兄と妹~ときどき妹~   作:kielly

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 お久しぶりです、きえりーです。
 長い間投稿しないままで申し訳ないです。ましてや穂乃果ちゃんの誕生日すら投稿しないという奇行すらやってしまいやがりました……反省してます(・8・)


 今回の話なのですが、実は結構前に書き終えてました。

 ただ、投稿予定が日本で発生したいくつかの自然災害とタイミングが重なってしまい、今回のテーマが『 雨』であることから、不快に思われる方がいらっしゃるかもしれないという可能性を考え、削除するか遅らせるかという決断も出来ないまま悩んでいました。

 しかし、この話で伝えたいのは『 自然の魅力』。
 
 そこまで深くない内容であることと、少しでも雨に対する恐怖心というものが和らげられればという思いから、削除しないことを選び、Twitter等での様子を見て、投稿を遅らせました。
 被害にあった方々が今どういう状況に置かれているか全くわからないというのが本音ではありますが、もしこの作品に触れていただけたのであれば、少しでも安らいでもらえれば幸いです。
 この作品ならではというような表現で書いてますので、あまり普段の雰囲気と変わらないかとは思いますが……

 相変わらず前書き長くてすいません汗



雨の日

 梅雨――夏という季節が訪れるための、準備期間。

 

 ざーざーと降り注ぐ水の音、太陽が雲に隠れて薄暗い空、じめじめとした生ぬるい空気。

 

「好きだなぁ」

 

 俺がこう言うと、聞いた人はみんなあまりいい顔をしない。

 どうして? 何がいいの? と反論を喰らうことが大概だ。そりゃそうだろう、雨降ってれば外で遊ぶのに支障が出るし、空が暗いからなんとも気分が晴れないし、じめじめとした空気を好むキノコみたいな人なんて滅多にいない。

 

 うちの妹もその1人。

 

 

 

 

 

 

 雨の日

 

 

 

 

 

 

「えぇ~!? 雨なんて嫌いだよぉ!」

 

 いつもは俺の言うことに賛同してくれる穂乃果も、梅雨ばかりは許せないらしい。眉をひそめて俺を覗き込むように見てくる。

 

 穂乃果は太陽女だ。いつも輝いていて温かく、元気いっぱい活発に動くその様子はまさに太陽そのもの。

 それに引き換え俺は雨男。晴れて欲しい時に限って雨を降らせてしまうというような、不幸な男という意味じゃなくて、晴れよりも雨の方が好き、そういう単純な意味で雨男。

 

 だからなのか、雨の日はいつも言い合いになってしまう。

 

「穂乃果、歳をとれば雨の日の良さが分かるようになるんだよ」

「1つしか離れてないじゃん! ジジくさいよお兄ちゃん!」

「違うぞ、俺は大人びてるんだ」

「それって穂乃果のこと子供って思ってるの~!?」

「あははっ、そんな穂乃果も可愛いぞ」

「えっ・・・・・えへへ」

 

 頬を赤く染めながら、チラチラとこちらを見る穂乃果はやっぱり可愛い。なんてことを思いつつ穂乃果の頭を撫でながら、ガラス越しに景色を眺める。

 

 

 雨が好きな理由は穂乃果がいるから、というのもある。

 

 

 雨の日が好きとは言ったものの、別に雨に濡れるのが好きとかそういうわけじゃない。空が暗ければやっぱり爽快感はないし気分は重い、気だるくなって外出もしたくなくなる。

 でも穂乃果がいるから、こうやって笑って過ごせる。それだけで、たったそれだけのことで、憂鬱な雨の日も楽しくなる。

 

 穂乃果が晴れ女だから楽しくなるのかな? 

 

 なんて。

 

「うわぁんもうっ! 雨なんて天気なくなっちゃえばいいのに!」

「ははっ、でも雨降らなかったら水不足で困るぞ?」

「うっ・・・・・・でもこれだけ降ったら大丈夫だもん!」

 

 外に出たいのに出られないもどかしさと苛立ちが、なんとも子供らしくて愛らしい。雨の日ならではの愛らしさを俺に見せつけながら、穂乃果は我慢ならないといった様子で、雨の日なのに窓を全開にして両手を口に当て、雲の切れ間から見える光のような輝きを放ちながらこう言った。

 

「雨、やめーっ!」

 

 音ノ木全体に響きそうなその声は、もしかしたら天にも届くかもしれない、そんなことを思わせてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼間散々騒いでいたからか、いつもならまだ起きているはずの時間だったが穂乃果は寝てしまった。

 今は幸い雨も落ち着き、しとしとと降る心地よい雨音、昼間とは違ってひんやりとした空気で、昼間とはまたかわった雰囲気を出している。

 

「好きだなぁ」

 

 こういう変化を楽しめるのもまた、雨の日ならではだと思う。

 

「そう思わないか――雪穂」

 

 穂乃果が寝てすぐ、俺の横に来たもう1人の妹、雪穂にそう尋ねた。

 雪穂は少しだけ開けている窓の隙間から外を覗きながら、優しく笑う。

 

「私は好きだよ。でもお姉ちゃんが騒がしいんだもん、全く和めないよ」

「あははっ」

 

 雪穂はどちらかというと俺と好みが似ている。

 穂乃果が元気いっぱいな太陽だとするなら、雪穂はその逆の、静かに見守る月のような娘だ。ただ、負けん気が強いのは穂乃果に似ているかもしれない。

 

「雨は静かに楽しむものだと思うんだよね」

「そうだなぁ」

「趣あるよね」

「いいよな」

「歳とってくると分かるようになるんだよね~こういうの」

 

 そんなこと考えられる私って大人だよね~、なんて言いたげな自信ありげに胸を張る雪穂。本人は割と本気で大人っぽいと感じているのかもしれないが、兄としてはやっぱり大人に見られたがってる可愛い妹にしか見えない。言わないけど。

 

「雪穂は大人だな~」

 

 なんて言いながら頭を撫でてやると、少し恥ずかしそうに下を向きながら、満更でもなさそうにそのまま撫でられている雪穂。

 性格こそ違えど、やっぱり妹として通ずるものがあるんだろう。

 

 太陽と月、真反対だけど似ているところもある2人の妹の、それぞれの良さが分かる、それもまた、雨の日の良さだと思う。

 

 

 


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