。 

 

 だがそれは定められた役目でしかない。ある意味で最も興奮出来るとすれば、互いに役目(ロール)の外にいる今の様な瞬間こそ、至高の躍動を感じるのだ。 

 

 閃光を散らすフィールドと時空間歪曲エネルギー。魔術によって生み出された超常のエネルギーは科学の権化を侵食する。

 

 亀裂が生まれるフィールド、クロハは焦りを感じながら自らの主を見上げた。空という自分達の領域。その場所で押され、しかし主は笑っている。この密着状態で反撃しようにも、フィールドを解除すれば次の動作に入る前にはデモンベインによって機体は蹴り砕かれてしまうだろう。

 

 致命傷とはいかずとも大きな隙を生むだろう。

 

 レムリア・インパクトでも叩き込まれればいくらシュロウガと言えども致命傷だ。その隙は充分生まれる。だがクロウは寧ろこの瞬間こそを魂の底から楽しみ、そして故に更なる試練(かだい)を課す。

 

「故にだ。無論、この程度は片手間に乗り越えて魅せてくれよ。オン、マカキャラヤ、ソワカ―――」

 

 瞬間、クロウの纏う圧力が増した。亀裂の入っていたフィールドがより強固となって再生する。

 

 印を結び、クロウはこの瞬間を打開し、且つ覇道への試練として、この一石を投じた。シュロウガが右手を頭上に上げ、良からぬ気配を感じた覇道鋼造もその視線を向けた。

 

「リトルボォォォイ!」

 

 二体の鬼械神の頭上に姿を顕したのは巨大な爆弾。

 

 第二次世界大戦において広島に投下された核爆弾。

 

 全長3.12m、最大直径0.75、総重量約5tの爆弾を起爆させた。それこそシュロウガの生じさせるディフレクトフィールドを激震と超高熱が襲う至近距離で。

 

「ぐっおおぉおおぉぉっ!!」

 

「ぐぅぅぅっ」

 

 デモンベインのコックピットを、同じく激震と閃光が襲う。それこそネクロノミコン最大火力であるクトゥグアの炎に匹敵しかねない威力と熱の中で、しかし覇道鋼造は直ぐ様手を打った。既に神の火を手にしている人類であるから、核の恐怖を覇道鋼造は熟知している。

 

「クトゥグアァァア!!!!」

 

 デモンベインの機体が灼熱し、核爆発を包むように強固な結界が形成され、炎と熱が渦巻く結界の内でクトゥグアの炎を解放する焼滅呪法を解き放つ。

 

 核爆発を焼滅呪法で対消滅させた覇道鋼造とデモンベイン、しかしその機体は焼け焦げ、所々が熔けて悲惨な姿をさらしていた。装甲が剥げた胸にある心臓から光が漏れて見えていた。銀鍵守護神機関によって守られ制御されている異界の門。獅子の心臓と無限の心臓が激しく光を放ちながら、デモンベインの機体を瞬く間に修理していく。

 

「フッ、やはり防いでくれたか。自分の身を顧みず、見ず知らずの他人の為に魂を削り核の炎を消し去る。一節程度の文章でも、勇者は斯くあるべしと示すには充分すぎる行いだ。狂おしい程に愛おしいぞ、その気概が、その勇気が!」

 

 今の覇道鋼造こそ勇者だと、なにも知らずにこの街に生きる人々に向かって誇る様にクロウは叫ぶ。

 

 核爆発なんぞ、先ず人が立ち向かえるはずのない相手だ。人が神の炎に抗えるはずがない。だが実際に抗って踏破する人間が居る。遣り過ごすことも出来るはずだ。しかし覇道鋼造はこの街を核爆発から守るために自分の身を削るような方法で対処して魅せた。自己犠牲を称えているのではない。その選択を出来る、自身よりも他人の為に行動できる、試練に立ち向かえる気概と勇気を讃えているのだ。

 

 高らかに感動しているクロウをさて置き、デモンベイン・レプリガンドを駆る覇道鋼造は額に汗を浮かべながら目の前の哀しい魔王に向き合っていた。

 

 人に討たれることを望み、人類の悪として君臨する魔王。しかしそれは邪神によって課せられた囚人であり、魔王によって歪められた無垢なる心の持ち主だ。

 

 人類の悪として君臨しながら、しかし人類の滅びを願う者でもない。寧ろ人類に対する愛が行き過ぎている大馬鹿者だ。

 

「機体修復完了、稼働率98%をキープ」

 

 外装を修復し、内装までも完全修復を終えたが、目の前の黒き天使を降すにはまだ足りない。力が足りないのだ。

 

 鬼械神の出力差でも、魔術師としての魔力量でもない。

 

 覇道鋼造とクロウリードの両者の歴然の差は意志力だ。

 

 どこぞの魔王の様にひとりで全人類の意志力を凌駕する程でもないが、夢を叶えるために、物語りの主人公に喧嘩を吹っ掛けて打ち倒し、神の神器を白き王が手にするまで永劫回帰を続ける程度には強い意志力を持っている。

 

 邪悪への怒りと憎悪で戦う覇道鋼造は、クロウリードという一個人を哀れんでいる。故に、家族で平穏に暮らしたいという人間が誰しもが持つ当たり前で純粋な願いを夢として戦っているクロウリードに、戦う意志力で負けてしまう。

 

 クロウの意志力を上回るには、それこそ愛する人との明日を願う程の意志力でなければならない。哀れまれて、その呪縛を解放しようと思うのでは駄目なのだ。勇者が魔王を哀れんでどうする。勇者はただ、明るい未来の為に世界に仇なす魔王を討ち果たせば良いのだ。

 

 真っ直ぐ己の意思を曲げず、ただひたむきに明日を願う勇者(にんげん)こそ魔王は憧憬し、その道を譲るのだから。

 

 では1度負けてしまっている覇道鋼造という人間が、魔王に勝つにはどうすれば良い。魔王を哀れむ事を止めて戦えば良いのか? 無理だろう。夢を持たなかった子供が漸く掴んだ夢を叶えるために世界に挑み続けている事情を知って、叶えてあげたい無垢な願いを悪と断じて討ち果たせる様な神経を持つ程、覇道鋼造は無情にはなりきれない。

 

 倒さねばならない。倒さねば自分の愛するものを失ってしまう。その思いを胸に覇道鋼造は戦っている。

 

 実に厭らしい構図だ。互いにただ、愛するものを失わない為に戦うなど虚しすぎる。そして思う、思ってしまう。お人好しの白き王は、そんな黒き王が囚われた呪いの牢獄を打ち破らんと、この哀れな魔王に救済を。

 

「故にお前は敗れた。それを繰り返すか? 失望させるな()()()()()。俺は魔王だ、俺を倒さなければこの街は消えて無くなるぞ? お前の愛する孫娘もまたそうだ。どうしてくれよう?」 

 

 ドクリと、覇道鋼造の中で何かが蠢く。

 

「ティベリウスにくれてやるのも一興だが、それはつまらん。ではどうするか、アレも中々の輝きを持っている。故に、祖父の後を継がせるのもまた一興だな。魔術師として祖父の仇を討つ孫娘。物語りとしてこれもまた面白そうだ」

 

「貴様は……っ」

 

 此方を煽るために孫娘を持ち出す魔王。そこに怒りが沸かないわけがない。こんな辛い戦いを孫娘にさせる気はない。彼女は白き王を支える者だ。間違っても魔王に立ち向かう勇者の役者をやらせるわけにはいかない。

 

「あり得ないと? それこそあり得んよ。お前は知っているはずだ。あぁ、思い出せば胸が高鳴るぞ。愛する男が戦えないから、自分が戦わねばと世界を背負って恐怖と責任と戦った覇道瑠璃。彼女の戦いもまた、斯くも凄絶に美しかった。危うく恋をしそうになるほどにな。そんな彼女を抱き締めたくなった、愛したくなった。いや、愛させてくれ。その魂を」

 

「マスター……!」

 

 クロハが制御系に介入し、機体を退ければ、ディフレクトフィールドを二発の弾丸が打ち砕いていた。

 

「渡さん。彼女は何があっても貴様にはな! マスターテリオン!!」

 

 デモンベインの握る二挺拳銃が字祷子(アザトース)へと解け二重螺旋を描き、別の形へと再構成されていく。それは杖だ。魔法使いの杖を脇に構え、砲身が展開する。いくつもの環状魔方陣が高速回転し、魔力を集束させていく。

 

「神銃形態――!!」

 

「ほう…」

 

 天井知らずに高まる魔力。機体から光が溢れている。魔術回路が負荷に耐えきれずに火花を散らしているのが見える。

 

「人類は、世界は、生命は、お前の玩具じゃないぞ、マスターテリオン!」

 

 砲口が帯電し、紫電が迸る。それほどの超プラズマ体をその身に宿しているのが気配で伝わってくる。

 

「ふははははははは!! いいぞ、面白いっ」

 

 翼を広げ、煌めく光の羽を夜空に広げる様は正しく天使に相応しい。

 

 両手を広げ、魔方陣を展開するシュロウガ。その両手に暗黒の太陽が顕れる。黒い光を放ち、闇の炎で世界を照らす暗黒天。

 

 その姿に危機感を抱いた覇道鋼造は、魔王を討つべく焔の神性を解き放つべく引き金を引いた。

 

「イア! クトゥグア!!」

 

 後から準備に入ったシュロウガは、無謀にも焔の咆吼にその身を晒していた。しかし焦りはない。なにしろ信じているからだ。間に合うと、今も高速で術式を処理している生涯の魂の半身を信じているからだ。

 

「――終段・顕象ォォッ!!」

 

 魔方陣が腕の先からシュロウガを包み、その形を変容させていく。黒い機体が紅く血で染まっていく。翼が閉じ、機体を覆っていく。その姿はまるで蝙蝠を彷彿させる。

 

「我が怨念、余さず纏めて極めてやろう!!」

 

「受けよ、極低温の刃――!」

 

 変容を終えたシュロウガは今まさに装甲を噛み千切らんと牙を向く焔の獅子に向けて、その右手を突き出した。

 

「ハイパーボリア――!」

 

「ゼロドライブ!!」

 

 極低温の刃となった右手は、焔の獅子を引き裂き、燃える焔を凍らせて砕け散らすという物理法則を無視した結果を生みつつ、そのままデモンベインへと迫っていく。

 

「その姿はっ!?」

 

 初めて見るシュロウガの姿。しかし覇道鋼造はその姿を知っている。無限の心臓ことマナウス神像。

 

 異界への門を開くことの出来るアーティファクト。その姿こそ奇怪でありながらも翼を閉じた蝙蝠に似通っていた。今、目の前に迫る姿を変えたシュロウガの様に。

 

「これが真の姿、背徳の獣(マスターテリオン)が駆る法の王(リベルレギス)。新世界の開闢への手向けに、その奥義をもって葬ってやろう」

 

 その手に黄金の十字架――黄金の法剣を手に、シュロウガは――リベルレギスはデモンベインへとその刃を降り下ろす。

 

「我が絶望と渇望と羨望を、今一度知れ!!」

 

 超高密度魔力の集中によって紫電を纏う法剣を縦に降り下ろす。

 

 咄嗟に覇道鋼造は偃月刀、魔導書の精は障壁を、しかし魔王の一撃はそんな些細な抵抗すら諸共に切り裂く。

 

 だがその抵抗を突破する為に数瞬の時が生まれた。

 

「ヒラニプラ・システム、アクセス!!」

 

「第一近接昇華呪法・複式」

 

 二つの心臓が唸りを上げて魔力をその巨人の両手に勝利の剣を与える。

 

「マスター!!」

 

 降り下ろした刃を切り返し、横へ切り払う動作の最中、致命的なタイミングへの反撃にクロハは主に叫ぶ。

 

「ふ、ふははははは。いいぞ、それでこそだ」

 

 だがクロウは笑っている。魔王の笑みを携えて。誰から見ても死が見えるその瞬間でも笑っている。

 

「この間合い、確かにこれは致命的だ。自力でこれは切り抜けられまい。だが」

 

 だからどうした。だからどうしたというのか。致命的だからなんだというのだ。

 

「諦めん、諦めんぞ見るが良い。俺の辞書にそんな言葉は存在せん!!」

 

 印を切り、天を仰ぎ、クロウは高らかに叫ぶ。

 

「神鳴る裁きよ、降れい雷ィ!!」

 

 リベルレギスの機体から光が空に向かって放たれる。しかしそれを気づける余裕は覇道鋼造にはなかった。

 

「ロッズ・フロォム…ゴォォォッド!!!」

 

 天空を切り裂いて、今まさにリベルレギスの装甲に無限熱量を叩き込まんとしたデモンベインの左腕を、バラバラに引き裂いて地上にクレーターを作った鉄の塊。それは柱、鉄の芯、天罰の様に降って来た神の杖。

 

 刹那の攻防にそんな横槍を入れられては、空かさずの二撃目も揺らいでしまう。

 

 迫る右手の無限熱量へ法剣を叩き込み、盾にすると、リベルレギスは右手をデモンベインに向ける。

 

「ン・カイの闇よ!」

 

 リベルレギスから放たれたマイクロブラックホール弾が次々とデモンベインの機体を抉り、背中のシャンタクが機体を支えられない程に削り取られ、デモンベインは墜ちていく。

 

「ABRAHADABRA――!!」

 

 そして雷の洗礼を無防備に浴びたデモンベインはそのまま地表に激突した。

 

 神の杖によって一区画がクレーターとなった大地に墜ちたデモンベイン。機体のあちこちから火花を散らし、割れた装甲からは水銀の血が流れ落ちる。

 

 デモンベインを追って地表に降りたリベルレギスは、砕けた装甲を晒すデモンベインの胸に手を突っ込み、無限の心臓を内包する銀鍵守護神機関を引きずり出して背中を向ける。

 

「これは返してもらうぞ。我等が悲願C計画の為に」

 

 そう言い残し、リベルレギスはゆっくりとアーカムシティの夜の闇に消えていった。

 

 大破したデモンベインのコックピットで覇道鋼造は数十年前にも見た去り際の姿をただ同じ様に無力に見続けるだけだった。

 

 

 

 

to be continued…


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