兄と妹~ときどき妹~   作:kielly

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 穂乃果ちゃん!ほのかちゃん?ホノカチャン!(シンプルイズベスト)

 今回もTwitter投票によって選ばれた、駄々っ子の穂乃果ちゃんを書いてみました。サザ○さんやうま○ちゃんみたいな感じで、3本立て+αでお送りしていきます!

 投稿こそ最近は控えめでしたが、執筆していない間も穂乃果ちゃんの可愛さに酔ってしまっていたきえりーですが、ぜひ読者様にも穂乃果ちゃんの可愛さに酔ってもらいたいものです(?)



駄々っ子穂乃果ちゃん!

 

 これは、とある高校生兄妹による戯れ合いの様子である。

 

 

 

 

 1.お兄ちゃんから逃げられない!

 

 

 「お兄ちゃん、鬼ごっこしよ!」

 「えっ?」

 

 高校2年生である高坂穂乃果は、兄である高坂光穂の胸に笑顔で飛び込みながらそう言った。しかし光穂は困惑。それもそのはずで、妹の穂乃果からのお願い事自体は今までにいくつもあったものの、それは全てこの部屋内で出来ることの範疇であった。しかし今回は違う。

 

 「鬼ごっこ? こんな狭い部屋の中でか?」

 「うんっ! むしろこの部屋の中だからだよ!」

 「え〜?」

 

 鬼ごっこというのは、鬼役の人から逃げ回る遊びであって、逃げ回ることがほぼ不可能な部屋の中でやるものではない。しかし穂乃果はこの部屋の中だからこそだと言い張る。妹のお願いには絶対、そう考えている光穂ではあったが、さすがに意味のわからないお願いに首を傾げる。

 しかし、結局

 

 「おう、穂乃果がやりたいならやろうか、鬼ごっこ」

 

 こうなるのだった。

 

 「わーい! じゃあ早速やろっ、お兄ちゃん鬼ね!」

 「いいぞー、10数えるからその間に逃げるんだぞ?」

 「うんっ!」

 

 10数える間、とは言ったものの、ここは光穂の部屋の中。10秒も数える必要など皆無な程の広さしかないのだが、一応は鬼ごっこということで光穂は10数える。穂乃果は楽しそうに、光穂から離れた部屋の角に待機する。

 

 「10、9、8」

 「えへへっ」

 「7、6、5、4」

 「ふふふっ」

 「3、2、1」

 「……えへっ」

 「0、よしいくぞ穂乃果」

 「うんっ、おいでお兄ちゃん!」

 

 10数えた光穂が動き出す。穂乃果は数え始めてからずっと笑顔で待ち続け、光穂が動き出すのと同時に腕を前に出し、抱きしめの構えで光穂を待つ。

 

 「っておいおい、逃げろよ? 鬼ごっこなんだろ?」

 「穂乃果を捕まえてよ、鬼ごっこだよ!」

 「ん? なんかよく分かんないけど、はい捕まえた」

 「えへへ〜、捕まっちゃったよぉ♡」

 

 光穂が穂乃果の肩を軽く叩き捕まえると、穂乃果はそのまま光穂に抱きついた。捕まっちゃったと穂乃果は言うが、まるで逃げる気配のなかった穂乃果を見て、少し呆れた様子で穂乃果の頭を撫でながら。

 

 「捕まったって、元々逃げる気無かったんじゃないのか?」

 「穂乃果はいっぱい逃げたもんっ! 逃げたけどお兄ちゃんに捕まったんだもんっ!」

 「俺には逃げてるようには見えなかったけどな?」

 「そんなことないもん、一生懸命逃げたもん……えへへ、だからお兄ちゃん、もっとナデナデしてっ♡」

 

 一生懸命逃げたと言い張りながら抱きつく穂乃果に呆れつつも、光穂は、そんな穂乃果の頭を穂乃果の気の済むままに撫で続けるのであった。

 

 

 

 

 

 2.デート行きたいのお兄ちゃん!

 

 

「ん~っ……」

 

 大きく身体を伸ばし、ベッドから上体を起こす。カーテンの隙間から入り込む光に目を細めながら、光穂は休日

 の朝の始まりを身体で感じていた。

 

「あれ、穂乃果は?」

 

 横で寝ていたはずの妹、穂乃果がいないことに気が付く。いつもなら穂乃果はまだスヤスヤと眠っているはず。そんなことを思っていると、部屋のドアの外からドタドタと大きな音を立てながら誰かが近づいてくることに気がついた。

 バンッ、大きな音を立ててドアは開かれた。

 

「お兄ちゃん! お出かけしようよ!」

 

 その正体は穂乃果だった。既に白いワンピースを着ていて、いかにも出かける気満々といった様子で光穂にお出かけに誘うその様子はまさに天真爛漫そのもの。

 

「さぁ、行こうよ!」

 

 大きく腕を上にあげ、バンザイの格好で光穂に笑顔を見せつける。

 

「ん~……」

 

 しかし光穂の今日の気分は家でゴロゴロ。いくら可愛い妹からの誘いとはいえど、気分が向かない以上は素直に誘いに乗ることができない、とはいえはっきりと断ってしまい、穂乃果の悲しい顔を見てしまうことになっては、折角の休日が満足のいくものにはならない。返答に悩む光穂。

 悩む光穂に、穂乃果がダメ押しする。

 

「お兄ちゃん行こうよぉ、ねえお兄ちゃーん!」

「ん~、今日は部屋で一緒にゴロゴロしないか?」

「えー!? こんなにいい天気なのに、部屋でゴロゴロしてるだけなんてもったいないよぉ!」

「でもなぁ、今日は部屋でゴロゴロしたい気分なんだよ」

「だめっ! そんなことしてたらお兄ちゃん、カビになっちゃうよ!?」

「ははっ。もし俺がカビになっても、穂乃果は俺と一緒にいてくれるか?」

「え? それはもちろん一緒に……って! またそうやって話逸らそうとして!」

「ばれたか」

 

 穂乃果との会話を逸らして出かける話云々をなくそうと試みた光穂だったが、穂乃果に見破られ失敗してしまう。

 

「うぅ、お兄ちゃぁん」

「くっ」

 

 穂乃果が少し涙を浮かべつつ、光穂を見つめる。今にも泣き出しそうな穂乃果のその表情に、光穂は慌てて涙を止めようと努める。

 

「な、泣かないでくれ穂乃果! ほーらよしよし、穂乃果は強い子だから泣くのはやめような~!」

 

 穂乃果を抱きしめ、小さい子をあやすような言葉遣いに合わせて、頭を撫でる。穂乃果の泣く姿だけは見たくない、その想いだけが光穂の心を埋め尽くす。

 数秒、光穂が穂乃果の頭を撫で続けると、穂乃果は黙り込み光穂に抱きつき返す。

 

 その時だった。穂乃果は光穂の耳元に口を近づけた。

 

「お兄ちゃん、お出かけしよ……?」

 

 少し涙を浮かべたような、かつ甘えた声で耳元で光穂に囁く。

 そんな声を聞いてしまった以上、光穂が答える言葉は1つだけ。

 

「わかった、今日は思い切り遊ぼうな」

 

 つくづく妹には弱いものだ、心の中でそう思いながらも、可愛い妹のためなら仕方がない。

 

「えっ、本当!?」

「おう。さ、せっかく早起きしたんだから早く出かけようぜ」

「わー! やったー、お兄ちゃん大好きっ!」

 

 パーッと明るい笑顔を咲かせる穂乃果、これこそが、光穂にとっての陽の光なのだ。燦々と照りつける太陽なんて目じゃない。

 

「さぁ、行こうっ!」

 

 穂乃果の温かい手に引かれ、ある日の高坂兄妹の休日は始まったのだった。

 

 

 

 

 3.抱っこだよお兄ちゃん!

 

 

 風呂から上がり、光穂は1人自分の部屋で、もうすぐここに来るであろう穂乃果を待っていた。

 少しすると、ギシ、ギシと床の軋む音が徐々に近づいてきた。ガチャ、ドアが開かれると、ドアの影から穂乃果が顔をのぞかせた。

 

「入っていいかな?」

「おう、待ってたよ……え?」

 

 穂乃果が来るのを待ち望んでいた光穂は、穂乃果の問いに迷わず答えた。しかし、部屋に入ってきた穂乃果はいつもと違う格好だった。

 

「なんで着替えないでタオル巻いたままできてるんだ!?」

「えへへ、お兄ちゃんに少しでも早く会いたくて来ちゃった♡」

 

 来ちゃったとウィンクをキメながら、てへっと笑う穂乃果。その格好は風呂あがりそのままといった状態で、身体にはバスローブ1枚巻いただけといった、何とも大胆な格好。その姿を見て光穂は慌てる。

 

「お、俺も早く穂乃果に来て欲しいとは思ってたけど、そこまでして早く来てくれる必要はないぞ!? それにそんな格好、湯冷めしたらどうするんだ! 早く服を着てこい!」

 

 早く服を着て来いなどと光穂は言っているが、内心では穂乃果のスタイルがくっきりと表れているその大胆な格好を直視できないほどにドキドキしていた。自分の妹とはいえど、思春期男子にその大胆さは危ないものがある。

 光穂のそのセリフに、穂乃果は少し表情を曇らせる。

 

「えー……お兄ちゃん、穂乃果の身体、そんなに魅力ないかなぁ……?」

「えっ!? い、いや、そんなことはないぞ! むしろすごく健康的で良い感じっていうか……はっ!?」

 

 表情を曇らせた穂乃果からのそんな発言に、つい本音がポロリ。気づいたときにはもう遅く、穂乃果は顔を真っ赤にさせ俯いていた。

 

「……えへへっ、嬉しいっ。じゃ、じゃあ穂乃果は着替えてくるから、少し待っててねっ」

 

 そう言うと穂乃果は急ぎ足で部屋から出ていき、慌ただしくドアを閉め、ドタドタと部屋から遠ざかっていった。

 

「あ……あぁ……」

 

 穂乃果の赤く染まりきった顔、自分の発言、そして妹の身体の成長。全てを思い出しながら、ただただ立ち尽くすしかない光穂だった。

 

 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「お、お待たせお兄ちゃん」

「あ、あぁ、今度はちゃんと服着てきたんだな」

「う、うん」

「そ、そっか」

「…………」

「…………」

 

 服を着て再び部屋に来た穂乃果だったが、光穂と視線を合わせることができずに目をそらす。その様子に光穂もぎこちない態度で穂乃果に声をかけるが、そこで会話が終わり、2人して無言になってしまった。

 部屋に静寂が訪れる。視線が合うたびに目をそらしてしまう2人、その度に2人して頬を赤く染める様子は、もはや兄妹のそれではない。

 何分経っただろうか、穂乃果がようやく口を開いた。

 

「お、お兄ちゃん」

「ん、どうした?」

 

 ぎこちなく自分を呼ぶ穂乃果に、動揺を極力隠せるように自然そうに振舞う光穂。穂乃果はそんな光穂を見て少し安心したのか、控えめながらもいつもと変わらないトーンで言う。

 

「抱っこ、抱っこして欲しいの」

「えっ? あ、でもそれは」

 

 必死に自然風に話せるよう努めた光穂だったが、穂乃果のその発言に再び慌てる。身体を密着させる抱っこ、今の光穂には多少なりとも緊張する行動である。いつもならすんなりと行える行動だからこそ、今の光穂にはレベルの高い行動。

 しかし

 

「だめ……?」

 

 首を傾げ可愛らしくお願いする穂乃果には勝てず

 

「おう、来いよ」

 

 腕を前にだして、穂乃果を受け止める体制を取った光穂。それを見て穂乃果は光穂に近づき、そして抱きついた。

 

「持ち上げるぞ~……よいしょっと」

「えへへ……お兄ちゃん温かいね」

「穂乃果もいつもどおりの温かさだな」

 

 穂乃果を抱っこすると、穂乃果は嬉しそうに微笑む。そこにはもうさっきまでのぎこちなさはなく、ただの甘えん坊妹穂乃果だった。

 

「穂乃果、お兄ちゃんから抱っこされるの好きなの。お兄ちゃんの体温がいっぱい感じられるから」

「俺も穂乃果を抱っこするの好きだよ、可愛い穂乃果がこんなに近くに感じられるんだから」

「えへへっ、まるで恋人同士みたいな会話だねっ」

「ははっ、確かにそうかもな」

 

 目をつぶり、光穂に身体を預けながら抱っこしてくれている光穂の体温を感じる穂乃果、そして可愛い自分の妹を優しく抱き抱え、小さかった頃の自分の妹を想い出し、穂乃果の身体を少し揺らす光穂。

 

「昔はこうやって抱っこした状態で身体を揺らしてたら、いつの間にか穂乃果が寝ちゃってることが多かったんだよな」

「そうだね。だってお兄ちゃんから抱っこされるの気持ちいいんだもん」

「今はどうだ?」

「うん……やっぱり眠たくなってくるよ」

「はは、穂乃果は昔から変わらないんだな」

「うぅ、穂乃果だって成長してるもん」

「それは知ってるよ」

 

 昔と変わらず、身体を揺らすと眠そうな声をあげる穂乃果。成長してる、そんなことは知っているのだが、兄としてはやっぱり穂乃果は昔のまま変わらない、変わらないでいて欲しい、そう思う光穂。

 

 そのあとも穂乃果を抱っこしたまま身体を揺らしていた光穂。すると

 

「すー……すー……」

「寝ちゃったか」

 

 安らかな寝息を立て、穂乃果は眠ってしまった。光穂はそんな穂乃果の寝顔を見て、やはり昔と何ら変わらないということを確認し、そのまま穂乃果をベッドの上に寝かせ、毛布を被せる。

 

「おやすみ穂乃果」

 

 膝を地面につけ、スヤスヤと眠る妹の可愛い寝顔を見ながら、光穂は柔らかな笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 Extra.もう1人の

 

 

 眠りについた穂乃果の寝顔を見ながら柔らかな笑みを浮かべる光穂。

 

「さて、と」

 

 物音を立ててしまい、気持ちよさそうに寝ている穂乃果を起こしてしまうは悪い、そう思った光穂は立ち上がった。すると、トントンと部屋をノックする音が。

 

「どうぞ」

 

 声をかけると、ドアは開かれた。

 

「お兄ちゃん」

「お、雪穂か」

 

 

 入ってきたのは、もう1人の妹雪穂だった。雪穂は部屋に入るなり、ベッドの上で眠っている穂乃果を見つける。すると雪穂は光穂に部屋の外に来るよう手招きした。光穂は穂乃果が起きないようにそっと歩き、そっと部屋のドアを閉めた。雪穂は、部屋から光穂が出てきたのを確認し、手を引いて雪穂の部屋へ招き入れた。

 

「どうしたんだ雪穂? 手を引いてまでして、珍しいな?」

 

 普段は声で呼んだり手招きしたりするのだが、手を引っ張ってまでして招かれたのは珍しく、光穂は疑問に思った。

 光穂が部屋の中に入ったのを確認した雪穂は、すぐさま部屋のドアを閉めた。そして光穂の方を振り向き、口を開く。

 

「あ、あのねお兄ちゃん」

「ん、どうしたんだ雪穂?」

「お、お兄ちゃん、さっきお姉ちゃん抱っこしてたよね?」

「えっ!? な、なぜそれを」

 

 ドアを完全に締め切っていて見られることのなかったはずの光景を、なぜか雪穂は知っていた。

 

「部屋の前通りかかったら、たまたま2人の会話が聞こえてきて、お兄ちゃんの抱っこが気持ちいいって言うお姉ちゃんの声がしたから、その……盗み聞きしたんじゃないんだよ!?」

「あぁ、そういうことか」

 

 慌てた様子で訂正を入れながら、どうやって知ったのかを話す雪穂。それを聞いて納得した光穂は頷く。雪穂は光穂が納得してくれたのを確認し、再び落ち着きを取り戻し、話し出す。

 

「お姉ちゃんが寝てたのって、もしかして抱っこしてて気持ちよかったから?」

「ははっ、穂乃果は昔から変わらないからなぁ」

「そ、そうなんだ」

「ん? どうした雪穂、なんかさっきから態度がぎこちないぞ?」

「えっ!? そ、それはその、えっと……」

 

 穂乃果が寝ていた理由を聞くと、目をそらしながらそうなんだと話す雪穂。しかしその様子が気になった光穂は雪穂に質問する、それに対し雪穂は再び慌て、目が右へ左へと泳ぐ。そして少し頬を染めながら、恥ずかしそうに光穂に話す。

 

「わ、私もお姉ちゃんみたいに抱っこされたい……なんて」

 

 手混ぜしながら光穂の目を見て話す。光穂はこれをみて、あぁ、雪穂も昔と変わらないんだな、そう思いつつ、何も言わずに雪穂を抱っこする。

 

「わわっ!? きゅ、急にするのはずるいよお兄ちゃん!」

「ふふっ、でもして欲しかったんだろ?」

「……うん」

「雪穂も昔と変わってないんだな、安心したよ」

 

 ずるいと言いつつも、一切抵抗せずに光穂のなすがままに身体を預ける雪穂。その様子に光穂は穂乃果の時同様、柔らかな笑みを浮かべていた。

 

「……お姉ちゃんばっかり、ずるいよ。私だってお兄ちゃんの妹だもん」

「あぁ、雪穂も俺の大事な妹だよ」

「……えへへっ」

 

 穂乃果とよく似た笑みを見せる雪穂を微笑ましく思いながら、これまた穂乃果の時同様、身体を揺らしながら、徐々に身体の力が抜けていく雪穂を見守る光穂であった。

 




 
 いつもとは違う書き方、いかがでしたか?
 もしよければ、感想、評価、お気に入りいただけると嬉しいです!

 ここで、2つご報告が。
 評価していただく際、今までは最低5文字入力していただく形をとっていたのを、コメント不要の形に変更しました! 
 併せて投稿時間についてですが、今までは朝の8時3分限定(例外除く)で投稿をしてきたこの作品ですが、夜の8時3分にも投稿していく形をとっていきたいと思います!

 詳しいことは活動報告にてまとめておきましたので、是非ご確認ください!

 活動報告:https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=143474&uid=107373

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