兄と妹~ときどき妹~   作:kielly

30 / 66
穂乃果ちゃん!ほのかちゃん?ホノカチャン!!(サマーver)

ということで、今回はツンデレ系穂乃果ちゃんでございます。
私はどちらかと言えばツンデレよりヤンデレ派です
しかし!穂乃果ちゃんに関して言えばどちらも良きだと思っています

まぁ、穂乃果ちゃんですから。
仕方ないんです



お兄ちゃんのためなんだからねっ!

「穂乃果〜、学校に行く時間だぞ〜」

 

 そう言いながら俺は、いつものように穂乃果の部屋のドアを開けた。

 

「なっ、何勝手に入ってきてるのっ!? 意味分かんないんだけど!」

「えぇっ!?」

 

 あ、あれ? いつもならまだベッドの上でぐっすり寝ているはずなのに。そしてこの態度はなんだ?

 

「……で、でも、いつも来てくれてありがとう」

 

 なにこれ、意味わかんない。

 

 

 

 

 

 お兄ちゃんのためなんだからねっ!

 

 

 

 

 

 いやあの、これどういうことですか?

 

「ふんっ」

「あー……」

 

 俺が起こさずとも起きていて、かつ用意もきっちり済ませていた穂乃果と共に家を出たわけだが、完全に『怒ってるよ!』と言わんばかりの態度で横を歩いている。

 手はいつもより強く握られているが。

 態度は威圧的だがちゃんといつも通り手を繋いで俺の横を歩く穂乃果に、俺はどう接していいか全くわからない。しかしながら、本気で怒ってるわけじゃないだろう、本気で怒ってしまっているのなら、『ありがとう』などと言わないだろうし。

 様子を伺うのとさっきの謝罪を兼ねて、声をかけてみた。

 

「ほ、穂乃果」

「……なに?」

「いやあの、さっきはごめんな?」

「っ! ……べ、別に怒ってないもん」

「え? いやでも態度が」

「これは怒ってるからってわけじゃないのっ!!」

「うおっ!? いきなりそんな大声出さなくったって」

「あっ……ふ、ふんっ!」

「んー?」

 

 すまん穂乃果よ、兄にはまるで今の穂乃果が何を考えてるのかわからん。

 

「ご、ごめんねお兄ちゃん、本当に怒ってるわけじゃないから」

 

 ……分からん。

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 その日の昼休み、昼ごはんを食べようとして、バッグから弁当を取り出そうとしたのだが

 

「あれ? 忘れたか?」

 

 見つからない。今朝の穂乃果の様子が気になりすぎて、弁当のことが抜け落ちてしまっていたらしい。

 

「ん~、やっぱりねえのか?」

 

 バッグの中、机の周り、ありそうな場所を見てみたが、やはり弁当箱らしきものはない。くっ、仕方ない、今日は購買でパンでも……

 

「あら? あんた何探してんの? もしかして、まさかとは思うけどお弁当忘れた?」

「うるせえぞロリチビ」

「あんたの吐く毒がストレートすぎるあたり、やっぱり忘れたのね」

「るせえっ」

 

 しまった、俺の言葉があまりにストレートすぎて矢澤にすら冷静に対処されてしまった。いつもなら「なっ!? いくらなんでもひどすぎない!?」くらいに必死に抵抗してくる矢澤をいじって遊ぶくらいの余裕さがあるくせに、弁当忘れた程度でここまで慌ててしまうとは……矢澤に冷静に対処されてしまうなんて、それこそ終わりだ。

 

「ま、まぁ? お昼何も食べないのは辛いだろうから、今回だけは特別ににこのお弁当をわけて」

「ちょっと来て!!」

「うごぁっ!?」

「光穂!? って、え?」

 

 矢澤が何かを言おうとしたとき、俺の襟が後ろから引っ張られた。それもかなり強い力だったため、俺は何もできないまま引っ張られていった。

 しかし、正体は分かっている。聞きなれすぎた明るい声、そして今朝聞いたその怒ったような声色。

 で、でもなんでこんなことを……

 俺は首元を締め付ける襟をどうにか緩めようと努めながら、驚きのあまり硬直した矢澤を見ながら、俺を引っ張る手に身を引っ張られるのだった――――

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

「はぁ……はぁ……げほげほっ」

「…………」

「やっと……解放されたか」

 

 首を引っ張る力がなくなり、苦しみから解放された俺が今いるのは屋上。首引っ張られながら階段上がるのはさすがにきつくて、息を整えるのに精いっぱい。

 

「なんでこんなとこまで……引っ張ってんだよ――――」

 

 

 

「穂乃果」

 

 

 

「ふんっ」

「まだ怒ってるのか……」

「だから怒ってないもんっ!」

 

 今朝から変わらぬその様子、俺は何か悪いことでもしたんだろうか? 怒ってるのかと聞くと怒ってないと返ってくる。でもその様子を見る限りじゃ、怒ってるようにしか見えない。

 ど、どういうことだってばよ……

 

「お、お兄ちゃん!」

 

 考えていると、急に穂乃果が声を上げた。その頬は少しだけ赤くなっている。

 

「どうした?」

「そ、その、お弁当忘れてるでしょ……?」

「え? あ、あぁ。でもなんで知ってる?」

「っ!! そ、そんなのどうでもいいのっ!」

「ど、どうでもいいって……」

 

 顔を赤くした穂乃果を見たことは何度もあるが、屋上で2人きりで、制服で、なんてシチュエーションは初めてで、なんだか上手くしゃべれない。穂乃果も穂乃果で緊張でもしてるのか、何やら言葉が詰まってるみたいだ。お互いがこんなんだから、変な空気感を生み出してしまっている。

 

「そっそれよりお兄ちゃん!」

 

 だがその空気は穂乃果の一声で壊された。相変わらず頬を赤く染めたままの穂乃果が俺に何かを言おうとしている。

 ……なんか、変な感じだ。

 

「なんだ?」

「あ、あのねお兄ちゃんっ。そ、その、穂乃果と……」

 

 さらに貌を赤くしていく穂乃果が、放った言葉は――――

 

 

 

 

「穂乃果と一緒に、お弁当食べよ……?」

 

 

 

 

 高坂光穂 17歳 、高校3年生にして2人の妹を持つ高坂家の長男。

 しかしてその正体は――――"シスコン"だった。

 

 

 

 っていやいやいや!!! 俺はシスコンじゃねえ!! 断じて違うぞ!!! 決して今の穂乃果を見て「あ、もう俺シスコンでもいいや」なんて思ってたりなんかしねえぞ!? 俺はただ「やべえ今の穂乃果は世界で1番の天使や……」って思っただけでだな??

 ともかく、穂乃果がスーパー可愛すぎたので

 

「ん……」

「食べよう、一緒に」

「お兄ちゃん……ふ、ふんっ! 感謝してよねっ」

「おう、ありがとうな」

 

 どこから出したのかも分からない"2つの"弁当箱を持っている穂乃果を、相も変わらず怒っているのを気にせず抱きしめた。いやもうなんだ、やっぱうちの妹最高だわ。

 

「さ! 一緒に食べようか穂乃果!」

「っ! う、うんっ! えへへ……」

 

 えへへと可愛らしく笑う穂乃果が、いつもμ'sが休憩するときに座っているところに俺の手を引いて歩いていく。

 

「お兄ちゃん、今日は穂乃果が食べさせてあげるんだから! 感謝してよねっ!!」

「お、嬉しいね~。ありがとうな」

 

 穂乃果が食べさせてくれるらしい、穂乃果が"2つあるうちの1つ"の弁当箱をあけ、箸でおかずをつかむ。

 

「は、はいっあーん!」

 

 つかんだおかずを俺の口元に持ってきた……制服で屋上で2人っきりで「あ~ん」、か。まるでカップルみたいだ。ま、そんなことはどうでもいい。穂乃果がせっかくあーんしてくれてるんだ、ありがたく頂戴するとしようじゃないか。

 この世の、すべての食材たちに感謝を込めて。

 

「いただきます。あ~ん――――」

 

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン……

 

 

 

 

「えっ!?」

「あ? うそだろ……」

 

 あーんをいただこうとしたその瞬間、学校のチャイムが鳴った。屋上に引きずり込まれる→あーんまでの過程で時間を使いすぎたらしい。せっかくの至福の一時が……チャイム、絶対に許さない。

 

「もうっ! お兄ちゃんのせいなんだからねっ!!」

「ふぉっ!? なんで俺!?」

「穂乃果はもう先に戻るからっ! ふんっ!」

「えっ、あ、ちょっと……」

 

 理不尽に俺のせいにされたあげく、引きずり込んできた穂乃果が先に弁当を片して教室へと戻ってしまった。1人取り残された俺は、屋上に吹く冷たい風を浴びていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 今日はμ'sの練習は休み。本当なら穂乃果を迎えに行って一緒に帰るはずだったのだが、迎えに行った教室、教室には穂乃果の姿はなく、俺は穂乃果と顔を合わせることもないまま、1人で帰宅してしまった。あ、これ完全に怒らせてしまったやつや。これ俺が悲しさのあまり部屋に引きこもり決めちゃうやつや。

 

 案の上、俺は帰宅後部屋に戻り、1人むなしく夜まで漫画を読んでしまったのだった。

 なぜ……なぜ今日の穂乃果はあんな怒ってたんだ……そんな疑問を持ちながら、寝る時間まで漫画を読み続けてしまった。

 

 晩ご飯は外で食べてくるらしい、とお母さんから聞いた。そのせいで、いつも顔を合わせるはずの晩ご飯の時間すら、穂乃果の顔を見れずじまい。

 そんなこんなで今はもう、日付が変わる寸前、「海未ちゃんとことりちゃんと遊んでくるねっ!」というように、予め連絡をもらっていて顔を合わせることができないってことくらいだったら今までにも何度もあったが、今回のように何も聞かされてなくて、かつ半日近くも穂乃果の顔を見れないなんて日はそうそうない。

 

 あぁ、穂乃果が恋しい。

 今読んでる漫画だって、いつもなら穂乃果と横に並んで一緒に読んでる。離れる時間なんてせいぜい風呂とトイレ行ってる間の時間程度。それが今日は全て1人、ましてや昼以降顔すら見てない。

 ベッドの上に仰向けになり、読んでいた漫画を持つ手を胸元に下ろす。穂乃果と少し離れるだけでこれまでに寂しさを感じるのは久しぶりかもしれないな。

 

「あ、日付変わっちまった」

 

 ふと時計を見ると、ついに日付が変わってしまったことに気が付いた。はぁ。明日の朝、穂乃果の期限が直っていればいいんだが……

 そんなことを思いながら、漫画を机の上に起き、再び仰向けになって目を瞑った。

 

 

 

 その時だった。

 

 

 

「お兄ちゃんっ!!!」

「うおっ!? ほ、穂乃果!?」

「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃああああんっ!!」

「うごっ!?」

 

 バンッと大きな音をたてられて開いた部屋のドアから、穂乃果がすごい勢いで走ってきて俺の上にダイブ。あまりの唐突さに抵抗することもできないまま、穂乃果の身体を俺の全身をもって受け止めるが、俺の太ももに穂乃果の膝がクリーンヒットし、さらに穂乃果の身体で俺の腹が思いっきりたたきつけられ、思わず声が出てしまった。

 

「お兄ちゃんっ、えへへ、お兄ちゃん……♡」

「あ、あれ?」

 

 痛みをこらえつつ穂乃果を見ると、穂乃果は俺に必死に抱き着いてスリスリしていた。この様子、もしかしていつもの穂乃果か? だとすると、もう怒ってはない……?

 俺は恐る恐る穂乃果に尋ねてみた

 

「な、なぁ穂乃果?」

「なぁに? お兄ちゃん?」

「あ、あのさ、もう、怒ってない、のか?」

「え? あっ! そう、それなんだけどね!?」

「うぉっ!?」

 

 俺が尋ねると、忘れてたと言わんばかりに声をあげ、俺の顔にグッと顔を近づけてきた。

 

「そのっ、ごめんねお兄ちゃんっ! 今日の朝から、穂乃果変だったでしょ?」

「え? あ、あぁ」

 

 自覚あり? 今朝の件を自分から話題に出しては、自分のことを「変だったでしょ?」などと聞いてくる穂乃果。

 穂乃果が続ける。

 

「あ、あれね? 実は希ちゃんからのアドバイスで……」

「東條からの……アドバイス?」

 

 "東條からの"という言葉に、何かしらのデジャヴ感を覚える俺。あいつの差し金だと?

 

「実は、希ちゃんからこんなこと言われて――――」

 

 

 

 

『そういえば穂乃果ちゃん、光穂っちな? 真姫ちゃんみたいな"ツンデレ女子"が好きって言うとったで! せやから穂乃果ちゃんも"ツンデレ女子"、目指してみいひん?』

 

 

 

 

「まてまてまてまて! 俺は1度たりとも"ツンデレ女子"が好きとは言った事ないぞ!?」

「えぇっ!? じゃ、じゃあ穂乃果、希ちゃんに騙されてたってこと!?」

「あ、あいつ……!」

 

 あ、あのやろう。うちの純真無垢な妹にでたらめ言いやがって!!! ん? てことは? 今朝からの穂乃果の様子を思い出して、聞いてみる。

 

「もしかして穂乃果、今日の朝から"ツンデレ"演じてたのか?」

「っ、う、うん。そうなの」

「な、なんだぁ……そうだったのかぁ」

「お兄ちゃん? お兄ちゃんっ!? なんで泣いてるの!?」

「あれ、なんで?」

 

 あまりに安心したせいか、自然と涙が出てしまっていたらしい……というかこの程度で泣いてしまう俺って。

 

「ごめんね、穂乃果が調子に乗ったから」

「違う、穂乃果はちゃんと"ツンデレ女子"になれてたぞ。ただ安心したってだけだ」

「……本当?」

「あぁ、本当だ」

 

 今朝からの穂乃果の様子を思い返すと、確かに"ツンデレっぽい"行動は多かったのかもしれない。穂乃果は演技が下手だから、過度にやりすぎただけだったのかもしれない。

 

「そっか。よかったっ」

「ふふっ、やっぱり穂乃果はどんな穂乃果でも可愛いな。屋上のやつなんて、思わず叫びだしそうなくらいには可愛かったぞ?」

「そんなに!? で、でも嬉しいっ」

「でも、頼むから穂乃果は"今のままの穂乃果"であり続けてくれ。そうでないと俺が困っちゃうから」

「えへへ、ごめんなさいっ」

「おう、穂乃果はいい子だから許す!」

「ありがとっ♡」

 

 こうして、今朝から様子がおかしかった理由も明らかになり、いつもの状態に戻った俺たちは、そのまま一緒にベッドで眠りについたのだった。

 

 

 

 

 

 翌朝

 

「おーい穂乃果~、学校に行く時間だぞ~」

 

 そう言いながら俺は、いつものように穂乃果の部屋のドアを開けた。するとそこには

 

「う~、あと5分~」

「ほら早く起きねえとまた遅刻ギリギリになっちまうぞ~?」

「あぅぅ、お兄ちゃん起こして~」

「ったく、仕方ねえな」

 

 いつものようにベッドの上で布団に包まっている穂乃果の姿があったのだった。

 

「うぇへへ、お兄ちゃんのベッドからお兄ちゃんの匂い……へへへ」

「なーに言ってんだ早く起きろ」

「おーい2人とも早くおき……また一緒に寝てたの?」

「あ、雪穂」

「おはよぅ雪穂ぉ」

「もうっ! お姉ちゃん早く起きないと海未さんにまた怒られちゃうよ!?」

「うぐっ!? お、起きます起きます!」

「ったく、これだからお姉ちゃんは……」

「は、ははは」

 

 雪穂が"海未ちゃん"の名前を出して穂乃果を起こすという、いつもの兄妹の風景が、そこにはあったのだった――――

 

 

 

 

 

 

 昨夜の夕時間。

 

「なぁなぁ穂乃果ちゃん! うちの言うてたこと、間違ってなかったやろ?」

「え? う、うーん?どうなんだろう」

「またまた~! 光穂っちは"ツンデレ好き"なんやから! 今日1日だけは頑張りや!」

「あ、あと5時間もお兄ちゃんに抱き着いちゃいけないんだなんて……っ」

「"ツンデレ女子"は自ら抱き着きに行くのはNGやから仕方ないんよ! さぁ穂乃果ちゃん! あと5時間、ファイトやでっ!」

「うぅ~、お兄ちゃああん……」

 

 とあるファミレス店には、"光穂攻略法"を伝授する希と、光穂に甘えることを禁じられ、悶え苦しむ穂乃果があったそうだ。

 

 

 




穂乃果ちゃんと屋上で一緒にお弁当食べたいな?
ベッドに横になっているところに穂乃果ちゃんからダイブされたいな????

そんな欲望がつまった今回の話、いかがでしたか?

そして、欲望が溢れ出した作品が、もう一つ
3時8分に投稿済みですので、よければ私のマイページよりぜひ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。