ということですいません、遅れましたがクリスマス回です。
スクフェスの穂乃果ちゃん見ましたか!?可愛すぎません!?
あれ人類に見せちゃダメなやつですよ!!だって見せちゃったらみんなが穂乃果ちゃん無しじゃ生きられない体になっちゃいますって!!!
まぁ、私はすでに手遅れなわけですが←
今年最後の更新となります。
「お兄ちゃん! クリスマスプレゼント買いに行こうよ!」
今朝、穂乃果からのお誘いを受け、俺たち2人は今ショッピングモールに来ている。
(遅れてきた)クリスマス記念回
来年も一緒に
「わぁ……すごくきれい」
「昼間でもそこそこ綺麗なんだな」
来たのは大きなショッピングモール。今日がクリスマスということもあってか、イルミネーションで彩られた姿がある。今はまだ昼過ぎだが、空が曇っているためイルミネーションの美しさが際立つ。周りにはカップルばかりが目立つ中で、俺たち2人兄妹はプレゼントを買うためにここまで足を運んできたのだ。
しっかしまぁ、分かっちゃいたけどどこ見てもカップルばっかだなおい。うわ、あそこのカップルなんてこんな大勢人がいる中で抱き着きあってやがる。リア充ってのは怖いねえ。
「お兄ちゃん」
穂乃果から声をかけられた。顔を見ると、その目線の先には抱き合っているカップルが。穂乃果の顔がみるみるうちに赤さを増してゆく。顔を真っ赤に染めた後、俺の顔を見て照れたようにこう言った。
「い、行こっか!」
握る手に力を込めながら、いつもの明るさを取り繕うかのように慌てた様子で俺を引っ張って先に進む穂乃果。その時穂乃果は俺の方を一切振り向くことなく、しかし握る手は強く、指と指をしっかりと絡ませてぐんぐん先に進んでいく。抱き合ってる姿をみて照れたんだろうか、少し穂乃果の手が湿っているような気がする。
にしても、照れてるんであればなんでだろうな?俺たちだっていつも向かい合って抱き合ってるってのに、他人のを見るのは恥ずかしいのか?
なんて思いながら穂乃果に手を引かれる中、気づいた。
周りにいる人たちが俺らのことをチラチラ見ている。
穂乃果は今日、ニット帽をかぶって極力正体がバレないようにしているのだが、まさか周りのやつらに穂乃果の正体がバレてしまったのだろうか。仮にも穂乃果はスクールアイドル、バレテしまえば前の"kometter"の件のように騒ぎになってしまう恐れがある、それだけは避けたいのだが……だが、周りの人たちはなぜか穂乃果だけでなく俺の方も見ている気がする。というより2人とも同じくらい視線を浴びている気がする。
俺たち2人って、周りからみたらどういう風に見えてるんだろうな?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
穂乃果に連れてこられたのは甘い匂いがただようケーキ屋。
「わぁ……!」
俺の手を握るのさえ忘れ、ショーケースにくぎ付けの穂乃果。子供っぽさと女の子らしさが組み合わさった、可愛さ満点の穂乃果を俺はしばらく眺める。
やっぱ可愛いわ、うちの穂乃果。ショーケースに両手べったりつけてキラキラした目でケーキを眺める姿、たまらんな。
「お、お兄ちゃん……」
おっと、穂乃果から声をかけられてしまった。もうちょっとだけ眺めていたかったのだが。もじもじとした態度で恥ずかしそうに俺を見る穂乃果を見つめながら、穂乃果の言葉を聞く。
「こ、ここのケーキ屋さんのケーキ美味しいって希ちゃんと絵里ちゃんから聞いててね?それで……その……ちゃ、ちゃんとダイエットはするから! そ、その……」
もじもじした様子から一変、両こぶしを胸の前で握り一生懸命ダイエットするとアピールする穂乃果。ふふっ、可愛い。
「いいよ、好きなだけ食べなよ。今日くらいダイエットなんて考えないでいっぱい食べちゃいなよ」
「っ!! い、いいの!?」
「あぁ。ただし海未ちゃんにはバレないようにな?」
「わーい! お兄ちゃんありがとうっ!」
「ふふっ、今日だけだからな?」
「うんっ!」
俺が許可すると、穂乃果が顔をキラキラさせ嬉しそうに抱き着いてきた。ほら、あのカップルと同じことしてるんだから照れなくてよかったのに、なんて言葉は胸の奥にしまい、穂乃果がケーキを選ぶ姿を俺は後ろから眺める。
店員さんに「これと! これと……これもお願いしますっ!」だなんて言いながら嬉しそうにしてる穂乃果の様子はまさに小さな子供同然。そんな姿をあの年齢ですら恥ずかしがらずに晒せる穂乃果はやっぱり可愛い。
ケーキを選び終わった穂乃果がピョンピョンと飛び跳ねるように俺の元に戻ってくる。
「えへへっ、いっぱい選んできたよっ!」
「そうかそうか。じゃあいっぱい食べような」
「うんっ!」
あぁ、可愛い。やっぱ穂乃果は可愛いわ。
「穂乃果、会計済ませてくるからちょっと待っててな」
「あっ……ご、ごめんねお兄ちゃん」
「いいんだよ、こういうのは全部俺が出すからさ」
「お兄ちゃん……ありがとっ」
「おう」
申し訳なさそうにする穂乃果に言葉をかけながら、俺はレジに向かう。
「いくらになりますか?」
「計17点で5780円になります」
「!?」
ほ、ホールで買ったんだろうか。そして17点という数は一体何人分何だろうか。困惑する俺に、涙目で「ごめんね」と言ってくる穂乃果を見てしまったため笑顔で会計を済ませてしまったが、内心焦りまくっていた。
ま、まぁ? あれだけ可愛い穂乃果を拝むことができたんだから、拝観料と考えれば安い安い……くっ。
「ごゆっくりどうぞ~」
店員の声にあおられるように、まるで食べ放題の店にでもきたかのような量のケーキが乗っているトレー2つを持ちながら飲食スペースへ進んでいった。
「あれ? 光穂っちと穂乃果ちゃんやん!」
「あら、2人も来てたのね」
「げっ、光穂……」
「あぁっ! 希ちゃん絵里ちゃんにこちゃん!」
飲食スペースには、穂乃果と同じように変装した東條と絢瀬の2人が。そして
「東條、絢瀬、お前らの横に変人居るけど大丈夫か?」
変人が1人。
絢瀬も東條もせいぜいニット帽やマスク程度なのに、その横にいる変人はもふもふの耳当てにサングラス、さらにはマスクといった、怪しすぎるにもほどがある姿なのだ。これはヤバいぞ……心なしか周りからも視線集めてる気がするし……
「にこよ! 変人っていうのやめて!」
「えっ!? 矢澤!? おい東條絢瀬! そこを早く離れろ!?」
「うわ~変人や~!」
「助けて光穂くん~っ」
「にこちゃんがいるなんて危ないよ!?」
「ちょっとぉ!? にこって気づいてもこの反応っておかしくない!? っていうか希と絵里はさっきまで一緒に食べてたでしょ!? そして穂乃果はにこを危険人物扱いするなっ!」
変人の正体は矢澤だったらしい。
なんだ、やっぱ変人じゃん。
「絵里ちゃん達も今日来てたんだね!」
「えぇ。にこはまだこのお店きたことなかったみたいだから、せっかくのクリスマスだし、行ってみましょうってことになったの」
「せやね。にしても穂乃果ちゃん……それ全部穂乃果ちゃんが食べるん?」
「うんっ! お兄ちゃんにお願いしたら許してくれたの! えへへ……」
「太るわよ?」
「い、言わないでよにこちゃぁんっ。ちゃんとダイエットするって、お兄ちゃんと約束したんだもんっ!」
「……ダイエット、ちゃんとさせなさいよ?」
「矢澤に言われなくったって分かってるさ」
矢澤に言われなくったって海未ちゃんから怒られるの怖いから俺も穂乃果も真面目にやるだろうし。
「と、ところで光穂くん」
「ん? どうした絢瀬?」
「光穂くんの分は?」
「いや、穂乃果の分しか買ってないよ?」
「へ、へぇ……」
「どうした?」
「いえ、何でもないのだけれど……」
何か言いたげに絢瀬は穂乃果の分のケーキたちを眺めている。なんというか、勘だけど、ショーケースを眺めていたときの穂乃果と同じ雰囲気を感じる。
まさか? そう思っていたら、東條が言ってきた。
「光穂っち~、うちらにもケーキ奢ってよぉ」
「なっ!?」
「ほら、えりちもにこっちも食べたそうだしぃ、ええやん?」
見ると、絢瀬も東條の一言を聞いてか、俺の方を見て申し訳なさそうな顔をしつつ、期待の視線を送っている。矢澤も矢澤で、サングラスの奥に移る瞳は、横目で穂乃果のケーキをしっかしとらえている。穂乃果の分だけでもかなり出費が痛いというのに……しかし今日はクリスマス、男としてのプライドがある。
「いいよ、ただし今日だけな?」
「さっすが~、光穂っち男前~!」
「い、いいのかしら? 私たちの分まで」
「遠慮すんなよ絢瀬、ささやかだけどクリスマスプレゼントってことで」
「ほんとささやかね! にこはもっとちゃんとしたものがほし「矢澤の分無しにするぞ?」ごめんなさいいぃっ」
3人の態度は各々違ったが、3人とも嬉しそうにはしゃいでいるのを見るとこっちまで嬉しくなってしまう。
「お兄ちゃん!」
と、横にいる穂乃果が俺の服の袖を引っ張って呼ぶ。
「おかわり!」
「……え?」
3人と話していたのは約5分程度だったと思う。
トレー2つ分にあれだけ乗せてあったケーキの山は、もうすでに1つのトレー分がなくなっていたのだった。
……女の子って、恐ろしい。
「計24点で7630円になります」
「ひ、ひぃぃぃぃっ!?」
東條、絢瀬、矢澤の奢り分、そして穂乃果のお代わり分は、さっき買った穂乃果の分の値段を軽く超えていた。
お、女の子恐ろしい……。
「「「「ごちそうさまでした!」」」」
「お、おう……うっぷ」
そして、山ほど頼んだはずのケーキたちはものの10分で跡形もなく消え去ったのだった。甘いものが苦手ではない俺ですらも軽く吐き気を催すくらいだったというのに……女の子って……恐ろしい。
その後、穂乃果がお花を摘みに行っている間、3人から自分が食べた分の料金を払うと言われたのだが、俺はそれを断った。さすがに女の子に出させるわけにはいかない、という気持ちと、いつも世話になっている感謝の気持ちだと伝えると3人は恥ずかしそうにしながら感謝してきた。
おかげで、今日の予算の半分は消え失せてしまったわけだが。まぁいいか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ご、ごめんねお兄ちゃん、ご馳走になっちゃって」
「いいんだよ、穂乃果は俺の妹なんだから」
「……えへへっ」
ケーキ屋で3人と別れた俺たちは、また2人きりでショッピングモールを歩き始めた。あれだけケーキを食べたというにもかかわらず、ここに来る前とさほど変わらないと言ってもいいくらい平然とした様子に俺は驚きを隠せない。甘いものは別腹、なんて言葉はあるけれど、あれだけ食べててなお平然と歩いていられる我が妹を見ると、女の子のすごさを改めて感じさせられる。
そんなことを思っていると、穂乃果が指をさし俺に言う。
「あ! あそこにゲームセンターがあるよ! 行ってみようよ!」
握ったままの手を引っ張りながら、俺をゲームセンターに連れていく穂乃果。ここに着いた時とは違い、しっとりふんわりとしたスポンジケーキのような手で俺の手を引く穂乃果は、やっぱり可愛い。
「おっきい……いろいろあるねお兄ちゃん!」
「あぁ、確かに大きいなここは」
ついたゲームセンターは、そこらにあるそれよりよほど広い、大きなゲームセンター。穂乃果に連れられ、ゲームセンターのクレーンゲームのエリアに入ったときだった。
「あっ!」
「光穂さんと穂乃果ちゃんだにゃ!」
「あら、奇遇ね2人とも」
そこには、花陽ちゃん、凛ちゃん、真姫ちゃんの3人が居た。
なんだろう、嫌な予感がする。
「お、お2人さんもここに来てたんですね!」
「うん、花陽ちゃんたちもここに来てたんだね」
「はい!」
「にゃぁ……」
「どうしたの、凛ちゃん?」
「にゃっ!? 何でもないにゃ!! さ、さぁ! いっぱい景品とるにゃ!」
「??」
俺と花陽ちゃんが挨拶を交わしていたとき、凛ちゃんが何やらぼーっとしていた。不思議に思ったらしい花陽ちゃんの問いに、慌てた様子で何でもないと答え場を離れた凛ちゃん……明らかに俺と穂乃果の繋いでる手を見てたな? どうしたんだろうか。
「あっ! 凛ちゃんが行っちゃう! 穂乃果たちもいこうよお兄ちゃん!」
「あ、あぁ」
不思議に思いつつも、俺は穂乃果に引かれるまま凛ちゃんを追った。
「にゃああ!? あともうちょっとだったのにぃ!!」
「よーし!穂乃果が凛ちゃんの敵を……うわあああん取れないよお兄ちゃあん!!」
「よしよし、難しいもんな」
凛ちゃんが挑戦したクレーンゲームだったがあえなく惨敗、リベンジを図った穂乃果も失敗し、俺に泣きついてきた。穂乃果の頭を撫でながら、台の様子を窺う。
大きめのクマのぬいぐるみが景品みたいだが、足の部分が絡んでいるのか、穂乃果と凛ちゃんがやったときビクともしなかった。アームが弱いのかもしれないが、単純に難しいと感じさせるような状態だった。
「お兄ちゃぁん……あのおっきなクマさんのぬいぐるみ、ほしいよぉ」
「うーん……」
穂乃果が甘えた声で俺を上目遣いで見てくる。いつもなら素直に狙いに行くのだが、今回ばかりはそれすらもためらってしまうようなむずかしさ。情けない気もするが、ここは店員さんのサポートを得た後で取りにかかった方が無難か。
「私がやるわ」
「えっ」
声を上げたのはまさかの真姫ちゃんだった。仕方がない、と言わんばかりに高級そうな財布からお札を1枚取り出しては両替に向かい、帰ってきたかと思えば、何の躊躇もなしに100円玉を1枚だけ投入し、狙いにかかった。
「ま、真姫ちゃん、これ難しいと思うけど」
「ちょっと黙ってて」
「あっはい」
俺の心配など必要ないと言わんばかりにあっさりと俺を一蹴する真姫ちゃん。何も言えなくなった俺はただ真姫ちゃんの様子を窺うだけとなった。真姫ちゃんは慣れた様子でクレーンを前後左右に動かし、狙いを定めてアームを降ろす。
「……えっ!?」
「すごいにゃ!!」
「す、すげえ」
「ふふん♪」
真姫ちゃんは、絡まっていたぬいぐるみの足に上手くアームを引っ掛け、そのまま2個のぬいぐるみを持ち上げた。そしてその2つのぬいぐるみは逃げることなく、外に出てきた。1回のみで難しい配置になっていたぬいぐるみを、凛ちゃんと穂乃果の分の2個をきっちりとったのだ。
自慢げな様子で取り出し口から2個のぬいぐるみを取り出すと、それを穂乃果と凛ちゃんに手渡した。
「はい。これが欲しかったんでしょ?」
「真姫ちゃん大好きにゃ~!!」
「ありがと真姫ちゃん~!!」
「ちょっ! 抱き着かないでっ!」
唖然とする俺を尻目に、穂乃果たちははしゃいでいる。そんな俺を見たのか、花陽ちゃんが俺に耳打ちしてきた。
「実は真姫ちゃん、ああ見えてゲームセンターによく行ってるんです」
「えっ!? そうなのかい?」
実家がお金持ちだということを知っていたため、あまりこういう場所には来ないだろうと思っていただけに意外だった。
花陽ちゃんが続ける。
「1度だけμ'sメンバー全員でここに来たことがあったんですが、そのときにこちゃんに馬鹿にされちゃって。真姫ちゃん負けず嫌いだから、悔しいからってゲームセンターで練習してたんです。そのとき花陽も練習に連れていかれたことが何度かあるから」
「へぇ~……負けず嫌いってすげえんだな。というかそれ矢澤が悪いんじゃね?」
「ふふっ、でも練習してる時の真姫ちゃん、すごく楽しそうにしてましたから」
花陽ちゃんはそう言いながら、抱き着いてくる穂乃果と凛ちゃんの2人を引き離そうとしている真姫ちゃんを、微笑ましいものを見るように笑みを浮かべていた。
俺もまた、嬉しそうに真姫ちゃんに抱き着こうとする穂乃果と凛ちゃん、そしてそれを引きはがそうとしつつもどこか嬉しそうな真姫ちゃんを見て、思わず頬が緩んだ。
「2人とも笑わないでっ!」
真姫ちゃんのお怒りの声を浴びながら。
なんやかんやありながらも、1年生3人と別れた俺たち2人は、また歩き出す。
「えへへ……クマさんのぬいぐるみ~」
「取ってもらえてよかったな」
「うんっ!」
ゲームセンターで真姫ちゃんに取ってもらったクマのぬいぐるみを抱きしめながら笑みを浮かべる穂乃果。えへへと笑いながら、ゲームセンターでもらった紐付きの袋にぬいぐるみを入れ、その紐を肩にかけた穂乃果は、再び俺の手を指を絡ませつつ握る。
「新しい家族の誕生だねっ!」
「ふふっ、そうだな」
嬉しそうに笑う穂乃果を見ながら、本当は俺が取ってあげたかったんだけどなぁと複雑な気持ちになってしまう俺であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「あっ! あそこにペットショップある! いこっ!」
「おうっ」
穂乃果がまた俺の手を引っ張って歩こうとしていたのを俺は見逃さず、3度目の正直と言わんばかりに今度は俺も穂乃果に合わせて歩みを進める。
ついた場所は、これまた大きなペットショップ。少なくともうちの近所には見ないくらい大きなその店からは、動物たちの鳴き声が聞こえていた。
と、その動物たちの声に耳を澄ませながら店に入ろうとした時だった。
「や~ん可愛い~っ」
何やら聞き覚えのある、頭がとろけそうな声が聞こえてきた。
「ねえお兄ちゃん、この声……」
「おう、たぶん考えてることは同じだよな」
「だよねっ。行ってみよっ」
声がする方に2人で歩いていく。そこは、たくさんの犬たちがいるエリアだった。
「はぁ~♡ みんな可愛い~っ」
「やっぱり」
「ことりちゃんだ!」
「えっ? あっ!穂乃果ちゃん! と光穂さん!」
こちらが呼ぶまで気づかなかったようで、少し驚いた様子でことりちゃんはこちらを見たあと、こちらに近寄ってきた。
「2人とも来てたんだね!」
「うんっ! ことりちゃんは1人で?」
「ううん、海未ちゃんも一緒だよ。たぶんあっちで……あっ、いた! あっちに」
「……カメ、見てるな」
ことりちゃんが指さす先にはカメがいるエリア、そしてそこの1つの水槽の中にいるカメとにらめっこしている女の子がいた。俺はその子に近づいて、声をかけた。
「こんにちは海未ちゃん」
「ふえっ!? はっ、あ、ど、どうも」
できるだけ驚かないように声をかけたつもりだったのだが失敗したようで、海未ちゃんは飛び跳ねたように驚いていた。声の主が俺だと分かって安心したのか、胸元に手を置いて、はぁとため息をついた。
「ごめんごめん、驚かせちゃった?」
「い、いえ。すいません、このカメが少し気になってしまったもので」
「カメ?」
「やっほー海未ちゃん!」
「あら穂乃果、いたんですね」
「何見てたの海未ちゃんは?」
俺の後ろからことりちゃんと穂乃果の2人が声をかけた。
しかし、なんでこのカメを見てたんだろう?
「……やっぱり似てますね」
「え?」
「このカメ、のんびり泳ぎながら、水槽を覗く私に手を振るんです。その姿が穂乃果にそっくりだなって思ってたんです」
「このカメが」
「穂乃果ちゃんに?」
「もう! 海未ちゃん、穂乃果はカメじゃないよぅ!」
このカメが穂乃果に似ていると言いながら、微笑んでいる海未ちゃん。穂乃果はそれが気に入らないらしく、頬を膨らませながら怒り顔を浮かべ、ことりちゃんはそれを宥める。
にしても、このカメが穂乃果に似てる、ねぇ。ちょっと気になって、俺もそのカメを見つめる……あ、俺に向かって手振ってる。ちっちゃい足をこっちに一生懸命振ってる。なんか可愛いな……確かにこの可愛さは穂乃果に通ずるものがあるな。
「確かに穂乃果に似てるかも」
「ふふっ、でしょう?」
「お兄ちゃんもそんなこと言っちゃうなんて……うぅ」
「よーしよし穂乃果ちゃ~ん、光穂さんのかわりにことりがナデナデしちゃいます」
「うわああんことりちゃぁん」
俺の言葉に、穂乃果はことりちゃんに泣きつく。あらら、言い過ぎたか? でもなぁ、どことなく似てるんだよなぁ、このカメと穂乃果。
「ふんっ! お兄ちゃんなんかしらないっ」
我が妹は不愉快極まりないようだが。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ことりちゃんと海未ちゃんと別れた俺たち2人。
「穂乃果~」
「ふんっ、穂乃果はカメじゃないもんっ」
「許してくれよぉ」
ペットショップで見たカメと似ていると言ってからというもの、穂乃果の機嫌が悪いままだ。手は相変わらず指を絡ませたままなのだが、顔はこちらを向いてくれない。
「あ……」
そっぽを向いていた穂乃果が、何かを見つけたらしく足を止めた。
「どうした穂乃果?」
「あ、お、お兄ちゃん」
「ん?」
今までそっぽを向き続けていた穂乃果が、急に頬を染めながら俺を見つめてきた。急な態度の変わりように困惑しつつも、穂乃果に尋ねる。
「どうかしたのか?」
「う、うん。あそこのお店に、行ってみない?」
「あそこの……あぁ、冬物のアイテム売ってる店か?」
「うん。そ、その、今日はクリスマスプレゼント、買いに来たんだからさ」
「あっ」
いろいろありすぎてすっかり忘れていたが、もとはと言えばクリスマスプレゼントを買うためにここに来たのだ。俺は忘れていたものの穂乃果はちゃんと覚えていてくれたらしい。しかし、なんで頬が赤くなってるんだ?
「い、いこっ、お兄ちゃん」
「お、おう……」
別に照れるようなことも特になかったと思うが……頬を染めている理由が分からないまま、2人でその店に歩いて行った。
「お~、いろいろあるな~」
冬物のアイテムがたくさん売ってある店。
その店では、男性用・女性用両方のアイテムが売ってあるらしく、店内ではカップルがちらほらと見えていた。さて、何を買うかなんだが。
「お、お兄ちゃん」
頬を染めたままの穂乃果が俺を呼ぶ。
「どうした?」
「じ、実はね? 穂乃果、欲しいものがあるの」
「ん? どれだ?」
欲しいものがある、そう言って穂乃果が連れてきたのはマフラーが売っているゾーン。
「お兄ちゃんは、どの柄が好き?」
「え? 俺がか?」
「うん」
「うーん……あ、この赤と白のチェック柄のやつとかかな」
俺が目につけたのは赤と白のチェック柄のマフラー。白が冬らしさを、赤が温かさを感じさせるような色合いのそのマフラーに目を引かれたのだ。
「っ! お兄ちゃん、穂乃果そのマフラーが欲しい!」
「え? でもこれ、俺の好みだぞ?」
「お兄ちゃんの好みだからいいの!」
一生懸命にこれが欲しいアピールをする穂乃果だが、選んだのは俺の好みのマフラー。まさか俺のためのクリスマスプレゼントを選ぼうとしてこのお店に? ふふ、俺のためにだなんて、そんなこと考えなくていいのに。
だが穂乃果が欲しいと言ってることには変わりない。
「分かった、じゃあこのマフラー買ってくるよ」
「う、うん! ありがとうっ」
マフラーを手に取り、俺はレジへと足を運ぶ……あれ?これ1人で使う分にしては長すぎる気が。
「買ってきたぞ」
「っ! あ、開けて欲しいな」
「え? ここで?」
「うん。ダメかな?」
「いいや、別にいいよ」
俺は穂乃果に言われるまま、買ったばかりのそのマフラーを取り出す。
「そ、それちょっと貸して! 穂乃果がお兄ちゃんに巻いてあげる!」
そう言って穂乃果は俺からマフラーを受け取り、俺の首に巻いてくれた。しかしやはりそのマフラーはとても1人分としては長すぎて、思いっきり丈が余ってしまっている。これ不良品なんじゃね?
そう思っていたときだった。
「んしょ……えへへっ」
余った部分を穂乃果は、穂乃果の首に巻いたのだ。1つのマフラーで2人一緒に温まる形となった。
「あったかいねお兄ちゃんっ」
「……まさか、こうしたかったのか?」
「う、うんっ。お兄ちゃんと一緒に、同じマフラーで……その、温まりたいな……って」
「……ったく! 可愛いな穂乃果は!!」
「きゃっ!? お、お兄ちゃんいきなりはダメだよぅ」
「可愛いなもうっ!!」
「苦しいよぉ……えへへ」
穂乃果の考えが分かってしまった時、衝動的に穂乃果の身体を思いっきり抱きしめてしまった。いきなりでびっくりしたのと、その抱きしめる力が強かったからか、穂乃果が苦しそうにしていたがやがて嬉しそうに笑みを浮かべていた。
この店を見つけてからずっと穂乃果の頬が赤かったのは、これをしたかったからだったのかもしれない。その証拠に、今の穂乃果の顔はまだ赤いものの、さっきまでとは違ってほんのり赤いといった感じだった。
にしても、こんなに可愛い女の子なんてこの世に穂乃果以外にはいないだろう。そんな子を妹に持つ俺は世界で一番幸せ者なのだろう、そう思いながら、穂乃果を抱きしめ続けるのだった。
「破廉恥ですっ!!」
「あんたたち……場所をわきまえなさいよね」
「「あっ」」
急な大きな声と冷めたような声に現実に引き戻された俺と穂乃果。見ると、周りの人たちからはすごく注目を浴びてしまっていた。声を上げた海未ちゃんは恥ずかしそうに、矢澤は呆れたように、俺たちを見ていた。
気づけはその2人の後ろには、他のメンバーが勢ぞろいしていた。
「み、みんないつからいたんだ?」
「光穂っち達が店から出てきたときからやで」
「なん……だと……!?」
どうやらマフラーの件は全部見られていたらしい。穂乃果はさっき以上に真っ赤に顔を染め上げ、手で顔を必死に隠していた。かくいう俺も、頬に熱を帯びている。おそらく穂乃果ほどではないにしろ、赤くなっているのだろう。
ここにきたときに見たリア充と同じ状態に陥ってしまったことに対する恥ずかしさと、それをよりにもよってμ'sのみんなに見られてしまったことに対する焦りで何もしゃべれなくなってしまった俺と穂乃果は、そのままみんなと一緒に帰ることになってからも何もしゃべれないまま帰宅したのであった。
ショッピングモールから帰ってきて晩ご飯等を済ませた俺は、部屋でいつものようにくつろいでいた。
すると、これまたいつものようにドアをノックする音が。
コンコンッ!
「あいよ~」
「お、お兄ちゃん」
穂乃果がいつものように入ってきた。俺はそれをみていつものように足を広げ、穂乃果の座るスペースを作ってやると、これまたいつものように穂乃果もまた、俺が足を広げたところに、俺と向かい合うように座ってきて、いつものように抱き着いてきた。
「……さっきは恥ずかしかったね、お兄ちゃん」
「ふふっ、でも俺は穂乃果の可愛い姿見れたからよかったけどな?」
「ふぇぇっ!? も、もうっ」
「ははっ、穂乃果はいつでも可愛いから仕方ないさ」
「うぅ」
今もなお恥ずかしそうに顔をうずめる穂乃果を撫でながら。この"いつもの"俺たちのやりとりをする中で、思う。
来年もまた、こうやって穂乃果と抱き合って、お出かけして、手を繋いで。μ'sのみんなとも話せたらなお良し。というか話せてほしい。
来年も"いつもの"生活を送れるなら、きっと来年も幸せだろう。
最愛の妹を抱きしめ撫でながら、そんなことを思うのであった。
「雪穂! はいこれっ!」
「俺と穂乃果からのクリスマスプレゼントだ」
「えっ、あ、ありがとう」
「ほらっ、開けて開けてっ!」
「えっ、ここで!?」
「早く早くぅ!」
俺と穂乃果で雪穂の部屋を訪れた。最後に立ち寄った店でマフラーを買ったわけだが、実は雪穂の分も買っておいた。
「これ、手袋?」
「そうだよ!」
そう、雪穂に買ったのは手袋。だが、ただ手袋を買ったというわけではない。
「じゃあお兄ちゃん!」
「ああ、せーの!」
「「じゃーん!」」
「……っ!!」
俺の合図で穂乃果と俺は、雪穂にあるものを見せた。
「そ、それ、私のと同じ……しかも2人とも私のとお揃い……」
「うんっ! 兄妹3人おんなじものだよ!」
「せっかくなら兄妹同じものがいいかなって思ってさ」
そう、俺と穂乃果もまた、雪穂にあげたものとまったく同じの手袋を買ったのだ。
兄妹3人、同じ手袋だ。
雪穂はそれを見て、優しい顔でつぶやく。
「恥ずかしくてつけていけないじゃん、バカ」
「えぇっ!? おにいちゃん、雪穂気に入ってくれなかったよぉ!!」
穂乃果が驚きとショックで俺に一生懸命訴える。穂乃果は素直すぎるから気づいていないものの、これは別に雪穂が気に入らなかったわけではない。
「……ありがと、2人とも」
「あぁ」
照れ隠し、俺にはわかってた。穂乃果はワンワン大きな声で俺に訴えかけ、雪穂はその穂乃果に隠れて嬉しそうに微笑む。そんな妹たちの様子を見ながら、あぁ、俺は幸せな兄だ、そんなことを思う。
甘えん坊で素直な穂乃果、素直じゃないけど優しい雪穂。そんな2人と来年も、いや未来永劫一緒に過ごしていたい。
そっと心の奥に、想いを閉じ込めた。
「2人とも」
「どうしたの?」
「お兄ちゃん?」
「来年もよろしくな」
「っ! うんっ!」
「ふふっ、まだクリスマスなのに。ふふふっ」
「それもそうか、あははっ」
来年も一緒に――――
穂乃果ちゃんとクリスマスデートしたいですね????
私はしました(過去形)
今年最後ということで、μ'sメンバー総出演させてみました。
やっぱり私はμ'sが、穂乃果ちゃんが好きです(真顔)