◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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珱嗄×プフ

 さて、それからというものだ。珱嗄はその後帰って来たピトーに若干噛み付かれたが、大したことはないと受け流した。そして、女王にはバレている事も承知の上でその拠点に住みついてしまった。キメラアントの面々は全員が全員、何なんだコイツと思いながら、実力差が分かっているので手を出せない、という状況に悶々としていた。

 具体的な日数を上げると、約二週間程だ。この日数で、世界は大きく動きを見せていた。この場合の世界、というのはハンター達とキメラアント達のことになる。キメラアントは、ほぼ全員が念能力を習得、ハンターの面々は対キメラアント戦に向けて戦力を整えていた。全面的な戦いが、何時勃発してもおかしくはなかった。

 

 そんな中、クロゼもまた、別の勢力として動き始めていた。

 珱嗄との感覚共有によって入手したキメラアントの情報は、恐らくこの世界の誰よりも正確かつ、濃厚だろう。キメラアントの事を一番知っている人間の一人であると言っても過言ではない。珱嗄もこの一人だ。

 とりあえず、クロゼの判断としては、自分の実力ではネフェルピトーと名乗ったあの護衛軍の一人と戦った場合、勝敗は良くて五分五分といった所だ。運が良ければ勝てる、だが死ぬ確率の方が高い、というのが感想だった。そこで、まずクロゼが取った行動は、珱嗄のやった行動から、蟲笛を作る事だった。おそらく大抵のキメラアントはこれで何とか出来るんじゃね? という予想に基づいた行動である。

 

 そして、それを終えた後に行ったのは、一般人を襲うキメラアントの撃退だ。現段階で、キメラアントの数はそう多くはない、増えつつはあるがまだ少ない方なのだ。しかしそれでもその中の少数のキメラアントが人を襲うようになっている。それは、拠点の珱嗄を通じてえた情報から分かっているのだ。

 故に、クロゼはその拠点から人間を襲う為に出ていくキメラアントの容姿や情報も珱嗄を通じて取得し、それに対処している訳だ。

 

「つっても、だ……ちょっとこれはヤバいな」

 

 そんな仕事をしているクロゼだが、現在進行形でかなりの重体だった。少数とはいえ数のあるキメラアントを一人で対処するには少しばかり無理があった。数多くの戦いを経て、少しづつ負った傷が身体を蝕んでいた。

 

「仕方ない、か……」

 

 クロゼはそこで、仕方なく溜めていたオーラを開放することにした。珱嗄に憑依させているオーラを除いた、約52人分のクロゼと同等のオーラを自身に還元する事で、オーラ量を膨大に増量し、そのオーラを使った治癒力強化で身体を回復させたのだ。だがその身体を治すだけでは52人分のオーラは消費しきれない。となるとどうなるのか、通常なら霧散する所なのだが、クロゼはこのオーラをある事に使う。

 

「少し前から考えてたんだ……じゃ、張り切って行きますか」

 

 クロゼはそう言って、その膨大なオーラを凝縮させ始めて行った――――

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 一方、珱嗄のいる拠点の方では、珱嗄に内緒で人知れず念を習得してきたピトーが珱嗄に一捻りにされていた。

 

「にゃ………」

「あのな、猫。考えてみ? 猫が一匹で人間に立ち向かった所で勝てるか? 抱きかかえられて撫でまわされるのが落ちだろ? 分かるな?」

「むー……ピトーだ」

 

 そこまで言って、珱嗄はピトーに聞く。

 

「ところでお前、どこで念を手に入れた? しかも、使い方までも」

「……んー、あそこに転がってる人間から情報を引き摺りだしたんだよ。脳みそをくちゅくちゅーっと」

「ああ……て、どっかで見た様な……あ!」

 

 珱嗄がピトーに指差されて送った視線の先には、一人のハンターが転がっていた。頭の皮膚を剥がされ、頭蓋骨を割られ、脳みそが丸見えになっている一人のハンターが。

 だが、珱嗄にはそのハンターに見覚えがあった。ハンター試験の際、珱嗄と最終試験で対戦相手になった少年、ポックルだ。

 

「あー……本当にポックリ死んだな……ポックル……」

「知り合い?」

「ああ、まぁ顔見知りって程度だよ……なんだよそんな顔すんなよ」

「い、いやー……」

 

 珱嗄の顔見知りを脳みそくちゅって殺したとなれば、少し機嫌を損ねるのではないかと少し不安になったピトーは、かなり青褪めた顔であわあわしていた。だが、珱嗄は若干苦笑気味にそんな表情のピトーの頭をぽんぽんと撫でた。

 

「別に怒ったりしねぇよ。友達って訳じゃないし、ポクポクポックルが勝手にポックリ死んだだけだ」

「殺したボクが言うのもなんだけど、随分と死人に鞭打つねキミ」

「だって友達じゃねぇし」

「……まぁいいけど」

「ところで、お前この笛の音聞いてどう思う?」

 

 珱嗄は話を切り替えて蟲笛をひゅんひゅんと鳴らし始めた。すると、周囲にいたキメラアント達が次々と耳を塞いで逃げていく。この世界では蟲笛は虫に対して虫除けの効果を持つらしい。だが、

 

「ん、まぁ少しだけ耳障りな感じがするけど……問題ないかな?」

「そうか……」

 

 珱嗄は少し考える。どうやら蟲笛は護衛軍以上のキメラアントには効かない様だ。

 

「まぁいいか、それじゃまぁ……コイツの相手は少しばかりめんどくさそうだ」

 

 珱嗄は振り向きながら、暗闇の向こうより歩いてくる者に視線を向けた。

 

 

 

 

「おや、何故此処に人間が?」

 

 

 

 

 やって来たのは金髪に蝶の羽を持った青年。何処か気品を感じさせる顔立ちだが、その実放つオーラはネフェルピトー同様の、禍々しさを持っていた。

 彼の名前はシャウアプフ、三人の女王直属護衛軍の内の、一人。ネフェルピトーと肩を並べる実力を持った、蟻である。

 

 


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