◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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有利な×試験

「さぁ、第二次試験を始めるわ!」

 

 そう言って出て来たのは、ファンキーな髪型をした女性と山の様に大きな脂肪を蓄えている大男の2人。にやりと笑いながら女性がこちらを見ているが、男の方は巨大な皿の上に置かれた大量の肉をむしゃこら食っている。言いたい事はいっぱいあるけれど、とりあえず脂肪を蓄えるのを止めた方が良いと思う。

 

「……ふむ」

「いい?説明するからちゃんと聞いときなさい!」

 

 第二次審査員、メンチが大きな声でそう言う。参加者全員がその言葉に息を詰まらせ、静かに次の言葉を待つ。

 

「…うん。いい?第二次試験の内容は―――料理よ!」

 

 全員が呆けた。料理?マジで?

 

「ハンターには種類があってね、怪物ハンターや幻獣ハンター、協会ハンターとか財宝ハンターとかね。その中に、私達みたいな美食ハンターってのがいるわ。世界中のあらゆる食材を求め、追求するハンターよ。でも、そんな事をするハンターだから、必須スキルがやはり出てくる…それが料理スキル!」

 

 料理か…俺の得意分野だな。ああ、と言っても俺は全ての技術を持ってるから全部得意なのだけど。

「でも、美食ハンター以外もこの料理スキルは必要になってくるわ。怪物ハンターや幻獣ハンターでも長期の仕事になると、サバイバルをする事だって少なくない…そんなとき、料理スキルが無かった場合…最悪餓死してこの世からおさらばね」

 

 なるほど、料理スキルとはこの世界においてそこまで大事な物なのか…一つ勉強になったね。つっても、俺には料理スキルは有り余るほどあるけどな!!(二度目)

 

「さて、まずは私のコンビである後ろのこいつ…ブバラの課題をクリアしてもらうわよ!」

 

 後ろの奴も審査員だったのか。と言っても、彼の課題は簡単そうだなぁ…

 

「じゃあ、僕からの課題を出すよ、課題は―――」

 

 

 

 ◇

 

 

 

「まさか、豚の丸焼きとはねぇ…」

 

 正直ここまで簡単かつシンプルな課題とは思わなかったよ。

 

「なぁ、オウカ。豚の丸焼きって…豚はあいつら使っても大丈夫かな?」

 

 おお、ここにきて初めて喋ったなキルア。ゴン達はどうした?

 

「ゴン達なら別んトコで豚探しに行ったよ?」

「なるほど。で、質問の答えだが…大丈夫だと思うぞ?」

 

 俺達の目の前には興奮した豚達が数匹いて、そちらを見てそう言う。そして何気なく豚の頭を小突く。豚は凶暴な性格をしているようだが、俺が触れると穏やかな雰囲気でその頭をこすりつけて来た。

 

「懐かれてるし…」

「これは俺の動物寄せスキルだ」

 

 俺の技術の中には常時発動している動物寄せのスキルがあった。これは恐らくフェロモン的な物だと思う。だが、逆として…動物避けのスキルもあった。切り替えは意識的な物で可能の様だ。動物に寄って来て欲しくない時は寄り付かず、触れたい時は寄せ付ける。そんなスキルらしい。

 

「ま、関係無く調理しますが」

 

 俺は手刀で首を落とした。手刀の切れ味の出し方としては、角度とか力の入れようとかそういう技術を使った方法を使用している。ま、現実じゃあそれで切れ味が出るとは思えないけど。ご都合主義って奴だ。

 

「えげつねぇな…」

「殺し屋が何を言うか」

「そりゃそうだけどよ…」

 

 そんな感じで、俺達は丸焼きをクリアしたのだった。 さて、実際俺達以外の参加者の大多数もクリアしており、失格者は殆どいなかった。戦闘が不得意な者や、凶暴化した豚にやられた者、豚を殺す自体出来なかった者など、失格者には色々種類があるが…そんなにはいなかった。いて数名だ。

 

「ふ〜む…今回の参加者は豊作みたいね…じゃ、次は私の課題よ!」

 

 メンチがそう言うと、豚で自信がついたのか余裕気に構える参加者達。試験中に余裕を持つとは…痛い目見るぞ、お前ら。そう思っていると、メンチは同じ事を思ったのか…にやりと笑みを浮かべてこう言った。

 

「私の課題は……”スシ”よ!!!」

 

 スシか…これは寿司って事で良いのだろうか?

 

「調理に必要な物は用意してあるわ!自由に使えばいい。作成方法・料理の見た目なんかは一切教えないわ!自分の中でスシを作ってみなさい!」

 

 メンチは意地悪だなぁ…この中で寿司を知っている奴が俺以外にどれ程いるか…う〜ん…そうだな、あのハゲは知ってそうだ。唯一和風な服装しているし。

 

「じゃ、調理始め!!」

 

 メンチはそう言って、手をパン!と叩いた。それと同時、俺達は調理の為に動きだすのだった。

 

「なぁ、オウカ…スシって知ってるか?俺は知らないんだけど」

 

 キルアは己にとって難解の課題に頭を捻り、四苦八苦しているようだ。まぁ、キルアは友達だし、合格者枠は1人と言う訳ではないのだから、手を貸す位ならいいかな。

 

「ああ、知ってるよ」

「そうなのか!教えてくれよ!」

 

 キルアは正直助かった!って感じの顔でそう言う。ここで突き離したらどんな顔するかな?まぁ、しないけど。え〜と、確か寿司は……

 

「じゃ、代わりに魚を取って来てくれるか?さっき川を見つけたし、多分そこに魚がいる筈だ。出来るな?」

「分かった!」

 

 キルアはそう言って、魚を取りに川へと走って行った。ゴン達はそれに気付き、キルアを追う様に走って行った。なるほど、キルアが寿司に付いて知っていると考えたのか。便乗するのは別にかまわないが、露骨すぎるぞ、おい。

 

「さて…待つとしますか」

 

 俺はキルアが帰ってくるのを、座りながら待つのだった。

 

 

 ◇

 

 

「オウカ!取って来たよ!」

 

 おおよそ1時間後、キルアが腕の中にいっぱいの魚を持って帰って来た。後ろにはゴン達も一緒だ。

 

「…後ろのは…」

「ああ、そう言えば珱嗄はまだ話してなかったっけ?こっちがさっき話して友達になったゴン!あと…」

「俺はレオリオだ」

「私はクラピカだよ」

 

 なんだ、後ろの二人はキルアもまだ知り合ってなかったんじゃないか。ゴンにレオリオにクラピカ…ね。正直、一つ気になることがある。それは

 

「クラピカ…だっけ?」

「?…ああ、そうだが?」

「男?女?どっち?」

 

 すると、クラピカは一瞬呆気に取られ…その後、少し苦笑しつつ答えた

 

「私は男だ。中性的な容姿をしているからな…分からなくても無理は無いか」

「なるほど」

 

 これですっきりした。クラピカの姿は結構ややこしいからな。

 

「それで?なんでここに?」

 

 まぁ、目的は俺の知っているという寿司の調理方法だろう。現状、調理法を知っているのは俺と…おそらくあのハゲのみ。だが、魚を取って来た時点で一歩リードしているだろう。さっさと調理を済ませて合格してしまおう。

 

「ああ、キルアに聞いた所…貴方はスシの作り方を知っていると…それで、厚かましいとは思うが…その調理法を我々にも教えてはくれないだろうか?」

「ん〜…嫌だね」

 

 そう言うと、落胆したように肩を落とすクラピカとレオリオ。ゴンも少ししょぼんとしている。というか、俺はキルアにだって調理法を”教える”とは言っていない。作りたいのなら、見て真似して覚えろ。

 

「ま、俺は勝手に作るから…その様子を見る位なら別にいいぜ?」

 

 俺がそう言うと、キルアも含む4人はぱぁっ!と明るい表情になり、元気にお礼を言って来たのだった。

 

「ほい、審査官。寿司できたよ」

 

 その後、俺はさくさく寿司を作りあげた。ちなみにキルア達は俺の調理風景を見て、見様見真似で寿司を作成中だ。ま、上手くいけばそれなりの物を作るだろう。

 

「ふむ、形は上出来ね。スシを知ってたのかしら?」

「ま、そういうことだ」

「じゃ、頂くわ。あむっ」

 

 もぎゅもぎゅと咀嚼して俺の作った寿司を飲み込んだメンチは、カッ!と目を見開き、キラキラした目で言った。

 

「美味いわ!!こんなスシ、本場でも食べたこと無いわよ!」

「合否は?」

「もちろん合格よ!!」

 

 ということで、合格を頂いたのだった。

 

「おい、合格してきたぞ」

 

 俺はキルア達の下へ戻る。すると、それぞれ形は寿司に見える料理を作りあげた所だった。味は分からないが、良い感じだと思う。

 

「オウカ!これどうかな!」

 

 キルアが皿を俺に差し出してそう言う。とりあえず、3つ作ってあったので、一つは俺の分かと考え1つを口に放り込んだ。

 

「む……うん、まずまずの出来じゃないか」

 

 正直、俺は食べられたらどうでもいいから、合格かは言わないけど。

 

「じゃ、行ってくる!」

 

 キルアはそう言って、メンチの下へと駆けて行った。

 

「さて……終わるまで待つとしますかね」

 

 俺はそう呟き、そこらの椅子に座って待つのだった。

 

 


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