◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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焼き方は×弱火でじっくり

「オウカ……なんで…」

 

 キルアは深刻そうな顔でそう言う。その視線の先にあるのは転がっている一つの物体。珱嗄はそんなキルアの声に対して顔を背けた。

 

「……」

 

 そして珱嗄は、足元に転がる物に視線を向ける。そして顔を俯かせた。

 

「なんで…こんなことしちまったんだ!!」

「……」

「こんなことしなくたって良かった筈だろ!」

 

 キルアは反応もしない珱嗄の腕を掴み、ぐいっと強引に引っ張った。そして襟元を掴んで強引に顔を合わせ、言った。

 

 

 

「なんで婆さんをのしちゃったんだよ!!」

 

 

 どこかでずっこけた様な音がした。

 珱嗄はそのキルアの台詞に対して苦笑しながら頬を掻いて答えた。

 

「だって……問題じゃあ゛ぁ!とか言って来たから少しイラッと」

「いやいやイラついたのは俺も一緒だけどさ…だからって気絶させたら駄目だろ」

「いやいや、あそこはやっとくべきだって。今後の為にも」

「今後、気絶させられたことに何が起こるんだよ!?」

 

 さて、前回の最後の出てきた老婆。彼女が通りかかった珱嗄達にクイズを出そうとして来た。なんでもこれも会場に向かう為の試練の一つらしい。しかし

 

『さぁ゛あ゛てェ゛…問題じゃあ゛ぁ!!』

 

 ものすっごいドヤ顔としわがれた声で、そう言ったのだ。一瞬殺意だって芽生えるだろう。だから珱嗄は、その手刀で老婆の首に一撃落としたのだ。

 

「いやいや……ん〜…まぁ、いいか」

「いいのかよ」

 

 キルアは意外と流せるタイプの様だ。殺してたらそうはいかないだろうけれど。

 

「まぁ、いいか。じゃあ行こう」

「おう!」

 

 すると珱嗄は老婆の死体「死体じゃねぇよ!?」…老婆の身体を転がして、カモフラージュされた扉を開けた。そしてその中に迷い無く進んで行く。ここはほぼ皆無な原作知識が役立っている。だが、この知識ももうすぐ尽きてしまうだろう。そこからはもう自分の勘に頼るしかない

 

「へぇ〜…こんな道が隠されてたんだなぁ…」

 

 キルアは珱嗄の後ろでそう言いながらてくてくと付いてくる。珱嗄は少しだけ微笑を浮かべながら、その様子を見ていた。

 

「さて…キルア。ちょっと頼むぜ」

「へ?」

 

 珱嗄はキルアの腰に手を回し、抱え上げる。キルアは呆然として抵抗の行動すら見せなかった。そしてそのまま珱嗄は

 

「上から見て来ぉぉおおいっ!!!」

「のわああああああ!!?」

 

 キルアを真上にぶん投げた

 

「おー……良く飛んだなぁ…」

 

 キルアの姿はすぐに見えなくなり、珱嗄も手で日差しを遮りながらそう言った。だが、しばらくすると声が少しずつ聞こえた

 

「……〜〜ぁぁぁあああああああああ!!!!!?」

 

 ガシィ!と珱嗄は落ちて来たキルアをキャッチする。そして

 

「ふぅ…さて、キルアどうだった?」

「アホかぁ!?死ぬかと思ったわ!!」

「でも、死ななかったろ?」

「…もういいよ」

 

 キルアは珱嗄の腕の中から降りて地面に着地する。そして珱嗄はもう一度詳しく聞いた。

 

「キルア、ザバン市はあったか?」

「…そういうことか。ん〜…向こうの方に街があったのはちらっと見えたよ」

「そうか、良くやったぞ」

 

 珱嗄はキルアの頭に手を乗せ、柔らかい白髪を乱暴に撫でる

 

「ちょ…止めろよっ…!」

 

 気恥かしそうに珱嗄の手を払いのけ、キルアは頬を膨らませた。

 

「あはははっ。悪かったよ、じゃあ行こうか」

「むぅ…ああ」

 

 そう言って、キルアは自分の指差した方向へと歩き出し、珱嗄はその後ろをカラカラと笑いながら付いて行った。

 

「着いたなぁ…」

「そうだな」

 

 キルアは少し疲れた様な顔をしている。珱嗄は変わらず笑みを浮かべていた。

 

「疲れた?キルア」

「ああ、疲れたよ。主にオウカのせいで!」

 

 あのキルア飛翔事件からの道中。珱嗄はずっとキルアとボケツッコミの応酬を繰り広げたのだ。主に珱嗄がボケでキルアがツッコミである。そのせいで、キルアはツッコミ疲れをしているのだ。まだ若いキルアにツッコミは少々無理があったか?と考える珱嗄。まぁ、それでもやめはしないのだが。

 

「それはそうとして…ここまでくれば会場はすぐそこだ」

 

 キルアのおかげで辿り着いたザバン市にはそこそこお店が建ち並び、いい匂いも漂っていた。珱嗄はその中にあった定食屋に入って行く

 

「ここが会場なのか?」

 

 キルアも続いて入り、珱嗄に言う。珱嗄はその問いに、こくりと頷いた。そして店員を呼び

 

「注文良いかな?」

 

 と言う。キルアは食事するの?と怪訝な顔をするが、珱嗄にも考えがあるのだろうと様子を見ることにしたのか喋る事はしなかった。

 

「はい、ご注文は?」

 

「”ステーキ定食”」

 

 するとぴくりと店員の眉が少し動いた。キルアはその反応に、合言葉という事実を確信した。

 

「焼き方は?」

「”弱火でじっくり”」

 

 珱嗄は指を立ててそう言った。すると、店員は頷き

 

「では奥の部屋へどうぞ」

 

 と珱嗄達を奥に有った扉の向こうへと案内した。扉の向こうはエレベーターとなっていて、中心にはテーブルが置いてあった。その上には鉄板と肉や野菜、ご飯が置いてある。珱嗄とキルアはそのテーブルにつく。それと同時、扉が閉まりエレベーターが下へと動き出した。

 

「いただきまーす」

 

 珱嗄はご飯を食べ始めて、キルアも習う様に肉を焼き始めた。

 

「むしゃむしゃ…それにしてもオウカ…なんでここを知ってたの?」

「ごくん……ん〜…まぁ、俺は推理力はあるんだよ」

 

 ぶっちゃけ原作知識だが、それは内緒だ。話す必要も無いし、話そうとも思わない。珱嗄は次々と肉をその口に入れ、消費していく。キルアも負けじと食べていくが珱嗄ほどがつがつと食べてはいない。

 

「それにしても……ステーキ定食って言ったのに焼き肉だもんなぁ…むしゃむしゃ」

「むぐむぐ……まぁ同じ肉だしいいんじゃね?」

「それもそっか…ごくごく…」

 

 しばらく食べながら雑談をしていると、エレベーターはチ〜ン!という音と共に会場へと辿り着いた。

 

「さ、着いたよ。行こうか」

「ああ」

 

 丁度、テーブル上の料理を全て食べ終えた二人は立ち上がり、開いた扉の向こう側へと足を踏み出したのだった。


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