◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
それから、およそ4ヵ月が経った。前回の後、クロゼは無事に『ブループラネット』を入手、カツアゲ計画を実行した。そして、この4ヵ月で入手した指定ポケットカードは72枚。ほぼ7割が埋まっているのだ。
だが、4ヵ月というけして長くない時間の中で、此処までの成果を挙げられたのには、理由がある。それは、ボッチを始めとした協力者の存在。クロゼはカツアゲをする中で、クロゼの強さを気に入った者を協力者として迎え入れ、ボッチ同様『憑依透し』に掛けたのだ。
此処まで言えば分かるだろうが、クロゼの取ったのは人海戦術。収集した指定ポケットカードを協力者に配布し、自分と同じことを数名で行なったのだ。しかも、クロゼの発に掛かった者の身体を使ってクロゼが戦うことが出来るので、負ける事は早々無かった。やはり、珱嗄相手に修行をしていた反面、他の者が物足りなく感じてしまう。
そういった理由で、彼は指定ポケットカードを大量に収集する事が出来ていた。とはいっても、クロゼの本に指定ポケットカードが全て入っている訳ではない。協力者全ての本にバラバラに72枚の指定ポケットカードが収容されている。こうすることによって、他のプレイヤーに目を付けられる可能性を最小限にしている。
「……だが、これは少し暴れすぎたかな?」
しかし、クロゼは少しばかり困った状況にあった。数名の協力者を使っているとはいえ、カツアゲにあうプレイヤーが増えているという情報が、上位プレイヤー陣の耳に入る事となったのだ。故に、カツアゲに対してかなりの警戒が敷かれてしまった。これでは今までの通りの手段でカードを手に入れることが難しくなってしまった。
「これは少しばかり身を潜めた方が良いかな?」
クロゼはとりあえず、協力者を全員一ヵ所に集めることにした。そこで、72枚の指定ポケットカードを一つの場所に集めようと考えたのだ。ボッチを含め、協力者は12名。
「それじゃ、少しばかりの休憩と行こうか」
クロゼはそう呟いて、少しだけ肩の力を抜いた。
◇
その後、クロゼは全ての協力者を集合。全ての指定ポケットカードをボッチの本へと収容した。
ここで何故クロゼでは無くボッチの本に収容したのか、それはボッチが一番の隠密性に長けた念能力者だからだ。
彼はこれまでのプレイヤー人生において、誰にも悟られる事無く異常な程の量の情報を収集しているという実績がある。クロゼは彼からほぼ全ての指定ポケットカードの入手条件を聞くことが出来た。裏を返せばボッチはクロゼに『ほぼ全て』の指定ポケットカードの入手条件を教えられるだけの『情報』を持っていたのだ。これは紛れもない事実なのだ。
「いいかボッチ、お前はこの指定ポケットカードを持って、行動を起こさず、身を潜めておいてくれ」
「おう、まぁ一人身を潜めて気配を消すのは得意だ」
「ボッチだもんな」
「そこはかとなく嫌な気配を感じたぞオイ」
「気のせいだよ。とにかく、頼んだ」
クロゼの頼みに、ボッチは頷いた。
「さて、それじゃあ皆一旦休日としよう。頃合いを見てまた招集を掛ける」
クロゼの言葉に、協力者の全員が言葉無く去って行った。クロゼはその背中を見ながら座る。なんとなく手持無沙汰な思いがして、少し落ち付かない。最近はずっとカード集めに精を出していたから、こうした休日に何をしていいのかと考えてしまうのだ。
存外、自分は忙しい身の方が性に合っているのだろうと、クロゼは思った。
「さて、珱嗄はどうしてるのかな?」
クロゼはそう言って、ふと笑った。
◇ ◇ ◇
とある荒野に、一人の男がいた。その荒野は、4ヵ月前はかなりでこぼこした地形だったのだが、今では何故か更地になってしまっている。地形自体が変わってしまっているようだ。
その原因は、やはりその男だ。持っている刀は抜き身で、紅く輝いている。そして、辺り一帯が灼熱の業火に包まれたかのように熱かった。
「ふー……」
彼の頬からは大量の汗が流れ、吐く息は体温を少しでも下げるかのように、熱を持っていた。男はその刀を下段に構えて、オーラを爆発させる。大量のオーラが灼熱の炎を幻視させ、うねりを上げて大気を震わせる。
「―――不知火」
男が呟くように言う。すると、男の姿がまるで陽炎の様に不確定な物になる。まるで、そこにいるのにいないかのような存在感。そして、すーっと男の姿が希薄になり、瞬間――――ふっと消えた。
「『 』」
恐らくは技名。だが、それはオーラの震える音と――――地面が断ち切られる音で聞こえなかった。
だが、男の姿が見え、オーラが終息していった後、男の目の前には地面に深く大きな切られた跡があった。