◇1 HUNTER×HUNTERにお気楽転生者が転生《完結》   作:こいし

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ネテロ×勝負

 ネテロの提案した勝負。それは、ネテロの持つボールを取り敢えず奪い取って見せろというものだった。また、ネテロの方は一切攻撃しないとの事。確実に舐められていた。故に、俺はゴンやキルアなら大丈夫かな? とも思っていたのだが、そうはいかなかった。

 ゴンの野生染みた動きでも、キルアの洗練された殺しの動きでも、ネテロどころかボールを取ることすら出来なかった。流石は最強のハンター、凄まじい強さと精神力を備えている。しかも、戦闘経験も豊富だろう。

 

「そういえば………実践はこれが初めてか……」

 

 俺はそう呟いた。俺が修行を始めたのは5歳の頃から、今は18歳故に、実質的な修行期間は13年となる。だがその間の実戦経験は無いのだ。つまり、これが初の対人実践。

 身体能力で言えば、劣っているという事は無いだろう。だが、いかんせん経験の差が大きい。どうしたものかな……。

 

「さて、おぬしはどうする?」

「………ふぅ……ま、やれるとこまでやってみますかね」

 

 俺は、構えた。特に名前も無い、一番動きやすい姿勢だ。集中力を高め、ネテロの手、足、頭、胴、腰、肩、首、全体の動きをしっかりと認識出来るように視野を広げた。

 

「―――ほぉ……」

「じゃ、行こうか」

 

 地面を蹴る。体勢を低くして、ネテロの懐に入った。そしてそのまま手に持ってるボールを取りに行く、が―――

 

「むっ……!」

「チッ……次!」

 

 ボールを上に投げられ、躱された。ネテロの動きは俺よりも若干遅いが、動きが読まれた。だが、そこから俺はくるっと回ってネテロが取ろうとしたボールに向かって蹴りを繰り出す。しかし、ネテロは蹴りの足を掴んで自分の身体を持ちあげた。そしてボールを手に収めると、素早い動きで俺から距離を取った。

 

「なるほどの……速度は申し分ない……全盛期のワシよりも速いかもしれん……が、まだ経験が足りんな。それに、一つ一つの動きの間に隙が多い」

「ふぅ……ま、こんなもんか。それじゃあ、次だな」

「いいぞ、向上心ある若者は伸びる」

 

 俺はそういうネテロに向かって駆け出し、今度は速度を上げて背後を取る。そしてそのままボールを狙うが、どういう訳かボールを右手から左手に持ち替える事で躱された。今のは確実に死角だったはずだ、どういうことかな……?

 とりあえず、ネテロには異常な程の気配察知能力があると見よう。

 

「おらっ!」

「なっ……!?」

「取った!」

「いや、まだじゃ!」

 

 俺はネテロの足を払って体勢を崩し、再度ボールを取りに行くが、ネテロは逆に倒れる体勢を敢えて自分から倒すことで地面に手を着き、腕の筋肉で上空へと飛び跳ねた。勿論、ボールを取る手は空を切る。

 

「うーん……やっぱり無理かな」

「よっと……ほっほっほ、まだまだじゃな」

「んー、もういいや。これ以上やっても取れなさそうだし……諦めて体力回復に努める事にする」

「ほぉ、良いのか?」

「わはは、まぁ今日の所は引き下がるさ。でも、次やる時はその顔遠慮なくぶん殴るさ」

 

 俺はそう言って、またゆらりと笑った。なんというか、この笑い方は随分としっくりくるな。まぁそんなわけで、俺はネテロとの勝負―――というかゲームに負けた。やっぱり経験の差は覆らないみたいだ。

 とりあえず、ハンターになった後は経験を積もう。そう思い、俺は部屋を出て行った。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ネテロside

 

 

 ワシは正直、あの三人がどれ程の物か試して遊ぶつもりじゃった。見つけたのも偶然じゃったし、特に思い入れのある面子という訳でも無かった。

 だが、思った以上だったな。

 

 今も部屋の床に転がっておる、黒髪がツンツンした少年……ゴン=フリークスじゃったか。彼は強い精神力と力強い意思を持っておる。それに、どこか野生染みた身体能力はこれから先、大きな可能性を感じさせてくれた。将来はかなりの実力者になるであろうな。

 それに、白髪で癖っ毛な少年、キルア=ゾルディック。あの暗殺一家ゾルディック家の人間なだけあって、その動きは経験が積まれ、洗練されたそれじゃった。それに、速度で言えばゴンを大きく上回り、小回りの利く動きは流石というべきじゃろうな。この少年もゴンと同じく将来が楽しみじゃ。

 

 じゃが、それ以上に―――あの男。オウカじゃったか……あの男は規格外の素材じゃった。あの身体能力は驚嘆に値する。小さく『円』を広げておったおかげで背後に回られた時は反応出来たが、『円』を広げていなかったら恐らく取られておったじゃろうな。それに、あの蹴りの威力……全盛期のワシが強化系のオーラを纏って攻撃した時程の物じゃった。しかも、アレでいて『念』を一切使っていないと来た。強いを通り越して、異常な強さ。

 おそらく、『念』を使えていたらワシは初手で取られておったじゃろう。それに、引きさがってくれたから良いモノの……あのままやりあっておったら手加減するのは無理じゃっただろうな。

 何故なら、ワシが奴の動きを見てアドバイスした後の最後の動き……一動作から次の動作までの隙が殆ど無かった。あの伸び様は、本当に異常だ。指摘した事を直ぐに実行出来るセンスと、規格外の身体能力、そして念を使わずにあそこまで動ける戦闘能力……この先、奴が念を使えるようになって、経験を積んだなら―――――……

 

 

「化けるかもしれんな……これは楽しみじゃの」

 

 

 ワシよりも上の最強の領域、そこに奴が辿り着いた時は―――改めて挑ませて貰おう。ワシが目指す最強は、まだまだ上の領域にあるのだから。

 

 

 


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