◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
さて、あれから数時間走り続け、辿り着いたのは―――ヌメーレ湿原。植物が多く広がる湿原には霧が広がっており、猛獣なんかも多くいるようだ。それに…それとは違うが、先程音速移動を繰り広げてからなんだかじっとりというか…べっとりした様な視線を感じている。いろんな意味で嫌な予感がするね。
「さて、ここは別名…”詐欺師の塒”。ここは人間をも欺き捕食しようとする生物達の楽園です。なので、気をつけて付いて来てください。でないと……命の保証は出来かねますので」
審査員、サトツの言う言葉にはかなり説得力と迫力を感じた。とはいえ、言っていることは事実だろう、なんせ…
「こんなんとかいるもんなぁ……」
俺の腕の中には、今にも出て行こうとした2匹の猿。ボロボロの状態で気絶している。一応影からこそこそと動いていたので誰にも気づかれない様にこっそり仕留めた。まぁ、さっきから纏わり付いていた視線の持ち主には気付かれているだろうけど。
「さて、ぽいっと」
猿をそこらに放り投げて捨てておく。まぁ気絶中だし、起きたら早々に立ち去ってくれるだろう。
「え〜と…うん、付いていけばいいのか」
他の皆が走り去っていたので、まだ近くにある気配を追う。すると
「こっちだよ♡」
一人、皆と一緒に走り去って無かった奴がいた。ピエロの様な風貌、または道化師の様な嘘だらけの雰囲気を纏った狐の様な男。両手でトランプを弄び、視線には品定めする様な企みが隠されもせずに見えていた。
「お前さんは…」
「僕の名前はヒソカ?よろしく?」
「ああ、俺の名前は珱嗄だよ。とりあえずその気に食わない視線を止めるか目を潰せ」
「ひどくないかい?」
「いやいや、いいじゃないか別に」
彼、ヒソカは心底面白そうな笑みを浮かべた。
俺はこいつの事を知っている。ヒソカ…異常なほどの戦闘好きな男で、良い素材を見つけると点数を付ける癖を持っている。武器は主にトランプだったはず…あれ?こいつって確かこの世界の異能力を持ってたような…
「ま、いいか。ほら、さっさと行くぞ。合格できなかったらどうすんだ」
俺はそう言ってヒソカの襟を掴み―――
「へ?」
「行くぞ」
―――空高く飛び跳ねた。
「うわわわ!?何コレ?」
「空中散歩だよ……え〜と、おお…いたいた。ん?」
空中から見ると、サトツさん率いる走者グループと…はぐれたグループの2つに分裂していた。はぐれた組にはレオリオやクラピカ、ゴンもいるな。ちょっと此処にヒソカがいるのは不味いな…
「ヒソカ。ちょっとあそこのはぐれた組連れて来い。全員で無くても良いからさ」
「え?」
「行ってこいっ」
ヒソカの襟を握り直し、そのまま人間大砲よろしくはぐれた組の下へと…投げた
「あ、ゴンがいるなら別にヒソカ送りこまなくても良かったんじゃ……」
…まぁ、いいか。さて、さっさとサトツ組に追いつくとしよう。俺はそう切り替えて、空中を蹴る。音速移動であれば、空中を蹴って進むことができる。某ワンピースの六式にもあるだろう?”月歩”とか言う技術がさ。あれと同じ。
「さて……ヒソカはどうなったかねぇ〜…ま、異能力がどんなんかは知らないけど…どうにかするだろ、それで」
出来なかったら…まぁ、その時はその時だ。俺はそう考えてさらに空を蹴るのだった。
「よっとぉ……」
「おわっ…今度は空からかよ」
キルアの隣に着地する。なんとか間に合ったようだ。人間を欺く湿原…しかし、空までは欺けなかったようだね。意外な攻略法だったよ。
「それにしても…ゴンの奴…間に合うのかな」
「ん?」
「あ、ああ。いやさっきゴンがレオリオとクラピカっつー連れがいなくなったから探してくるって言って、はぐれちゃってさぁ」
「なるほど。まぁ、大丈夫だよ。そっちには手を回しておいたから」
回した人材は超危険人物だけどね。ヒソカの奴は1巻で危険人物とか言われてたし、普通に試験官にトランプ投げつける奴だもん。危険極まりないわ。
「そうなの?ま、それなら良いけど」
キルアは少なからず俺の事を信頼してくれているようだ。まぁ、それならそれでいいのだけれど
「ん、ほら来た」
「え?あ、ほんとだ。おーい!ゴ〜ン!!」
キルアがぶんぶん手を振り回してゴンを呼ぶ。すると、ゴンはこちらに気付いた様にクラピカやレオリオ達とこちらへ向かって来た。俺は別の場所を見ると、ヒソカがにこりと笑いながらこっちを見ていた。あれ?若干殺気混ざってね?…あぁ、ぶん投げたからか。悪かったって。悪気はあったし、わざとだったけど、あれはお前の実力を信頼してやった事なんだからさ。
「……」ぷい
ヒソカはそっぽを向く様に不貞腐れた。まぁ、後々話すとしよう。
「じゃ、第二次試験を始めるわよ!!」
二次試験も始まる事だし…ね。