Belkaリターンズ   作:てんぞー

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英雄完全殺害マニュアル-7

 軽く欠伸を漏らす。

 

「ふぁーぁ……眠いな……」

 

 公園のベンチに座って、日向の中で温まる様に背中を預け、全身で太陽の光を浴びていると軽くだが眠気が襲い掛かってくる。今朝は襲撃もなかったため、非常に平和に時間を過ごせている為、眠くなるのもしょうがないのかもしれない。が、それを退屈と感じてしまっているあたり、やはり人生にイベントを求めるタイプの人間なのだろうなぁ、と自己分析を行う。視線を横へと向ければ、あいている一人分のスペースを占領する様に少しだけ体格の大きい黒猫が体を丸めながら温まる様に目を閉じていた。飼い主にペットは似る、という事だろうか。まぁ、それも悪くはないだろうと思いつつ、再び欠伸を軽く漏らす。軽く落ちてきたサングラスを押し上げて位置を元に戻し、このまま眠ってしまおうかなぁ、と一瞬だけ悩むが、近づいてくる気配に一瞬で脳が覚醒を促し、完全に眠気を払い除けた。ただ姿勢を変えるのはめんどくさく、そのまま待機していると、

 

「先生、終わりましたー! お待たせしました!」

 

 高町ヴィヴィオがSt.ヒルデの制服姿で比較的に学院に近いこの公園内のベンチへとやってきた。予め放課後に鍛錬したいとヴィヴィオが言っていたので、こうやって動く事の出来る場所で待っていたのだ。放課後に関してはほかの学生の目が面倒だから特に接触する事もなかったのだが―――何やら、ヴィヴィオの瞳には闘志が見える。それに押されるような形で承諾してしまった。その為、平日の日中からこうやって、鍛錬の出来る、魔法の使用許可の出ている公園で待っていたのだ。

 

 これで先日の様な逮捕は発生しない―――おのれ管理局。この恥辱は忘れないぞ。ついでにハイディのお宅訪問の機会を失ったことも絶対に忘れない。

 

 そんなどうでもいい恨みを抱きながら、走ってきたのか軽く汗をかいているヴィヴィオの姿を見て、これはウォーミングアップいらないかねぇ、なんて事を考えながらヴィヴィオの姿を見て、軽く首を捻る。闘志が満ちているのは解る。やる気があるのも見える―――だがそれにしては妙に自信をを持っている様に見える。ふむ、とつぶやきながら答え、立ち上がり、

 

「なんかやる気で満ちてるけど……なんかあったか?」

 

「ふっふっふっふ……それは手合わせの時に教えますよ! とりあえずウォーミングアップ、軽く走って済ませてきたので早速動きましょう!」

 

 そう言いながらカバンをベンチの上に下ろし、直ぐ傍のフィールドへと向かってヴィヴィオが駆け足で移動する。両手を折ったのに、それでも一切気にする様な様子を見せずに付き合ってくるあたり、その信念は本物なのだろう。こうなってくると彼女を無碍にする事も出来ない。いよいよ、此方も本気を出して付き合うべきだなぁ、そう思いながら猫へと視線を向ける。

 

「見張り宜しくな」

 

「……なぁご」

 

 いつも通り、めんどくさそうに鳴くと、ヴィヴィオが置いたカバンの上に上半身だけを乗せる様に移動し、守る様に位置についた。それを確認してから視線を組手用のコートへと向かったヴィヴィオへと向け、既に彼女が白い上着に黒いインナーのバリアジャケット姿へと変わっているのを確認した。やる気があるなぁ、と確認しながら歩き、眠気を完全に頭の中から吐き出すように短く深呼吸し、それが終わる頃にはヴィヴィオの前方、五メートルほどの距離が空いた場所に立っていた。

 

「今日は物凄く調子がいいのだ―――一撃通しますよ!」

 

「お、俺を殺しに来るとは()る気満々じゃねぇか。先生は生徒の殺意を大いに肯定しますよ―――攻撃に露骨に乗せない限りは。慣れると読まれるからな!」

 

「あの、それ。一部の特殊すぎる人たち専用なんだと思いますけど」

 

 笑いながら軽く構える。と言っても、アームドデバイスやストレージデバイスの類はもう、ヴィヴィオ相手には抜かない。武器の基本的な対処法に関しては一週間、ノンストップで体に直接叩き込み続けた。ヴィヴィオの才能であればそれを記憶し、才能が勝手に必要な時に組み上げて緊急回避に回してくれる。本格的に経験を積み上げない限りは、これでまだ大丈夫だ。だから一番相手をしなくてはならない拳を相手に、徹底的に経験を積めるように此方も無手でヴィヴィオの相手をし始めているのが鍛錬の近況だ。

 

「……ま、今日は見ている人間が多いから骨折ったり、吐くほど強く殴ったりしねぇから安心しろ。だけどそれ以外のルールは基本一緒だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()事だ。勝利を考えろ。勝てなくても勝つ方法だけを考えろ。そして―――」

 

()()時は一撃で確実に仕留める、ですね」

 

「グッド! 今のお前じゃあ毒を盛っても俺は殺せねぇからな、一撃一撃、遠慮する事なくぶち込んで来いよー」

 

「もう、そこらへんの遠慮は捨てました。考慮するだけ無駄だって悟りましたし」

 

 少しだけ遠い目を浮かべてからすぐに普通の表情にヴィヴィオは戻った。此方の事を考えるだけ無駄だと何度もぶっとばして直接叩き込んでやったのだ、どんな馬鹿だったとしても学習するぐらいにはそれは。そしてヴィヴィオは優秀な生徒だ、教えれば教えるほどそれを学習してゆく。教えがいがないとも言えるが―――それはまた別の話だ。自分も自分でそこそこ充実感は感じている。

 

「ほんじゃ―――」

 

 かかってこいと言葉を吐こうとしたその瞬間、此方の意を突こうと、ヴィヴィオが迷う事無く強化されたその肉体で大地を蹴り、軽く踏み込みに使った大地を砕きながら前へと飛び出してくる。その動きは評価するなら―――()()のだろう。まるで重戦車がバイクのスピードで突っ込んでくるような、そんな威圧感を正面から受ける。きっとそれは間違いではない。今、目の前から踏み込んでくる少女の姿はいつも通りだが、

 

 その実纏うバリアジャケットと強化魔法は先日目撃したそれよりも遥かに効率化されている。

 

()()()()にゃぁー。まぁ、喋り終わるのを待たない卑劣さは悪くないぞ」

 

「あぁ、やっぱり対応される―――」

 

 踏み込みと共に放たれる右ストレートは素早く、砲弾を思わせる迫力を伴っており、初期に繰り出されたそれよりもヴィヴィオの動きに最適化され、無駄が減っている。その為、素早く、短く、引き戻しやすくなっており、ストレートが伸びきる前に引き戻し、連動して次の一撃へと踏み込めるように出来上がっている。その完成度はなかなかに高い。いや、ヴィヴィオの動き全体から見ても踏み込みからの右ストレートの完成度は非常に高い―――それはヴィヴィオが性格的に、そしてスタイル的に踏み込みから必殺の一撃を叩き込む事を得意としていることだ。故に、この一撃は非常にレベルが高く、

 

 あしらう様に右手でたたきながら流し、追撃の掌底を叩き込もうとする動きに、素早く連動の動きを絡める事が出来る。動きの完成度を高めるという行動は威力を上げる事ではない―――次に繋げ、確実に敵を殺すという力を生み出して行く行動だ。それを求め続ける行為が()()()()()()()()()のだ。

 

「動きが何時もよりも()()な―――」

 

 受け流すヴィヴィオの腕が強い。そう感じ、何時も受け流すときよりも少々強く力を籠め、腕を捻りあげる様に外側へと弾けば、合わせる様にステップをとりながらダッキングを合わせ、外へと踏み出しながら捻られる腕を戻しつつ、逆の拳を振りぬいてくる。牽制だ、それは本命ではない。一撃目でつぶせなかった以上、最後の一撃以外は全て牽制と段階的なものへと変わって行く。そういう風に教えている。

 

 戦いを決めるのは一撃目、そして最後の一撃だ、と。だから一撃目で殺せなかった場合、最後の一撃への道を作るのが戦いになる。

 

 それを理解し、ヴィヴィオの動きがシフトする。インファイトからの重い一撃を意識した必殺から、軽いステップを取ったヒット&アウェイの素早い戦い方へと。素早く踏み込みながら攻撃を繰り出し、全てのインパクトが乗る前に体を滑らせ、()()()()()()()()()()()。打撃の衝撃だけが短く空間に停滞し、体は回避の動きに入って範囲から逃れようとする。基本的なヒット&アウェイの動きだが―――この基本が重要なのだ。

 

 結局のところ、奥義やら秘儀なんて言われる動きも基本動作の延長線上でしかない―――基本が出来なければ応用なんて不可能だ。そしてその下積みがないと経験を反映することが出来ない。ヴィヴィオの場合、逆に経験が足りなくて最適化が甘いのが弱点だが、

 

 今日に限っては動きが何時もよりも早く、そして力強い。素の動きはやる気か闘志か、それで幾分か良くなっているが―――全体的な魔道補助効率が上がっている。その正体を大体最初の接触で見抜き、

 

 回避する方向へと合わせて踏み込む。

 

「なんで動く方向解るんですかぁー!」

 

「経験」

 

 その一言で結論付けながら距離を取ろうとするヴィヴィオの片足を踏み、ステップを取ろうとしていた足の動きを封殺しながら両手でヴィヴィオの両手を内側へと弾き、その腕を胸の前でバツの字を描くように交差させ、その中点に踏んでいた足で素早く膝蹴りを叩き込み、ヴィヴィオのからだをその点を中心に軽く蹴り上げる。ヴィヴィオのからだが衝撃で浮かび上がるが、何度もくらっていれば慣れてくる、吹き飛びそうになりながらも、即座に片足を大地に叩き付ける事でアンカー代わりに地面に体を縫い付け、そのまま距離を生み出そうとする為に足を振るう。が、それよりもはじくのに使った此方の方が手を戻す動作が早く、

 

 ヴィヴィオの腹に拳を置いた。踏み込みの距離はなく、普通は力は乗らない。

 

「あっ」

 

「詰まったら無理に距離を稼ごうとするのがダメだな。グラップラーなら格闘以外にも掴み技や組技の類も覚えておかないと辛いぞ」

 

 足で力を練り、膝、腰、丹田、肩、肘、手首、指の関節と力を連動して行く。人体は筋繊維の固まりであり、骨と骨の間にはクッションの役目を果たす軟骨や空洞が存在する。力を練り上げるのと同時に、肉体全身をバネとして認識し、体全体を少しだけ押し込み、その反動を初期の加速として足の先から順に加速させてゆく。それが体を通り、指の先へと到着する頃には踏み込みなんて必要のない、

 

 発勁(ゼロインチパンチ)が完成する。

 

 体を加速台に、力を人体から逃さない証拠として踏んでいる大地は一切揺るぎもせず、衝撃がノータイムでヴィヴィオを貫通し、今度こそ完全に吹き飛ばす。それと同時に消滅の応用で編んだ魔法解除の術式がヴィヴィオに融合していた存在を内側から弾き出し、空を舞うその姿の二本の長い耳を掴む。

 

「うわっ、へぶっ、どわっ」

 

『……!!』

 

 転がりながら吹き飛ぶヴィヴィオから視線を外し、片手で掴んだ存在の正体は―――ウサギのぬいぐるみ姿のデバイスだった。ヴィヴィオを殴ったときの感触が妙に硬かったり、魔法の効率が格段に良くなっていたのは間違いなくこいつが原因だろう。今まではレイジングハートを使っていたが、アレは元々なのはのデバイスであり、なのはの為にチューニングされている。それを他人が使ったのではやはり、フルスペックで運用する事はできないだろう。

 

 逆に言えば自分用にチューニングされたデバイスであれば、遥かに高い効率で運用する事が出来る。感覚的に言えば軽い、動きやすい、或いは()()()という言葉が一番近いのだろうか。強化魔法どころかバリアジャケットすら使わない自分が言うべき話じゃないかもしれない。

 

 ともあれ、ウサギ型のぬいぐるみデバイスを解放する。解放されたデバイスは少しの間だけ落下すると、即座に浮かび上がり、急いで、それこそ逃げる様にヴィヴィオの下へと向かう。

 

「自分用のデバイスを入手した、って訳か」

 

「それでも勝てないって理不尽ですよー!」

 

 むくり、と大地に倒れていたヴィヴィオが起き上がる。周りの視線が自分とヴィヴィオに突き刺さるが、それを気にする事もなく、ヴィヴィオは一瞬だけ逆立ちになると、そのまま体を両手で押し上げる様に飛ばし、両足で着地して立ち上がった。デバイスを肩の上に置いたヴィヴィオに対して言葉を贈る。

 

「貴様にこう言ってやろう―――馬鹿め、と。現代ミッドは魔道優遇の時代に突入している。だからリンカーコア、潜在魔力量によって才能の高低が一般的な認識だ。なぜなら魔力を持っている奴は才能なんかなくてもデバイスでそれを補正すりゃあ大体何とかなるからな! 魔力に任せた身体強化、砲撃、シュート―――魔力の量が多いイコール継戦能力と出力が増えるってことだ、ここまではいいな?」

 

「うっす!」

 

 ヴィヴィオが頷いて、目の前で動きを止め、話を聞く。それを確認してよし、と軽くうなずきながら話を続ける。

 

「だがな、ぶっちゃけた話()()()()()()()()()()()()()考え方だ。基本的に魔力の量ってのは才能の授かりものだ。こいつを大幅に増減させる方法は現代には存在しねぇ。あったとしたら後天的に誰かのリンカーコアを移植するぐらいの事だろうな。それにしたって魔法使用可能な全人類の内、四割から六割がランク的にD前後の連中ばかりだ、最低限B級の魔力量のあるリンカーコアでも吸収しなきゃ意味のねぇ話だ―――まぁ、これは基本的な話だ」

 

 そう、あくまでも基本、

 

「そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。強くなるという行動は普通から外れる事であり、強さを求める行動は正気を捨てるってことでもある。一般人からすりゃあなんで態々痛いのに好き好んで戦うんだ? ガード? カウンター? 物好きのドMかなんかか? それが戦わない連中の意見よ。だけど強くなればなるほど痛みはどうでもよくなってくる、もっと強いやつとの戦いを求める、もっと強さを求める―――正気のままでは強さは得られないってのが現実だ」

 

 もし正気のまま、強さを嫌がって強くなるような奴がいれば、

 

 そいつは怪物だ。正気のまま壊れている。個人的に一番怖いと思えるタイプだ。

 

「んで基本から外れるってことは()()()()()()って話でもある。魔力高の認識はここら辺、トップエース級に来ると変わってくる。何せここに来るような連中は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()連中だからな。逆に言えば魔力の高い、魔力任せの連中との交戦経験、撃墜経験を持った人間が必然的に増えるって話だ。この環境になってくると、逆に魔力のない、超尖った連中が相対経験の少なさから明確な弱点になり始める」

 

 簡単な話だ、経験があるから勝てる―――経験がないから勝てない。倒したことのあるタイプだったら簡単に倒せるだろう。だがRPGゲームを遊んでいて、新しいエリアに入る。

 

 その新しいエリアで出現したエネミーはHPが高いタイプではなく、

 

 極限までHPと攻撃が低く、防御と回避と耐性がアホの様に高いエネミーだった。

 

 経験も情報もなしに戦ったらどうなる?

 

 当たり前の話だが、当然の様に負けるか、マグレで勝利するか、逃げるかの三択になる。

 

 環境は上へと上がってくると、個人個人でこういう風に大規模な環境変化が発生するのだ。

 

「相手が強くなれば強くなるほど、常道からは外れ、そして常道の連中を息をするように潰せるようになってくる訳だ。戦闘経験を繰り返せばパターン、しっくりくる戦い方、自分で取れる対処法とかを編み出すことが出来るからな。だから魔力が高く、身体能力が高い、攻撃力の高いやつを相手にするのは簡単だ―――何十、何百、何千回と戦闘経験があるし、そういう連中をどうやって徹底的に倒すかっていう戦闘経験、データバンクが俺の中に蓄積されているからだ―――ここまでオーケイ?」

 

「つまり先生の話は、魔力の高い人間は強いけど、低いまま強くなった人間ほど突き抜けていないから対処しやすい、ってことだよね」

 

「お、真理を突くな。正解だ」

 

 魔力が高くて出来る事は非常に限られているから、解りやすいのだ。

 

「超射撃、過剰身体能力―――ほら、魔力が腐るほどあっても結局出来る事はこれぐらいなんだよ。後はレアスキルの存在を警戒しつつ、射撃型なら接近して一撃で仕留める。相手がインファイターなら先読みしながらカウンターで一撃で仕留める。相手の攻撃とスピードが上がるだけで()()()()()()()()()()()()()()んだよ。つーかむしろ過剰に能力が存在する分、魔法任せな動きになるから逆に基本的な動きがおろそかになったりするな―――」

 

 ここら辺、自分が魔法を使わない最大の理由だったりする。魔法を使えば楽に能力を強化できるのは確かだ。だがそうやって肉体を楽に強化したり、高速移動を魔法で行えば、それだけ自分で磨いた技術が鈍る。戦いの肝は全て根幹である基礎と、そして基本動作になる。これを疎かにする人間は最後の最後で負ける。

 

 まぁ、これは一種のポリシーであり、古い言葉で言えばゲッシュとも言えるものかもしれない。

 

 遊びでなら多少の魔法は良いかもしれないが、本気で駆られた時以外は魔法の使用を禁止する。その事によって常に自分の技に対する信仰心を抱き、研鑽を怠らず、常に自分の肉体にすべての信頼を置いて最善で勝利し続ける、と。

 

 まぁ、これは他人に押し付けるようなものではない。所詮は個人のポリシーの問題だ。

 

「ともあれ、ハイディちゃんは強い―――それこそ魔力がSランクの魔導士とかだったらエサの様に食い殺すぐらいにな。上を目指したきゃあどっかで戦いに関して突き抜けろ。なにかしらのポリシーを抱け。他人ではなく己の何かに信仰心を抱け。戦う理由を他人ではなく自分にだけ求めろ。求道者であれ、戦いは他人のためではなく己のための究極のエゴイズムなのだから―――そのエゴを通した先に勝利が待っている」

 

 それが戦い―――そして殺し合いなのだ。

 

 話を終わらせたところでヴィヴィオがはぁ、と息を吐く。

 

「学生に教えるべきものではない事を教わってる気がする……」

 

「気にすんな。俺がお前のころの年齢はこういうのは全部自分の記憶にコンバートして無人世界で山籠もりしてたからな。それと比べりゃあ今はまだまだ楽よ」

 

「前々から思ってましたけど先生って飛び抜けたキチガイの中でも特に飛び抜けたキチガイですよね」

 

「笑顔でストレートに言えるようになってきたな、お前。悪くないぞ。遠慮は精神的な毒だからなぁ、吐き出したい事あったらもっと吐き出せー」

 

「ほんと、遠慮ないなぁ、先生……と、無人世界の話で思い出した」

 

 ヴィヴィオがデバイスに頼むと、ホロウィンドウが一枚、浮かび上がる。そこには無人世界カルナージに関する資料が存在し、そのホロウィンドウを片手に、視線をヴィヴィオへと視線を戻す。

 

「実は身内でオフトレに行く予定なんですけど、先生もどうですか? いろいろと環境変えて試せるし。なのはママが午後にはメールで聞いてみるって言ってたんですけど」

 

 あの女の場合参加強制にさせてきそうだなぁ、と思いつつ、

 

「参加面子は?」

 

「私、コロナ、リオ、スバルさん、キャロ、エリオ()、なのはママ、ノーヴェ、アインハルトさん、フェイトママ、ティアナさんに……後はほかにも身内が何人か確認取れ次第増えるかな?」

 

 全員、大体聞いたことのある名前―――というか有名人ばかりだった。

 

「パスパス! 女ばっかりじゃねぇか! 少しは男を呼べよ! んな空間居づらくてしょうがねぇぞ!」

 

「えー、大丈夫だよー、先生が来るなら他にも強制参加させるから」

 

 本当に大丈夫かねぇ、と思いつつも、面倒を見るなら徹底的に―――断れる筈がなかった。

 

 溜息を吐き、なんだか最近は少々面倒だなぁ、と思いつつも、楽しいことは否定できなかった。




 少し休んだらいつも以上に書けたお話。

 こういう今まで書いてきた「バトル理論」に理由や中身を与える作業が最近、本当に楽しい。今まで不鮮明だった部分にライトを当ててそこを見ている感じがして、やる事、書く事に表現の幅が広がって行くのを感じる。やっぱ動きや理論の追及って楽しいね。

 こうしたらなぜキチガイなのか? というのを言葉にして表現する楽しさ。

 肉、入荷しました。

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