◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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四次×試験×終了

 四次試験が始まってから、おおよそ5日が経過した。プレートを揃えて合格域に辿り着いている者も数多く出て来た所だろう。また、ハンター試験では生死の保証はないのでこのサバイバル中に死んだとしても文句は言えない。つまり、死んだ者も少なからずいると見て良いだろう。

 珱嗄はその状況下で、特に興味も無く、ゆらゆらと散歩していた。着物をはためかせ、草木を掻きわけながら進む。

 

 あの3日目からの2日間。珱嗄は特に誰かと接触していない。というのも、珱嗄は円を広げて移動している故に、人と会わない様に動き回れるのだ。とはいっても、珱嗄は移動しながら円を広げる、というのにあまり慣れていないので、その効果範囲は移動中に限り、半径100m程まで狭まっていた。

 

「一週間か……中々遠いねぇ……面倒だ」

 

 呟きながら歩く。この森の中にはどうやら、毒蛇や毒蜂、蛭や獣まで、様々な生物がいるらしく、死の香りがする様なモノは、そこらじゅうに転がっていた。とはいっても、何故か危険生物は珱嗄には近寄って来なかった。どうやら、珱嗄の円に入った事で、無意識に珱嗄が自分よりも強大な存在だという事を理解したらしい。蛇も蜂も、基本的に繊細かつ警戒心の強い生物だ。自分に死の危険が迫っている時は、速やかに撤退を選ぶ慎重さを兼ね備えている。珱嗄を刺す、または噛んだりした時には、自分の死もあり得ると踏んだのだ。

 故に、珱嗄の歩く道中に毒を持った蛇等は近寄って来なかった。逆に、猪や兎などの動物はそんな事は無かった。兎はそこそこ警戒心を持っているが、それはある程度の物で、珱嗄を目視して初めて逃げ出すのだ。そしてそれは、珱嗄からも目視されるという事だ。それでは遅すぎる。

 また、猪は警戒しつつ、その生物を殺してしまおうと考える。危険な存在を早々に排除したいのだ。また、自分に危害を与えてきた場合は、問答無用で頭に血を昇らせて強弱関係無く攻撃する。

 

 そんな動物達は、この一週間の間ありがたく珱嗄の腹の中に収まった。幾ら強いからといって、食べなくても寝なくても死なないという訳ではないのだ。

 

「さて」

 

 そんなわけで、珱嗄はその手に持っていた兎の干し肉を口に放り込みながら、立ち止まる。そして100mほどまで狭くなっていた円に集中し、再度限界ギリギリの、半径500mほどまで伸ばした。

 すると参加者が数人、円に掛かった。ここ5日間程人と会話もしていない珱嗄は、そろそろ人に会いに行こうと考えたのだ。とりあえず、円の範囲内で一番オーラが多い、または念が使える者を探す。まぁ当然のこと、ヒソカを見つけた。

 

「じゃ、行きますか」

 

 珱嗄はそう言って、ヒソカの方向へと着物をはためかせて足を進めた。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 

 一方ヒソカもまた、6点分のプレートを集め終えて無事に合格点を稼いでいた。といっても、この5日間でヒソカがターゲットになったゴンが襲撃を仕掛けて来たり、ヒソカが返り討ちにして自分のプレートを渡したりと重要っぽいライバルイベントがあったのだが、そこは割愛。

 ヒソカも珱嗄同様に、一週間後の試験終了時刻を待つばかりだった。

 

「といっても、残りはあと1日と少し……退屈なのも事実だね♦」

 

 呟くヒソカ。彼はやはりというか、その性質は戦闘狂という所にある。この5日間で彼は4人もの参加者を惨殺しており、その4人の内一人がターゲット、そして残る3人から1点ずつプレートを奪い取っている。故に、計6点なのだが、それ以降彼は参加者に遭遇していない。勿論円を広げる事も出来るのだが、いかんせん彼の円の範囲は珱嗄みたく馬鹿げた範囲ではない。周辺を探った所で肉眼で見た方が早いのだ。

 

「おーすヒソカ。5日ぶり」

「オウカ♡ うん、久しぶりだね♦ どうしたのかな?」

「いやまぁ見つけたから話しかけただけだよ」

「ふーん……まぁいいよ♣ 僕も暇してた所だしね♡」

 

 とそこに珱嗄がやってくる。ヒソカとしては今は戦いたくはない相手だが、話し相手とするのなら大歓迎だろう。元々、ヒソカはその容姿の怪しさと言動の変態さから大部分の人々から避けられるのだ。こうして珱嗄の様に気軽に話し掛けてくる相手、というのは中々大切にするべき存在なのだろう。また、殺そうとしても中々殺されてはくれない相手でもあるのだし。

 

「で、どうよヒソカ。課題の方は」

「うん、一応クリアしたよ♠ ゴンに僕のプレートはあげちゃったから、少し手間だったけどね♦」

「ふーん……まぁ俺もクリアしたんだけどさ」

「やっぱり、君はクリアすると思ってたよ♡」

 

 珱嗄とヒソカは普通の会話を繰り広げる。適当な岩や丸太に腰掛けている故に、お互い戦闘の意思はないようだ。ヒソカはそのことを確認して、内心ほっと息をついた。勝敗は別としても、今は戦いたくないヒソカとしては、珱嗄に戦意が無い事は幸運だった。

 

「ってことはゴンは6点稼いだって事か?」

「僕のプレートがターゲットだったみたいだからね♦ 一応6点は稼げたんじゃないかな?」

「ふーん……まぁその後やられて無ければ、だけどな」

「大丈夫さ♡ きっとゴンは合格してくるよ♦」

「へぇ……まぁ、俺さっきゴン潰したけどな」

「何してんの君? さっきまでの会話の意味は?」

「嘘だよ」

「ここでそんな嘘を吐く意味!!」

 

 ヒソカが珍しく声を張り上げた。珱嗄はそんなヒソカを楽しげに笑った。すると、ヒソカは珱嗄のそんな笑みに毒気を抜かれたのかため息をついた。

 

「もうじき一週間だ。それまでちょっと念について教えてくれよヒソカ。基本的な事から応用的な事までで良いからさ」

「それ全部だよね? 要は全部吐けって事だよね?」

「分かってんなら早く言えよ変態」

「………♦」

 

 珱嗄の言葉にヒソカはがっくりと肩を落とす。

 

 そして、珱嗄がヒソカに残りの1日と少しの間、念について教えられていく内に、4次試験は終わりの時刻を着々と迎えるのだった。

 

 


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