◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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戦い×前の×静けさ

 それから時間が経つ。ピトーとプフが珱嗄を通じて仲良くなるのは早かった。5月の下旬になり、ピトーもプフも自身の持つ力の理解を深めている。

 キメラアントの数は増えに増え、すでにハンター協会の対抗勢力を大きく上回っていた。膨れ上がった数は拠点から溢れだし、既に多くの一般人の命を奪っている。クロゼの対処では最早追い付かないのだ。それに、クロゼはもう溜めたオーラの残量が無い。珱嗄に憑依させた分を回収すればまだ何とかなるだろうが、それでも数の暴力には勝てないらしい。

 

 そんな中で、ゴン達はカイトの死の可能性を念頭に置きながら、キメラアントに対抗すべく修行を開始している。今まで以上の実力を得るには、まだまだ成長が必要なのだ。

 他にも、ハンター協会会長のネテロや、その部下達も動き出している。ネテロは全盛期の実力を取り戻す為に、精神集中に入っている。その集中力と圧倒的な威圧感は、他の生物を寄せ付けない程だ。

だからだろうか、キメラアントの侵攻は、実はそこまで進んでいる訳ではない。数匹のキメラアントが好き好きに一般人を襲っているだけだ。ニュースでは騒がれているが、キメラアントの存在を知らない一般人の方が多いだろう。

 

「という訳でだ、ネコーとシャランラ」

「ピトーだって」

「プフです」

「ピトーだってプフ? え、お前らどっちもシャランラしてんの?」

「「違う」」

 

 そんな中、拠点の中で相変わらず珱嗄とピトーとプフはそこそこ仲良くやっていた。キメラアント側の二人としては、珱嗄はいつまでこの拠点にいるんだ、と内心感じていなくはないのだが、実の所珱嗄がそこまで害では無いのを理解しているので、別段追い出そうとも思えないのが現状だ。

 珱嗄の親しみやすさは種族の壁を超えるらしい。というより、最初の時点で手荒に扱えない強さを持っているから、不本意ながら付き合っていく内に珱嗄の親しくなる、というのが正解だ。

 

「それにしても、お前らって実際の所何がしたいの?」

「にゃん?」

「と言いますと?」

「いやね、お前らがなんでこんな所に拠点作って王様生まれんの待ってんのかなーと思って。王様生まれたら何すんの?」

 

 会話の種も無いので、とりあえず珱嗄はキメラアントがどのような生物なのかを知ることにした。すると、ピトーとプフはお互い顔を見合わせた後、珱嗄の方を向いて同時に答えた。

 

「「さぁ?」」

「知らねーのかよ」

「ボク達が命じられたのは女王の守護、そして王が生まれれば王に付き従う王直属の護衛軍になるからね。ボクらの動向は王が決めた方向に自然と向かうよ」

「出たよ他人任せな今時の若者が……だからお前はネコーなんだよ!」

「ピトーっつってんだろそろそろ覚えたらどうなの!?」

「自分の意見くらい持ったらどうよ? お前は今、何をしたいんですかー?」

 

 珱嗄の言葉に、二人はむっとなって考える。差し当たって、したい事を。すると、ふと思い付くことがあった。それは奇しくも同じ事を考えており、どちらもそれを望んでいた。

 

「「オウカに名前を覚えこませたい」」

「わはは、ゴメン俺4文字以上は覚えられねーんだ」

「ピトーとプフって3文字と2文字だよね? なんで覚えられないの?」

「足したら5文字だろうが」

「足さないでください、割ってくださいよ」

 

 珱嗄の言葉に、ピトーとプフが仏頂面になる。どうあってもこの男は自分達の名前をちゃんと呼ばない。そもそもなぜこんなことにムキになっているのかも不思議なのだが、少なくとも一番付き合いの長いピトーは、このやり取りを少しだけ、大切なものだと感じ始めていた。あくまでも無意識下で、だが。

 そして、プフも同じ様に、このやり取りを楽しいと感じているのだろう。そうでなければ、苦笑であっても、笑う筈が無いのだから。

 

「さて、それじゃあちょっと拠点内を探索しようかな」

「え」

「お前らは此処でなんかしてろ。しりとりでもしてたら?」

「え」

「じゃね、シャランラネコー」

 

 珱嗄はそう言って、暗い洞窟の奥へと消えて行った。後に残ったプフとピトーは、ため息をつきながら漏らす。

 

「シャランラネコーって……どんな猫ですか」

「ボクの名前はネフェルピトーなんだけど……」

 

 決戦の時は近い。こんな風に馬鹿やってられるのも、そう長くはないだろう。

 

 

 ピトー、↑ラストの台詞時。

 

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