兄と妹~ときどき妹~   作:kielly

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 穂乃果ちゃん! ほのかちゃん? ホノカチャン!

 穂乃果ちゃん誕生日記念以来の投稿になってしまいました。
 今回のお話、実は6月頃にリクエストいただいた回だったのですが何だかんだで4ヶ月も遅くなってしまいました。穂乃果ちゃん推しとして情けない限りでございます。

 しかし! 穂乃果ちゃんの可愛さは無限大かつ無制限、それでいて無制限!
 だからセーフですよね!←



膝の上の天国

「ど、どうかなお兄ちゃん?」

「あ〜最高だ〜」

 

 心配そうに俺の顔を覗き込む穂乃果に、俺はふわふわとした意識の中答えた。

 穂乃果の顔を下から見ながら(・・・・・・・)、頭の下にある柔らかな感触を楽しむ。

 

「ほんと最高だよ……」

 

 

 

「穂乃果の膝枕(・・)は」

 

 

 

 

 

 膝の上の天国

 

 

 

 

 さっきのことだ。

 俺と穂乃果の2人はいつものように部屋でゴロゴロのんびり過ごしていたわけだが、そんな日の昼過ぎに穂乃果が突然こんなことを言いだした。

 

「ねえお兄ちゃん、じゃんけんしよ!」

「え? じゃんけん?」

「うんっ! でねでね? 負けた方が勝った方の言うことを一つ聞くの!」

 

 特に変なゲームではないのだが、あまりに突然だったため少しばかり驚くが、穂乃果の提案だから断る気などない。

 

「ほぉ、よくあるやつだな。でもどうしたんだ唐突に?」

「ん~? 何となくそうしたくなったの!」

「そっか。よし、穂乃果がやりたいならやろう、その代わり負けたら俺の言うこと聞くんだぞ?」

「お兄ちゃんも穂乃果に負けたら言うこと聞いてね!」

「おう! それじゃ早速……じゃんけんだ!」

 

 俺は穂乃果の提案に乗り、手を前に出し、穂乃果もまた、やる気満々と言わんばかりに服の袖を軽く捲ってその手を俺の前に出してきた。

 

「じゃあいくよ! じゃん、けん――――」

 

 穂乃果の掛け声から始まったじゃんけん、しかし俺は穂乃果に連敗してしまう。

 

「やったぁ! また勝ったよ!」

「うわぁ負けた~!」

 

 このゲームのルールに則り、穂乃果からの命令を次々に果たすハメとなる俺。しかしながら穂乃果からの命令は至って可愛らしい、いかにも穂乃果らしいお願いばかりだった。

 

「おんぶして!」

 

「今度は抱っこ!」

 

「プリン食べさせて!」

 

「それいけ穂乃果のお馬さんっ!」

 

 頭を撫でろという命令に始まり、おんぶに抱っこ、プリンを食べさせてあげたりなど、極めていつもどおりのお願いで正直全く負けた気がしない。というより可愛い穂乃果をいつもどおりに拝めるため、むしろ俺が勝っているも同然の結果だった。

 しかし、命令を受け入れること自体に苦しみは一切ないのだが、じゃんけんに勝つことができないため、俺から命令することが一切できない状態にある。

 

「お兄ちゃんってそんなにじゃんけん弱かったかな? このままじゃ穂乃果がお兄ちゃんに命令するだけで終わっちゃうねぇ」

 

 加えて、穂乃果がにししと悪い笑いを浮かべて俺を馬鹿にしてきたのだ。いつもは穂乃果に何をされても怒ることなどないに等しいのだが、今回は単純にじゃんけんに連敗しているということもあり、俺の中にある僅かばかりの負けず嫌いが、俺をムキにさせる。

 

「大丈夫だよ、次はちゃんと穂乃果に勝って、穂乃果が恥ずかしくなるような命令してやるからさ!」

「えっ!? あぅぅ、その言い方はなんか……で、でも穂乃果がまた勝てばいいだけだもん!」

 

 俺がムキになってそう言うと、穂乃果もまた、少し頬を赤らめながらも強気な態度で俺に向かってきた。

 

 見てろよ穂乃果……絶対に勝って穂乃果が恥ずかしくなる命令してやるからな……

 

「いくぞ穂乃果!」

「いくよお兄ちゃん!」

 

「「じゃーんけーん……ぽん!」」

 

 勢いよく出した拳。

 俺が出したのはグー、そして穂乃果が出したのは……

 

「ほ、穂乃果が負けたぁ……」

「っしゃあ!!! 穂乃果に勝ったぜ!!」

 

 穂乃果が出したのはそう、チョキ。俺はこの勝負に勝ったのだ。

 

「ふへ、ふへへへ」

「お、お兄ちゃん? 笑い方が怖いよ?」

「穂乃果、覚悟しろよ……」

「ひぃ!?」

 

 そう、俺はこの勝負に勝った。ということは俺は穂乃果に命令できるわけだ。

 

「穂乃果、命令だ」

「う、うん。約束だもんね、いいよ!」

 

 連敗する中俺は考えていた。穂乃果に何を命令しようかと。「頭を撫でさせろ!」というのは先に穂乃果から同じ内容の命令を食らったから没、「抱きついてこい!」もまた、抱っこしてるわけだからこれも没。しかもこれらの命令は、命令する割にはあまりにいつもどおりの内容で、ゲームの勝利報酬としては少し弱い。

 

 それならばと考え出した命令。そう、それが――――

 

 

 

 

「お兄ちゃんの顔を見下ろすのってなんか新鮮かも」

「俺も穂乃果を見上げるのはちっちゃいころ以来かもな」

 

 俺が出した命令こそが"膝枕"、男のロマンと言ってもいいだろう。女の子特有の柔らかな感触が俺の後頭部を優しく支える。

 

「で、でもぉ、こういうのってもっと女の子らしい子にやってもらった方が絶対いいよぅ……」

 恥ずかしそうに顔を赤くしながら俺を見る穂乃果。そうだ、俺はこんな風に恥じらう穂乃果を見るために膝枕というお願いをしたんだ。まぁ、膝枕して欲しかっただけなんだが。

 恥じらう穂乃果の頭に手を伸ばし軽く撫でる。

 

「そんなことないぞ。穂乃果はどんな女の子よりも魅力的で女の子らしい、"ザ・女の子"だと思うよ」

「そ、そうかなぁ」

 

 俺の言葉を聞きながら頭を撫でられる穂乃果は、嬉しいような恥ずかしいような曖昧な表情を浮かべる。

 いつも言ってるかもしれないが、穂乃果は本当に女の子らしくて可愛い。さすがは俺の妹といったところか。

 

 

 膝枕をしてもらってから10分くらい経っただろうか。変わらず膝枕をし続けてもらっている俺だが、何か少し物足りなく感じた。

 

 ん~、なんだろうなこの感じ。膝枕は確かにロマン、でも何か他にもあったはず……そうか!

 

 足りないものが何なのかが分かった。しかしそれを果たすにはもう一度じゃんけんに勝つしかない。それが今の俺たちのルール。

 ならば勝つしかない、じゃんけんに。もう一つのロマンのために。

 

「穂乃果、じゃんけんだ!」

「う、うん! でもその前に膝から離れて……」

「ダメだ! このままいくぞ!」

「うぅ~、そんな気はしてたけどぉ!」

 

 膝枕してもらったままの体制で、俺のロマンをかけたじゃんけん。恥ずかしがる穂乃果をこの場は制することができたが、おそらくこのじゃんけんで穂乃果が勝ったら、命令として膝から離れろと言ってくるだろう、そうなると俺のロマンはその時点で崩れてしまう。

 

 絶対に負けられない戦いが、ここにあるのだ。

 

「いくぞ穂乃果ぁ! じゃーんけーん――――」

 

 

「「ぽん!」」

 

 

 勝負はたった一手で決まった。一瞬だった。

 

「さぁ、俺のもう一つのお願い、聞いてもらうぞ」

 

 俺は勝った。負けることの許されないプレッシャーを跳ね除け、俺は勝った。

 

「うぅ……で、でも、そういうルールだもんね、穂乃果が言い出したんだもんね。うん、お兄ちゃんの命令、何でも聞くよ」

 

 負けた穂乃果もまた覚悟を決めたようで、俺をまっすぐ見つめる。

 

「穂乃果……言うぞ」

「うん」

 

 俺のもう一つのロマン、それは

 

 

「耳かき、してくれ」

 

 

 耳かき。ただの耳かきなら何もロマンはない。

 しかし、膝枕+穂乃果+耳かきならどうだろう? これほど俺の心をくすぐるロマンはない。

 男なら一度は夢見たことだろう、女の子の膝に頭を預け、女の子に耳かきしてもらうその栄光を。

 

 俺は今日、それを現実にする。

 

「さ、穂乃果。命令だぞ」

「み、耳かき!? 自分のならともかく人の耳なんてやったことないよぉ」

「大丈夫だよ穂乃果、心配しなくても」

「で、でもぉ! もし穂乃果が失敗してお兄ちゃんの耳に何かあったら」

「これは俺の命令だぞ。失敗してもそれは俺が命令したからだから、穂乃果は一切悪くないんだぞ」

「あぅぅ……そ、そんなに言うなら」

 

 無理矢理気味に穂乃果を説得し、俺は顔を穂乃果の身体と逆の方に向けた。するとどうだろう、さっきまでは俺の後頭部にあったはずの柔らかみが次は右耳に。もっちりふわふわ、まるでパンのような表現だが、穂乃果の好物だからその表現で良いのかもしれない。

 

 あぁ、幸せ。

 

「お、お兄ちゃん、痛かったらすぐ言ってね?」

「おう」

 

 左耳から穂乃果の声が入ってくる。いつもとは違う聞こえ方がすごく心地よくて、思わず眠ってしまいそうになる。

 と、穂乃果が俺の左耳を優しく掴み、耳穴に耳かきをゆっくり入れてきた。

 

 ゴソ、ゴソ。

 

「あぁ……」

 

 あまりの気持ちよさに思わず声が漏れる。優しく耳に触れている穂乃果の手は温かく、よほど集中しているのだろう穂乃果の少し荒くなった息が耳に触れ、その感触がまた俺を癒す。

 

「い、痛くないお兄ちゃん?」

「あぁ……」

「そ、そっか。痛かったらすぐ言うんだよ?」

「あぁ……」

 

 穂乃果の言葉も、あまりの心地よさに意識半ばになっている俺には正直理解できず、返事と言っていいのかすら怪しいほどに弱い声で穂乃果に答える。

 

 ゴソゴソ、左の耳の中で音が聞こえる。右耳は穂乃果の柔らかな太もも。ここは天国なのだろうか。

 

 これが、ロマンか。

 

「うんっ、お兄ちゃん左は終わったから逆の方向いて?」

「んぁ? あぁ、分かった」

 

 半分意識が飛んでいた俺、穂乃果の声になんとか意識を取り戻し、身体を逆に向けた。すると今度は穂乃果の身体が目の前に現れた。穂乃果の身体で少し暗くなった視界が、さらに俺を心地よい世界へと誘ってくれる。

 

「お兄ちゃん、次は右耳やるからね」

「おぅ……」

 

 ゴソゴソと聞こえる右耳には心地よい耳かきの感触、そして穂乃果の優しい吐息でさらに心地よさを感じさせられる。もう頭は働いてなどいない、ただただこの快感を味わうことに精一杯だ。

 

「痛くない? お兄ちゃん」

「だい、じょう……ぶ」

 

 ほぼ寝てるかのような意識の中、聞こえた穂乃果の声に辛うじて声を発して答えた。

 

 だが、俺が意識を保てたのはそこまでだったようで。

 

 ゴソゴソという心地よい感触を感じながら、俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

「ん……」

 

 目が覚めた俺が初めに見たのは、穂乃果が着ていたであろう服。そして目が覚めた俺が初めに感じたのは、左耳にある柔らかな感触。

 

「あ、おはようお兄ちゃん」

「んぁ……」

「えへへ、お兄ちゃんったら耳かきの途中で寝ちゃったんだよぉ。そんなに気持ちよかった?」

「あぁ……控え目に言って天国だったよ」

「そ、そんなによかったの!?」

「おう、さすがは穂乃果だな」

 

 俺は寝ている間もずっと、穂乃果に膝枕してもらっていたらしい。おはようと言う穂乃果の声が聞こえたときそれに気づいた。寝てしまう前と全く変わらない体制だったらしく、身体の左側が少し痛い。穂乃果もきっと足が痛いはずだ、そう思った俺は身体を起こした。

 

「穂乃果の膝枕も耳かきも、最高だったよ」

「耳かき痛くなかった!? 穂乃果すっごく緊張してたんだよ!?」

「あぁ、全く問題なかったよ」

「そっかぁ……よかったっ」

「おう。それと穂乃果、長い間膝枕してくれてたみたいだな、ありがとう。足痛くないか?」

「大丈夫だよ~! それに、お兄ちゃんの寝顔見てたら全然きつくなかったもん!」

「あはは、そっか」

 

 大丈夫、そう言う穂乃果の履いているズボンの太ももあたりには、俺の頭部の形がくっきりと見える。あれで足が疲れなかったわけがないから、たぶん大丈夫と言ったのは俺に対する気遣いだろう。やっぱり俺の妹は気遣いもできる可愛い女の子のようだ。

 そんな優しい穂乃果の頭を撫でながら、顔の左側にまだ残っている感触を味わいながら俺はこう思った。

 

 また穂乃果に膝枕+耳かき、やってもらおう。

 





 いかがでしたか?
 "耳かき穂乃果ちゃん"をリクエストされていたはずなのですが、なぜか"膝枕穂乃果ちゃん"になってしまいました(・8・)

 でも、あれですよね。穂乃果ちゃんの膝枕+耳かき・・・・・・想像しただけで天に召されそうです(・8・)(・8・)

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