兄と妹~ときどき妹~   作:kielly

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穂乃果ちゃん!ほのかちゃん?ホノカチャン!



スピリチュアルガールと甘えん坊動物穂乃果ちゃん

「なぁなぁ光穂っち! うちの話聞いて聞いて!!」

「光穂っちって呼ばれ方初めてなんだが。で、どうしたんだ?」

「実はな――――じゃーん! これやん!」

「……薬?」

「せや! 飲んだ人が動物になってしまう、名付けて『アニマルにゃんわん』や!!」

「だっさ!? そして飲んだ奴が動物になる……? 意味が分からないんだが!?」

 

 何やら東條がよくわからないスピリチュアルなものを持ってきたみたいだ。

 

「ところで、それはどこで見つけたんだ?」

「ん? そこらへんに落ちてた」

「危なくねえかそれ!?」

 

 訂正、どうやら持ってきたというわけではないみたいだ。

 

「ま、冗談やけどな♪ 実はとあるルートから特別に仕入れたんよ!」

 

 再び訂正。下手すりゃ落ちてるものより危なかった。てかなんだよ、とあるルートって。

 

「で? それをどうするつもりなんだ?」

「あっ、そうそう、そのことなんやけどな?」

「なんだ?」

「光穂っちの妹さんに使ってもええ??」

「いやだ」

「なっなんでなんっ!?」

「なんでも何も嫌に決まってんだろうちの愛する妹だぞ!!」

 

 こいつまさか俺の妹に使おうとしていたとはな……こいつの言う妹っていうのは、おそらく穂乃果のことだろう。雪穂である可能性はないだろうし。

 

「ひどいなぁ。うちやて危険を承知でやったりなんてせえへんよ? あくまで安全やっていうのが分かってるから言ってるのに」

「じゃあとあるルートってなんだよ?」

「それは――――秘密」

「そこが信用できないとこなんだよ!!!」

 

 意味の分からんルートから仕入れた薬とか、危ない気しかしないんだが。これは、俺が穂乃果を守ってやらねば。こんなスピリチュアルやろうなんかに俺の穂乃果は触れさせない

 

「ええやん光穂っち~! 穂乃果ちゃんかして~!」

「貸さん!! 誰がスピリチュアルガールなんかにうちの穂乃果を貸すかっての!!」

「貸して!」

「貸さん!」

「貸してよ!!」

「貸さないって言ってるだろ!!」

 

「やっほー♪って、2人とも?」

 

「うちに穂乃果ちゃんかしてよ!悪いようにはしないから!!!

「はぁ!? そんな怪しいことのために俺の穂乃果を貸せるわけないだろうが!!」

「え、あの~?」

「なんでや! 確かに兄妹かもしれへんけど、穂乃果ちゃんは誰のものでもあらへんやろ!?」

「うるせえ!  穂乃果は俺のもんなんだよ! だから危険なことはさせたくねえんだよ!!」

「あぅ……お兄ちゃん」

「もうっ! 穂乃果ちゃんが動物になるんやで!? 可愛いこと間違いナシやろ!? 可愛い妹さんの姿見たくないん!?」

「可愛い穂乃果は確かにみたいとおm危ない目に合わせるわけにはいかねえんだよ!!!」

「うぅ、恥ずかしいよぉ」

「それに穂乃果ちゃんもきっと『お兄ちゃんに可愛いって言われたい~っ』って言ってくるで!?」

「何その穂乃果めっちゃ可愛いんだけど。ってそうじゃなくてだなぁ!?」

「お、お兄ちゃん、もうやめてよぉ……」

「あぁ!? うっせえな少し黙って……ろ!? 穂乃果!? いつの間に!?」

「えっ!? 穂乃果ちゃん!?」

「ふ、2人とも恥ずかしいよぉ……」

 

 東條と言い合いをしていたところ、いつの間にか穂乃果が来てたらしい。部室で言い合ってたから、いつ来ても確かにおかしくはなかったんだけどな。気づかなかった。

 

「せや、穂乃果ちゃん! ちょっとええかな?」

「え? どうしたの希ちゃん?」

 

 何やら穂乃果を呼び出し、俺から離れる2人。とりあえず、俺は動かずに2人の様子を窺っていた。

 と、 穂乃果が何やらこちらをちらちら見ながら顔を真っ赤にしていて、それを見ながら東條はニヤニヤと嫌らし気な笑みを浮かべている。なんだ?

 2人して俺から背を向ける形で何やらごそごそしている。

 

 まさか……?

 

 しかし気づいたときには遅かった。

 

「んっ……ゴクンッ」

「穂乃果!?」

「ふふっ」

 

 穂乃果は、東條が持っていた薬を、飲んでしまった不敵に笑う東條の横で、俺はただただ恐怖に襲われた。

 もしその薬が本当に危ないものだったら……?

 

 そう思った瞬間――――

 

 ポンッ。

 

 なにかが破裂する音と共に。

 

 穂乃果の姿が、消えてしまった。

 

 

「そっ、そんな……っ!」

 

 

「うわああああああああああ穂乃果あああああああああああああああああああああああああ」

 

 

 

 

「ほのっ♪」

 

 

 

 

「えっ?」

 

 絶望を味わい、跪いていた俺の目の前には、可愛らしい、2Lのペットボトルくらいの丈の、どこかで見たことのあるようなルックスの小動物が居ました。

 

「よいしょ、っと」

 

 東條は、その小動物を持ち上げ

 

「あぁ~っ♡ やっぱり穂乃果ちゃんはクマになったんか~♡ かわええなぁ♡」

 

 その小動物を"穂乃果"と呼んだのだ。

 

 

 

 

 

「だから言ったやん?これは安全なんやって」

「いや、でも……」

「ほのの~♪」

「ああああああああああ可愛いいいいいいいいっ!?」

「なっ!? かわええやろ!? 実は花陽ちゃんでも試したことあったから、成功するんは知ってたんよ!」

「お前何やってんだ」

 

 どうやら穂乃果は初の犠牲者ではなかったらしい。

 にしても――――

 

「なぁ東條。これって本当に穂乃果なのか?」

 

 どうしても信じられない俺は、東條に確認を取る。だって、クマの耳なんてついてるんだぜ? どう考えてもおかしいだろ。

 

「ん~、なら穂乃果ちゃんが喜ぶようなことしてみ? 反応で分かるんとちゃう?」

「た、確かに。じゃあ穂乃果、家に帰ったら一緒に苺食べような?」

「ほのっ? ほのの~っ♪♪」

「おぉっ……あ、そういえば今日はお母さんがピーマン料理作るって「がうううううっ!」あっ、これ穂乃果だわ」

 

 色々と話しかけてみて反応を窺ったが、明らかにこれは穂乃果である。確かにルックスは穂乃果の幼いころそのものだったから、半信半疑くらいではいたものの、これで確信に変わった。

 確信に変わった今、俺は東條に一言。

 

「東條先生、一生ついていきます!」

「うむっ。分かればよろしいっ!」

 

 今後から東條先生と呼ぶことにした。

 

 

 

 

 

「穂乃果~、お手!」

「ほのっ!

「穂乃果ちゃんっ! はいお菓子!」

「ほのっ、ほの~っほのっ!」

「「あ~可愛い~っ♡」」

 

 俺と東條先生は、ひたすらに穂乃果――――いや、"ほのくま"と戯れていた。

 

「穂乃果~、弁当に入ってた苺、食べるか?」

「っ!! ほのっ♡」

「あ~可愛いっ! ……そのままで食べられるか?」

「ほのっ! パクッ……モグモグ……ほぇぇぇ♡」

「やべえなんだこの可愛い生き物は」

「穂乃果ちゃんらしさと小動物らしさがうまいこと混ざってて、可愛さが倍増してるやんな!」

「だな! にしても可愛いなぁ……よーしよし、美味しかったか?」

「うぅぅぅ♡」

「撫でられると喜ぶのもまさに穂乃果って感じがして可愛いのに、小さくなったってだけで可愛さが3倍にも4倍にもなっていて、かつこの大きすぎず小さすぎずなサイズ感。そして鳴き声な。可愛すぎてどこからコメントしていいやら分からないぜ。普段の穂乃果の可愛らしさも残しつつ、小動物としての可愛さも兼ね備えた完璧な可愛い生き物ができあがってしまってますよ東條先生!!」

「うんうん、可愛いのは分かったけど、ちょっとだけキモチワルイで。」

「……くぅぅ」

「ほのくまちゃんはめっちゃ嬉しそうにしてるけど」

「あぁ~っ! やっぱり穂乃果は最高だぜ!!!」

「やっぱり光穂っちってシスコンだよね」

「この際もうシスコンでも構わない」

「認めたっ!?」

 

 この可愛い小動物が俺の妹なんだってさ。信じられん。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 あーだこーだやっているうちに、いつの間にか遅い時間になってしまっていた。

 

「さて、そろそろ帰るで~」

「おう」

「ほのの~♪」

 

 帰宅の準備をそそくさと始めたとき、気づいた。

 

「と、東條先生?」

「ん? なんだね光穂くん?」

 

「穂乃果はいつ元の姿に戻るんですか?」

 

「分からん」

 

「はっ!?」

 

 衝撃の事実、穂乃果がいつ元に戻るかわからないとのこと。

 

 俺は穂乃果、もといほのくまをぎゅっと抱きしめたまま帰宅し、穂乃果が友達の家に泊まりに行ったというていで穂乃果がいないことを家族に説明し、必死にほのくまを隠しながら部屋に戻ったのだった。

 ほのくま、もとい穂乃果を抱きしめたまま帰宅、か。愛しのシンデレラでも抱っこしてたようなものだよな。

 

 

 

 部屋で隠れながらほのくまと戯れてかれこれ2時間

 

「カクン……ぅぅ……」

「おや? おねむかな?」

 

 首をカクンカクンし始めた。顔を見ると、今にも瞼が落ちそうになっているくらいには眠たそうにしていた。それもそのはずで、家に帰ってきてから3時間くらい、ずーっと遊んでいたのだから。そこらへんは非常に小動物らしいな。

 

「一緒に寝るかい?」

「ほのぉ……♪」

 

 眠たげながら、俺に近づいてきては嬉しそうに微笑むほのくま。どんなときも俺の近くに来ようとするところは、穂乃果らしいな。

 ベッドに横になり、ほのくまを俺の横に寝かせた。

 

「ほのっ!」

「おわっ!? 俺の胸の上がいいのか?」

「ほの~っ♡」

 

 しかしほのくまは急に、飛んで俺の胸の上に乗ってきた。そして丸くなり、目を瞑っていた。その姿が、穂乃果らしくもあり、小動物らしくもあり。まるで、小さいころの穂乃果のようだった。

 

「おやすみ、穂乃果」

「ん……すぅ……すぅ……」

「ふふっ」

 

 少しの間撫でていたら、すぐに眠ってしまった。相当疲れてしまったんだろうな。しかし……穂乃果は、いつ元の姿に戻るんだろうか。確かにこの"ほのくま"もすごく可愛い。何せ穂乃果なのだから。

 でも俺は――――やっぱり穂乃果とお話がしたい。俺の言葉にリアクションを取ってくれるのは今もそうだけど、やっぱり言葉で返してほしい。

 

 もし、このまま穂乃果が戻らなかったら?

 

 そう考えていた内に、俺の意識が遠のいていった。

 

 

 

 

 

 朝目が覚めると、全身に重みを感じることに気が付いた。

 

「な、なんだよこれ……」

 

 被っていた毛布の中に重みを感じる。恐る恐る毛布をあげてみた。

 

「すぅ……すぅ……」

「……おかえり、穂乃果」

 

 毛布の下には、幸せそうに寝ている"いつもの"穂乃果の姿がそこにあったのだった……制服姿の穂乃果が。

 

 状態はすごくいかがわしさを感じさせるものだったが、こうして穂乃果はいつもの姿に戻ってくれたのだった。

 

 

 

 

 

「ねえお兄ちゃん、お姉ちゃんが泊まりに行ってたって、あれ嘘だよね?」

「えっ!? い、いや、そんなわけないだろ」

「……毛布の下、制服姿、お兄ちゃんの上のお姉ちゃん」

「!? み、見たのか?!」

 

 俺の部屋には雪穂が怒った顔で座っている。どうやら今朝の件、見られていたらしい。

 

「やっぱりそうなんだ。」

「あっ!? ち、ちがっ! これには理由があってだな!?」

「お姉ちゃんと何してたんだろうねえ……制服着せたままで。兄妹なのに」

「ちょっと待て!? そんなことした覚えはないぞ!!」

「……だってさ、お姉ちゃん(・・・・・)、実際どうだった?」

「えっ!?」

 

 雪穂と2人きりのはずのこの部屋で、雪穂はドアの方を見ながらお姉ちゃん(・・・・・)を呼んだ。

 するとドアが開かれ、顔を赤く染めた穂乃果が照れながら言った。

 

「すっごく……温かかったし、優しかったよ、お兄ちゃんっ」

「お姉ちゃんの純潔な心を返せーっ!!」

「誤解だあああああああああああああああっ!!!」

 

 なお、後で聞いたところ、雪穂は俺をからかっていただけらしい……穂乃果のうつむき加減がすごくリアルで、その日一日俺は困惑してたけどな。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

別の日。

 

 

「にゃ~ん♪」

「可愛いでちゅね~この子猫ちゃんは~!」

「くぅ~ん♡」

「それ犬じゃね?」

 

 説明しよう。今日は2月22日、2という数字がゾロ目のこの日。普通の人なら何でもない一日なのだろうが、この子猫ちゃん、もとい穂乃果にとっては違ったらしい。

 今日は、"猫の日"らしい。

 ちなみに今回は、前に東條が穂乃果に飲ませた薬の件は一切関係なく、穂乃果の意思でこんなことをしているらしい。

 

「にゃんにゃんっ♪」

「どうしてこうなった」

 

 にゃんにゃん言ってれば猫になれるとでも思っているのか、穂乃果はにゃんにゃん鳴きながら、俺の目の前で四つん這いになっている。なんかその姿がとても猫には見えなかったから、俺はこれをしてみようと思った。

 

「穂乃果、お手」

「にゃっ!」

「おかわり」

「にゃぁっ!」

「お○んちん」

「にゃ――――っ! あぅ……」

「ふむ」

 

 やはり、この命令は効かなかったようだ。というかお手とかやってる時点で猫じゃないだろ、というツッコミはNGかな? あーだこーだ思ってるけど、俺が言いたいのはただ一つ。

 この穂乃果、めっちゃ可愛いんだけど。

 

 え、なにこれ、すげえ萌える。

 

 元から犬っぽい(?)穂乃果が動物的なことをするだけでも可愛いのに、猫みたいににゃーにゃー言ってくるしスリスリしてくるし、猫演じてるくせに犬だし。

 

「穂乃果、人の言葉一旦しゃべってくれるか?」

「ん、どうしたにゃお兄ちゃん?」

「あ、一応猫なのね……穂乃果、2月22日が猫の日なのはわかったんだけどさ、なんで穂乃果が猫になるの?」

 

 とりあえず穂乃果に一旦人に戻ってもらい、1つの質問をした。猫の日だからって、なぜ穂乃果が猫になる必要があったのか、気になったから。

 

「そ、それは……その」

 

 何やらいつものようにモジモジとしながら、口を開く。

 

「お兄ちゃんが前に、猫が好きって言ってたから……かにゃ?なんちゃってっ」

「あっ」

 

 この瞬間、俺の中の何かがはじけた。

 

「穂乃果っ!!」

「にゃっ!? ちょ、お兄ちゃん……?」

「精いっぱい愛でてやるからなっ、猫穂乃果をっ!」

「にゃっ、にゃぁ……♡」

「可愛い」

「っ――――うぅ~っ!」

 

 精いっぱいの愛情をこめて抱きしめると、これまた可愛い反応が返ってきたため僕は目覚めました。さぁ、何をしてやろうか。ふへへへへ。

 じゃあ、まずは――――

 

 

 

 

「穂乃果、ご飯持ってきたぞ」

「にゃあ♪ ってこれ本物の猫用のごはんじゃん!! こんなの食べられないよぉっ」

「おい穂乃果、猫、なんだろ?」

「にゃっ!? こ、こんなの食べられないにゃぁ……」

「丁寧に皿に乗せてやってるんだから、食べろよ」

「ほ、本物の猫じゃn「早く食べろよ猫」にゃ、にゃあ……意地悪っ! あむっ……あれっ!? 美味しい!! キャットフードってこんなに美味しいの!?」

「また猫忘れてるぞ。それに、それは俺が手作りしたから美味いに決まってんだろ。大体、猫なんて飼ってないのにどうやってキャットフードなんて用意するんだよ」

「お兄ちゃんの手作り――――あむっ、もぐもぐ……ふにゃぁ♪」

「手作りって言った瞬間馬鹿食いし始めたんだけど、なんでだ? よしよし、美味しいか?」

「にゃぁ♡」

 

 

「ほら、今度はちゃんとしたご飯だ。穂乃果の好きなランチパックだぞ~」

「ランチパックっ! にゃあ――――って、え?」

「猫はパンなんて食べないし、そもそもさっき俺のごはんやっただろ?」

「うぅ……お兄ちゃぁん」

「っく! やらん、やらんぞ、ランチパックは……っ!!」

「にゃぅぅ、食べたいにゃぁ」

「や、やらんぞっ!」

「うぅ……にゃあっ!」

「うぉあっ!?」

「にゃぁ♪ ランチパック、ゲットにゃぁ!」

「この馬鹿猫っ!ご主人様を押し倒す猫がどこにいるんだ!?」

「にゃっ!? ご、ごめんなさいにゃぁ……」

「可愛いから許す」

 

 

「なぁ穂乃果、試しにこれを付けてみてくれないか?」

「にゃあ? えっ、猫耳と猫のしっぽ!?」

「ふふふ、こういう時があるんじゃないかと思って用意しておいたんだ。さぁ穂乃果! これを付けて俺に見せておくれ!!」

「にゃ、にゃあっ!」

 

 ――2分後――

 

「ど、どうかにゃ?」

「アッ……アッ……」

「お兄ちゃん!?」

「あ、ごめんついつい昇天してしまったわ。やっぱりいいなぁ、猫コス」

「……お兄ちゃんは、こういうのが趣味なのかにゃ?」

「あぁ! 大好物さ!!」

「そ、そうだったのにゃ。お兄ちゃんが喜んでくれるんなら、いつでもしてあげるのに……」

「え!? いつでもしてくr「やっぱり外していい?」ごめんなさいもうちょっとだけつけててください」

「お兄ちゃんだから許すにゃぁ」

 

 

「穂乃果、お風呂入るぞ~」

「にゃぁ~ってお風呂!? えっ!? お兄ちゃんと、こ、混浴」

「混浴って大げさな。今は猫なんだろ? だったらご主人様に逆らうのはおかしいんじゃないのか?」

「にゃっ……お兄ちゃんはご主人様、お兄ちゃんはご主人様――――ふにゃぁ♡」

「ふふ、それでこそ俺だけの猫だ。さ、行くぞ」

「ご主人様ぁ、ご主人様のお申し付けなら、何でもやるにゃぁ♡」

 

 

「さ、服を脱ごうか」

「にゃ、にゃぁ……恥ずかしいよぉ」

「何を言っているんだ猫のくせに。猫に服を与えているだけ感謝しろ」

「は、はいにゃっ。ご主人様のお申し付けなら」

「ふふふふふふ……ゴクリっ」

「――――やっぱりいくらなんでもこれはできないにゃぁっ!!」

「あっ!? 逃げやがったかっ!? チィッ!!」

 

 

「お兄ちゃん、お願いがあるにゃぁ」

「ん、どうした?」

「そ、その……膝枕、してほしいにゃぁ」

「は? お前頭おかしくなったのか? いや今さらか。俺は男だぞ? 男の膝枕になんて価値なんかないだろ」

「そ、そんなことないもんっ! お兄ちゃんのだから――――ってそうじゃなくって、猫ってほら、膝の上で丸くなってるから、それしてみたいなぁって……思ったんだにゃ」

「あぁ、そういう。じゃあほら、いいぞ」

「し、失礼するにゃ……ふにゃぁ♪」

「ど、どうなんだ? あんま気持ちよくないだろ?」

「気持ちいいにゃぁ♡」

「は!? ああいうのは女の子の柔らかい身体であるからこその膝枕だろうが!?」

「でも、お兄ちゃんの温かみに触れられて、お兄ちゃんに撫でられながらっていうのはすごく気持ちいいにゃぁ」

「そういうことか。そんなんならいつでもやってやるのに」

「い、いつでも、いいのかにゃ? 猫じゃない穂乃果でも……?」

「聞こえてたのか……俺だって穂乃果からいつもいろんなもんもらってんだ。これくらいならいつでもやってやるさ」

「えへへ、嬉しい」

「ふふっ、遠慮しすぎなんだよ、穂乃果は」

「お兄ちゃんもね」

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「すー……すー……」

「寝ちゃったか」

 

 膝枕をした状態で少しの間話をしていたのだが、いつの間にか眠りについてしまった穂乃果。ちなみに膝枕したままである。ちょっとしびれてきたよね。

 でも、まぁ。

 

「こんな可愛い寝顔を、崩すわけにもいかないよな」

 

 今日一日という期限付きで猫になりきった穂乃果。何も躾を受けていなかったその猫は、野生の猫のごとく天真爛漫に遊び呆けては、すやすやと眠ってしまった。ほんと、野生の猫そのものみたいだったな。

 でも、たまにはそんなのもいいんじゃないかな。

 穂乃果の――――妹の好きにさせてあげるのが、兄の役目ってものだろうしな。

 

 

 

 

 

「お兄ちゃ~ん、ちょっとい「しーっ」……お兄ちゃん?」

「雪穂、今ちょっと静かにしてくれないか。この通りでさ」

「どの通り……あぁ、お姉ちゃん寝てるのね」

「すまんな。で、用事はなんだ?」

「……そんなこともうどうでもよくなってきたんだけど」

「え? なんで?」

「お兄ちゃんさぁ、寝てるお姉ちゃんに猫耳とかつけちゃって、さすがにそれはヤバいと思うよ?」

「え? あぁっ!? 外させるの忘れてたっ!? ち、ちがっ! 俺がやったんじゃなくってだな!?」

「へぇ~? お兄ちゃんそういうのが趣味なんだ~?変態じゃん、通報しよ。」

「やめてええええええええええええええ!?」

「うるさいにゃぁっ!!!」

「ぶへっ!!!」

「お兄ちゃん!? そしてお姉ちゃんの猫パンチ!?」

 

 猫パンチ、いただきました。妹の自由にさせてあげるのが兄の役目とかいうやつ、却下ね。

 

 もう二度と自由になんかさせねえからなぁ!?

 

 

 

 

 

 




今さらではありますが、たくさんの評価・感想いただけて大変うれしいです!
でもこれは私がすごいのではありません。

穂乃果ちゃんが可愛いから、人が集まってくるんです。

これ、世の中の真理な?

私やるっ、やるったらやるっ!!

読んでくださっている方々、大変感謝です、ありがとうございます。

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