今回は、この作品にしては珍しいタイプのお話です。
ちなみに前回までのシリアスさは一切ないのでご安心を(?)
さて、みなさんは"いち〇100%"という漫画を知っていますか?
今回のお話は、その漫画に近いお話になっています。
とだけ伝えて、どういう内容なのかが想像できた方はおそらく私と同年代ですよろしくお願いします。
ちなみに私が初めて買った漫画がその"〇ちご100%"でした←
それは、春の終わりを告げるかのように暑い日が照りつける時期のこと。
穂乃果とのお出かけの約束をしていた俺は、自分の用意を済ませ、隣の部屋で用意をしているであろう穂乃果の元へ向かった。
穂乃果は可愛い女の子、マナーとして部屋に入るときは必ずノックをする、それは分かっていた。
だがなぜだろう、この時はうっかり、忘れていたんだ。
「おっおにいちゃっ……きゃあああっ!!」
「あっ」
気づいた時には遅かったんだ。
俺の目には、可愛らしい
いちご、イチゴ、苺。
もうちょっとだけ細かいところまで説明しよう。
俺は用意を済ませ、隣にある穂乃果の部屋の前まで行った。以前、ノックもせずに入ったことが原因でやらかしてしまったことがあったから、今回は同じミスをしないよう、俺の部屋を出た瞬間から"部屋に入る前に必ずノックして確認"という言葉を頭で何回も唱えながら
頭で唱えた意味などなかったんだ。だけどそれだけが問題だったのではない。
「えっ!?」
ドアを開け、真っ先に見えたのは、着替えている最中の穂乃果の驚いた表情。
そして次に見えたのが……
「きゃあああああっ!!」
穂乃果の
「あっ」
あまりに驚きすぎて、思わず声が漏れてしまった。
見る見るうちに、顔が赤くなる穂乃果をただただ唖然とした様子で見るしかできなかった俺。ぽかーんと口を開けたまま、17年兄妹として一緒にいた中でも見たことのなかった光景。
「お、おにいちゃ……はっ恥ずかしいから部屋から出て!!」
「はっはい!! すいませんでした!!」
実の妹に敬語を使いながら、綺麗に身体を180度回転させて部屋を出る俺。ドアを閉め、今起きたことを冷静に思い出す。
…………
可愛らしいいちご柄のパンツだった。
って違う! 落ち着け俺!!
な、なぜ呪文のように唱えていたはずのことができなかった? そしてなぜマズいと思ったにもかかわらずぼけーっと突っ立っててしまったのか?
……顔を赤らめて恥ずかしがってる穂乃果、可愛かったな。
って違あああああう!!!!
落ち着け俺、落ち着け俺、落ち着け俺……必死に自分を抑えようと再び呪文を唱えだした時だった。
『入って、いいよ?』
ドアの奥から、少しだけ怒ったような穂乃果の声が。よ、よし、次は忘れないぞ。
入る許可をもらっているとはいえ、もしものこともあるからと、今度は忘れずノックをして、中に入っていいかを確認するための一言。
「いちご柄、似合ってたよ」
……俺は一体何を言っているんだろうか、いったん頭を氷水にでもつけたほうがいいのだろうか。ドアをノックしたまではよかったものの、なぜかいちごを褒める一言を穂乃果に伝える俺。謎すぎてどうしよう。
ガチャ、ドアを開ける。
「すいませんでしたあああっ!!!」
開けた瞬間に俺は空中で膝を曲げ、土下座の体勢を作ったまま落下、その勢いのまま謝罪の一言を全力で。
このまま穂乃果に怒られてそのままこの後のお出かけは中止、少なくとも今日1日は口を聞いてもらえないというところまでのビジョンは見えた。だがそれ以上にひどくなるのだけは避けたい、その一心で、落下の衝撃に泣いている膝を気にすることもなく頭を下げる俺。
「お兄ちゃん」
「ごめん! ノックもせずに入ってごめん! 思いっきりいちご見ちゃってごめん! そして似合ってたとか言っちゃってごめん!!」
穂乃果が俺を呼ぶが、俺はその声が罵声にしか聞こえなかったから、ごめんごめんとただただ謝罪するだけ。くそっ、俺にデリカシーがないばっかりに……
そんな反省をする俺に対する穂乃果からの一言。
「お、お兄ちゃん……膝大丈夫? 痛くない?」
夢かと思った。怒りもせずに、俺を心配してくれたぞこの
「お兄ちゃん立てる? 手貸した方が……いや肩の方がいいのかな」
「穂乃果あああああっ」
「わわっ!?」
思わず、痛む膝を気にせず飛びつくように思いっきり穂乃果を抱きしめた。
「可愛い、可愛いぞ穂乃果あああああっ」
「く、苦しいよぉ」
「はっ!? す、すまん」
しかし強すぎたらしく、苦しいといわれてしまった。失敗。少しだけ俺から離れた穂乃果は、少し頬を染めつつ目をそらしながらこう言った。
「ほ、穂乃果、お兄ちゃんになら見られても平気だよ……っ」
なにこれ、可愛すぎて吐きそう。どうしよう。と、とりあえずこの気まずい空気を何とかしなければ。
「お、おう。そうだよな、17年も兄妹やってるからな、大丈夫だよな」
何を言ってるんだ俺は。とりあえず無言になるのが嫌だったからとはいえ、もっと他に言葉はなかったものか。案の定、穂乃果も不機嫌そうな顔をし始めてしまったし。
「……そういう意味じゃなかったのに」
ぷくっと頬を膨らませてしまった。ほんと俺デリカシーないな、本当に穂乃果の兄を17年もやってきた男なのだろうか。
っていかんいかん、今から俺たちはお出かけするんだ。こんなスタートじゃお出かけを楽しむことなんてできやしない。俺は慌てて話題をそらすため、そして早くお出かけするため、穂乃果に言った。
「お、お出かけしようか。今が一番いい時間だろうしさ」
「むー……わからずや」
ぷくっと膨らんだままではあったがうなずく穂乃果。すごく可愛い仕草ではあるものの、ことの発端が俺にあるため素直にその顔を直視できないまま、お出かけに行くことになった。
◇◆◇◆◇◆
今はまだ午前中、もうすぐお昼ってところ。
俺たちは公園のベンチで2人で座っていた。お出かけとは言ったが別に特別なことをするわけではなく、よく2人で行く公園まで散歩に行こうというだけだった。
幸い穂乃果は、公園に来るまでの間に機嫌がなおったらしく、いつものように笑顔で手をつないでくれた。今もまだ、手をつないだままだ。この時期だから少し手が蒸れてきそうではあるが、少し勢いのある気持ちのいい風が吹いているから大丈夫だ。
「ん~! 風が吹いてて気持ちいいね」
「あぁ、お散歩には持ってこいだな」
「だねっ」
見てくれこの、さっきまでのことがなかったかのように話している俺たち兄妹を。これが俺たちなんだわ。穂乃果はつないでいない方の手だけ上にあげ、身体を伸ばした後、俺の肩に寄りかかってきた。
「えへへ、カップルみたいだね」
「あははっ、穂乃果みたいに可愛い彼女なんてそうそういないだろうなぁ」
「えぇっ!? お兄ちゃん彼女作るつもりなの!? 嫌だよぉ」
「ははっ、俺には穂乃果がいるだけで十分だよ」
「……えへへ」
俺たち兄妹らしい会話をしつつ、2人一緒にのんびりする。
部屋でのんびりするのもいいけれど、たまにこうやって公園にきて風を浴びながらのんびりするってのもなかなかいいもんだよな。ただ、そこまで近いってわけじゃないから頻繁には来れないだろう、ましてや夏時期や冬時期なんてもっとだ。今の時期だからこそできること。
こんな風に、穂乃果と一緒に手をつなぎながら、気持ちいい風を浴びながら寝れたらすごく気持ちいいんだろうなぁ、なんて思っていた時だった。
「あっ! お兄ちゃん、今日の穂乃果のお洋服、見てみて!」
そう言って穂乃果は俺の手を優しく離し立ち上がり、ベンチに座る俺の前に立つ。
「これね! このまえことりちゃんたちと一緒に買いに行ってきた新しいやつなんだ!」
笑顔で説明する穂乃果。そういえばこの前ことりちゃんと海未ちゃんと出かけてたな、なんてことを思い出しながら穂乃果の服を見る。今日の穂乃果は珍しいことに、スカートを穿いている。何ともこの時期らしい爽やかな、かつ女の子らしい恰好、自然と周りから視線を集めていたことを俺は知っている。
可愛い、その一言に尽きる。さすがは穂乃果だ。
「似合ってるね。似合ってるよ、穂乃果」
「えへへ、そうかなぁ」
褒められると嬉しそうに笑う穂乃果。すごく可愛い。しかし、穂乃果が嬉しさのあまり身体をくるりと回転させた時だった。
ビューっと、さっきまでになかった強めの風が。
「あっ」
「あっ!?」
デジャヴ。俺はポカーンと口を開けたまま今見た光景を頭に浮かべ、穂乃果は慌ててスカートを押さえた。くるりと回ったその瞬間に吹いた風によって、今日2度目の
恥ずかしそうにスカートを押さえつつ、俺に尋ねる穂乃果。
「み、見えちゃった?」
「あ? あ、あぁ、イチゴだったな」
「あぅぅ!」
俺が答えると、恥ずかしさのあまり顔を隠してしまった。確か穂乃果、さっきは俺になら見られてもいいって言ってたよな? 今のは違うのか?
「あぅぅ、またみられちゃったよぉ」
「ご、ごめんな、見えちゃった」
「こんなことなら別の履いてくればよかったよぉ、うぅ」
ん? そういう問題だったのか? 俺は困惑する、別のなら良いとかそういう問題だったのか?? わからん。
「ごめんねお兄ちゃん……まさかまたみられちゃうなんて思ってなかったから」
「え? あ、いや、やっぱ穂乃果はイチゴ好きだから、イチゴでいいと思うよ?」
穂乃果からの謎の謝罪に対して、俺もまた意味不明の返しをしてしまう。普通の返答ではなかったはずだったが、穂乃果は「そっかぁ、えへへ、よかった」などと謎の安堵。
あれ? なんだこれ?
◇◆◇◆◇◆
公園から帰宅し、いつも通りののんびりとした午後を過ごしている俺。公園でハプニングはあったものの、そのときは別に穂乃果と気まずくなることもなく、いつも通りに仲良く帰ってきたのだが、今は珍しく穂乃果は自分の部屋に戻っている。
やはり部屋と公園、2度にわたって見てしまったのがよくなかったのだろうか。いや、間違いなく良くなかったのだろう。普通に考えてみろ俺、もしこれが兄妹でなかったとしたら、ただのセクハラだ、犯罪だ。
うん、機嫌を悪くしていたというわけではないが、謝っておくほうがいいだろう。というか謝らないと俺の気が済まない。そう思い、穂乃果の部屋に向かおうと立ち上がった時だった。
コンコン、ドアをノックする音がした。
「はい?」
返事をして、相手の応答を待つ。
『お兄ちゃん』
穂乃果だった。謝ろうとしていたが向こうから来てくれた。これはちょうどいい。
「おう、いいぞ」
『うん』
ドアの向こうの穂乃果からの返事とともにドアが開かれた。
「えへへ、お兄ちゃん」
そこにいたのは穂乃果。だが何があったか知らないが、すでに顔が赤い。そして、なんというか……雰囲気が違う。穂乃果が俺の目の前に来た。
「お兄ちゃん、さっきはごめんね」
「え? いやいや何言ってんだ、俺が見てしまったのが悪いんだよ」
俺が謝ろうとしていたにもかかわらず、穂乃果から先に謝られてしまった。というか穂乃果が俺に謝る理由などないはずなのに、どうしたんだ?
「お兄ちゃんに2回も見られちゃうなんて思ってなかったから、おんなじ下着着ちゃってて……ごめんね? 分かってたら着替えてたんだけど」
俺は困惑している。というか謝罪の内容が理解できない。何を言ってるんだ?
本気で困惑しきっている俺に、穂乃果は続ける。
「穂乃果、お兄ちゃんのこと大好き。だから下着くらいなら見られたって平気だよ。それでね? 穂乃果、お兄ちゃんに見てほしいものがあって、お兄ちゃんのところに来たの」
頬をさらにじわじわと赤らめ続けながら、謎の発言をつづける穂乃果。なんかいつもの穂乃果と違って、なんというかこう、エロい?
見せたいものがある、そう言った穂乃果は、公園でも穿いていたスカートのすそを握った。
「目、逸らしちゃダメだよ?」
そんなことを言った穂乃果、そして握ったすそを徐々にあげていき――――
「こっちの下着は、まだお兄ちゃんに見られてなかったはずだから」
俺の目に映ったのは、今日3回目にして、さっきまでの履いていたはずの、2回見たものとは違う柄の――――
「あっ」
そして同じように、今日2回目の俺の素で漏れた声。
その瞬間、俺は今日1日のことを思い出しつつ、1つの答えを導き出した。
穂乃果は可愛すぎて手に負えない娘だ、と。
「どう、かな? お兄ちゃんのために、ことりちゃんたちと一緒に選んで買ったんだけど、可愛い、かな?」
この後、頬を染め上げながら照れ笑いしながら俺を見る穂乃果が可愛すぎて、全力で抱きしめて愛でまくってしまったのは言うまでもなかった。
ほ、ほのっ、穂乃果ちゃああああああああああ!!!(流血)
1月5日が苺の日だったらしいんですよね、だから書いてみました。
ちょっと投稿は遅くなってしまいましたが、お許しを。