◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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天空闘技場編
閑話×切っ掛け


 ハンター試験を無事合格で終えた珱嗄は、次なる目的地に迷っていた。原作知識はコミックス1巻分しかないのだ。この先どんな展開が待ち受けているのか、珱嗄も知る由がない。

 といっても、目的くらいは一応ある。念能力の強化と、戦闘能力の上昇だ。良くも悪くも、この世界は戦いが頻繁に起こり、頻繁に人が死ぬようになっている。つまりそれは、主要人物であろうとなかろうと、戦えない奴から死んでいくという事だ。故に、戦闘力の上昇は生きて行く上で必須なのだ。

 

 現在の珱嗄は、神様から貰った強靭な肉体を13年近く鍛え抜いただけで、実戦経験はこの試験中にいくらかあるだけだ。しかも、その全てがしっかりとした勝敗が付く前になぁなぁで終わっている。ネテロとの勝負に関しては、かなり早い段階で珱嗄が負けを認めている。

 つまり、珱嗄は実質、ちゃんとした実戦経験を積めていない。命のやりとりをしていない。それではこの先、生き残る事は出来ないだろう。それに、実はネテロの判断はかなり間違っている。

 

 飛行機の中、ボールを取り合ったあのゲームで、珱嗄とネテロの勝負があのまま続いていた場合、珱嗄は幾ら経ってもネテロからボールを奪う事は出来なかっただろう。何故なら、珱嗄は戦闘における『動き』が出来ていないからだ。あのまま長引いていれば、珱嗄は動き慣れた動作を繰り返し、ネテロはその動きに慣れていた筈なのだ。つまり、それは実力者であるネテロからすれば簡単に対応策を練る事が出来るということ。

 そうなった場合、珱嗄は幾ら速く動いたとしても、念能力という技を使えるか使えないかという差以前に、経験の差で負けていた。身体能力の高さだけで勝てるほど、戦闘というものは、命のやり取りというものは、死合いというものは、甘くない。

 

「となると……やっぱり実践を積むのが一番良いな」

 

 そして、それは珱嗄も十分理解していた。ネテロとの勝負の中、次何をすればいいのか、どうすればいいのか、全然分からなかったからだ。とりあえず突撃して、なんとなく二撃目をつないで、躱されたらどうするかを考えられない。あの時珱嗄がネテロにあそこまで威圧感を与えた理由は、『ネテロが攻撃しないルールだったこと』と『珱嗄の身体能力がネテロが見て来た中で異常に高かったこと』が絡んでいる。

 つまりは、初見でのインパクトが非常に高かったからだ。実際はそんなでもなかったのだ。

 

「さて……どうしたものかな」

「やぁオウカ♡ どうかしたのかな?」

「ああ……へんた……ヒソカ」

「今変態って言い掛けたよね? というかそこまで言ったら最後まで言い切ってよ! 変に気を利かせないでよ余計に辛くなるよ!?」

「何しに来たんだ」

「スルーかい? 僕がツッコミ入れるって結構レアだよ? 分かってる?」

「良いから言えよ」

 

 珱嗄の言葉にヒソカは眉を潜めた。ヒソカだけに。

 そして、少し肩を落とした後、用件を告げた。

 

「実践が積みたいって言ってたのが聞こえて来たからね♠ それなら良い情報があるよ♡」

「ん?」

「天空闘技場、って知ってるかな?」

「んー、知らね」

「ま、そうだろうね♡」

 

 ヒソカは珱嗄に天空闘技場について解説し始めた。

 まず、天空闘技場というのはその名の通り、参加者が闘技場で試合をする場所だ。そして、現実世界の格闘技の様に、ファイトマネーというものがあり、勝ち続けて行けば最高でも、2億以上の金が手に入るシステムになっている。

 そして、そのファイトマネーは1階に近いほど少なく、190階に上るほど多くなっていく。ちなみに、190階を勝つと、2億の大金が手に入り、200階に進む事が出来る。200階以降はファイトマネーは出ない。だが、200階以上は念能力者の巣窟となっており、身体に何らかの障害を残す危険性も出てくる。そして、最終的に251階の2年に一度行なわれるバトルオリンピアで勝利した者は、一生掛けても浪費出来ない富と名声を得る事が出来ると言われており、また誰もが羨む世界で最も高い私邸を得られるのだ。

 だが、勿論のことそこまでの道のりで立ち塞がるのは、実戦経験豊富な念能力者達だ。つまり、

 

 

「面白い」

 

 

 実践を積みたい珱嗄からすれば、うってつけの修行場所だ。しかも、念能力者が相手と来た。これは是非にでも行くべきだろう。

 

「ヒソカ、その天空闘技場―――何処にある?」

「君ならきっと興味を持ってくれると思ってたよ♡ 僕もこれから向かう所なんだ……一緒にどうかな♡」

 

 ヒソカが珱嗄より二三歩前に出て振り返り、手を伸ばしてそう言った。珱嗄はそのヒソカの誘いに対して、ゆらりと笑った。そして、伸ばされたヒソカの手をぱしっと叩いて歩きだす。

 

「乗った。しばらく二人旅と行こうか、変態」

「う~~んっ、やっぱり最高だね、オウカ♡」

 

 珱嗄とヒソカは歩きだす、目指すは天空闘技場。目的は、200階以降で待ちうける、念能力者達の打破、そして実戦経験を積むこと。

 そして、珱嗄はそこで初めて、この世界で未だ見た事も無い物を手に入れる事になる――――

 

 


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