◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

21 / 74
お金×修行

 珱嗄はクロゼとの勝負を終えて、50階に送られた。念能力を使えるというのが要因となって、最初にしてはかなり高い階へと送られたようだ。ヒソカも同様に50階へと送られた。実はヒソカは200階に行く事が出来る条件を揃えているのだが、珱嗄を見ていたいという事もあって、もう一度上る事にしたらしい。

 念能力という要素は、やはりというか、この世界においてかなりの実力者である事を証明する。何故なら、オーラを纏えるだけでも一般人の拳を無効化する程の防御力を発揮するからだ。それこそ、クロゼの様な『衝撃透し』の技術でもない限り不可能なのだ。

 また、珱嗄に敗北したクロゼは30階へと送られた。珱嗄としてはそれもまぁ仕方ないと思ったが、それは別として一つの確信が有った。

 

「アイツはすぐに上がってくるさ」

 

 呟くと同時に、ゆらりと口元を歪める。試合の最後、珱嗄の一撃はオーラを纏った攻撃であり、珱嗄としては必要以上にオーラを込めた蹴りだった。それを喰らったクロゼは、気絶した後放出していたオーラが一気に増えた。それはつまり、その蹴りのオーラに触れたショックで、クロゼの精孔が開いたということだ。

 念能力が使えるようになったということなのだ。『纏』が出来るかどうかは彼の力量次第だが、珱嗄はクロゼがそれを行なう事が出来ると思っている。あのままオーラを放出し続ければ、何れ生命力が無くなり、死に至るだろうが、そこまで来ればおそらく無意識にでもやってのける筈だ。

 

「それで、どうするのオウカ?」

「まぁ対戦の予定はないが……それよりヒソカ、コレなんだ?」

「え」

 

 珱嗄の手にあるのは、珱嗄がこの世界で全く見た事が無いものだった。先程試合が終わった後に係員に渡されたのだが、珱嗄はソレが何か分からなかった。

 

「えーと……オウカ、お金って知ってる?」

「知ってるよそれくらい」

「コレはお金だよ♦ しめて152ジェニーだね♡」

「………おお!」

 

 珱嗄が持ってたのは硬貨だった。これは、この世界のお金である。単位はジェニーであり、日本円で約136円となる。だが、珱嗄はこの世界に来てから現在までの18年間、お金というものを持った事がない。全てサバイバル生活だったからだ。

 

「すげえ! これでお金か! 152ジェニー、だっけ? ヒソカ、これで何が買えるんだ?」

「え、えーと……例えばそこの串焼きとか……♣」

「マジでかすげぇなオイ!」

 

 結果、珱嗄はとてもキラキラした眼でお金を握り締め、そう言った。初めてお金を持った感覚に、酔いしれている。それほどまでにこれまでの生活が大変だったのか、それは定かではないが、ヒソカを引かせるほどの歓喜の様子は、中々に珍しかった。

 

「……オウカ、僕のもあげるよ♡」

「え、良いのか?」

「うん……いいよ♤」

「さんきゅーヒソカ! それじゃ俺串焼き買って来るわ!」

 

 珱嗄はとても嬉しそうに二人分のファイトマネーを握り締めて串焼き屋へと走って行った。

 残ったヒソカはそんな珱嗄の姿を見て、少し哀愁漂う雰囲気を浮かべる。

 

「お金も見たこと無い生活を送ってたんだ……♦」

 

 ヒソカは珱嗄に対して、もう少し優しい対応しようと考えを改めるのだった。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 一方珱嗄は、宣言通りこの世界で初めてのお金を使った買い物をしてご満悦だった。串焼きを二本手に持ち、はぐはぐと頬張っている。

 だがそこへ、試合で珱嗄に負けたクロゼがやってきた。どうやら蹴られた腹にはまだ少しダメージが残っているようだが、動く分には問題ない様だ。

 

「よう」

「ん? むぐむぐ……んっ、く……ふぅ、ようクロゼ」

「おう」

「何か用か?」

 

 珱嗄はクロゼの身体を見る。その身体からはオーラが漏れ出ており、中途半端にだが『纏』が為されていた。どうやら、本当に無意識の内に『纏』をやってのけたようだ。とはいえ、誰の教えも得ていないクロゼだ。完全に『纏』が出来ていない

 

「ああ………なんか知らねぇけど、お前との試合から俺の身体から何か出てんだよ」

「へぇ」

「お前が言ってた俺の知らない技術……ってのはこの事か?」

「まぁそうだな。念能力と呼ばれる力だ」

「……はぁ……なら責任もってこの使い方を教えろよ」

 

 クロゼの言う事は、理に適っている。珱嗄が押しつけた技術なら、珱嗄が責任もってその正しい使い方を教授するべきだろう。

 

「……仕方ないな……俺もコレ習得してそう時間が経ってる訳じゃないけど……基本的な事は教えてやるよ。そんで、俺のいる階まで昇ってきたらまぁ応用的な事も教えてやる」

「成程……全く、めんどうな事になってきやがった」

「だが、確実に強くなれるぜ?」

「………ま、そう考える事にしよう。強くして貰おうか、この俺を」

「強くしてやるよ。他でも無い、この俺が」

 

 珱嗄はそう言って、クロゼに念について自分が知っている基本的な事を叩き込む。その日、陽が落ちて日を跨ぐ頃まで、珱嗄によるクロゼの修行は続いたのだった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。