穂乃果ちゃん! ほのかちゃん? ホノカチャン!
お久しぶりです、きえりーです。
約1年ぶりの投稿になってしまい申し訳ありません。
スランプに陥りアプリ等のゲームに逃げたところ、戻ってくるタイミングを失った、という感じでした(・8・)
ある程度仕事やゲーム等は落ち着いたので、これからは少しずつでも投稿していけると思うので、どうかお付き合いくださいませ!
ちなみに今回は、読者様からのリクエスト回です!
秋風がシャツ越しに俺の肌をひんやりと冷やし、なんだか心までもが冷えてしまうような、そんな放課後の帰り道。
いつもなら穂乃果が横にいて、手をつないで帰っているのだが、今日は俺一人で帰っている。
穂乃果いわく
『穂乃果一人で準備したいことがあるから、お兄ちゃんは夜まで他の場所で時間を潰してて欲しいの!』
とのこと。
最愛の穂乃果の言うことは絶対。
俺はこの俺の中のルール通り、穂乃果の言葉に従い、時間を潰すためだけに秋葉原をぶらついて、今帰っているというところだ。
ゲーセンに入るもプレイはせず、ただただクレーンゲームの景品を眺めてたり、話し相手が欲しいがために神田明神に向かうも東條の姿はなく、話し相手も見つからないまま一人ぼっち。
かといって絢瀬や矢澤の家に一人で向かうなど、そんな勇気もなく。
ただただ、寂しさだけが募る帰り道。
周囲も嫌味なほど静かで、歩く音と、穂乃果用に買ったプリンやお菓子が入ったコンビニ袋がシャカシャカと音を立てるだけ。
「寂しい」
思わず口から漏れてしまったのは家のドアの前。たいした距離は歩いていないはずなのに、果てしなく遠く感じたような気がした。
周りはすっかり暗く、誰が見ても夜だと答えるくらいだ。
穂乃果のお願い通りに時間は潰した、やっとこの寂しさから解放される。
そんな喜びから、俺はドアを勢いよく開けた。
「ただい・・・・・・ま?」
ドアを開けた先には、部屋着の上から可愛らしいエプロンをつけ、満面の笑みを浮かべた穂乃果の姿があった。
「おかえりなさい、
リクエスト回
俺の妹は俺の嫁
穂乃果がエプロンを着ているというだけでも目新しいのに、その聞きなれない呼ばれ方にさらに違和感を覚えた。
「あなた?」
「うん! 今日一日だけ、お兄ちゃんと穂乃果は夫婦なんだよ! だから呼び方も変えてみたの!」
「・・・・・・ん?」
穂乃果が満面の笑みを浮かべたまま放った言葉は、一瞬だけ全く理解できなかった。
しかし、冷静になってみるとなんとなく分かってきた。
「もしかして、今日お父さんお母さんと雪穂がいないから、夫婦ごっこしようってことか?」
「そうなんだよ!」
えへへ~と頬に手を当てながら照れている穂乃果を見ながら靴を脱ぐ。
寂しさのあまり帰ってくるまで忘れていたのだが、実は今晩、親と雪穂は訳あっていないのだ。
つまり今晩は、穂乃果と俺の二人きり。
「ふっふっふ~! というわけで・・・・・・おかえりなさい、あなた~っ」
甘えた声で俺に抱きついて来た穂乃果を抱きしめ返しながら、ふとキッチンの方から良い匂いがしてくることに気づいた。
「穂乃果、今日先に帰るって言ってたのってもしかして・・・・・・・」
「ふふっ、今日は穂乃果が晩ご飯を用意したの!」
「おぉ!!」
予想したとおり、穂乃果が晩ご飯を用意してくれたらしい。ならエプロン姿で出迎えてくれたのも頷ける。
普段台所に立つことすらあまりないあの穂乃果が、ごっことはいえご飯を用意してくれているなんて・・・・・・夫婦ごっこ、アリだな。
ちょうど腹が減っていて、ゴロゴロと鳴り始めていたところだったから、なおさら嬉しい。さっそく頂こうとするかな。
嬉しさに心躍らせながら、匂いのする方向に向かおうとしたその時だった。
「ねぇ、あなた」
何やら恥ずかしそうにしながら、甘えた声で俺を呼ぶ穂乃果。
「ご、ご飯にする? お風呂にする? そ、それとも!」
その言葉を聞いた瞬間、俺は理解した。
これは噂に聞く、結婚したての甘々な夫婦がやるやる、なのではと。
穂乃果は頬を赤らめつつも顔を上げ、上目遣いで言い放った────
「ぷ・り・ん?」
純粋ッ!!!
その純粋さへの感動と! 己の心の汚さに!!!
俺は今ッ、襲われているのだッ!!!!
・・・・・・はっ!?
いかんいかん、あまりの衝撃と感動に冷静さを失うところだった。
俺はとりあえず穂乃果を抱きしめ頭を撫で回しながら、冷静さを取り戻しつつ
「じゃあ、ご飯食べたらプリン食べような」
「っ! うんっ!」
嬉しそうに笑う穂乃果と一緒に、穂乃果が用意してくれた晩ご飯を食べるためにリビングへ向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「おぉ~!」
テーブルの上には、とても一人では、かつ短時間では用意できないようなほどの品数が並べられていた。
白米や味噌汁、サラダや白米に合いそうな煮物、さらにはなんと揚げ物まで用意されていて、しかもその揚げ物が、普段料理しない人が作ったとは思えないほど綺麗に揚げられていた。
まるで、
穂乃果、いつの間にそんなに嫁力をあげたんだ・・・・・・
一人心の中で、嬉しいような寂しいような複雑な感情を抱いていた。
しかし、穂乃果のたった一言で大きく変わった。
「えへへ・・・・・・頑張って盛り付けたんだよ!
「そっかそっか~、頑張って盛り付けたのか~!!」
やっぱり穂乃果は穂乃果なんだよな、一人心の中で安心する。
褒めて褒めてと言わんばかりに目を輝かせる穂乃果を見ながら、多少のため息を交えながら、穂乃果の頭を撫でる。
「綺麗に盛り付けてて、えらいな穂乃果は!」
「でしょでしょ~! もっと褒めて~っ」
子犬がしっぽを振って喜ぶ姿が目に浮かぶような、そんな穂乃果の喜びっぷりに、なんだか俺まで釣られて嬉しくなる。
正直、穂乃果が準備してくれたというだけでも十分に嬉しいし、そもそも穂乃果はエプロンを着ていたというだけで、ご飯を"作った"とは言っていなかった。
何年も穂乃果の兄であり続けているにも関わらず、穂乃果のスキルと言葉の意味を過剰に捉えすぎていた俺が悪い。
「さ、食べようよ!」
うきうきした様子で席につく穂乃果。たぶん穂乃果も準備をするのが手一杯で、疲れきっているのだろう。普段全く料理なんてしない穂乃果にしては、よく頑張ったと思う。
「いただきます!」
声に合わせて合掌する。仲良く二人で見つめ合いながらいただきます、なんて、新婚夫婦っぽさは十分だ。
この歳にもなって夫婦ごっこなんてすることになるとは思ってなかったけど、これはこれで悪くないのかもしれない。
そんな気持ちになりながら、まずはいつものように味噌汁が入ったお椀を手に持つ。
「あれ?」
中身を見た瞬間、違和感を感じる。
この味噌汁もコンビニで買ってきたものだとするのなら、やたらと具材の量が多い気がするし、何より具材の大きさが統一されていないんだ。
大根に人参、こんにゃくに白ねぎ、ここまで見れば、具材の大きさを除けばコンビニに売ってる豚汁のような内容なのに、肝心の豚肉は入っておらず、それらの具材に加えて、味噌汁としては定番の豆腐やわかめ、さらにはなめこまで入っている。
もはや名前の付けようがないくらい沢山の種類が入っていて、仮にコンビニで売ってるものだとするなら、500円以上は確実だろう。
一瞬、コンビニの味噌汁を複数の種類買って混ぜ合わせたのかと思ったけど、やっぱりこの具材の大きさの不揃いさはおかしい気がする。
もしかして、この味噌汁だけは・・・・・・?
「じ、実はお味噌汁だけ、穂乃果の手作りなんだよ」
「やっぱりか!」
少しだけ自信がなさそうに話す穂乃果。やっぱりこれは穂乃果が作ったものらしい。
だったら納得がいく。普段料理なんてしないのだから、形や大きさなんて不揃いで当たり前だし、むしろここまでできていること自体が十分にすごいと思う。
そして何より、これが穂乃果が作ったという証拠があった。
この味噌汁の具材、俺が好きな具材だけが詰まってるんだ。
「いただきます」
最愛の妹が作ってくれた味噌汁が不味いわけがない、そんな確信を持ちつつ、お椀を口へ運ぶ。
「・・・・・・うん。美味いよ穂乃果」
「ほ、本当!? よかったぁ」
安心する穂乃果を見ながら、味噌汁を味わう。
色んな具材を入れているからか、色んな出汁が出ていて味わい深く、塩分も程よい具合、何なら温度すらも飲みやすく調整をしてくれたのか、程よく温かい。
穂乃果が作ってくれたということを除いたとしても、これは間違いなく美味い。
愛が感じられる味噌汁を飲みながら、可愛い
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
食事後に、ご褒美として穂乃果にプリンを食べさせたあと、兄妹揃って浴槽に浸かっている。
よく雪穂から、今の年齢の兄妹で一緒にお風呂に入るなんて考えられないだなんて言われたりするけど、未だに一緒に入っている。
今日は夫婦ごっこだから、兄妹じゃなくて夫婦。何もおかしいことはない。
「ふぇぇ~、気持ちいいねぇ」
「ははっ、おじさんみたいなこと言ってるな」
「穂乃果おじさんじゃないもんっ!」
「今日はおじさんじゃなくて、お嫁さん、だもんな?」
「今日は、じゃないの! 今日もおじさんじゃないんだよ!!」
「ふふっ、まったく可愛い嫁だな」
「・・・・・・えへへっ」
穂乃果を軽くいじりつつも、その愛らしさに思わず頭を撫でてしまう。
さすがに浴槽の中だから、一応兄妹ということも意識していることもあって、抱きつくまではしない。
ただ、今日は違う。
「ねぇ、あ、あなた?」
「ん?」
頭をいつものように撫でていると、慣れない呼び方に照れつつも穂乃果が俺を呼ぶ。
「い、いつもは、お風呂じゃ抱きついたりしないよね?」
「え? あぁ、そうだね」
「きょ、今日は夫婦なんだよ。だから別に、抱きついてもおかしいことはないと、思うの」
「え、あ~・・・・・・抱きつきたいのか?」
穂乃果は黙って頷いた。
恥ずかしそうに俯きながら、徐々に近づいて来る穂乃果。
「ほら、おいで」
「っ! う、うんっ!」
その姿が愛らしくて、恥ずかしいながらも俺は自分から穂乃果を抱き寄せた。
いつもは服の上からだからそんなに気にすることはなかったが、今はお互いに裸。
穂乃果の柔らかな身体が、俺にぴったりとくっつく。
「ん・・・・・・・」
「穂乃果、苦しくないか?」
「う、うん、大丈夫、だよ」
「そ、そっか」
極力平静を保とうとしていたが、穂乃果のなんとも言えない反応に、俺まで少しずつ緊張してきてしまう。
二人とも抱きついたまま完全に動けなくなってしまった。それだけ、風呂の中で抱きつくなんてことは今までになかったから、慣れない感覚に緊張してしまう。
無言、不動で抱き合ったまま、どれくらい経っただろうか。
それを破ったのは、穂乃果だった。
「・・・・・・今日ね」
「・・・・・・ん?」
「今日、夫婦ごっこしようって言いだしたのはね」
「うん」
「今みたいに、誰にも邪魔されないでお兄ちゃんに抱きついてみたかったの」
俺の胸元に顔をうずめながら、呟くように。
「服、着てると、こうやって、お兄ちゃんの体温、感じられないから」
自分の身体を押し付けるように、さらに強い力で抱きしめてくる。
「えへへっ、あったかい。雪穂がいたら、こんなの絶対怒られちゃうよねっ」
次は顔を俺の耳元に持ってきて、囁くようにそんなことを言ってきた。
少しだけ恥ずかしいような、涙ぐんでいるかのような、少し震えた声で。
「本当は、毎日でもこうやって────」
途中から聞き取れなかったものの、穂乃果の言葉に俺も返す。
「穂乃果、遠慮しなくっていいんだぞ」
「え・・・・・・?」
「周りなんか気にしないで、自分がしたいようにすればいいさ。それが穂乃果だからな」
正面からしっかり抱きしめたまま、頭を撫でる。
「俺はそんな、穂乃果が好きだよ」
自由奔放に見られがちだけど、実は周りの視線や意見はちゃんと見ていて、気にかけている。
だからこそ、こう見えても遠慮がちな穂乃果だからこそ、俺は好きだ。
「だから、我慢なんてしなくていいからな」
俺の言葉に対する言葉はなかったけど、しっかりと強く、穂乃果は俺を抱きしめてきた。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「もう、終わっちゃうね」
「こんな時間だもんな。あっという間だった」
すでに日付が変わったころ。一緒にベッドに潜って、向かい合って話している。
これ自体はいつもと変わらない。けれど、家に二人きりの夜っていうのはなかなかない。何だかんだ楽しくて、時間があっという間に進んでしまった。
少し寂しそうな表情を見せる穂乃果の顔を撫でる。
「もし次の機会が来たら、そのときは俺が晩ご飯用意するよ。今回のお返しだ」
「えへへっ、楽しみだなぁ」
寂しそうな顔から一変、嬉しそうに笑う穂乃果の頬を撫でる。
「じゃあ、おやすみ穂乃果。今日はありがとうな」
「うん、おやすみ────あなたっ」
穂乃果から俺の頬への軽いキスとともに、夫婦ごっこは終わりを迎えた。
実の妹から"あなた"と呼ばれる日が来るとは思わなかったけど、これはこれで悪くない。そう思えた一日だった。
いかがでしたか?
今回は、1年ほど前にリクエストされた、夫婦ごっこ回でした。
穂乃果ちゃんは妹でもありますが、やはり嫁としても力を発揮できるというのが素晴らしいところだと思います。思いますよね???
長い間お待たせしていたにも関わらず、お気に入りや評価等を解除せずにいてくださった方々、本当にありがとうございます!
エタるつもりは最初からなかったのですが、待ってくださっている方々がいるというのが一番のモチベーションに繋がりました。
今後もマイペースではあるかと思いますが、更新を続けていきますのでよろしくお願いします(●・8・●)