◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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武器×ゲット

 さて、その後の事だ。食事処から出た珱嗄、クロゼ、そしてウボォーギンの三名は、再発した喧嘩によりとりあえず二手に分かれる事になった。クロゼとウボォーギンが人気のない開けた所へ行き、戦いに行くらしく、珱嗄と一時別れる事になったのだ。

 という訳で、現在珱嗄は一人である。店に迷惑が掛からないのならば、何処でどう戦おうが興味はない。あくまで喧嘩なので、命を落とす危険も無いだろう。

 

「さて……俺はどうしたものかな……」

 

 天空闘技場から寄り道多めに進んできて約一週間。大分時間を掛けた末にここ、ヨークシンへとやってきた訳だが、そもそも此処へ来ようと言ったのはクロゼなのだ。珱嗄としては此処に何があって何が出来る場所なのか分からない。

 

「どうしろっちゅーんじゃ」

「おにーさんおにーさん」

「あん?」

 

 街を歩く珱嗄に、青年の声が掛かる。視線を向けた所、そこには武器屋を営む若い商人の男がいた。

 

「何か?」

「おにーさん見た所、ハンターでしょ? ウチは古今東西様々な武器を揃えてるんだ。ちょっとした護身用からガチで殺す用、数多くあるよ? 一回見てってよ!」

「へぇ……まぁ、見るだけならタダか……暇だし、見てくよ」

「いらっしゃいませ!」

 

 珱嗄は商人の背後に聳え立つ武器屋へと入っていく。その中には、確かに数多くの武器が五万とあった。剣、刀、ハンマー、手裏剣、片手剣、大剣、両手剣、盾付き剣、まきびし、斧、鎌、双刀、メリケンサック、毒針、槍、拳銃、大砲、ガトリングガン、ハンドガン、ライフル、爆弾、スタンガン、こんにゃくと、数多い。品揃えで言えばトップクラスかもしれない。

 

「刀もあるんだな……」

 

 珱嗄はとりあえず手近にあった刃渡り1m程の刀を手に取った。手に持ってみると、思っていたよりもかなり重量がある。並の人間なら振り回す前に振り回されるだろう。おおよそ85kgと言ったところだろうか?

 

「驚いた……それを片手で持てる奴がいるなんて……」

 

 店員も驚いている。珱嗄はその重量、例えるなら人間一人と半分を片手で軽々と持っていたからだ。

 

「?」

「えーとね、それは銘を『陽桜(ひざくら)』って言ってね……あの名高い刀鍛冶、ユダ=ハピネスが生涯最後に打ったとされる刀なんだ。その特徴として挙げられるのが、圧倒的な重量と、それに反する程の切れ味。普通、刀は重ければ叩き斬る、軽ければ切れ味重視、という使い方をするものなんだけど、その刀は重くて切れ味が鋭い。だから使い手を選ぶんだよね」

「重い物を持ち上げられる筋力と、切れ味重視の扱い方を出来る者、ね……中々シビアな条件だ」

 

 珱嗄はひゅんと音を立てながら刀を振るう。勿論、刀の扱いなんて全く知らない。

 

「で、なんでこんなに馬鹿げた重さになってんだ?」

「それは使われている素材が原因だよ」

 

 説明によると、この刀には『紅玉鋼(スカーレットメタル)』っていう玉鋼が使われており、その素材は叩けば叩くほど薄く引き延ばす事が出来、さらに強度を落とさない性質を持っているらしい。その代わり、指先に乗せる程度でもかなりの重さを持つ。

 これはこの玉鋼自体が、かなりの密度のオーラを秘めている事が原因で、このオーラが周囲に掛かる重力を更に重くするのだ。故に、刀を形作る程の量であれば、その重力はかなりの物になるだろう。

 

「なるほどね……でもまぁ……振り回せない程じゃない、か」

「でも、その重さに見合うだけの切れ味をその刀は持ってるんだ」

「というと?」

「その刀は以前一人だけ使い手がいてね、その使い手はこの刀で空を切り、海を断ち、大地を割ったとされているよ」

 

 それはまたとんでもない切れ味だ。というか、何故そんな刀が此処にあるのか分からない。しかも、抜き身の状態で置いてあるのが更に危険性が増している。客死ぬぞ下手したら。

 

「なんで鞘に入れないんだ?」

「あ、あはは……入れようとはしたんだよ? でも……鞘に入れたら鞘が真っ二つに切れちゃって……」

 

 切れ味が良過ぎて鞘に入らない。それはもうそれだけの性能を持っていても粗悪品だろう。何故折ってしまわないのか疑問だった。

 

「ふーん……いいね、気にいった。コレくれよ」

「え、欲しいの? まぁ売り物だから良いけれど……」

「幾ら?」

「132ジェニー」

「安いなオイ。天空闘技場の一階のファイトマネーか」

「いや、需要が無いからねぇ?」

 

 納得してしまえる理由だった。使い手をこんなにシビアな条件で選ぶ刀に高価な値段は付けられない、という事だろう。珱嗄は小銭を取り出し、それを商人に渡して刀を手に入れた。

 そして、刀を抜き身のまま肩に乗せ、店を出る。

 

「よろしく、『陽桜』。今日からなんとなく適当にやってこうぜ?」

 

 珱嗄の言葉に、陽桜はその抜き身で若干赤み掛かった色の刀身を、キラリと反射させた。

 

 


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