◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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闘技場×新キャラ

 天空闘技場に向かった珱嗄とヒソカは、実のところ長い道中の中で、そこまで仲良く進めた訳では無かった。

 天空闘技場まで掛かった時間は、およそ三日間。その間で、珱嗄とヒソカは幾度となく殺し合いを繰り広げている。原因は、珱嗄のオーラ操作能力が日に日に成長していくのを見て、堪えられなくなったヒソカの襲撃。毎回夜這いを掛けるかのように珱嗄を襲撃し、戦闘になっているのだ。

 とはいえ、どちらかが死ぬ事も無く、毎回珱嗄が勝利する事で終着を見ている。ヒソカの死が回避されるのは、ひとえに珱嗄が殺さなかったというだけの事なのだ。

 

 そういう訳で、ヒソカはまだしも、珱嗄は日々警戒心を張り詰めて歩く破目になっている。この三日間で珱嗄は、ルパンダイブしてくるヒソカに対処しなければならない日常に、少し慣れてしまった。

 

「はぁ……全く、逐一面倒な変態だなぁ……」

「…………♦」

 

 そして、珱嗄達はそんな過程を踏みながらも天空闘技場に到着していた。珱嗄は少し疲れた様に歩んでおり、ヒソカはそんな珱嗄に引き摺られながらぐったりしていた。ここまでの連戦連敗、殺し合いの中で負った怪我は戦い続けていた三日間、増え続ける。しかも、その怪我は一晩経てば完治する訳ではないのだ。増えた怪我は確実に身体の動きを悪くし、敗色を濃くさせる。そんなループを三日間で何回も繰り返したのだ。負けた奴はこうなるのが当然だ。

 

「さて……ここが天空闘技場か、中々良い感じに高い建物じゃないか」

 

 珱嗄はそう言って額に手を当てて、天空闘技場の頂上を見上げた。塔にぶつかって音を立てながら通り抜けて行く風が、珱嗄の身体を通り抜けて行く。

 

「しかもこの行列……面白そうだ」

 

 珱嗄の目の前には、挑戦者達で作られた行列があった。長蛇の列は、塔から随分離れた位置まで伸びていて、そこから一旦折れ曲がってまた塔へと伸びている。天空闘技場に挑戦する人間の数を見れば、この世界においてどれだけ戦いが常識的な物なのかが理解出来る。

 

「さ、行くぞ。ヒソカ」

「…………♡」

 

 珱嗄はヒソカを引き摺って最後尾へと歩き出す。ヒソカは引き摺られながら、震えた腕でグッと親指を立てた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 珱嗄とヒソカが最後尾に並び、受付まで辿り着くまでに掛かった時間は、おおよそ三時間という決して短くはないものだった。珱嗄の体感時間的に言えば、歩いて好きに進むことが出来ない分、三時間よりも随分と長い様にも感じた。

 

「はぁ……面倒臭いな此処は」

「お待たせしました。それでは此方の用紙に必要事項を記入して下さい」

「はいよ」

 

 珱嗄は受付の娘に貰った用紙を見て鉛筆を動かした。

 

 名前:オウカ

 性別:男

 職業:ハンター

 戦闘スタイル:蹴闘術、拳闘術、念能力

 

「っと」

「えーはい、承りました。それでは奥の方へとお進み下さい」

「うーい」

 

 受付の娘に参加証明証的なものを貰い、言われたとおりに進む珱嗄。その進む先の途中で、ヒソカがいつもの様に立っていた。服はボロボロで、空気に晒している腕や腹部には包帯や湿布が施されていた。どうやらここの設備で応急処置を行なったらしい。

 

「やぁオウカ♣ 受付は済んだみたいだね♡」

「まぁね。お前は随分と痛々しい姿になったな。帰るのか?」

「いやこの姿にしたの君だよね? しかも怪我人の僕を引き摺り回すという鬼畜の所業には流石の僕も引き気味なんだけど!」

「襲い掛かって来たのが悪くね?」

「初日はまだ僕の方が優勢だったと思うんだけどなぁ♦」

「人は成長するんだよ」

「早過ぎだろ」

 

 珱嗄の言葉に若干言葉遣いも荒れてきたヒソカ。ツッコミに回ったことでそろそろ余裕を感じるのも難しくなってきたらしい。

 珱嗄はそんなヒソカに対して、楽しそうに笑った。

 

「さて、この番号はハンター試験を少しだけ彷彿とさせるね」

 

 珱嗄がそう言って手に取ったのは、先程の受付でもらった参加証明書代わりの番号札。そこには4023番と書いてあった。どうやらこの天空闘技場において、珱嗄の番号は4023番ということになるようだ。

 

「続いて、4023番と4056番の選手の対決です。闘技場へ上がって下さい」

 

 ヒソカの立っているその先、そこには某天下一武道会に使われそうな闘技場があり、そこで受付を終えた挑戦者達がタイマンで戦い、何処の階へ上るかを査定するようだ。

 

「さて……行きますか」

「頑張ってね、珱嗄♡」

 

 珱嗄は首をコキっと鳴らし、ゆらゆらと闘技場へと歩いていく。そして、対戦相手の屈強な大男と視線を合わせた。思わずゆらりと笑みを浮かべる。

 そして、その大男も十分な実力者だったのか、珱嗄を見て油断はしなかった。寧ろ、珱嗄と視線を合わせた事で互いに実力を有る程度予想する事が出来ていた。

 

「ははは……俺も随分と運がねぇな」

「?」

 

 大男がそう呟くのを聞いて、珱嗄は首を傾げた。

 大男は珱嗄の佇まいに、隙を見つけられなかったのだ。しかも、珱嗄は自然体で佇んでいるだけ。つまり、無意識下で隙が無いという事だ。そんな芸当が出来る者は、有数の実力者だ。

 

「まぁなんだか知らないけれど……よろしく」

「おう、ま、一矢報いるさ」

 

 男はそう言って、珱嗄はゆらりと笑った。

 

 


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