◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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珱嗄×VSヒソカ

 クロゼの敗北で終わった試合の後、とりあえず天空闘技場に配備されていた治療キットでクロゼの出血を止め、出血多量で死亡、なんて結果には終わらなかった。

 そして、天空闘技場内の個室にクロゼを寝かせた後、珱嗄とヒソカの試合となった。ヒソカは鋭利なトランプで自身の左腕を深く損傷している。

 負傷じゃない、傷で機能を損なっている腕となっているのだ。ここではトランプを刃物と呼称するが、左腕に突き刺さった刃物は皮膚を切り破り、筋肉を切り裂き、神経を切断し、骨に当たって止まったのだ。故に、実の所ヒソカの左腕は全くと言って良いほど使い物にならない状態となっていた。精々、失う覚悟で楯にする程度だろう。

 

 だからという訳ではないが、ヒソカがその怪我をオーラを使って塞いだとはいえ、珱嗄はこの勝負において左腕を使うつもりはなかった。無論、応急措置で怪我を塞いだ程度の腕が使えるようならば、存分に使って貰っても構わないとさえ思っている。

 

「そうだとしても、俺は左腕を使うつもりはないのだから」

 

 全くと言って良いほど、舐め腐っている。クロゼを負傷したとはいえあの状況下で打倒してみせたヒソカに対して、片手を使わないなんて。

 

「いいのかいオウカ♦ 幾ら念が使えるようになったからって、僕としてはまだ負けるつもりはないよ♡」

「あはは馬鹿言うなよ今まで俺に何回負けたと思ってんだ」

「本気でやってると思ってたのかな?」

「まぁ前口上はどうでもいいんだよ。この勝負は殺し合いというには程遠く、平凡に終わるさ。ただ単に、お前の負け星が一つ増えるだけだ」

 

 珱嗄の瞳と、珱嗄の言葉には、全く裏が無かった。本当に、本気で、そう思っているのが分かった。珱嗄は本当に片手を使わずヒソカに勝てると思っているのだ。本当に舐めていて、本当にやってのけそうなオーラを感じる。

 

「試合を始めて下さい!」

 

 審判がそう言うと、ヒソカはクロゼと戦った時と同様に、トランプを投げた。そして、珱嗄がそのトランプを対処する隙に、追撃を喰らわせようと近づく。

 だが、トランプが珱嗄に接触する瞬間。そして、ヒソカが珱嗄まであと一歩踏み込めば届く位置に迫った瞬間。

 

「――――ッッ!?」

 

 ヒソカは頭が揺さぶられる様な衝撃にぶつかった。しかも、『後頭部』から。

 

「ん、成功かな?」

 

 そして、ヒソカが揺れていた視界を取り戻した時、珱嗄は先程した場所には居らず、何故かヒソカが走りだした方、つまりヒソカの約5m後ろへと着地していた。

 

「何が……♦」

「あれ? 見えなかったかな?」

 

 珱嗄はそう言ってゆらりと笑った。ヒソカには珱嗄が何をしたのか、全く分からなかったのだ。勿論、ギャラリーの人々も分からなかった。ただ結果だけを述べるのなら、ヒソカが珱嗄を中心として半径2m程まで迫った瞬間、珱嗄がその場から消え、ヒソカの後ろに着地した、ということだ。

 着地した。というからには『跳んだ』ということだ。

 

 ヒソカが予想するには、珱嗄はトランプを跳ぶ事で躱し、ヒソカを飛び越え、着地したのだ。そして、ヒソカの真上を通る際に踵で後頭部を蹴った、という感じだろう。

 

「でも……それだとおかしいな♡」

「何が?」

「僕はこれでもかなり長身だ……それを飛び越えつつ、踵で蹴りながらそんな遠くまで移動するなんて、どんな身体能力を持ってようが不可能なんだ♦」

 

 そう、おおよそ7mを助走無しで跳躍し、途中で人の頭を蹴る。これはどんなに身体能力があろうと物理的に不可能だ。まず、人の頭を蹴る時点で跳躍の勢いは失われ、着地するにしてもヒソカの真後ろになる筈なのだ。

 

「となると……発かな?」

「大正解、とはいっても……まだ発展途上で未完成な訳だが―――仮名として挙げるなら……『蜃気楼(リコイルミラージュ)(仮)』だ」

 

 オーラを変化系の性質で『空間密度を急激に変化させる』性質へと変化させ、珱嗄を取り囲むよう壁の様に作りあげたオーラで光を屈折、さながら蜃気楼と同じ現象を引き起こしたのだ。そして珱嗄はその壁を崩壊させるようにして消し、それと同時にヒソカの後頭部を蹴り、そのままオーラを足元へ適当に具現化、それを足場にして後方へと二度跳び、着地したというわけだ。

 

 とはいえこれはまだ未完成で試験的な技である。

 

「まぁ今回は空中でオーラを足場に出来る、と分かっただけで十分か………」

「何を言って……♦」

「それじゃまぁ……終わりにしようかぺロリ……ヒソカ」

「ぺロリシャスって言おうとしたよね今? 君の中ではアレか? 僕=ペロリシャスなのかな?」

「そろそろマンネリ化するかね?」

「しねぇよ! いいよもう、一生そのネタを抱えて行くよ!!」

「おい著作権って知らねえのか。金払えよ」

「理不尽!!」

 

 ヒソカが突っ込むと、珱嗄はその隙にヒソカの隣へと踏み込み、顔を掴んで地面に叩き付けた。そして立ち上がろうとしたヒソカの顎を掠める様に蹴る。軽い脳震盪を引き起こしたヒソカはそのまま立ち上がれず、ネタとしか言えない結果で敗北したのだった。

 

 


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