感想欄の返信で口走った『球磨川先輩ヤンデレ化無理心中END』が気になってしまい、書いちゃいました。
てへぺろ。
どうしてこうなったのかは私にもわからない。
「『雪乃ちゃん......』」
目の前には私が所属している奉仕部の部員である球磨川君がいる。
その目にはいつもの底の見えない穴を覗いているかのような空虚さは無く、あるのは目の前の対象への異常な執着だけだ。
どちらにしても不気味であることには変わりない。
「『君が好きなんだ。君を愛してるんだ。君の全てが欲しいんだ。できることなら君の人生を全て見て、知りたい。でも僕が君のことを知ったのは今年の四月からだった。なんて不幸なんだ。
熱に浮かされたみたいに顔は赤く、絵にでも話しかけているのではないかというくらいこちらの返答を待たない。
ただ一方的に球磨川君が私に対して喋り続けているだけだ。
本当はすぐにでもここから逃げ去ってしまいたい。
ここにいなくてもいいなら実家に帰ることだって厭わない。
だが、私の両腕を壁に縫い付けているこの螺子がある限り、それは不可能だろう。
痛みは既に感じない。
痛覚が麻痺しているのか、神経が馬鹿になってしまったのか、あるいは球磨川君が何かしたのか。
考えても私にはわかるはずがなかった。
ただただ身体がだるい。
「球磨川君......」
身体のだるさを堪えながら、私は口を開いた。
受けているダメージが深刻なのか、出そうと思っていた声量よりもかなり小さい声になってしまった。
「『ん? なんだい雪乃ちゃん』」
どうやら彼にはちゃんと聞こえたようだ。
「なんで......こんなことを......」
「『そんなの決まってるじゃないか。君のことが大好きだからだよ。でも君は僕のことなんか好きじゃないだろうから、逃げちゃうかもしれない。そんなの耐えられないんだ。君とずっと一緒にいたい。君を見るのは僕だけでいい。君が見るのは僕だけでいい。結衣ちゃんにも平塚先生にも彩加ちゃんにも葉山君にも陽乃さんにも、君と触れ合ってほしくないんだ』」
狂ってる。
そう表現するしかなかった。
普段の球磨川君も私には到底理解できないような言動を数々していたが、これはその比ではない。
球磨川君は私のことを好きだと言った。
恋愛というものをした事がない私には、彼の言動が正常なのか異常なのかわからない。
行動に移すかは別として、彼の言ったことは男性ならば誰しもが恋する異性に持つ感情なのか、はたまた球磨川君が異常なのか。
私にはわからない。
「『っと、話を戻すね。僕は君の全てを知りたい。でも君の人生が始まった時のことを僕は知らない。だからせめて、君の人生が終わるところを僕一人だけの記憶にしたいんだ。君の家族ですら知らない君の人生の幕引き。僕はそれを宝物にこれからを生きていくよ』」
ああ、私はここで死んでしまうのか。
不思議と怖くはなかった。
あまりの出来事に感情がついていってないのか、ただ単に諦めているだけなのかはわからないが、どちらにしろここから助かる方法なんて無いに等しい。
こんな時、物語ならヒーローが颯爽と現れて、私を助け出してくれるのだろうが、生憎これは現実だ。
「ふっ......」
思わず笑みがこぼれる。
ヒーローだなんて、らしくないにも程がある。
「球磨川君」
「『何?』」
「私はあなたが嫌いよ」
「『知ってるよ』」
「あなたを恨みながら死んでいくわ」
「『嬉しいな』」
「あなたに呪いを残していくわよ」
「『光栄だな』」
「さようなら、球磨川君。あなたは嫌いだったけど、あなたとの時間は嫌いじゃなかったわよ」
「『......』」
私の胸に、螺子が突き刺さった。
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「『......何これ?』」
「小説だよ? 暇だから書いてみたんだ。どうだった?」
「『どうだったも何も、ただただ気分が悪いよ。なにが悲しくて自分と知り合いの恋愛小説読まされなきゃいけないのさ。しかも僕がヤンデレって、誰得だよ』」
「わっはっは。これはただの暇つぶしだって言っただろう? 君のその顔を見れただけで僕は満足だよ」
「『......もう帰っていい?』」
誰だお前って感じでしたね。
後悔はしてるけど反省はしません。
本編の変なところで変な番外入れてすいませんでした。
てへぺろ。