兄と妹~ときどき妹~   作:kielly

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 ホノカチャン!穂乃果ちゃん?ホノカチャン!!

 Twitterにて、こんなメッセージを頂きました。
「なぜメインの方でも穂乃果ちゃんメインで書いているにも関わらず、新作であるこの作品ですら穂乃果ちゃんメインなのですか?」
 穂乃果ちゃんだからです(正論)

 ちなみに、メインではのぞほのえりを中心に書いている(つもり)のですが、この物語では穂乃果ちゃんをメインに、雪穂ちゃんも少しでも描けたらと思っています。だから'〜ときどき妹〜'なんです。
 圧倒的穂乃果ちゃん率ではありますが。




ゲームしよう!

 ある日の昼間のこと。

 

「よっしゃあ!! 今日はゲームして一日を過ごすぜっ!」

 

 ふふふ……この日を待ってたんだ。俺はあるゲームのケースからディスクを取りだし、テレビをつけ、ゲームを起動させる。

 今日プレイするゲーム、それは――――

 

『SUPER MA○○O BROS』

 

 タイトルロゴがどーん! と画面に表示された。そう、今日俺がやるのはスーパーマ○オ!! 何気に人生初だぜっ。有名なゲームだからこそやってこなかったけど、今の歳になって今さらやりたくなってくるなんてな……

 そして――――俺は、宣言するっ!

 

 今日中にこのゲームをクリアする!!

 

 へっ、今日の俺は無敵だぜ? 今なら某名人より高速の連打ができそうなくらいにな。

 さぁ、行くぜっ!

 

 

 

 

「ああああああああああああっ!?」

 

 プレイを始めて3時間、俺は気づいた。

 

「俺、絶望的にアクションゲーム向いてねぇぇっ!!!」

 

 3時間もプレイしてなお、一番初めのステージすらクリアできていないのだ。くっ、なぜだ……

 

「も、もう一回!」

 

 そう言ってもう一度やってはみるものの。

 

「ああああああっ!? なんでクリアできないんだ!?」

 

 やってみては失敗する。これが3時間も続いてたんだからすごい。俺も俺でよく諦めねえな……普通の人なら投げ出すんじゃねえかな。

 しかし、ここで投げ出すのは男としてのプライドが許さない。

 

「っしゃあ!もう一回だ!!」

 

 気合を入れ、もう一度挑戦しようとした時だった。

 

「お兄ちゃんっ、穂乃果と遊ぼ――――休日の昼間っから引きこもっちゃだめだよお兄ちゃん!」

「うっうるさいなっ」

 

 我が妹穂乃果が部屋に入ってきて早々、ジト目で俺を見つめてきた。可愛い……が、今はそんなことはどうでもいい。気にせずに俺はゲームを続ける。

 

「あぁっ!! またかよ!!」

 

 また、またやられてしまった。やべえ、俺センス皆無かもしれない。

 

「お兄ちゃん、穂乃果よりゲームの方がいいんだ……」

 

 何やら後ろでそんな声が聞こえたので

 

「ほら、穂乃果もやってみるか? 難しいぞ~?」

 

 声をかけてみた。

 

「えっ、いいの!? えへへ~、じゃあ一緒にやるっ♪」

 

 嬉しそうに笑いながらそう言ったかと思うと、あぐらをかいている俺の足を無理やり開き空けたスペースに俺に密着する形で背を向け座り、ゲームのコントローラーを取った。座る瞬間に穂乃果から仄かに穂乃果の香りがかおり、密着させた穂乃果の背中の柔らかさを感じた。

 ああ、癒される――――ってそうじゃなかった。

 

「穂乃果、このゲームやったことあるのか?」

「ううん、ないよ! だからお兄ちゃん教えてっ♪」

「おう、じゃあ教えるわ」

 

 穂乃果もこのゲームは初めてだったみたいだから、口頭で説明しようとした。

 

「ねえお兄ちゃん。お兄ちゃんの手で穂乃果の手、操作してほしいなぁ。ほ、ほら、聞くよりも実際に触れた方がいいでしょ!? だから……ダメ?」

「ん、穂乃果がそうしてほしいなら、いいぞ」

「……えへへ」

 

 口頭ではなく直接教えてほしいということらしいので、俺はコントローラーを握る穂乃果の手に自分の手をかぶせ、穂乃果の手ごとゲームを操作していく。

 が、当然操作がしづらすぎて。

 

「あっ、やられたわ」

 

 教える以前の問題だった。

 

「なあ穂乃果、やっぱりこれ操作覚えられないんじゃない? すぐやられちゃうから教える以前の問題だし」

 

 と言ってみるものの、穂乃果は

 

「も、もうちょっとだけ! そしたら覚えられる気がするのっ!」

 

 これ一点張り。うーん……まぁ、穂乃果がそうしたいならそれでいいんだろう。

 そのあともずっと穂乃果の手越しにコントローラーを操って、穂乃果に覚えさせる。心なしか、穂乃果がすごく嬉しそうにしている気がするのはなぜだろう?

 

 かれこれ1時間くらいそんなのが続いた時だった。

 

「お兄ちゃん! 穂乃果、今ならクリアできるかもっ!! もういいよっ、ありがとう♪」

 

 そういって俺の手を優しく払って俺を笑顔で見てきた。

 

「お、もう大丈夫か?」

「うんっ♪ よーしっ! お兄ちゃんより先にクリアしちゃうからねっ!」

 

 よほど自信があるのか、俺に勝つ気満々と言わんばかりの言葉を残して、穂乃果はゲームを開始した。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

「うわああああああああんっ!! おにいちゃぁんっ、ダメだったよぉ」

「あはは」

 

 しかし、さすがは俺の妹。俺と同じで全くクリアまで進めなかった。

 

「はは、兄妹そろってセンスが皆無とはな」

「あははっ、やっぱりお兄ちゃんと穂乃果はそれだけ似てるってことだよっ♪」

「な、なんでそんなに嬉しそうなんだ……」

 

 クリアできていないにも関わらず嬉しそうにしている穂乃果。悔しくないのだろうか。

 しかし、兄妹そろってプレイしてもなおクリアできてないなんて。しかも1番初めのステージだぞ!? あ、ありえん。

 さすがに、俺は悔しいぞ……!

 

「穂乃果、交代でプレイしてこのステージを何としてもクリアするぞ!」

「えっ、お兄ちゃん――――うんっ! 穂乃果も頑張るよっ!!」

 

 俺の顔を見て何かを察したらしい穂乃果は、俺の言葉に賛同した。

 こうして、俺たちの厳しい挑戦が、幕を開けたのだ――――

 

 

「お兄ちゃん!! 上から敵落ちてきてるよ!?」

「えっ! あっ、うわあああああっ」

「お兄ちゃん!? しっかりしてっ!?」

 

 

「穂乃果、絶対に穴には落ちるなよ?」

「もうっ、お兄ちゃんじゃないんだからひっかからな……あぁっ!?」

「ほら、言わんこっちゃない」

 

 

「こうなりゃ2人で同時操作だ!! 穂乃果はコントローラーの右半分な!!!」

「分かった!! ……初めての共同作業だねっ、なんちゃって」

「なっ!? 何言って――――ああああああ操作ミスったああああああああああああ」

「えへへ、夫婦みたい……♡」

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

「くそがああああああああなんでクリアできないんだよおおおおおおおおおおおおおおお!!」

「うーん……難しいね~、このゲーム」

 

 結局2人がかりで挑んでも、結局クリアすることはできなかった。なんでや!! 開始からかれこれ5時間以上。まだ1ステージすらクリアできていないという事実。これは俗にいう"時間の無駄"とかいうやつじゃないのだろうか。

 つらいね。

 

「2人とも、晩ご飯だって~……て、何やってるの?」

「あ、雪穂!」

 

 晩ご飯の時間であることを伝えに雪穂が来てくれた。これはチャンスがあるかもしれない。

 

「雪穂! このゲーム、ちょっとやってみてくれないか??」

 

 頼れるものは頼る、そうしてでもクリアしたい。意地になっている俺が雪穂にお願いしてみた。

 

「ゲーム? あぁ、これマリ○じゃん。なんで今さら――――えっ!? 1ステージもクリアしてないんじゃん!?」

「うっうるさいっ! 俺と穂乃果の2人がかりでもクリアできなかったんだからしょうがないだろ!!」

「ふーん。じゃあ操作方法だけ教えてよ」

「おう、頼んだぞ」

 

 やってくれるらしく、俺は言われたとおりに操作方法を教えた。

 

「ジャンプがこれで、ダッシュがこれ……うん、大丈夫だと思うよ」

「おぉ! じゃあさっそくお願いするわ」

「ん」

 

 操作方法を覚えたらしい雪穂がゲームを始めた。

 

「ここでこうして……あぁ、こいつ踏めるんだね」

「あ、あぁ」

「ここでジャンプ、じゃ距離が届かないからダッシュジャンプで……よし」

「あ、あれ?」

「あ、土管の中に1UPあったから取っておくね~」

「あっはい」

「ふう。はい、クリアしたよ」

「な、なぜでござる」

 

 なんと開始5分足らずで余裕クリアを成し遂げてみせた雪穂。不思議でならない俺を不思議そうに見つめる雪穂。穂乃果は「あはは……」と苦笑い。

 

「お、俺たちの5時間はなんだったんだ。なぁ、穂乃果」

「えっ? あ、あはは、そうだね」

「はぁ!? ここ一番初めのステージだよね!? 5時間もやってクリアできなかったの!?」

「うるせえ!!」

 

 雪穂にあおられる俺。あぁ、哀れ。

 

 俺たちの5時間以上にわたる熱い戦いは、雪穂という天才によって一瞬にして終戦を迎えたのであった。くっ。兄として、男としてのプライドがボロボロだぜ……っ。

 

 なんとも悲しい休日となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 雪穂があっさりゲームをクリアしたあと、穂乃果部屋にて。

 

「ところでお姉ちゃん。確かさっきのゲームって、お姉ちゃん全クリしてたよね? だったらあんなステージ余裕だったんじゃないの?」

「あ、うん。知ってたんだね。だってお兄ちゃん、穂乃果よりゲームに夢中なんだもん。いくらなんでもゲームに負けるなんて悔しいよ」

「でもさ、あっさりクリアしてあげればお兄ちゃん喜んでくれたんじゃない? そしたらお姉ちゃんと遊んでくれたかもよ?」

 

 穂乃果の発言に疑問を覚えた雪穂は穂乃果に聞く。

 

「逆だと思うよ。きっと、そんなことしたらお兄ちゃん、またゲームに夢中になっちゃう。そうなるくらいだったら穂乃果も一緒になってゲームやってた方が何倍も楽しいんだもん。確かに、余裕でクリアできるステージでわざとやられるのって難しかったけど、お兄ちゃんが悔しがってる姿見るの楽しかったし、クリアしない限りはずっと一緒に遊んでいられるし、それに……お兄ちゃんから手握ってもらえたから、いいかなって」

 

 雪穂の問いに、穂乃果は頬を赤く染め、もじもじしながら答える。

 

「お姉ちゃんさ、案外健気で可愛いとこあるよね。」

「も、もうっ。恥ずかしいから言わないでよっ!」

「あははっ。でも、お兄ちゃん相当悔しがってたね。お姉ちゃんの考え知ってたら協力してあげたのに」

「はは、別にいいよ? 気を遣ってくれなくっても。十分お兄ちゃんの可愛いとこ見れたし♪」

「……確かに、可愛かったかも」

「ねっ? そうでしょ? ねえ雪穂、たぶんお兄ちゃん晩ご飯の後もあれ続けると思うんだ。だから、一緒にどうかな?」

「そうだね、もうちょっとお兄ちゃんの悔しがってるとこ見たかったし、私もやろうかな」

「えへへ♪ じゃあ決定だね!」

「うん、今度は上手くやるよ! ……逆の意味で、だけどね」

 

 

 

 

 晩ご飯のあとも俺たちはゲームを続けていたのだが、なぜか全然できなくなっていた雪穂と穂乃果と俺の3人がかりでやっても、2つめのステージをクリアできないまま日付が変わってしまったのであった。

 でも、妹たちが楽しんでるんだったらそれもいいかな……2人の笑顔に若干黒さがあるように見えるのは気のせいですかね?

 

 何でもないただの休日を、3人で楽しく過ごしたのだった。

 

 

 

 

 

「おぉ!! やったぞ、やっと2つ目クリアしたぞ2人とも――――って寝てるのか」

「んん、おにいちゃぁん……」

「すー……すー……えへへ」

「ふふ、おやすみ、2人とも」

 

 

 




かわいいかわいい~?

\ホノカチャン!!/

訳:今回はいつも以上に伝わりづらい描写が描かれている部分があります。そこの部分は穂乃果ちゃんが甘えている描写であるということをご理解いただければそれで充分です。


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