穂乃果ちゃん!ほのかちゃん?ホノカチャン!
お久しぶりです!
この作品初の、アニメのコ○ンシステムを採用しました!!
今回のお話の文字数が思ったより多くなってしまい、読みづらさを解消するため前編・後編の2話構成でお送りします(・8・)
アニメの○ナンで前編と後編に分けられるのがあまり好きではないので、こういうことは極力したくなかったんですが、今回ばかりは許してください(汗)
※3年生メインのため穂乃果ちゃんがほぼ出ません。
※三点リーダーの位置が下に来てしまっています。フォントが原因かと思いますが、改善できなかったためそのままお送りしています、ご了承ください。
在学最後のバレンタイン―前編―
「いってきま~す」
俺と穂乃果はいつものように、学校に行くため2人一緒に家を出た。
家の外で吐く息は白く、肌に触れる空気は氷のように冷たい。
「うぅ~今日も寒いよお兄ちゃぁん」
「さみぃよなぁ。よし穂乃果、学校まで軽く走ってみるか!」
「かけっこだね! よーし負けないよ~!」
俺の提案に、うきうきとした様子で肩を回し準備体操をしている穂乃果。
穂乃果がいてくれるからこそ楽しく毎日登校できるけど、俺1人で登校してるなら、きっと寒さに負けて迷わず家に引き返すだろう。
今日もいつもながらに、楽しく登校できそうだ。
「いっくよ~っ! よーい、どんっ!」
自分の掛け声で勢いよく走る穂乃果の後ろを追いながら、そんなことを思ういつもの朝。
在学最後のバレンタイン
「あ~さみいな」
授業を終えた休み時間、1人今朝と同じことを呟く。
教室は暖房で暖められているため外よりは暖かいものの、教室がそこそこ広いせいもあってか、少しひんやり感を感じる。
机に突っ伏しているものの、そもそも机がひんやりしてるから、教室の空気と相まってなおさら寒さを感じてしまうな。
「あんた、年始のオヤジみたいなだらけ方してんのよ。そんなんじゃ本当にオヤジになるわ」
目の前から更に寒いものが襲ってきてて風邪引きそうだ。
「あんた失礼なこと考えてない!?」
「いやいや、寒いなぁって思ってただけだよ。何に対してとは言わないけど」
「むきーっ! それ遠まわしに、にこのこと言ってるじゃない!」
この前席替えして、矢澤が俺の目の前に居座りやがるようになってからというもの、ほぼ毎日そんなやり取りをくりかえしてる。代わり映えしないけどこれはこれで退屈しないからいい。
ただ今日は、いつもと違うイベントが起きた。
「光穂くん! ちょっといいかな?」
「え?」
声をかけてきたのはクラスメイト。手に持っているのはよく見るチョコ系のお菓子。
「今日バレンタインでしょ? 妹ちゃんと一緒に食べなよ~」
「あ、今日バレンタインだっけ? ありがとう、妹が喜ぶよ」
俺はお菓子を受け取りながら、今日がバレンタインだということを思い出した。穂乃果や雪穂が全くそういう素振りを見せなかったから完全に記憶から消えてたわ。
その子からお菓子を受け取った途端、周りのクラスメイトからも流れるようにお菓子を渡されていく。
「ハッピーバレンタイン! 妹さんの分もあるよ!」
「はいこれ、穂乃果ちゃんにもよろしくね」
「妹さんもお菓子たくさん貰うと思うから、粉末コーヒーあげるね!」
「お、おう、ありがとうな」
穂乃果や雪穂以外からのチョコにちょっとだけ心躍りながらも、流れるように渡されるお菓子その他諸々と共に、"妹"とか"穂乃果"という言葉を確実に付けてくるあたりに義理感を強く感じる。
いや、穂乃果や雪穂がいるからいいんだけどさ、いいんだけどさ……
複雑な気持ちになりながらも、ふと矢澤の方に目を向けた。
「…………」
目を窓の外に向け、興味なさそうに頬杖をついている。
よく見る矢澤の姿といえばそうなんだけど、なんだか、ただ退屈しているようには見えなくて。
というよりこの仕草、
やっとほとぼりが収まり、もらったお菓子たちを、これまたクラスメイトにもらった大きめの袋に詰めているときだった。
「んっ!」
「うおっ!?」
矢澤から唐突に、俺が持っている袋に何かを詰め込まれた。
見ると、それは綺麗に包装された、少し膨らみのある小袋だった。
「そんだけもらってるのに、にこのなんかいらないとでも言いたいわけ?」
相変わらずの憎まれ口ではあるけれど、なぜか少しぎこちなさを感じるその雰囲気に、さっきまでのように茶化す言い方はできず
「いや、素直に受け取っとくよ、ありがとう」
普通に受け取ることにした。
他の子達がくれたような、コンビニに売ってるようなよくあるお菓子とは違って、プレゼント用のラッピングが施されたものだから、きっと渡すためにわざわざ買ってきてくれたお菓子なんだろう。
さすがの矢澤相手とは言え、ここまで丁寧にされると断る理由がない。純粋に嬉しいとすら思うかも。
「妹たちに作った余りものよ。結構量作っちゃったからうちだけじゃ食べきれないし、捨てるのも勿体無いからあんたんとこにあげようかと思ってね。まさかあんたが、あんなにクラスの子に集られるとは思ってなかったけど」
「手作り!? マジかよ」
思わず驚いてしまった。驚いてしまうくらいには綺麗な包装をされているからだ。やはり相当気を遣ってくれたようだ。
穂乃果様々ね~などと言いながら俺を茶化すように話す矢澤だけど、やたらと早口で目が泳いでいて、なんだか落ち着きがない。
矢澤はちゃんと今日を覚えててこれを準備したのか?
なんかそういう気がして、急に申し訳なくなってきて
「わざわざありがとうな、お返し考えとくわ」
まるで、進学先の話をした時のような、少しばかりの緊張が混じった声で感謝を伝えた。
そんな俺に、矢澤は慌てたように反応する。
「やっ、別にあんたのためだけに持ってきたってわけじゃないのよ!? ちゃんとμ'sのみんなに食べてもらう様のものも持ってきたの! だからあんたのは義理よ義理!!」
若干顔が赤くなってる気がするし慌てすぎだし、なんか矢澤らしくないな。
「とにかく! 深い意味はないのよ!」
「そっか、ありがとな」
「……ふんっ。それの中身は
「え、何? 今真剣に穂乃果に食べさせる順番考えてて聞いてなかったわ」
「っ!? なんなのよあんたはぁっ!?」
さっきまでのぎこちない雰囲気とは一変、いつもの調子を取り戻したように声を荒らげて怒りを顕にしていた。
わざといつものようにすっとぼけて話を逸らしたけど、やっぱり相当気を遣ってくれたようだ。素直に嬉しい。
けど、さっきまでのぎこちない雰囲気は、あまり好きになれない。
矢澤にはやっぱり、このいつもの雰囲気が一番似合ってる。
休み時間終了のチャイムを聞き、正面に身体を戻す矢澤を見ながら、そんなことを思っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
放課後、日直の仕事を済ませた俺は、穂乃果がいるであろう部室へ向かった。
今日は練習がないらしいけど、あいつらは練習があろうがなかろうが部室にいることあるから、たぶん今日も穂乃果はみんなと一緒に部室にいる気がする。
そう思ってきてみたのだが
「今日は穂乃果ちゃん来てないにゃ~」
「え、そうなの?」
凛ちゃんから聞いた俺は部室を見渡すが、穂乃果どころかことりちゃんや海未ちゃんと言った2年生組が全員いない。
いるのは凛ちゃんと、3年生の3人組、そして今はバッグだけ置いてあるけれど、おそらく花陽ちゃんと真姫ちゃんもいるのだろう、計6人だけだった。
机には、お皿の上に適当に出された
「にこちゃーん、凛、このクッキーすっごく好きにゃ!」
「そ、そう? ま、まぁ? この天才にこにー様が作ったんだからとうぜ」
「でももうちょっと甘くっても良かった気がするにゃ」
「なっ! 凛っ、あんた人が作ったものに対してケチつけるつもり!?」
「ぎゃ~! にこちゃんが天才から天災になっちゃったにゃ~!?」
「て、てんさ……っ!? あんたにこが災いですって~!? もう許さないんだからぁ!」
「きゃははっ、逃げるにゃ~!」
矢澤と凛ちゃんのいつものやりとりを適当に見ながら、皿の上に乗ってあるクッキーに手を伸ばした。
「うまっこれ!? 本当に矢澤が作ったのかこれ!?」
驚きのあまり素のリアクションで矢澤の方を向いたものの、既に遅く、2人はどこかに消えてしまっていた。
おそらく矢澤が言っていた、妹たちに作った余りというものだろうけど、相当気を遣っているのが分かる。
クッキーにしては確かに甘めで子供が好みそうな、でも甘すぎず素材の味もちゃんとする程よい甘さ。
ふと見ると、部屋に残っていた絢瀬と東條の2人は、のんびり紅茶を飲みながらクッキーを摘んでいた。
いや確かに絵になるけどさ、学校に紅茶とティーカップ持参ってどうなのよ。
2人並んでクッキーを摘んでは、絢瀬は美しく、東條は女の子らしくも綺麗に、ティーカップを手に持ち紅茶を飲む。
飲み終えると、2人の口から息が漏れる。
「やっぱりにこの手料理は美味しいわ、いくら積めば毎日作ってくれるのかしら」
「これがないと、うち悲しくて泣いてまうわあ。今度また作ってもらお」
思わず路線変更でもしたのかと言わんばかりの大人びた食事風景からの、それらをひっくり返すような不抜けたセリフ。
外見だけなら2人ともただの美人だけど、美人なだけのイメージだけ持ってるファンが見れば、腰抜けるかも。
「随分美味そうに食べてるけど、クッキーはともかくティーカップは誰の? 結構高そうだけど」
「真姫よ」
「真姫ちゃんが一番、にこっちのお菓子楽しみにしてたもんなぁ」
「マジかよ」
この部活の中でもかなりまともな方だと思っていた真姫ちゃんがこれとは、もうこの部活救いようがないんじゃないかな。
そう思いながら、開けっ放しになっていたドアを閉めた。
「……あっ! やっべ施錠するの忘れてた!」
ドアを閉めた時に、自分の教室の鍵を閉めるのを忘れていた事を思い出した。
鍵は日直が閉めて、職員室に持っていくことになっているから、あまり遅くなりすぎると何か言われてしまうかもしれない。
そうなると何かと面倒だ。
「ごめん2人とも、俺がいない間に穂乃果が来たら、すぐに戻るって伝えておいてくれ」
そう言い残して部室を後にした。
教室を離れて15分くらい、まだこれなら怒られるなんてことはないだろう。
でも、できるだけ急がないとな。
走らない程度に急ぎつつ、俺は教室に向かった。
教室に着くと、やっぱり鍵は閉まっておらず、ドアが開けっ放しになっていた。
俺は急いで教室に入り鍵を手に持ち、窓や反対側のドアの鍵が閉まっているか確認をして、教室を出た。
「やぁ光穂っち」
「ぎゃぁっ!?」
出た瞬間、不意に横から名前を呼ばれ思わず飛び跳ねるように驚いてしまった。
その独特な呼び方と声で、それが誰なのかは一発で分かる。
「東條!? お前部室にいたんじゃねえのか」
「うっしっし! 光穂っちのびっくり顔いただきっ!」
「お前なぁ……」
してやったりと言わんばかりに悪い笑みを浮かべ、うっかり俺が落としてしまった鍵を拾った。
「うっかりさんやなぁ、鍵閉め忘れるなんて。セキュリティは大事やん?」
「ぐっ!? それに関しては何も言えねぇ」
痛いところを突かれ、驚かしてきたことを怒りづらくなってしまった。
それどころか
「ふふっ、光穂っち、この鍵返して欲しい?」
「は? いや返して欲しいというか、職員室に持っていかなきゃいけないから」
「これでうちが鍵持って帰ったら光穂っち、盗っ人さんになるやんな?」
「え? 東條お前何考えて」
「そーれにっげろ~♪」
「あっ!?」
言うが早いか、東條は俺に背を向け走りだした。
鍵を手に持ったまま。
「お、おい!?」
「ふふっ! こっちやよ~!」
今度はやんちゃな子供のような笑みを浮かべては、結構な速さで駆けていく。
俺はその背中を見失わないように追いかけるのだけで手一杯。距離はどんどん離される。伊達にスクールアイドルやってないな。
「はぁ、はぁ」
校則とかお構いなしに、本気で東條を追いかけて、やっとのこと東條が動きを止めた。
息が絶え絶えになりながらも、少し強めの風を浴びながら、熱くなった身体が冷やされていく。高い場所ということもあってその風も冷たさを増している。
夕日や風を遮るものはなく、彼女を風が揺らし、赤く照らす。
俺たちは、屋上まで来ていた。
次回、希パート後半と絵里パートになります。
バレンタイン記念は前に書いたことあったがあったんですが、でもその話はストーリーと全く関係ない内容だったため、今回のはストーリーに沿った内容にしています。
ですので、前回のはバレンタイン特別編、今回のはストーリー進行上のバレンタインということになります、ややこしくてすいません。
一応この作品にもストーリーあったんですよ? 知ってましたか?
よければ感想・お気に入り・評価お願いします!
次回更新:3月22日(日)夜