やっぱり球磨川禊の青春ラブコメはちがっている。   作:灯篭

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どんどん更新頻度が落ちていって申し訳ありません!!


多忙な時期も終わったのでこれからはもっと頻度を上げていきたい(願望)!



では修学旅行編、始まります。


恐ろしいことに海老名姫菜は無敵である。

 

 

 11月。

 残暑も去り、半袖では肌寒く感じる季節となった。

 

 

 鬼のように忙しかった文化祭から、間を置かずに開催された体育祭もつつがなく終わり、さあ一休みだと思ったら修学旅行が迫っているという、高校生活イベントラッシュ。

 

 

 いつものように依頼も無く、のんびりお茶を飲んでいるだけの我が奉仕部でもその話題は当たり前のように出てくる。

 当然、結衣ちゃんから。

 

 

「修学旅行、どこ行くとかもう決めた?」

 

 

 雪乃ちゃんが淹れてくれた紅茶の入ったマグカップを両手に持ちながら、結衣ちゃんは口を開く。

 

 

「私たちはこれから決めるところよ」

 

 

 雪乃ちゃんはティーポットの始末を終えた後、自分のカップに口をつけてから答えた。

 

 

「『僕は同じグループの人次第かなー。特に行きたいとこあるわけじゃないし』」

 

 

 総武高校の修学旅行の行先は3泊4日まるまる京都である。

 

 

 京都にはお父さんとお母さんが住んでいる関係で度々行っているから、行きたいところと言われても特に思い当らないのだ。

 まあ金閣寺とか銀閣寺にちらっと行ったことある程度だけど。

 

 

「ていうか、うちの学校も沖縄とかがよかったなー」

 

 

「今の時期に行くのはどうなのかしらね……。あまりお勧めしないけど」

 

 

 背もたれに体重をかけてだらんとする結衣ちゃんに、雪乃ちゃんは窓の外に視線を向けながら言う。

 

 

 たしかに11月に沖縄に行くのはどうなんだろう。

 こちらより暖かいだろうとはいえ、さすがに海水浴やマリンスポーツに興じることができるほどとは思えない。

 

 

 もしかしたら意外とできるのかもしれないけど。

 

 

「でも京都行ってもどうしようもなくない? あの辺にあるのって寺とか神社だし……。それなら近所にもあるし……。稲毛の浅間神社とかいつでも行けるし……」

 

 

 何とも結衣ちゃんらしい発言だ。

 しかし、京都にある神社仏閣を近所の神社と並べるとは。

 

 

 さしもの僕も苦笑いを浮かべることしかできないなあ。

 

 

「あなたは歴史の重みや文化的価値というのを全く考慮しないのね……」

 

 

「だってお寺行ったって何すればいいのか全然わかんないし……」

 

 

 ため息交じりの雪乃ちゃんの言葉にぶーっとむくれる結衣ちゃん。

 

 

 まあ、歴史的建造物など興味のない人からしたらどうでもいいものの最たる例にあたるだろう。

 

 

 歴史の重みと言ったって、所詮人間が殺し合いを何度も行ったというだけの話なのだし。

 

 

 歴史から学べることは、「人は歴史から何も学ばない」ということだけだ。

 

 

 そこからしばらくは雪乃ちゃんの『修学旅行とはかくあるべき講座』が開催され、僕と結衣ちゃんは受講を余儀なくされた。

 

 

 話を聞いていないと凍てつく視線を浴びせてくるのが怖いのなんの。

 

 

「あ、そうだ。ゆきのんさ、3日目、一緒に回ろうよ」

 

 

 雪乃ちゃんの講座が閉講し、結衣ちゃんのオーバーヒート寸前の頭を冷ますために会話を止めて、思い思いに過ごしていると、クールダウンが終わったのか、不意に結衣ちゃんが口を開いた。

 

 

「一緒に?」

 

 

「そう、一緒に!」

 

 

 雪乃ちゃんのまるで予想していなかったという風な疑問に、結衣ちゃんは弾けるような笑顔で答える。

 

 

「けれど……」

 

 

「『雪乃ちゃんはクラス違うよ?』」

 

 

 僕が雪乃ちゃんの言葉を先取りして言うと、結衣ちゃんはそれがどうしたと言わんばかりに頷く

 

 

「うん、でも3日目は自由行動だからさ。連絡とって京都で遊ぼう!」

 

 

「そこまで自由にしていいのかしら……」

 

 

「え? いいんじゃないの? よくわかんないけど」

 

 

 よくわからないのになぜ結論を出してしまうのか。

 

 

 まあ、その気楽さは結衣ちゃんの美点だし、それに僕は癒されてるところがあるけど。

 

 

「もちろん予定が合えばいいんだけどさ。どうかな?」

 

 

「……私は、構わないけど」

 

 

「よしっ! 決まり!」

 

 

 そっと顔をそむける雪乃ちゃんと、やったーと雪乃ちゃんの傍による結衣ちゃん。

 いやぁ、眼福だね。

 

 

「クマーもさ! 一緒にどっか行こうね!」

 

 

「『ん、あー……。悪いんだけど……』」

 

 

 コンコン。

 

 

 僕の言葉を遮るように扉が叩かれた。

 

 

「どうぞ」

 

 

 僕たち3人は会話を中断し、扉を見据える。

 やや遠慮がちに開かれた扉からは、意外な人物が顔をのぞかせた。

 

 

「ど、どもー……。こんちわーっす……」

 

 

 現れたのは葉山君グループの一員、戸部君だった。

 

 

 いつも彼のそばにいる、というより彼がそばにいる葉山君はおらず、ほとんど見たことない戸部君のソロシーンだ。

 

 

 物珍しそうに部室内をきょろきょろ見回す戸部君を、僕は椅子に座るよう促す。

 

 

 僕たち3人の前にちょこんと座る戸部君。

 いつものお気楽さや騒がしさは無く、縮こまっているようにも見えた。

 

 

 雪乃ちゃんが来客用のカップにお茶を注ぎ、戸部君の前に置く。

 それからしばらく、無言の時間が続いた。

 

 

 まあ、こんな気まずい時間を続けていてもアレなので、僕から話を切り出すことにした。

 

 

「『んー、戸部君? 今日は一体全体どういったご用件なのかな? さすがの学園トップクラスの天才雪乃ちゃんでも黙ってちゃわからないよ?』」

 

 

 隣で雪乃ちゃんが冷たい視線を送っているのを感じたが、戸部君の依頼を聞き出すことを優先したらしく、何も言ってはこなかった。

 

 

「あー、うん。わりぃ……。あ、あのさ……」

 

 

 ついに明かされる戸部君の依頼!

 

 

 ……ま、九分九厘見当はついてるけど。

 

 

 男子高校生が他人に相談するのが憚られて、なおかつそんなに顔を真っ赤にするようなことなど一つしかないだろう。

 

 

「……あのー……」

 

 

 まだ言わないのかよ。

 某7つの玉を集める少年漫画かよ。

 

 

 何、戸部君の中で回想シーンとか始まっちゃってるの?

 

 

「あー、実は俺さ……。海老名さんのこと、結構いいと思ってて? で、まあちょっと修旅で決めたい的なことなんだけど」

 

 

 …………。

 恥ずかしいからぼかしたい気持ちはわからないでもないけど、いくらなんでもぼかし過ぎでしょ。

 濃霧なの?

 

 

「マジ!?」

 

 

 結衣ちゃんが目を輝かせて食いつく。

 どうやら結衣ちゃんは濃霧に引っかからなかったようだ。

 

 

 そういえば夏休みに千葉村で戸部君から海老名ちゃんのこと気になってるって言ってたような気がする。

 

 

「『つまり、修学旅行で一気に海老名ちゃんと距離縮めてお付き合いしたいわけだね』」

 

 

 僕の要約に戸部君はビンゴとでも言いだしそうな様子でビシッと僕に指さしてきた。

 

 

「そうそうそんな感じ! さすがに振られるとかキツイわけ。球磨川くん話早くて助かるわー」

 

 

 いや、戸部君の工夫で減らせた手間なんだけどね。

 

 

 そういえばこういうお悩み相談みたいなのを半年近くやってきたわりに、恋愛相談って初めてだな。

 

 

 まあ、奉仕部みたいな隠れた名店よりも隠れてる部活を知ってる人の方が少ないか。

 

 

 女子2人の反応やいかにと横を見てみると、雪乃ちゃんはやや困惑気味に手を口に当て思案顔をしていた。

 

 

 そしてその隣の結衣ちゃんはと言うと、先ほどからずっと目を輝かせてながら前のめりの姿勢で戸部君のコイバナにかじりついている。

 

 

「いいじゃん、なんかそういうのすっごくいいじゃん! 応援するよー!」

 

 

 結衣ちゃん、大興奮である。

 

 

「付き合うって、具体的に何をすればいいのかしら……」

 

 

 対する雪乃ちゃん、解決への糸口を模索中である。

 

 

 反応は違えど、二人とも既に依頼を受けるつもりのようだ。

 

 

「『そもそも何で奉仕部なんかに恋愛相談しようと思ったのさ。自慢じゃないけど、僕なんか恋人いない歴=年齢だぜ?』」

 

 

 人吉先生、めだかちゃん、安心院さんと片思いをしては離れ離れになってる気がする。

 

 

「えっ、球磨川君彼女いたことねーの? なんか意外だわー。ぶっちゃけモテるっしょ?」

 

 

「『いやいや、良くて友達止まりだね。僕のこと好きなんて相当な物好きだよ』」

 

 

 自分で言ってて悲しくなってきた。

 

 

「あー、で。何でここに来たかだっけ? 隼人君が前にちらっと言ってたの思い出したんよ。結衣もいるみたいだし、ちょっと助けてもらおうかなって。ほんとは隼人君にもついてきてほしかったんだけど、断られちゃってさー」

 

 

 なるほど。

 林間学校でも一緒になったことあるし、葉山君から聞いたとなると、戸部君の中で奉仕部の信用度は高くなってそうだ。

 

 

「『でも難しくない? 僕はさっきも言った通りだし、雪乃ちゃんも結衣ちゃんもそんなに恋愛経験豊富ってわけじゃないでしょ?』」

 

 

「そっ、そんなことないしっ!」

 

 

 ガタッと結衣ちゃんが立ちあがる。

 

 

「『えっ、そうなの?』」

 

 

 僕が質問すると結衣ちゃんは目を泳がせながら黙り込み、やがて「少ないです……」と言いながら肩を落とした。

 

 

「残念ながら、私たちではお役に立てなさそうね」

 

 

 思案を続けていた雪乃ちゃんも手に負えないと判断したようだ。

 まあ、葉山君あたりに相談するのが妥当なんじゃないかな。

 

 

 という部長の決定に不服な人が1人。

 

 

「えー、いいじゃん。手伝ってあげようよー」

 

 

 恋愛経験貧弱ということが判明してしまった結衣ちゃんである。

 

 

 結衣ちゃんは雪乃ちゃんのブレザーの袖をぐいぐい引っ張っておねだりをする。

 対応に困った雪乃ちゃんが僕に視線を向けると、それにつられて結衣ちゃんの視線も僕に向いた。

 

 

 いや、そんな決定権ゆだねられても。

 

 

 二人の視線が集まる意味がわかったのか、戸部君は僕に一歩近づき顔の前で手を合わせて頭を下げた。

 

 

「球磨川くん……いや、球磨川さんオナシャス!」

 

 

 単語の意味はよくわからないけど懇願されてることはなんとなく伝わってきた。

 最近の若者言葉って難しいなあ。僕も若者のはずなのに。

 

 

「ゆきのん、とべっちも困ってるみたいだし」

 

 

「……まあ、そこまで言うなら、少し考えてみましょうか」

 

 

 僕が対応に困っていると、雪乃ちゃんは結衣ちゃんの目をうるうるさせながらの説得に陥落。

 

 

 たぶん雪乃ちゃんも妹とかいたら甘やかしてただろうな。

 雪ノ下姉妹はやはり似たもの姉妹だなあ。

 

 

「やりぃ、マジサンキュー。結衣も雪ノ下さんもマジサンキューだわー」

 

 

 言動は軽いものの、戸部君も無事協力をとりつけることができて安心したようだ。

 

 

「『で? 具体的に僕たちは何をすればいいの?』」

 

 

「や、だからさー。俺が告るわけじゃん? そのサポート的なこと?」

 

 

 サポートねぇ……。

 

 

「とりあえず今日のところは解散にしましょう。修学旅行まではまだ時間があるのだし、明日の放課後にまた来てちょうだい」

 

 

「そういやとべっち今日普通にサッカー部あるんでしょ? 行かなくていいの?」

 

 

 結衣ちゃんの提案に戸部君は軽い調子を崩さずに答える。

 

 

「や、今日はちょっと遅れるって隼人君にも言っといたし、だいじょーぶっしょ。あ、でもそろそろ行かねーとやべーかも」

 

 

 戸部君はそのまま立ち上がり、残っていたお茶を一気に飲み、立ち上がる。

 

 

「んじゃ、そういうわけで、よろしく頼むわー!」

 

 

 と、元気よく言い残し、足早に奉仕部を去っていった。

 

 

「……どうしようかしら」

 

 

 雪乃ちゃんの珍しい弱音が奉仕部にぽつんと残った。

 

 

 

____________________________________

 

 

 

 

「では、とりあえず現状の確認からしていきましょうか。情報を集めてそこから打開策を練りましょう」

 

 

 翌日の放課後。

 終業と共にこの奉仕部に集まった4人で戸部君の告白大作戦の会議が開かれた。

 

 

「まずは、戸部君自身の情報からかしら」

 

 

「『そうだね。安心院さんも言ってたよ。『敵を知り、己を知れば百戦危うからずなんて言って勝った気になれるとは、君も大変だね』って』」

 

 

「安心院さんって誰だし! かなりバカにしてきてるじゃん!」

 

 

 そりゃ安心院さんだもん。

 情報なんて集めなくても1京のスキルでドーンだからね。

 

 

「……では、自己紹介を」

 

 

 僕の発言を軽くスルーして、雪乃ちゃんは戸部君に発言を促す。

 

 

「うっす。2年F組戸部翔。サッカー部所属っす」

 

 

「『今日はサッカー部いいの?』」

 

 

「全然オッケー。昨日は監督が来てたから出なきゃだったけど、もう先輩も引退してるし。今部長隼人君だから余裕っしょー」

 

 

 うん、とりあえずサッカー部所属ってのは肩書だけだということがわかったね。

 

 

「まずは戸部君のアピールポイントを探してみましょう。それをより効果的に伝えることができれば、海老名さんも気に掛けると思うけど」

 

 

 レッツシンキングターイム。

 

 

 とは言っても僕と雪乃ちゃんは戸部君のことなんてほぼ知らないし、結衣ちゃんと戸部君に任せるしかない。

 

 

 数十秒の沈黙の後、戸部君が「あ」と声を出し、挙手。

 はい、戸部君どーぞ。

 

 

「……隼人君と友達」

 

 

「早速人頼みだし……」

 

 

「『でもそれって使えるかもね! 主に海老名ちゃんの妄想のオカズ的な意味でだけど』」

 

 

 まあ、ここでポンポン自画自賛できるような人は他人に恋愛相談なんかしないだろう。

 となると、残りの戦力に頼らざるを得ない。

 

 

「由比ヶ浜さんは何か思い当るかしら?」

 

 

 突如名指しされてビクッとなる結衣ちゃん。

 まあ、答えられないと戸部君が可哀想なことになるからね。

 責任重大だね。

 

 

「明るいところ……とか?」

 

 

「『おいおい、明るいなんて男子の50%が持ってる特性だよ? 僕だって明るい方なのにいまだにモテてないのが武器にならない証拠さ』」

 

 

 まあ、いつも一緒にいるからこそ、良さや長所は逆に見えにくいのかもしれない。

 となると、ここは客観的意見に定評のある我らが部長に意見を求めよう。

 

 

「『雪乃ちゃんは何か思いついた?』」

 

 

「そうね……」

 

 

 雪乃ちゃんはふむと顎に手をやり、考え込む。

 

 

「うるさい……いえ、騒々しい……? 騒がし……。賑やかなところ、かしらね」

 

 

「『あ、うん。ありがとう』」

 

 

 ちょっと客観的事実過ぎた。

 悪口にフィルターがかかっていく様を見せつけられたよ。

 

 

「あなたも考えたら?」

 

 

 僕の対応が雑だったのが気に障ったらしく、今度はこちらに水を向ける。

 

 

「『ふむふむ。じゃあちょっと待って。考えるから』」

 

 

 そう断って、僕は自分の中にある戸部君についての情報を整理する。

 

 

 というか僕ほんと戸部君のこととか何も知らないんだけど。

 下の名前もさっき初めて知ったし、サッカー部だってことも初めて知った。

 

 

 まあそういうパーソナルな情報じゃなくて、僕が彼に抱いた印象を整理してみようかな。

 

 

 僕にとって、彼はある意味で『珍しい存在』と言えるかもしれない。

 

 

 それは彼が普通だからだ。

 

 

 才能の区分で言うところの『普通(ノーマル)』ではない。

 ただ純粋に『どこにでもいそうなキャラ』と言う意味での普通。

 

 

 僕の周りにはそんなキャラが極めて少ない。

 

 

 今まで僕が出会ってきたどんな人も、その人を語る上では外せない過去があった。

 めだかちゃんや安心院さんはもちろん、雪乃ちゃんや結衣ちゃんにまで。

 

 

 そのようなものをまるで持たない戸部君は、ある種貴重だ。

 

 

 ……ダメだな。

 僕にとっての戸部君の総評はこんな感じだけど、肝心の海老名ちゃんに向けたアピールポイントが一向に思い当らない。

 

 

「『……よし! ここで僕が持ってきた恋愛戦術を披露するとしよう!』」

 

 

「……思いつかなかったのね」

 

 

 隣から聞こえてきた小さな声は無視するよ!

 戸部君に聞こえないように配慮してたっぽいしね!

 

 

 当の戸部君も「おーっ」と感心してくれてるようだから誤魔化せてるはず!

 

 

「『それじゃあ前置きとして結衣ちゃん。今まで疑問に思ったことはないかい?』」

 

 

「ふぇ? 何に?」

 

 

 唐突に話を振られた結衣ちゃんは首をかしげて立ち上がった僕を見上げる。

 

 

「『もちろん、この世のカップルの多さに、だよ。自分が好きな人は実は自分のことが好き、なんて都合のいい話が現実にそうあると思う? 思わないよね? ならカップルの誕生率は低いはずなんだ。けれど実際はどうだ! 花火大会では男女二人組の多いこと! これはなぜなんだろうね?』」

 

 

「た、確かに……!?」

 

 

 なんか大仰に喋り過ぎたせいか結衣ちゃんの反応も世紀の大発見を期待してるようなものになっていた。

 

 

 いや、そんなんじゃないんだけど。

 

 

「『雪乃ちゃんの視線も冷たいし、そろそろ本題に入ろうか。僕が提案する作戦はこう。とりあえず告白しろ!!』」

 

 

 僕が叫ぶと、あたりには耳が痛いほどの沈黙が残る。

 沈黙の中、最初に口を開いたのは戸部君だった。

 

 

「やー、あのー……。当たって砕けろ系の作戦はアレっつーか……。失恋とかマジ勘弁なんで……」

 

 

「『わかってるわかってる。何もここで勝負を決めろってわけじゃないさ。大事なのはとりあえず相手に好きって伝えることだよ。それが後々の布石になる』」

 

 

「どゆこと?」

 

 

 結衣ちゃんと戸部君は疑問符が顔に浮かんでいたが、雪乃ちゃんはなんとなくわかったらしい。

 

 

 これでわかるのになんでコミュ力壊滅的なの?

 

 

「『そこでさっきの疑問の答え。人って自分が向けられた感情を相手にも向けることが多いんだ。簡単に言うと、自分のことが好きな人が好きってことかな。だから告白されるまでは大して好きなわけではなかったけど、告白されたら好きになって付き合うってケースが多いんだよ』」

 

 

 おー、と納得顔になる二人。

 結衣ちゃんと戸部君って似てるなぁ……。

 

 

 二人ともなんか犬っぽいよね。

 

 

「つまり相手に好いていることを認識してもらってからアプローチするという案ね。球磨川くんにしてはよく考えられてるのではないかしら」

 

 

「『これぞ過負荷(マイナス)流恋愛術、恋愛は振られてからがスタートだよ!』」

 

 

 僕がビシッと決めると、どこからかくぐもった携帯のバイブレーションらしき音が聞こえてきた。

 

 

「あ、俺だ。あいよ。……え、や、マジごっめー! すぐ行くわ!」

 

 

 戸部君は慌てた様子で電話を切り、自分の荷物を引っ掴んで駆けだした。

 

 

「どしたの?」

 

 

 結衣ちゃんが声をかけた時には戸部君は既にドアの前にいた。

 

 

「これから部活! 先輩見に来るっつーから行かないとやばいんだわ! じゃ、また!」

 

 

 言うが早いか、戸部君は扉を開け放ち、猛スピードで走り去ってしまった。

 サッカー部所属というのは肩書だけではないらしい。

 

 

「本当に騒々しい……」

 

 

 残された奉仕部員は若干呆気にとられつつも、各々が普段していることに手を付け始めた。

 

 

 雪乃ちゃんはお茶を淹れ、結衣ちゃんは手元の雑誌を手に取り、僕は週刊少年ジャンプを鞄の中から取り出した。

 

 

 そのまま何が起こるでもなく過ごしていると、雑誌をぺらぺらとめくっていた結衣ちゃんの手が止まり、食い入るように雑誌を見つめていた。

 

 

 何事かと雑誌を覗きこむと、そこには今はやりのパワースポットなど恋愛運を上げるとされる場所の紹介がされていた。

 

 

「『うわっ、何この特集! うさんくさー!』」

 

 

「クマー黙ってて! ご利益とかあるかもじゃん!」

 

 

 覗き込んだ顔を結衣ちゃんにグイッと押しのけられる。

 

 

「京都は縁結びの御利益を掲げる神社仏閣が多くあるし、そういうツアーもあるくらいだものね。けれど、神頼みと言うのも随分な手段ね……」

 

 

「『神様に頼んだくらいで願いが叶うならお百度参りだって辞さない覚悟なのに。現実は世知辛いね』」

 

 

 合法的に女湯を覗くための法の抜け道探しを諦めたわけじゃないのだ。

 

 

「……それだ!」

 

 

「『……え、どれ?』」

 

 

 ま、まさか結衣ちゃんは僕の女湯覗きに協力してくれると言うのか……。

 確かに女性側に協力者がいた方が圧倒的に有利! いやむしろ、これを欠いては覗きをパーフェクトに遂行することはほぼ不可能と言っても過言ではない!

 

 

 結衣ちゃん、天才なのか……?

 

 

「修学旅行でとべっちと姫菜が一緒になれるようにあたしたちがサポートするの! 姫菜、京都好きって言ってたし、一緒に散策しながら豆チとか言えればいい感じになるんじゃない?」

 

 

 違った。

 そして協力を得られないとなると、先ほど出た結論により僕は覗きを成功させることができないということまで判明してしまった。

 

 

「そうなると、戸部君と海老名さんが一緒にいる状況をいかに彼女に気取られずに作り出すかが重要ね」

 

 

 結衣ちゃんの提案に雪乃ちゃんは課題を提示する。

 

 

 その間に注がれた紅茶を結衣ちゃんは一口飲んでから顔を上げた。

 

 

「1日目はクラスでの行動だから問題なしだね。で、グループの方はあたしと姫菜と優美子が同じになるのはほぼ決まり」

 

 

 まあそうだろうね。

 男女4人ずつでグループを作るので後1人そこに入ることになるだろうが、そまで影響があるとは思えないので気にしなくてもいい。

 

 

「で、男子の方はクマーがとべっちと同じグループになるといいよ。そんで同じ場所選べば二日目も一緒にいられるし」

 

 

「『あ、僕彩加ちゃんと一緒のグループになる予定なんだけど』」

 

 

 と手を振って答えてみるも痛恨のスルー。

 

 

 ちなみに修学旅行の日程は1日目クラス行動。2日目グループ行動。3日目自由行動。4日目帰宅となっている。

 なので僕たちは2日目と3日目で戸部君と海老名ちゃんが一緒になるように手を回さなければいけないのだ。

 

 

「戸部君たちはいつも4人でいるのでしょう? ならグループもその4人で決まってしまっているのではないかしら。そこに球磨川君を放り込んでもメリットは無いし、誰も幸せにならないと思うけれど」

 

 

 いや、最後いらなくない?

 

 

「けどあたしとクマーがコースを考えれば2日目一緒に行動することになるし、サポートするのも2人いた方がいいと思う」

 

 

 ゆ、結衣ちゃんが論理立てて話しているだと……。

 

 

 僕がそのありえない光景に目を見張っているうちに雪乃ちゃんがトントンと話を進めていく。

 

 

「なるほど。まあ、彼の友人もきちんと説明すれば納得してくれるでしょう。戸部君が彼らには秘密にしたいと言うのなら少し難しくはなるでしょうけど……」

 

 

「そっか。そこんところも含めて今度話してみるよ!」

 

 

 当事者の僕を抜きにしてどんどん話が進んでいく。

 

 

「『いや、だから僕は彩加ちゃんと……』」

 

 

「あ、じゃあ班分けはあの4人を2つに分けて、クマーとさいちゃんが同じグループかな?」

 

 

 かくして、僕のグループは僕の手の届かないところで決定したのだった。

 

 

 

____________________________________

 

 

 

 

 いよいよ修学旅行前日となった。

 

 

 グループ決めは結衣ちゃんの事前の根回しにより特に問題なく目論見通りの結果にすることができた。

 

 

 女子側では海老名ちゃんに連れられてきた沙希ちゃんが三浦ちゃんと相性最悪という別の問題が発生していたが、それは僕たちの計画には関係がないので気にしない。

 

 

 どうでもいいけど、雪乃ちゃんと沙希ちゃんと三浦ちゃんを同じ部屋に入れたら三すくみみたいになりそうで面白そうだな。

 

 

 おっと、思考が逸れた。

 

 

 現在、奉仕部室では最終打ち合わせが行われていた。

 具体的に言うと、グループで周るコースの検討、調整だ。

 

 

 本来こういうのはグループで決めるものなのだが、コース作りを女子側は結衣ちゃん、男子側は僕が行うことで、『同じコースになっちゃった! 偶然だね!』的な運命感を演出するのだと言う。

 正直最初から一緒に行っても何も変わらないと思うのだが。

 

 

「ばったり出会ったらなんか運命感じるじゃん!」

 

 

 という謎の押しに負け、こうなった。

 

 

 そもそも僕と結衣ちゃんでは奉仕部という事前にすり合わせる機会が明確なので速攻でバレると思う。

 

 

 まあ正直ここはどっちでもいいので結衣ちゃんの案に従い、行先を考えているのだ。

 

 

 あ、そうだ。

 まだあのこと言ってなかった。

 

 

「『結衣ちゃん、悪いんだけど僕2日目まるまる抜けるね』」

 

 

「えーっ! なんで!?」

 

 

 手にしていた雑誌を握りしめて、結衣ちゃんはガタッと立ち上がった。

 すごい剣幕だ。

 

 

「『いやね、もともと修学旅行中に親に顔を見せに行こうと思ってたんだよ。予定では3日目に行くつもりだったんだけど、さすがにその頃には戸部君も緊張とかしてくるだろうし、一緒にいる味方は多い方がいいでしょ? だから比較的抜けやすそうな2日目に抜けさせてもらおうと思って』」

 

 

 そう説明すると、結衣ちゃんはうーっと唸りながら椅子に座り直す。

 

 

「でもあたし1人でサポートとかできるかなあ……」

 

 

「『彩加ちゃんと葉山君にその辺も頼んだし、大丈夫だよ。何かあったら連絡してきてもいいし』」

 

 

「メールも電話も無視しないでよね!?」

 

 

「『しないしない』」

 

 

 連絡事項も伝えたところで本格的に行先選びを始める。

 

 

 結衣ちゃんが海老名ちゃんの希望行先などを聞いてきてるので、その辺りを参考にしながらルートを組み立てる。

 

 

「あ、ほらほらクマー。ここパワースポットだって」

 

 

「それはあなたの行きたいところでしょう……」

 

 

 3人がそれぞれ調べ物をしつつ、時折相談や雑談をする。

 そんな時間がしばらく続くと、不意にドアが叩かれる。

 

 

 控えめな音だったので聞き逃しそうではあったが、もう一度扉が叩かれた。

 

 

「どうぞ」

 

 

 部屋の主である雪乃ちゃんが入室を促す。

 

 

「失礼しまぅ」

 

 

 言葉尻を少し噛んでしまった挨拶と共に扉が開かれる。

 

 

 入ってきたのは肩までの黒髪に赤いフレームの眼鏡をかけた女子生徒。

 

 

 そう、今回の依頼のターゲット、海老名ちゃんだ。

 

 

「って姫菜じゃん」

 

 

「や、結衣。はろはろ~」

 

 

「やっはろー!」

 

 

 ……三浦ちゃんって普段これを相手にしてるのか。

 そこはかとなく同情してしまう。

 

 

「雪ノ下さんも球磨川君も。はろはろ~」

 

 

「『はろはろ~』」

 

 

 とりあえず乗っかる。

 雪乃ちゃんは軽く頭を下げるだけで対処した。

 

 

「お久しぶりね。どうぞ、適当にかけて」

 

 

 雪乃ちゃんの勧めに応じて、海老名ちゃんは手近な椅子に腰かけた。

 戸部君と同じように物珍し気に教室を見回している。

 

 

 そういえば、雪乃ちゃんは千葉村での合宿の時に女子部屋で一緒に過ごしたことがあるのか。

 多少なりとも話をしたことがあるのかもしれない。

 

 

「ふぅん、ここが奉仕部かぁ」

 

 

 そう呟くとすっと前を向き、ちょうど正面にいた雪乃ちゃんを見据える。

 

 

「ちょっと相談したいことがあってきたんだけど……」

 

 

 まあ、ここに来る用事はだいたいそんなとこだろうけど。

 少し意外だな。

 

 

 海老名ちゃんはなんとなく誰かに頼るようなことはしない印象を持っていた。

 捉えどころがなく、笑顔で誤魔化すような。

 

 

「あ、あのね……。実はとべっちのことなんだけど……」

 

 

「と、ととととととべっち!? な、なになに!?」

 

 

 結衣ちゃんが目に見えて動揺するが、無理もない。

 僕たちはここ数日、戸部君の海老名ちゃんへの想いを手助けするためにいろいろ画策していたのだ。

 

 

 僕も表には出さないが、内心では動揺を禁じ得ない。

 

 

「その、い、言いづらいんだけど……」

 

 

 海老名ちゃんは顔を赤らめながらスカートの端を指先で弄る。

 その仕草はちょっと男心をくすぐられる。

 

 

 しかし、相談とはあの明朗な海老名ちゃんを口ごもらすような内容なのか。

 

 

 もしかして戸部君大勝利?

 ちょっと螺子を補充してこなきゃ……。

 

 

「とべっちさ……」

 

 

「とべっちが!?」

 

 

 結衣ちゃんの先を急かすような反応に海老名ちゃんも覚悟を決めたようで、小さく息を吸うと、かっと目を見開き、思いのたけを僕たちにぶつけた。

 

 

「とべっち、最近隼人君や球磨川君と仲良くしすぎてるっぽくて、大岡君と大和君がフラストレーション! 私はもっと爛れた関係が見たいのに! これじゃトライアングルハートが台無しだよ!!」

 

 

 だよ!! だよ! よ! よ! よ、よ、ょ、ょ……。

 

 

 物の多くない静かな奉仕部室に海老名ちゃんの大音声がこだまする。

 

 

 息を荒くする海老名ちゃんを前に、奉仕部員は二の句をつげない。

 ただただ、言葉を失うばかりである。

 

 

 最初に再起動に成功したのは結衣ちゃんだった。

 やはり日ごろから海老名ちゃんと一緒にいるだけあって耐性がついているのかもしれない。

 

 

「えっと……、つまり、どういうこと?」

 

 

「最近とべっち、球磨川君とよく話してるじゃない? それにグループ分けも不自然だったし、意味ありげな視線とか送っちゃってぐ腐腐腐……」

 

 

 怖い! この子怖いよ!!

 

 

「あ、いけないいけない」

 

 

 我に返り、じゅるりと口元を拭う海老名ちゃん。

 三浦ちゃんがいないと妄想に歯止めが利かなくなるらしい。

 

 

 ……三浦ちゃんってもしかしたら相当な苦労人なのでは?

 

 

 なんとなく三浦ちゃんが不憫キャラみたいで可愛く思えてきた。

 

 

「なんで急に仲良くなったのかはわかんないけど、大岡君や大和君とちょっと距離が開いちゃったのかなって気になってさ」

 

 

 海老名ちゃんが気にかけるのもわからなくはない。

 

 

 すでに出来上がっている4人組をわざわざ解体して、そこに僕と彩加ちゃんが入るのはあまりにも不自然だ。

 いくら根回しをしてグループ分けをスムーズに進めたとしても、そこの違和感は拭えない。

 

 

 しかし、海老名ちゃんに何と説明したものか。

 真実を告げるわけにもいかない。かといってもっともらしい理由づけができるのなら最初からしていた。

 

 

 どうしようかと悩んでいると、海老名ちゃんは皆まで言うなと言わんばかりに首を振る。

 

 

「球磨川君。あのね、誘うなら皆誘ってあげてほしい。そして受け止めてあげてほしい。端的に言うと、誘い受けてほしいの」

 

 

「『嫌だ……。無理だ……』」

 

 

 別世界線の誰かと思わずシンクロしてしまうほどの圧倒的絶望感。

 安心院さんが立ちはだかった時でもこれほど絶望しなかっただろう。

 

 

「私……、球磨川君には期待しているの……。鬼畜攻め、誘い受け、左側に置いても右側に置いても美味しい球磨川君には無限の可能性が秘められてると思うんだ!!」

 

 

 そんな期待をされても困る。

 

 

 この小説僕の無双っぷりを楽しむものだと思ってたんだけど!!

 海老名ちゃん相手だと震えるしかないんだけど!!

 

 

 頭を抱えている僕の横では結衣ちゃんが諦観めいた表情でため息を吐いていた。

 結衣ちゃんのそんな表情見たくなかった。

 

 

 ただ1人、我らが部長雪乃ちゃんは堪えていた。

 

 

「……つまり、どういうことかしら。説明してもらえるとありがたいのだけど……」

 

 

 疲れ切った表情で雪乃ちゃんは理解しようと頑張っていた。

 

 

 僕はもうだめなので是非とも僕の分まで頑張ってほしい。

 

 

「うーん、なんかね、今までいたグループがちょっと変わってきちゃってる感じがして……」

 

 

 先ほどまでとは一転、海老名ちゃんのその声色は、憂いめいたものに変わっていた。

 それを解きほぐそうと、結衣ちゃんがフォローに回った。

 

 

「でも、ほら。大岡君も大和君も、男子同士でもこう何か複雑なことがあるんじゃないかなー。人間関係とか」

 

 

「男子同士の複雑な関係……、やだ、結衣はしたない……」

 

 

「あたし変なこと言った!?」

 

 

「『いや、うん……。結衣ちゃんは大丈夫だよ……』」

 

 

 大丈夫でないのは海老名ちゃんだ。

 しかし、ほとほと恐ろしいキャラクターだ……。

 海老名ちゃんのペースから一向に抜け出せない!

 

 

「『まあでも、別に気にするほどじゃないんじゃない? 喧嘩したってわけでもなし。ちょっと距離が開いちゃうこととかもあるでしょ』」

 

 

「それはそうかもね。でも違ったままでいるのは嫌かな。今まで通り仲良くやりたいもん」

 

 

 海老名ちゃんのその言葉には、先ほどまでの腐臭はなく、至って自然な笑顔だった。

 

 

 海老名ちゃんは今のクラス、ひいては人間関係を気に入ってるらしい。

 BL的なことを除いても、今のポジションが心地よいのだろう。

 

 

 だから変化を忌避する。

 今が最良の状態ならば、ここからの変化は劣化でしかないから。

 

 

 これは戸部君、難しいかもしれないな。

 

 

「あ、でも球磨川君が男子グループに入って仲良くしてくれるのは私的に全然オッケーなんだよ。目の保養になるし」

 

 

「『僕と彩加ちゃんくらいで勘弁してください』」

 

 

 僕がそう懇願すると、あはーっと笑って海老名ちゃんは立ち上がる。

 

 

「じゃそういうことで、修学旅行でもおいしいの、期待してるから!」

 

 

 溢れるよだれを抑えつつ、僕にウィンクをする。

 

 

 僕は期待を裏切る、そのはずだ……。

 自分の性質を信じろ……。

 

 

「球磨川君、よろしくね!」

 

 

 去り際、僕に一声かけて、海老名ちゃんは奉仕部を後にする。

 

 

 なんかどっと疲れた……。

 

 

「なんだったのかしら……」

 

 

 それは奉仕部全員が思ってることだけど。

 

 

 とにもかくにも、明日から3泊4日の修学旅行。

 別段楽しみというわけでもないが、まあ高校生活最大のイベントの1つだしね。

 

 

 あ、そうだ。

 せっかくだからあの人にも連絡してみようかな。

 

 

 

____________________________________

 

 

 

 

 Prrrrrrr……prrrrrrr……。

 

 

 滅多にならないデフォルトの着信音が響く。

 

 

 画面を確認すると、これまた滅多に見ない名前だ。

 まあ、無視する道理はねえな。

 

 

「おう、俺だ。珍しいな、俺に連絡寄越すなんざ。『修学旅行でそっちに行くからついでにご挨拶しようかと』か。ふん。それならお前の親父に連絡するのが普通ってもんだと思うがね。まあいい。年長者らしく美味い団子でも奢ってやるよ。待ち合わせ? いいだろ、そんなもん。会えなかったのならそういう運命ってことだ。じゃあな。縁が合ったら会おうぜ」

 

 

 男は電話を切った。

 

 

 




最後に出てきた人物がわかった方。
奴が出てきます。申し訳ありません!
あの人達を出した直後くらいに思いつきました。


最後に出てきた人物がわからなかった方。
まあ変なオリキャラが出てくるなー程度に思っておいてください。
次話のみにしか出さない予定ではありますので。


あ、あとTwitter始めてみました。
目次ページの作品説明にurl置いといたんで良かったら構ってください。


ではでは。

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