◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
ヒソカに勝った。それをしっかりと実感出来た珱嗄は、そろそろ天空闘技場を出ようという結論を出した。元々は実戦経験をある程度積むために来た場所だ。高位の実力者であるヒソカを片手を封じて圧倒出来た、となれば最早此処で戦い続ける理由はないのだ。
よって、珱嗄はファイトマネーで資金も潤っている今の内に、天空闘技場を出て気ままに旅してみようと思ったのだった。
「ってわけで、俺天空闘技場から出るわ」
「え、あ、そうなんだ……♦」
「ヒソカはどうするよ?」
「……うん、僕は残るよ。君には興味があるけれど、ゴンやキルア達にも興味があるんだ。此処で何処まで成長出来るか見てみたいんだよね♡」
だが、その旅立ちにヒソカは付いていかない。ゴンやキルアという可能性を見届ける為に、彼は此処に残る事にした。珱嗄には、付いていかない。
「そうかい……さて、それじゃあどーすっかねー」
珱嗄はヒソカに背を向けて、エレベーターに向かって歩き出す。ここは230階、天空闘技場を出るならば1階に戻らなければならない。
ぐいーっと腕を伸ばしながら、ゆらゆらと歩いていく珱嗄の背中は、どことなく最初会った頃よりとても大きく見えた。ヒソカは珱嗄がまだ成長途中である事を思い出し、苦笑する。
「どこまで成長すれば気が済むんだか……だからオウカは面白い♡」
「あれ? ヒソカ……オウカは?」
「クロゼ、起きたんだ? オウカならたった今天空闘技場を発ったよ♡」
「マジか? くっそ、俺まだアイツに色々教わってねーのに!」
クロゼが怪我の事も鑑みずに立ち上がり、珱嗄を追ってエレベーターに乗り込んでいく。どうやら、クロゼは珱嗄に付いていくようだ。ヒソカに負けて尚、挫けない様子は、更なる成長の見込みを感じさせる。
見送るヒソカは自分に負けた可能性と、自分に勝った可能性、二つの可能性の人間がこの先どうなっていくのか、楽しみに思いながら、200階へと向かった。
自分が次に見たいと思うゴン達を、200階にて『洗礼』する為に。続く様にエレベーターに乗り込んだヒソカは、とても楽しそうに、にっこりと笑みを浮かべた。
「またね、オウカ、クロゼ♡」
◇ ◇ ◇
さて、そういう訳で珱嗄とクロゼは二人、天空闘技場を発った。行くあてと言えば特に無いが、元々自由気ままに旅をしていたのだから、特に気にする事でも無いだろう。
「で、何処行くんだ?」
「んー……どうしようかなぁ」
天空闘技場から少しばかり離れた街道を歩いている途中、珱嗄はクロゼの問いに間延びした風に答えた。正直、この世界に生まれてから知っている場所と言えば身体能力を鍛えていた森と、ハンター試験で行った場所、そして天空闘技場だけだ。他の土地など知る由も無い。
故に、ここは他の場所を知ってそうなクロゼに行き先を任せる事にした。
「クロゼは元々何処行く予定だったんだ?」
「ん、俺か……俺は天空闘技場に金を稼ぎに来たからな、ある程度金を手に入れたらおさらばするつもりだったんだが……そうだな、次の行き先はヨークシンかな?」
「ヨークシン?」
聞き覚えのない都市名。だが、クロゼによると結構人の多い賑やかな街の様で、オークションや商店が数多く開かれており、様々な地方のお土産や名産物が手に入るようだ。現代風に言えば、貿易都市といったところだろうか。
「そこで何をするんだ?」
「いや、金が手に入ったら色々楽しめるかなーと」
「ああなるほど……豪遊したい訳か……」
珱嗄はそれを聞いてふむと頷く。そして、まぁいいかと考えをまとめた。特に行きたい場所がある訳でも無し、ならば別にそこへ行っても問題はないだろうと思ったのだ。
「じゃ、そこ行こうぜ。案内せよ」
「はいよ、それじゃあ行こうか」
珱嗄とクロゼは歩きだす。向かう先はヨークシンシティ、珱嗄とクロゼはそこで、とある旅団に関わる事になる。そして、そこで珱嗄は――――自身の発を完成させる。