◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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ゆらり×笑み

 結論から言って、この『スシ』を作るという二次試験は、俺以外不合格となった。スシの作り方を俺から学んだキルア達もそうだ。というか、メンチが俺のスシを食べて味を占めたのか他のスシを俺のと比べちゃったのだ。つまり、合格するには俺以上のスシを作らねばならないという事になってしまった訳で、なんやかんやで全員落ちた訳。

 で、現在なんだが、

 

「馬鹿かおぬしは、合格者一名だけとか話にならんわ」

「うぅ……」

 

 現ハンター教会の会長、ネテロさんがごっつい飛行機でやってきて、メンチを叱り付けていた。どうやら、二次試験の概要というか顛末を聞いたようなのだが、メンチのあまりにも贔屓されてる試験は取り消しになったらしい。

 

「すまんかったの、おぬしら。これより、不合格になった者については復活の試験を行なう。何簡単じゃ、試験内容は―――『ゆで卵』じゃ」

 

 ネテロはそう言った。ゆで卵といっても、使う卵が特殊なようで、なんと崖下にある卵を取ってこいというものだった。正直、合格しといてよかったなぁ、面倒だし。

 で、結果的に言えば崖を跳び下りる程度の試験で怯えていてはハンターは務まらない。小心者は此処で落ちて行った。

 

 148名中、42名が合格したのだった。勿論ゴンやキルア達も合格する事が出来た。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 さて、二次試験も終わり、三次試験に移るという事なのだが、またも場所を変えるようだ。ネテロ会長の乗ってきたごっつい飛行機に乗って、長時間休憩含む移動となった。

 俺はゴンやキルアに連れられて飛行機の中を探検していた。正直、疲れてはいないからいいのだが、寝ていたいなぁ……。

 

「なぁオウカ、あの走ってる時のあの速度は一体何だったんだ? 正直、人間に出せる速度じゃないと思うんだけど」

 

 すると、キルアがこちらを振り返って聞いてきた。そう言われても俺の出し得る最高速度なだけなのだが……まぁ神様補正のついた肉体だから音速程度の空気抵抗ならなんとか耐えられる強度を持ってるんだよね。

 

「ま、特殊な走法とでも思っておいてくれ」

 

 ただのクラウチングスタートだけどね。地面を蹴って、進んで、また蹴って、進む。それだけの単純な走り方だ。それが音速を超えただけ。それを説明するのは、少しばかり難しい。

 

「ふーん……そっか」

「とはいえ、飛行機に乗るのは何十年ぶりかな……」

 

 転生する前……つまりは死ぬ前だが、飛行機に乗った事は無い。元々、旅行をする様な性質でも無かったし、一人暮らしだったから外に出ても学校か近場にある遊び場位のモノだ。故に、こういう旅行的なのは言ってみれば初めてという訳だ。

 

「――――?」

 

 そんな感じで話しながら、外を眺めていると、ふと気配を感じた。感じて、呆れたような笑みが出た。生前ならこんな事は出来なかったのに、今じゃこんな風に気配察知なんて人間離れした事が出来る。なんというか、本当に異世界なんだな。

 という訳で、気配の感じた方を見てみると、そこには老人でありながら何処か威圧感のある人物、ネテロ会長がいた。というか、何故か知らないけどゴン達は俺とは反対方向を見てるんだけどどうしたんだろうか?

 

「素早いね、じいさん」

「今のが? ちょっと歩いただけじゃよ」

 

 冷や汗を掻くキルアとネテロ会長がそう会話する。ああ、なるほどそういう事か。俺は主人公達よりも幾分か人間離れしちゃってるらしい。

 

「まぁなんじゃ、暇なんで遊び相手を探しておった所じゃ。どうかな? ハンター試験は」

「うん! 楽しいよ! 思ってたのと違ってペーパーテストとかないし!」

「俺は拍子抜けかなー……もっと手ごたえのある難関かと思ってたし」

「俺は……まぁノーコメントで」

 

 すると、ネテロ会長はなんというかニコッと笑った。キルアとゴンは感じなかったようだが、俺はその笑みに対して、ネテロ会長の言いたいことが分かった。つまりはこう言いたいのだ。

 

 

 ―――そうそう甘くないぞ、小僧共

 

 

 そんな感情を完全に隠して、そんな笑みを浮かべられるというのは、中々実力を感じさせてくれる。

 

「さて、それじゃあおぬし等少しワシとゲームをせんかね? もしそのゲームで勝てたらハンターの資格をやろう」

 

 ネテロ会長はそう言って、目を細めた。俺は、なんだか知らないけれど、特に笑いたい訳では無かったのだけど、自然と口端がつり上がった。

 そして、そのまま俺は――――ゆらり、と笑った。そして自然と、当たり前の様にこう思った。

 

 

 

 ――――面白い

 

 

 


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