兄と妹~ときどき妹~   作:kielly

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ホノカチャン!穂乃果ちゃん?ホノカチャン!!






Sweet ♡ Valentine

 今日は休み! へへ……たまりにたまった漫画たち、全部読んでやるぜ! そう思って漫画読み始めたものの、早速続きがないことに気づく。穂乃果の部屋かな?あいつ読むだけ読んで返さないからな。ちょうど穂乃果も今頃部活だろうし、ちょっと探してみるか。

 ガチャッ、穂乃果がいないと思っていたから何も気にせずにドアを開け――――

 

「お、お兄ちゃん!? か、勝手に入ってこないでよっ!!」

「えっ!? あ、ご、ごめんっ!」

 

 慌ててドアを閉める。え、なんで穂乃果が部屋にいるんだ?この時間は部活に行ってるはずじゃ……

 

「ほ、穂乃果ー、お前部活は行かなくていいのかー?」

『今日はお休みだからいいのっ! それよりなんで勝手に入ってきたの!?』

「漫画の続きが読みたくってさ。穂乃果も読んでたから、穂乃果の部屋にあるんじゃないかと思って……ごめん」

 

 ドア越しに聞いてみると、怒っているのがはっきりとわかる言い方で答えが返ってきた。俺の言葉を聞くなり、何やら中でゴソゴソと探し始める音がし始めた……穂乃果、すごく怒ってたなぁ。

 物音がやんだかと思えば、ドアから少しだけ顔をのぞかせた穂乃果が本を差し出してきた……めっちゃ不機嫌そう。

 

「んっ!」

「あ、ありがとう……ごめんな穂乃果、許可なく入ろうとして」

「……女の子の部屋に勝手に入っちゃダメだよ? 穂乃果だって一応女の子なんだから、そういう所は気遣ってよ! じゃあね!」

「あっ……うぅ」

 

 少し乱暴にドアを閉める穂乃果を見て、本当に怒らせてしまったんだと改めて気づいた。あぁ、どうしよう。

 こ、こんなときは――――

 

「雪穂様ああああああああああっ……」

「え、お兄ちゃん!? どうしたの!?」

 

 雪穂に泣きつくに限る。何だかんだこういう時って、俺には何も言ってないのに雪穂には何かしら伝えてる時があるんだよな、穂乃果って。雪穂は泣きつく俺を見て戸惑いながらも聞いてきた。

 

「……お姉ちゃんと何かあったの?」

 

 何かを察してか、穂乃果と何かあったかどうかを聞いてきた。俺は、さっきまでのことをすべて話した。

 

「なぁ、俺穂乃果に嫌われるようなことしちゃったのかな……確かに勝手に入っちゃったのは悪かったんだけどさ」

「んー、それ本気で言ってるの?」

「えっ?」

 

 雪穂に否定されてしまった。なぜ? 嫌われる原因なんて探せばいくらでもありそうな――――

 

「お兄ちゃんさぁ、ほんっとに鈍いよね」

「ん、どういうこと?」

「お兄ちゃん、普段のお兄ちゃんに対するお姉ちゃんの態度見てて、嫌われてると少しでも思えるの?」

「えっ……ん~、わっかんね」

「そういうところが鈍いって言ってるんだよ!!」

「えぇっ!?」

 

 鈍いと散々言われました。そういえば穂乃果からも言われた気がする……反省しよう。

 

「はぁ。鈍いお兄ちゃんに教えてあげる。お姉ちゃんはお兄ちゃんのことは絶対に嫌いにはならないよ」

「……え?」

「だって、私のところに泣きついてくるときって毎回のように勉強かお兄ちゃんのことだよ? どうしようどうしようって慌ててさ。そんだけ好かれてるってことでしょ?」

「そ、そうだったのか……」

「そ。だから心配はしないでいいと思う……というか、原因知ってるし」

「えっ!?じゃあ教えて「嫌だ」あ、はい」

 

 どうやら雪穂は穂乃果が怒っていたことの原因を知っていたらしい。でもなんだろう、原因って。俺が嫌われてるわけじゃなかったのは安心したけど、原因が分からない以上はすっきりしない。

 まぁでも、嫌われたわけじゃないって分かっただけでも収穫ありかな。

 

「ありがとうな雪穂。嫌われたわけじゃないって分かっただけ安心したよ」

「んー。本当にあんまり心配しなくていいからね~」

「あぁ、ありがとう」

 

 雪穂は本当に頼りになる、優しい妹だと思う。穂乃果のことばかり言ってるけど、雪穂ももちろん、最愛の妹だからな。

 

 雪穂の部屋を出て下に降りると、珍しく穂乃果がキッチンに立っているのを見つけた。さっきのことを謝ろう。そう思って声をかけた。

 

「ねえ穂乃果「ひゃあああああああ!?」ほ、穂乃果!? ご、ごめん! 急に声かけて!!」

 

 声のかけ方がよくなかったらしい。若干飛び跳ねながら穂乃果が驚きの声をあげていた。

 

「お、お兄ちゃん!? な、なんの用なのっ!」

「ご、ごめん。さっきのこと謝りたいのと、珍しくキッチンに立ってたから気になって……」

 

 やっぱり怒っているのか、俺に怒鳴りつけるような形で穂乃果は声を出していた。

 うぅ、やっぱり何かしたのかなぁ……

 

「さっきのことはもういいよっ。あと、キッチンにいるのは気にしないでっ!」

「あ、あぁ。で、何作ってる「お兄ちゃんには関係ないから聞かないで!!」っ!?」

 

 "お兄ちゃんには関係ない"

 

 あ……あぁ……

 

 

「うわああああああああああああああああああ」

「お兄ちゃん!? また!?」

 

 

 穂乃果に言われた言葉があまりにもショックすぎて、雪穂のところへ戻ってきちゃいました。

 

「はぁ。今度はどうしちゃったの?」

「穂乃果に……穂乃果に"お兄ちゃんには関係ない"って怒られた」

「はぁ?」

 

 若干呆れ気味に雪穂が俺を見る。そ、そんな目で見なくったって……

 

「キッチンに珍しく穂乃果がいたからさ、何してるのか聞いたらこう言われたんだ」

 

 俺が言うと、雪穂は納得したような様子で俺を見始めた。ニヤニヤした顔で。

 

「あ~、それは確かにお兄ちゃんには関係ないよね~」

「えぇっ!? な、なんで……?」

「まぁまぁ。でも――――お兄ちゃん、今日は家にいない方が良いと思うよ?」

「っ!? ど、どうして……?」

 

「だってお兄ちゃん、今日に限っては家にいられたら"邪魔"なんだもん」

 

 "邪魔"

 

 その言葉に俺は耐えられなくなり――――

 

「うわああああああああああああああああああああ」

 

 急いで外出の準備をして、外に出て癒されに外出しました。

 

 

 

 

 

 ダメです全然癒されませんでした。だって最愛の妹2人から邪魔扱いされるなんて……つらすぎる。

 結局俺は、晩ご飯の時間になるまで外出していたものの、2人の妹から邪魔扱いされてしまった心の傷は癒えることがないままだった。

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 その日の晩、外出した時に追加で買ってきた漫画を読んでいると、コンコンッ、ドアをノックする音が。

 

「はーい。」

『お、お兄ちゃん、今ちょっといいかな?』

「えっ!? ほ、穂乃果か!?」

 

 まさかの穂乃果だった。え、なんだろう、昼間のことを怒鳴りに来たんだろうか。そうだとしたらマジで泣くぞ、俺。

 

「お、お兄ちゃん」

「ほ、穂乃果。どうしたんだ?」

 

 入ってくるまでは怒りに来たんだ、そう思ってたんだがどうやら様子がおかしい。穂乃果にしては珍しく、もじもじとした様子で、ちらちらとこっちを見ながら頬を赤く染めていた。なんだこれ、可愛いんだけど。

 見ると、手を後ろに組んでおり、その手に何かを隠しているようだった。

 

「お、お兄ちゃんっ! これ、受け取ってくださいっ!!」

「……えっ?」

 

 そう言って渡されたのは――――ラッピングされた小さめの箱。

 

「穂乃果、これは?」

「あ、開けてみてほしいな……」

「お、おう――――ハート形のチョコレート?」

「う、うん。お、お兄ちゃん! いつもありがとうね!! そ、そのチョコは家族チョコってだけで、別にそれ以外の意味なんて一切入ってないから勘違いしちゃだめだよっ!?」

「……あ」

 

 そう言われて思い出す。今日、バレンタインじゃん。どおりで街中がカップルであふれてたわけだわ。

 と、ということは?

 

「ほ、穂乃果。もしかしてキッチンに立ってたのって?」

「そ、それはお兄ちゃんにチョコをあげるために……」

「……部屋に行ったとき、怒ってたのは?」

「そ、それもお兄ちゃんに手作りチョコあげたくて、チョコの作り方を雑誌で学んでて……その途中で急に入ってきたから慌てて」

「お、俺を嫌いになったわけじゃ、ないのね?」

「穂乃果がお兄ちゃんを嫌いに? ないないっ、それはぜっっっったいにないっ!!」

「あ、あぁっ……よかったぁ」

「お兄ちゃんっ!? なんで泣いてるの!?」

 

 穂乃果に嫌われたわけでもなく、穂乃果が怒ってたわけでもなく、俺にチョコを手作りで渡すためだった。それを知って安心した俺は、自然と涙を流してしまったみたいだ。

 

 

 

「穂乃果、チョコ食べてみてもいいか?」

「うん。口に合うかは分からないけど」

 

 自信がないのか、控えめにそう言ってきた穂乃果。穂乃果からの手作り、それだけで美味しく感じるだろうに。

 

「あむっ……おぉ、これすごくおいしいよ穂乃果!!」

「ほ、本当!? やったっ!」

 

 美味しいことを伝えると、これ以上ないくらいに嬉しそうに笑いながら喜びを表わにしていた。相当頑張ってくれたんだな、穂乃果。穂乃果がくれたそのチョコは、甘党の穂乃果ならではの、とっても甘いチョコレートだった。

 

「穂乃果、本当にありがとうな。頑張ってくれたんだってのがすごくわかるよ」

「そ、そんなに頑張ってないもんっ! お兄ちゃんにあげるくらいのチョコだし、そんなに力入れてないもんっ……えへへ♪」

「ふふ、本当に良い妹に恵まれたな、俺は」

「ん――――ほ、本当に頑張ってなんかないからね?」

「はいはい。ありがとうな」

「……えへへ、うんっ♪」

 

 撫でてやると、すごく嬉しそうにこっちを見つめてきた。

 "頑張ってなんかない"

 穂乃果はそういうけど、俺は気づいていた。右の人差し指あたりが赤くなっていたことを。たぶん、やけどでもしたんじゃないかな。それを見ると、このチョコがなお一層美味しく感じる。

 それに、穂乃果は嘘が下手だからな。声少し震えてたし。

 

 穂乃果が"一生懸命"作ってくれたバレンタインのチョコレートは、これ以上にないくらい、甘くて美味しかった。

 

 

「穂乃果、ホワイトデーでこれ以上にすごいお返ししてやるからな」

「っ! も、もちろんだよっ! 穂乃果がこんなに苦労して作ったんだからっ! 絶対にすごいお返ししてよねっ!!」

「あ、やっぱり苦労したんだな?」

「あっ!? くっ苦労なんかしてないもんっ!!」

「はいはい……ふふ」

 

 ホワイトデー、俺も何か手作りで返そうかな、なんて思ってしまった、そんなバレンタインデーだった。

 

 

 

 

 

 

「はい、お兄ちゃん」

「あっ、雪穂もくれるのか!?」

「その様子だとお姉ちゃんからちゃんともらえたみたいだね。よかったじゃん」

「あぁ、ありがとうな雪穂。さて――――あむっ……にがっ!? なんでっ!?」

「あははっ♪ これが私の感謝の気持ちだよっ♪」

「バレンタインなんだから甘いのにしてくれよぉ。まぁ、美味いからいいけど」

「ふふっ――――お姉ちゃんからもらったチョコ、相当甘かっただろうなって思ってね」

「……お前わざわざ気を遣ってくれたのか?」

「まあね。一応、感謝の気持ちだし」

「あはは。俺は良い妹を持ったよ、ほんとに」

「やめてよ恥ずかしい……いつもありがとうね、お兄ちゃん」

「ゆ、雪穂がデレた!!やったぜ!!!これから毎日デレデレしてくれ「お兄ちゃん黙って」うぃっす」

 

 バレンタインは、少しビターでした。

 




 本編と同時にこちらも投稿です!

 穂乃果ちゃんの無限の可能性を開きたい。ということで、本編の方の穂乃果ちゃんとは違った穂乃果ちゃんを書いたつもりです。
 テーマは"ツンデレ"、上手く描けているのでしょうか・・・
 雪穂ちゃんが珍しくたくさん出ています。
 雪穂ちゃんも可愛い。
 でも穂乃果ちゃんも可愛い

 よってほのゆきは最強。

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