◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》 作:こいし
ヒソカの使う力について、少し分かった事がある。
まず、あの力は特殊な性質を持つエネルギーを行使しているということ。それは、人体の強化であったり、攻防力の向上であったりだ。また、そのエネルギー単体での使い方も色々あるようだ。そして、まず俺はそのエネルギーに触れてみる事にした。ヒソカの拳を最大限威力を削った上で喰らってみた所、自分の中の何かの蓋が開いた様な感覚に陥った。
そして、ヒソカの身体を纏っているエネルギーが目視出来る様になった。つまり、これはあのエネルギーを目視するには、自分もある程度エネルギーが出せないといけないようだ。見れば俺自身の身体からエネルギーが溢れ出ているのが確認出来る。目視出来るようになったのはこのせいだろう。
「―――――!?」
「どうした?」
「………いや、何でも無いよ♡」
なにやらヒソカが驚愕した様な表情を浮かべているのだが、まぁ多分エネルギーが俺の身体から出たからだろう。だが……見ればヒソカはエネルギーを身体に纏わせており、俺の方は駄々漏れだ。これはエネルギーの浪費という事だろうか。俺の体内から出ているというのなら、その量は無限ではないだろうし。
「……纏う、ね」
「いく、よっ♦」
「おっと!」
ヒソカが罠ゾーンを走りぬけて俺に迫って来る。俺は考察を一旦中断してヒソカのトランプによる横薙ぎを上体を後ろに反らすことで躱す。そしてそのまま身体を倒し、地面に両手を着いてバク天の要領でヒソカの顎を蹴りあげた。
「ぐ……あははっ♡」
「っと………やっぱりか」
ヒソカには俺の攻撃がほぼ効いていない。小手先調べの牽制だからそこまで力が入ってる訳ではない物の、ここまでノーダメージだと少し面倒だ。やはり、あのエネルギーでの防御は中々強力だ。
ここは、俺がこのエネルギーを使いこなせないといけない。
「……まずは……纏う」
という事で、まずはヒソカと同じ様にオーラを纏わせることから始めよう。幸いなことに、このエネルギーは俺の思った通りに動いてくれる。これなら、纏わせる事は簡単そうだ。
必要以上のエネルギーは身体の中に収め、それでも漏れ出るエネルギーを身体の周囲に纏わせる。それを維持するのは少しばかり慣れが必要なモノの、これなら大丈夫そうだ。
(! ……自分でオーラを纏った……♡ なるほど、これは思った以上の逸材かもしれないね♣)
エネルギーを手に集中させたり、脚に集中させたりと具合を確かめる。とりあえず、この状態でどれほど強化されているのかを確かめてみよう。
脚に纏わせていたエネルギーを全て集中。そして、ヒソカ目掛けて蹴り抜く!
「おーーーっりゃああ!!」
「っ!?」
思った以上に蹴りの速度が上がっていた。ヒソカには躱されたものの、ヴン! と空気を切り裂く音が鳴り響いた所を見ると、確かに強化されている。
「―――え? ぐはっ……!?」
すると、ヒソカが後方へ吹き飛んだ。その胴体にはまるで刀で切り裂かれた様な傷跡が出来ており、不思議な事に血はあまり出ていなかった。
「………まさか、これは……」
あの傷跡と、この状況から考えてみると、これは攻撃によるダメージでは無く、現象によるダメージだと分かった。
所謂、カマイタチ。蹴りが空気を切り裂いて、通った部分を真空状態にし、紙一重で躱したものの。そこに触れたヒソカの胴体が切り裂かれた、という訳だ。まぁこの現象で切り裂かれるほど皮膚は柔じゃないのだが。そこはご都合主義だろう。
「……オーラによる強化攻撃をもうモノにするとはね♦ やるじゃないか♡」
ヒソカがそう言う。どうやらこのエネルギーはオーラと言うらしい。もしかしたらあのネテロ会長もオーラを使っていたんじゃないかと思えてくる。こんなチート使ってたのかあの爺。
そう思いながら、戦闘を続行しようとしたその瞬間―――
『はい! 丁度1000往復分の曲が流れ終わりました! 今生き残ってるのどれくらいいるー? あははっ! この放送自体聞いている奴いないかもしれないけど、まぁ生き残った奴は現れる通路から先に進んでねー!』
放送が流れた。どうやら考察している間に終わってしまったようだ。まぁ、例の力も初歩的な部分は使える様になったわけだし、後は伸ばして行くだけだ。別に勝つ必要はないだろう。
「じゃ、進むとしますか」
「うん♡ 残念♦」
残念そうな表情で肩を竦めるヒソカだが、その仕草がやけに似合っている所を見ると、本当に道化師っぽいなぁと思える。
「……そういえば」
俺は纏わせていたオーラを動かして俺を中心に広げてみた。ヒソカを覆いこむ程度まで広げると、ヒソカがどちらの足を踏み出しているのか、手を動かしているのか、鮮明に分かった。おそらく、あのネテロのクソジジイが使っていたのは、これだろう。俺が背後を取った後のあの反応、絶対これ使ってたな。
「オウカ、それは円って言ってね♦ オーラを広げて気配察知領域を広げる使い方なんだよ♡」
「へぇ……」
ヒソカが教えて来たので、俺は現れた通路を進んで行く間、ヒソカにこのオーラについて色々と質疑応答するのだった。